小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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雑感と腑に落ちないこと サウジ武器売却汚職の不思議


 私が時々記事を書いてきたオンラインの「ベリタ」が、隔月で紙の雑誌となって発売されることになった。発売日は20日だそうである。208ぺージで定価1200円(税別)。発行は柘植書房新社。もしどこかで出くわしたらページをめくってみていただけたらと思う。私は9月ー11月ごろあまり出していなかったので、前に書いたオランダの記事が載っていると聞いた。

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 英週刊誌「エコノミスト」の表紙だが、ますますジョーク系雑誌「プライベートアイ」と見分けがつかなくなってきたように思う。(表紙的には。)

 それにしても、ここ2,3日英国では大きなニュースが続いた。ダイアナ元英皇太子妃の死因調査の結果が出たりなどだが、その中でも日本ではあまり大きなニュースにならなかったようなのだが、サウジアラビアに対する、BAEシステムズという会社の武器(戦闘機)売却話。

 売却が悪いのでなく、BAEシステムズが、わいろを使って契約をとった、という話があって、これを重大不正捜査局というところが、2004年ごろから調べていたのだが、14日、突如、この捜査が中止になったのだ。理由は、もっぱら、「サウジアラビア政府が怒ったから」、「10日以内に捜査をとりやめないと、契約を打ち切って、フランスか他の国から戦闘機を買うぞ」といったらしい。「らしい」と書いたが、ほぼ事実らしい、限りなく。

 英法務長官が言うには、「このまま捜査を続けても、起訴になる可能性が低い」、「法の支配よりも国益を考えた」。!!!!驚きませんか?

 一国の法務長官が、「法よりも国益」。不正は不正ではないか?それを無視してもいいとは???

 ・・・という話をベリタに書いたが、アクセス数を見ると、この記事を読んでくれている人がやや少なく、淋しいなあと思っている。

 驚くのは、15日になって、ブレア首相が今度は、「起訴がないままで(といっても捜査が全部終わらないと起訴になるかどうかは、誰も分からないのに、であるが)、何ヶ月も何年もが過ぎると」、「サウジアラビアと英国との間に悪い感情が存在する」。「サウジアラビアは、中東関係、テロとの闘いなど、様々な面で英国にとって重要な国」だから、という。

 ここまで堂々と言われてしまうと、どうだろう?

 もともと、この疑惑を報道したのは最近ではガーディアン紙。15日付の新聞で、大きく載せたのはガーディアンだけ。インディペンデントもタイムズも扱いが小さかった。特に、タイムズは記事は非常に短いのに、写真がどでかく、しかも、掲載はビジネス面。

 これはビジネスだけじゃなく、正義・不正義・法律の中立性などに関わる、大問題だと思うのだが。ガーディアン紙以外の新聞に、サウジや英軍事産業の息がかかっているのか、どうか。15日付の各紙を見て、扱いの大小に驚いてしまった。(といっても、ガーディアンのスクープだったので、他紙は後追いはいやだ、ということで小さく載せた可能性もあるのだが。)

 OECDが海外企業との契約も含めた汚職禁止法のようなものを出していて、これに英国も批准しているはずなのだが。

 サウジとのビジネスで英国が(および各国が)賄賂を使って契約をとっている、という話はこれまでにもあったし、これを暴露した元英官僚もいるのだが、せっかく捜査を開始したなら、最後までやって欲しかった。

 法務長官のゴールドスミス氏自身、今回の結論に、「やや居心地の悪さを感じる」ともらすほどだ(BBCなど)。

 FTも結構書いているが、各紙、ガンガンと毎日1面でやり続けて欲しいトピックなのだが。やはり、自国を叩くのも限界があるのかもしれない。法を踏みにじられても、「国益」・・・。私自身、腑に落ちないし、非常に「居心地が悪い」。

 あるオランダの学者に、「英国は外交ばかりに力を入れすぎている。真っ向から問題解決にあたろうとしない」と言われたことを思い出す。これはテロに関してだったけれど。

 この件だけでなく、どれほどの知らない分野で法を犯した行為が行われているのだろう、国益の名の下で。

 

 

 
by polimediauk | 2006-12-17 07:20 | 新聞業界