小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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雑感 続き サウジの一件の衝撃


 (ブレア氏が中東にいるので、速報が続々届く。たくさん記者が随行しているのだ。BBCのウエブサイトを見ても、どんどん写真が変わる。従軍記者がどれだけ真実を報道できるのか、という話があったが、これほどブレア氏にくっついていると、批判しにくくなりはしないだろうか?あまりにも逐一、報道があるので。・・・お疲れ様です・・・・・。)

 未だ、サウジへの戦闘機売却に関する収賄疑惑捜査が取りやめになったことの衝撃が消えていない。

 今、ブレア首相は労働党にお金を貸してくれた人たちに貴族院の議員としての資格を与えた、つまり金で貴族院の資格を売った件のスキャンダルに巻き込まれている。こっちの方の扱いが今メディアでは大きいかもしれない。それよりも、5人ぐらいの娼婦たちが路上で殺された事件の報道が一番大きい。

 しかし、サウジの件は、どうしても衝撃である。

 それは、収賄があったかどうか、という問題をはるかに超えている。

 私がショックを受けているのは、最終的には、もし私が英国籍を持つ英国民であった場合、いざとなったとき、私は見殺しにされるだろうな、ということだ。サウジアラビアかあるいは外国の高官あるいは政権担当者を助けるために。これがしみじみと実感できるので、怖いのだ。

 しかし、最終的に英国民の命を助けない(英国の国益を守るという意味では英国民の命を守っていると現政権は言うかもしれないが)英政府は、意味がないのではないか。役目を果たしていないのではないか。本当に、本当に困ったときに、命を助けてくれない政府は、まずい。何のために法律があって、投票して政権を選んでいるのか、分からない。

 1年ぐらい前にここに書いたのだが、数名のイギリス人とカナダ人(英国籍も持つ人)がサウジアラビアで数年前にビジネスマンとして働いていて、当時起きたテロの容疑者としてつかまった。レイプも含む拷問を受けて、テレビで「自分はテロリストだった」と告白するよう強要され、全員が「自白」してしまう。全員が、「国際テロリスト」になった。

 後に、人質交換のようなことで、英国に戻された。でも、「国際テロリスト」という汚名は、消えないのだ。今でも。

 今年になって、最高裁まで行ったけれども、だめだった。外国の政府高官の役目は「免責」になるのだそうだ。(ぼやけた書き方で恐縮であるが。)

 王立国際問題研究所の法律問題チームのミーティングに出たときに、この件が話題になった。結局、結論として、複数の国にまたがるこのような問題が生じたとき、これを解決する法律が「ない」のだそうだ。どうすることもできない、と。

 この件は、国内では、もっぱら、「サウジとのビジネス関係を重視しているために、英政府は手が出せない」ということで、みんな妙にあきらめたり・納得したりしているのだった。

 英国籍であっても英国政府は守ってくれないのだ。

 ――これ以下、未確認の話になるが、雑談として聞いていただければ幸いであるーー

 ・・・という話を友人たちの間でしていたら、「ジェイソンの耳事件」というのが18世紀にあったと聞いた。細かいところは違っているかもしれないが、その昔、英国人ジェイソン氏がフランスにいて、何らかの犯罪か侮辱行為かに巻き込まれ、片方の耳を切り取られたそうである。ジェイソン氏が英国に戻り、事情を説明すると、英国はフランスに宣戦布告したそうである。

 ある意味ではドンキホーテ的・漫画チックな展開かもしれないが、ここまでの気概がほしいものだが・・・。やり方は宣戦布告でなくて別のやり方で。

 オブザーバー紙の社説を読むと、最後にこう書いてある。(17日付)

 「本当の長期的見方によると、法の支配を支持することは『広い意味の公的利益』と対立しない。法の支配は、政府に合法性を与えるものであり、これがないと、何が国の安全保障で何がそうでないかについて人に指図するとき、全く権威がないことになる」。


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 (アルジャジーラ英語、フランス24などのこれまでの分析を集めたものを明日以降、出していきます。)




 
by polimediauk | 2006-12-18 08:55 | 新聞業界