小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


by polimediauk

フセイン処刑の反応


 フセイン処刑の反応で、アラブ諸国、欧州、米国とそれぞれ反応が随分異なる。もちろん、イラク国民にとってどうなのか、イラク国民はどうしたいのか、が一番肝要なのだろうが。

 ヤフージャパンのニュースを見るだけで各地域の反応が読めるが、欧州とアラブの例を記録として貼り付けておきたい。

フセイン死刑執行>欧州の反応は複雑…原則は死刑反対だが
12月30日20時1分配信 毎日新聞
【ロンドン小松浩】フセイン元大統領の死刑執行に対する欧州側の反応は複雑だ。欧州連合(EU)は死刑制度の廃止を加盟条件にしており、EUはいかなる死刑にも反対の立場を崩せない。その一方で、国家再建途上にあるイラクの主権を尊重すべきだとの声も強い。欧州は「死刑反対」の原則論を掲げて米国とは一線を画しつつ、イラク当局への厳しい批判はできるだけ避けることでバランスを取っている。
 06年後半のEU議長国フィンランドは元大統領に死刑判決が下された11月、声明で「EUはあらゆる裁判、いかなる条件下の死刑にも反対している。フセイン元大統領であっても死刑は執行すべきではない」と強調していた。これはEUの共通認識を代弁したものであり、欧州は死刑執行にも同様の立場を示す。
 ただ、今回の死刑確定後の欧州主要国の反応には、イラク戦争への対応の違いがからみ微妙な温度差も生じている。
 米国と最も親密な関係にある英国は、外務省報道官が「死刑反対の我々の立場は不変だが、これは完全にイラク人が決める問題だ」と、異議や疑念ははさまなかった。しかし親米ベルルスコーニ政権を破って政権の座についたイタリアのプロディ首相は「イタリア政府も私個人も、どんな場合でも死刑には強く反対する」と繰り返し表明。英国とは異なり、執行反対を明言した。
 英国に本拠を置くアムネスティ・インターナショナルなど国際人権団体は、政治的思惑で進められた欠陥裁判として元大統領への死刑に反対しており、執行されたことに大きな失望を示している。人権や人道主義を基盤の価値とする欧州では、多くの政府や政治指導者がそうした見解を共有する。


死刑執行「最高の贈り物」「性急」…中東の反応複雑
12月30日21時33分配信 読売新聞
【カイロ=岡本道郎】イラク元大統領フセインの死刑執行が、巡礼明けの犠牲祭入りと重なった中東アラブ世界は、中東を幾多の混乱に陥れた独裁者の最期を複雑な表情で受け止めた。
 1990年、フセインのイラク軍の侵攻を受け、半年間にわたり占領されたクウェートは、公式には、サバハ社会問題労働相が「死刑執行はイラクの国内問題」と淡々とした声明を発表したが、アジミ元情報相はロイター通信に対し、「人道に対する犠牲祭最高の贈り物だ」と歓迎。一方、イラク戦争回避に尽力したアラブ首長国連邦(UAE)の政府高官はAFP通信に対し、「イラクの兄弟が苦しみのページを過去のものとして、暴力をやめ、国民融和に向かうことを望む」と語った。



 現在、BBCの英国ニュースのウエブサイトはこの件をトップニュースとして大々的に出している。私はこのページをネットを開くときの最初のページとしていており、開くたびに、いつもドキッとしてしまう。怖く、複雑な思いがするトップ面だ。メディアがこういうところ(人が死ぬ一歩手前)まで画像として出し、それを世界中の人が茶の間、勉強部屋、寝室で見れてしまうのだ。(もちろん今回に限ったことではないが。)英国とイラクの関わり、フセインと米英政府の過去の関わりなどに思いをはせても、複雑だ。

 http://news.bbc.co.uk/
by polimediauk | 2006-12-30 21:56 | イラク