小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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風刺画論争が拡大してから1年


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         (昨年2月のロンドンでのデモの様子)

 何度もしつこく書いてきたが、デンマークの風刺画掲載が大きな論争として世界中に波紋を広げてからそろそろ1年が経つ。2006年1月、ノルウエーの「マガジネット」が再掲載したのがきっかけだった。2月になって、フランスやドイツの新聞もこれにならい、どんどん広がっていった。

 現在デンマークではどのような状況になっているのかを、インタビューを中心として、オンラインの「ベリタ」に出す予定で、今日からその第1回が始まった。(ご興味のある方はwww.nikkanberita.com)昨年2月、9月、10月、そして今年になってからも取材を続けた分をまとめたものだ。デンマークの話が中心だが、話を世界に広げると、様々な見方ができて、一人では難しかった。イスラム教世界対欧州社会(=キリスト教世界)の価値観の衝突、という面もあったわけだが、これはデンマークだけに固有の問題ではない。今後もきっと何らかの形で同様の現象があるだろう。

 「論争」というレベルだけでなく、未だに事件の影響下にいる人たちもいる。

 例えば、イエーメンでは、イエーメン・オブザーバー紙に風刺画を再掲載した(昨年2月時点で)編集長ムハンマド・アッサディ氏が、イスラム教を侮辱した罪で、罰金の支払いを命じられている。これが昨年の12月。11月には、また別のイエーメン紙(アルライアラアーム紙)の編集者カマル・アルアラフィ氏が、1年の禁固刑を命じられている。氏は控訴の予定であるという。(BBC)

 私にとってショッキングだったのは、ある英国人男性が、昨年2月の風刺画抗議デモに参加して、「殺せ、デンマーク人を殺せ」と叫んでいたために、有罪となったことだ。バーミンガムのウムラン・ジャベドという男性で、デンマーク大使館前の抗議デモに参加し、「デンマークを、米国を爆撃せよ」と言っていたので、人種偏見を扇動したことになった。本人はスローガンとして言っていただけで、今は後悔しているというが。確かに怖いことを言っていたわけだが・・・。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/6235279.stm
 
by polimediauk | 2007-01-06 23:08 | 欧州表現の自由