小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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NHK問題判決 雑感 BBC


 前回のNHK問題の判決結果に対し、いろいろコメントを頂いた。それぞれに重いコメントで、考えさせられた。

 再度裁判所の判決部分を読んでみた。

 法律に詳しい人・専門家から見たら又違うのだろうが、毎日に出ていた判決部分を読んだ限りでは、この一連の事件で、とかげの尻尾きりのような構図が浮かぶ。つまり、トップは政治家たちだ。

 何故トップは政治家だ、政治家にまず責任があるのではないか?と考えるのかを説明するのは難しい。

 実際に手を下したのはNHKの人で、これに関する裁判・判決があったのはこれはこれとした場合でも、「番組作りは公平・中立であるようにとの発言」をした人・政治家の責任はどうなるのか?という不思議感は消えない。

 繰り返しになるが、《説明義務違反と不法行為》の判決の箇所で、「番組制作者や取材者は特段の事情がある時に限り、内容や変更を取材対象者に説明する義務を負う」となって、「特段の事情」と但し書きがあるにせよ、これも変だなあ・・・という思いがする。

 訴えた側に反対の立場あるいは支持の立場をとっているわけでなく、前代未聞の判決に驚いた、といったところだ。

 あまりにも多くのメディア上の問題が含まれている件なので(言論・報道・表現の自由、編集権、取材された側の権利+タブーとされているトピックをどう扱うか)、すぐに答えが出ない。

 いずれにせよ、鍵つきコメントを寄せてくださった方が「もう一度再放送」と書かれていたが、今後の訴訟の行方は別としても、視聴率を払っている人(+払っていない人)のためにも+議論を続けるためにも、(1)今一度再放送するか、(2)いつでも見て、考えたり議論できるようにウエブ上、あるいはDVDを入手できるようにするか、(3)上映会を頻繁に開く、などの機会があっても良いように思った。

 この番組が取り上げたトピック(慰安婦、戦後の責任、天皇など)は、もちろん日本人であれば(そして日本のことを知っている多くの人が)知っているように、タブーというか、論争を呼ぶ、センシティブな問題で、なかなか自由には議論・番組作りがしづらい。もっと自由に議論できるようにならないか、と思う。

 英国でこの裁判がどう報道されたのか?ざっと見たところで私が見つけたのはBBCだけだった。

 クリス・ホッジ記者のレポート(1月29日付、電子版)、第3段落目に、「現在の首相を含めた政府高官の介入で、NHKが変更を加えた」とある。5段落目に、日本では「昭和天皇に関するどんな批判も論争を呼ぶ」。さらに、「放送前に安部現首相がNHKに対し、内容の変更を求めた。それは、番組内容が偏向していたと安部氏が思ったからだ」。「安部氏は番組に関して不満を述べたのは認めているが、NHKに圧力をかけていないと主張してきた」。

 レポートは淡々と書かれてあるが、首相の関与が疑われていた事件、という捉え方だ。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/asia-pacific/6310291.stm

(追記)

 日刊ベリタに無料記事でこの件の分析が出ている。ご関心のある方は。

http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200702011913264

 これを読むと、日本ではNHKに対する反感が相当強いことが分かる。政治家にも責任がある、と上に書いたが、その上は?と考えると、国民(一部かもしれない)が見えるように思う。政治家は一定の支持者の支援を減らしたくないから、「中立に」という話をNHK制作者側にするのだろう。メディアの問題からは離れるが、オリジナルの番組をそのままでは受け入れられない存在がまだまだ強い、ということのなのか、と。この点の方が気になる。
by polimediauk | 2007-02-01 08:43 | 日本関連