小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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英王室 パパラッチ報道の自粛 ケイト・ミドルトンさん


 2004年4月、スイスへのスキー旅行中に撮られたウイリアム英王子とのツーショットで、王子の恋人として広く知られるようになった、ケイト・ミドルトンさん。英国の新聞、テレビにミドルトンさんの映像がひんぱんに登場するようになった。特に昨年末から今年にかけて過熱化した。

 ところが、ミドルトンさんの25歳の誕生日(1月9日)をピークに、大衆紙を中心に報道自粛の動きが相次き、パパラッチの撮った写真の使用停止を各社が宣言した。ミドルトンさんの弁護士側の自粛リクエストが功を奏したともいえるが、ダイアナ元英皇太子妃の例を出すまでもなく、英国王室報道と言えば世界中で大きな需要のあるマーケット。何故一斉に報道自粛措置に出たのか?モラルを守るため?それとも??

 ・・・という部分を1月30日付「新聞協会報」に書いた。以下にその原稿を貼り付けたい。

 また、ケイト・ミドルトンさんが誰なのか?を知りたい方は、欧州で発行されている「ニュースダイジェスト」英国版1月25日付けのWEEKLY EYEに詳しい。以下のアドレスから過去のE BOOKをたどると読める。

http://www.news-digest.co.uk/news/component/option,com_wrapper/Itemid,25/

パパラッチ写真 英紙が使用自粛
脳裏に残る 元妃事故死
 -厳しい司法判断の流れも影響

 英大衆紙は、パパラッチが撮影したウィリアム王子の恋人、ケイト・ミドルトンさんの写真の掲載を自粛している。この判断の背景には、王子が母、ダイアナ元皇太子妃が亡くなった自動車事故にパパラッチが関係しており、販売促進にはミドルトンさんに対する読者の同情心を重視した方がよいとのメディア側の思惑や、近年のプライバシー侵害を巡る訴訟の動きもある。

 ミドルトンさんへの取材攻勢は昨年末から年頭にかけ、王子との婚約が噂されたことで過熱した。弁護士が報道苦情処理委員会(PCC)にプライバシー侵害で申し立てると言明し、訴訟の可能性も報じられた。

 取材攻勢が最も過熱した1月9日、王室の広報は「王子は何よりも、パパラッチがミドルトンさんに嫌がらせをしないことを望む」とする声明を発表した。これと前後し、ニューズ・インターナショナル社をはじめ大手メディアは相次いで、パパラッチの写真を使用しないと宣言した。

  この理由について、1月14日付のインディペンデント・オン・サンデー紙の中で、PCCのメーヤー委員長は「王子ほどパパラッチを非難できる人物はいない」と話す。王子は1997年、母のダイアナ元妃を自動車事故で亡くした。

 その原因をロンドン警視庁は、運転手の飲酒運転とした上で、追跡していたパパラッチにも責任があるとした。取材が過熱した1月上旬、元妃の事故死の原因を究明するため王室検視官が審問を始めたことも手伝い、英国民はミドルトンさんに元妃の姿を重ねた。

 一方、同紙の分析によると、ニューズ社がパパラッチ写真の掲載自粛を決断したのは、婚約が噂だけだったことや、国民のミドルトンさんへの同情心を重視したためだという。読者の感情つまり販売促進を第一に置いたとすれば、英新聞業界の競争の激しさの一端をうかがわせて興味深い。

 1月9日付BBC(電子版)は、「ミドルトンさん側がプライバシー侵害を訴えていれば、パパラッチの立ち入り禁止令が出ていただろう」と予測。ニューズ社をはじめメディア側の自粛は、近年のプライバシー侵害訴訟の動きも加味したと言う。欧州人権裁判所は2004年、モナコのキャロライン王妃がドイツのパパラッチを訴えたプライバシー侵害訴訟で、公人でも私生活を守る権利があると判断を示している。

  パパラッチ自身は「自分たちがやらなければ、他国のパパラッチがやるだけだ」「カメラ付き携帯電話を持っている人は誰でもパパラッチになれる」と本音をもらす。

 この報道自粛がいつまで続くかは不明だ。王子とミドルトンさんが婚約すれば、他社との競争や販売促進のため、公共性を理由にした過熱取材が繰り返される可能性も否定できない。

 1月13日付のデーリー・テレグラフ紙は、有名人の写真を売買する業界が入手方法を問わない点は、ダイアナ元妃の時代から全く変わっていないし、これからも変わらないと述べている。


by polimediauk | 2007-02-01 20:39 | 新聞業界