雅子妃の本と謝罪

昨日、ベリタで雅子妃のスクープが!と書いたが、雅子妃のことをオーストラリアの作家が本にし、外務省が謝罪を要求したという一件だったが、日本の新聞では出ているのだろうか?今朝ヤフーなどでみた限りは見つからなかったのだが。(追記:後で見つけました。毎日新聞など。共同でも出たと聞きました。)
グーグルの英語版を見ると、ロシア、インド、オーストラリア、英国、などなど世界中のメディアが報道している。
ベリタの記事は筆者に取材した貴重なものだったが(ご興味のある方はご覧いただきたい)、15日付テレグラフにも特派員伝で概要が載っていた。
それによると、日本政府は作家の出身国オーストラリア政府に抗議文を送った、とある。雅子妃の本は「尊敬の念を欠き、歪曲している」として、謝罪を要求した。
オーストラリアにある日本大使館を通じての干渉に、オーストラリア人の作家で元東京のジャーナリストだったベン・ヒルズ氏は、謝罪をすることを拒否し、日本政府が自分の著作を検閲しようとしている、と述べたという。
雅子皇太子妃は、43歳で、うつ病に悩み、2003年12月から皇室の公務にほとんど参加していない。
ヒルズ氏は、本のサブタイトルで「菊の王座の囚人」と書き、1993年、皇室に入ってから雅子妃が受けた扱いのおかげで病気になった、としている。
オックスフォード大学やハーバード大学で教育を受けた雅子妃が皇太子とともに行うことを願っていた、目立つ公務を行うことを皇室側は否定したという。その代わりに、ほんの2,3の海外訪問や後継者としての男の子を産むための圧力に苦しんだ、と。
日本のジャーナリストたちは、伝統的に皇室を畏敬の念に満ちた口調で報道する。非常に敬語や丁寧な言葉遣いで記事を書く。エリザベス女王を描いた英国の映画「ザ・クイーン」でのような描写は考えられない。皇室の物まね芸人もいない。
オーストラリアと米国で出版されたがまだ英国では出版されていないヒルズ氏の本は、雅子妃の結婚の「悲劇的な」物語は、「ダイアナ妃の試練をまるでピクニックであるかのように思わせる」。
日本版は現在準備中。日本のアマゾンのウエブサイトで、輸入英語版がベストセラーになっている。
王室について批判的な・抽象的な・プライバシー侵害の報道が出て、王室側(広報)が何らかの抗議をする、異議を唱える、というのは、英国でもある。しかし、王室側はよっぽどでないとこうした行動をとらない。テレビ番組を見ても、私自身驚くほど失礼な解釈がたくさんあるが、次第に英国民はこういう事態に慣れていったのではないかと思う。(私自身は度を越していると感じるけれども、これは私が日本人のせいか。)
日本の場合は皇室の位置が英国や欧州の王室の位置とはずいぶん違うように思う。それにしても、政府(外務省)が抗議・・・というのは、どう考えたらいいのだろう。
この件は日本の関係者にとっては非常に重い事件かもしれないが、海外からすると、本が何を書いたか、というよりも、日本では皇室に関する報道や表現の自由度が少ないこと、一種のタブーになる面があること、そのタブーに触れられたと感じた日本政府側が行動を起こしたことが、興味の焦点になっているように思う。政府側の行動自体が興味を引いている。「それほど、こだわることなのか」と。
日本に限らず、どの国の人でも、海外・外国の人から、自国内で大切に思っていることをネガティブに語られたら、いやだろうな、と思う。それでも、出てしまったものをとめることはできないだろう。(カザフスタン共和国や米国人が「ボラト」という英映画で散々馬鹿にされたことを思い出す。)いずれにせよ、日本語版が無事出ることを願っている。
BBCでも報道されていた。
http://www.bbc.co.uk/worldservice/learningenglish/newsenglish/witn/2007/02/070214_japan_princess.shtml