前保守党首のインタビュー・「ダイジェスト」から +北アイルランド
英国在住日本人向け週刊誌「英国ニュース・ダイジェスト」の最新号に、前保守党党首イアン・ダンカン・スミス氏のインタビューが載っている。
http://www.news-digest.co.uk/news/component/option,com_wrapper/Itemid,25/

昨晩は、フロントラインクラブ Frontline Clubというところで北アイルランドの政治の将来に関する集まりに行っていた。前にもこのクラブのことは書いたが、もし英国のメディア(テレビ)の研究をしている方がいたら、おすすめの場所である。会合にはメンバーでなくても出られるが、2月から参加費が7ポンド(1500円ぐらい)になった。(ちょっと高くていやであるが。)普段大手メディアでは出ないような話を、現役あるいは元テレビのジャーナリストたちから聞ける。
「北アイルランド」に関するパネル・ディスカッションは、ウエブで同時中継されたと聞く。司会はムスリム・テロの番組を近年作っているジャーナリスト、ピーター・テイラー氏。BBCのドキュメンタリー番組「パノラマ」(今は大分縮小した)の枠で北アイルランド問題をレポートしてきたジョン・ウエア氏、日曜紙「オブザーバー」の記者、北アイルランドのシンフェイン党(カトリック側)とDUP党(プロテスタント系)の代表が出席した。
アイルランド半島の北の一部は「英領北アイルランド」となっているが、自治政府が2002年から停止している。再度立ち上げようと話し合いが続いているが、対立しているカトリック系対プロテスタント系のいがみあいはなかなかおさまらず、うまくいっていない。
政党の代表の2人の話が全くかみ合わないというか、延々と堂々巡りをしているので、一瞬暗澹たる気持ちになった。そして、急に恐ろしくなった。それは、元はといえば英国というかイングランドがアイルランド半島に侵攻したことからこの対立の根があり、もう何百年も前のことなのに未だに続いている。
しかし、話が進むうちに、会場にいた人のほとんどが北アイルランドの将来に明るい期待を抱くようになり、終了した。雰囲気が変わるきっかけとなったのは、「状況はずい分変わっている、良くなっている、もし12年前にIRA(カトリック側の武装組織)が武器を手放すといったら、誰も信じなかっただろう。今はこれが現実になりつつある」とウエア氏が言ったことなど、様々なポジティブな動きが指摘されたからだ。「氷河が溶けるスピードで」、物事は非常にゆっくりとだが、進んでいる、と。
参加者はあまり多くなく、なぜか?という疑問も呈された。「1998年の和平合意が出てから、みんながもう問題は解決した、と思っているからではないか?」とテイラー氏。
一つ、「みんなが知っているけど、あえてこじ開けようとしない問題」として、情報機関の関わりがあげられた。それは、1月頃、北アイルランドの警察オンブズマンが、一時期、警察側とロイヤリスト(急進プロテスタントたち、と言っていいだろうか)たちの「ギャング」との間で、癒着があった、という報告書をだしたのだけれど(警察がギャングを情報源として使う代わりに、犯罪をおかしても罰しない)、こういうことは、「北アイルランドでは誰もがやっている」という。そこで、ウエア氏が言うには、「北アイルランドで一番自由に活動ができて、すべての人の情報をもっているのは、MI5(英国情報機関)だ」と。「誰しもが知っていることだけど、あまりにも明らかなことなので、逆に気づかない」。
そこでパネリストの間では、「警察との癒着の件で、正義が行われる、つまり違法行為をした人が投獄されるとか、裁判で裁かれるとか、そういうことは大規模では起きない(かもしれない)」というのが結論だった。つまり、最終的に一番悪いのは英政府である、ということで終わったのだった。
北アイルランドでは自治政府再開のために3月7日選挙が行われることになっている。3月末から政府再開を目指している。パネリストの一人は「3月末というのは間に合わないかもしれないが、秋ぐらいまでには再開されるのでは」としていた。