小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


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「常識が勝った」ガーディアンの勝利?


「常識が勝った」ガーディアンの勝利?_c0016826_2472614.jpg 先週の金曜日、英上院資金疑惑に関し、BBCがあるニュースを報道したところ、報道内容が「捜査の進展に関わる」ということで、裁判所が放送差し止めをした、という出来事があった。

 この疑惑で裁判所から報道差し止めが入るのは初めてで、この件を裁判所に持ち込んだのがゴールドスミス法務長官だった。

 金曜の夜のBBCのニュース番組で、ロビンソン政治記者は、「何もいえない」として、訳のわからない説明をしたものだった。

 この件は週末から週明けにかけて、大きな展開があった。新聞各社がそれぞれこのニュースは一体何か?、差し止め命令が出るとは相当なニュースに違いない、とかなり動いたようだ。

 そして、昨日、月曜の夜のことだ。ガーディアン紙が記事のドラフトを書き、これを関係者に照会。その関係者(警察など)がまた法務長官に連絡し、またまた裁判沙汰になりそうになったのだ。

 ところが、今回、差し止め命令にはならなかった。それが何と、既に印刷が済み、もう配られつつあったからなのだ。一時は、配達のトラック運転手の携帯に連絡を取ってやめさせることはできないのか?という会話も出たという。

 そして、BBCが出したいと思っていた記事がガーディアンに、今日付けでトップ記事で出た。BBCへの差止め令は解除された。だって、もう出ているのだから。

 ・・・何故こうした経緯を私が知っているのか?それはBBCのラジオ番組やガーディアンのウエブがラスブリジャー編集長の記事、インタビュー記事(オーディオクリップ)などで詳しく説明しているからだ。

 結局、もしメディア戦争という面でだけ上院資金疑惑を見たら、今回、ガーディアンが勝ったのかな、と思う。スクープを取られたBBCはくやしくて歯切しりだろう。

 ところで、ラスブリジャー編集長はサイト上の「コメントはただ」というコーナーの自分のブログで、このくだりを英国のメディアに関わる法律にからめて書いている。さらっと見たところでは、関連法にリンクがはってあって、こういうことを研究している人にとっては勉強になりそうだ。

 このブログには読者からの様々な意見も載っている。必ずしも誉めているコメントばかりではない。スクープを取った後でも、読者からの様々なコメントにさらされる・・・。シンドイものだと想像するが、今日が大ハッピーの日であることに変わりはないだろう。


http://media.guardian.co.uk/

http://commentisfree.guardian.co.uk/alan_rusbridger/2007/03/common_sense_won_the_day.html
by polimediauk | 2007-03-07 02:50 | 政治とメディア