小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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ホリエモン実刑判決 英国から見た光景


 16日、こちらの時間の朝早く、ホリエモンの実刑判決の件で、アルジャジーラ英語(クアラルンプール)から電話を受けた。その日東京で判決が下っていたことを知らず、「ある意味では罰のような意味合いもあったのではないか」、「日本の伝統的ビジネス慣習にアンチであった存在だった」などと話すうちに、「日本のビジネスの何を持って問題としていたのか」と聞かれ、服装以外にとっさには浮かばず(!)、「2分後にかけ直してくれ」と言わざるを得なかった。

 急いでネットで見てみると、ものすごい大きなニュースになっていて、英国でもロイターやBBCが詳しく伝えていることが分かった。

 ある日本のサイトでは、大きな同情というか、「かわいそう」「実刑が下るとは・・・」という声があって、「日興事件」との比較があった。

 今回の実刑判決に関する衝撃、分析、などなどは日本にいる方が一番良く分かるだろうと思う。翌日付の新聞でもガーディアンを始めとして書かれており、一通り結構詳しく書かれているという印象を持った。ただし、日興との関連に触れた記事はないようだった。(そこまで書いたら詳しすぎるのかもしれない。)プロレスラーの格好(?)になった数人が堀江氏の仮面をかぶっている、おかしな写真がよく使われていた。

 日興の不正会計問題は既に日本にいる方は知っている通り、昨年末不正会計問題が発覚して会長、社長らが辞任。東証上場がキャンセルされるかどうか?というところまでいったが、そのままになったと。日興コーデュアルのケースと堀江氏のケースが全く同じとは思えないが、状況が似ている、という指摘を日本語のウエブの何箇所かで見た。コーデュアルの場合、逮捕者なしで実刑もなしらしかった。日興の件をこの時まで知らなかったので、日興の件=堀江氏の件つまりは、日本の司法制度が堀江氏に不公平だった・・・と直結の結論を出すことはできないのだが、「疑念」とまでは言えるかもしれないなと思い、さらに資料を集めていた。

 日本の新聞報道をウエブで見ただけだが、「反省の色が見られない」など、堀江氏側の態度が問題になっていることに衝撃を覚えた。罪を認めなかったのも実刑につながった、という説明もどこかにあった。ホワイトカラーの犯罪の場合、罪を認めた上で、執行猶予をつけて、実際に刑務所に行かなくてすむようにする、というのが多くの場合だ、という説明も。(今日、ロンドン警視庁の元幹部だった人に話を聞いたら、容疑者の「態度が悪い」ということで有罪になることは、英国でも当たり前だそうである。)

 フィナンシャルタイムズは、自分たちのラインがあるのか、前日までの分析・報道では、(実刑が下るなど、堀江氏に処罰が下れば)これで日本の経済の合理化の動きが遅れてしまう、残念だ」という論調が目に付いた。

 例えば、3月14日付のジョン・プレンダー氏の記事だ。堀江氏は、「会社が、伝統的に、経営者や従業員を株主よりも重視するように運営されている」日本で、「西欧的な資本主義」のビジネスをやる人物とされた、と紹介。

 ここからが日本経済の分析の話に移るのだが、プレンダー氏は、「過剰投資とグローバルなスタンダードからすれば貧弱なリターン」となりがちな日本のビジネスを変えるには、さらなる西欧式のコーポレートガバナンス(企業統治)が必要だ、と見ている。

 様々な説明があって、最後の方に、「痛みのある改革の期間の後に、さらなる変化をしようという日本の意欲は限定されている。コーポレートガバナンスは多くの経営陣にとって危険な輸入品だと今後も見なされるだろう。スキャンダルに見舞われた株主優先活動をした堀江氏や村上氏にもあまり同情心は起きていない」とする文章があった。この記事は堀江氏に関してのものではないが、FTは堀江氏に関して好意的な記事を多く出し続けている。

 アルジャジーラ・クアラルンプールからまた電話があり、「何故エスタブリッシュメントから嫌われたのか?」の理由を聞かれ、通常のビジネススーツでなく軽装を通していたこと、若くして起業家として成功したこと、株式分割・交換を行い、ネット企業を始めとして様々な企業を買収してビジネスを大きくしたこと、ビジネスでリスクをとったこと、既存の企業系列の枠組みを超えて大手の既存ビジネスを買収の対象にしたこと、敵対的買収は日本ではポピュラーではない、などなどを話したが、「・・・それがどうして反感を買うか?」と逆に聞かれ、さらに説明。堀江氏のことを説明するには、逆に「日本とは何か?」を説明することでもあるなあと実感。(後でメディアの話=「ニュースのランク付けをしないこと」もあったと思ったが、とっさには頭に浮かばなかった。)

 午後ロンドンのスタジオで数分話すことになり、出かけた。着いてみると、既にクアラルンプールの支局で、堀江氏が法廷に入るところなどを映した、よく出来たビデオが出来ていた。放送の15分前にスタジオに入り、クリップを見てから、クアラルンプールのキャスターが、イアホーンを通じて質問をするのだが、何故か音が非常に小さい。とりあえず「堀江氏は英国で言うと、(バージンの)リチャード・ブランソンかもしれない」、「ネット上では同情する声もあった」などと説明。3,4の質問で、あっという間に終わった。

 私が見た限りでは英語メディアの堀江氏実刑判決報道は、それぞれよく出来ているように思ったけれど、ホリエモン憎し、あるいは未だに支援、怒り、などなどの熱気は、日本にいる人でなければ到底分からないだろうなあと感じていた。






 
by polimediauk | 2007-03-19 06:01 | 日本関連