小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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ブレア氏、明日退任予定発表へ


 ブレア英首相の退任予定発表が、明日に迫った。現在のところ、明日の朝10時(日本時間の午後6時)官邸で発表するか、昼(日本の夜8時から9時頃)選挙区のセジフィールドかで、会見がある。

 ブレア氏に関する雑感を少し書きたい。日本でのブレア氏の評価は今でも高いと想像するが、英国では、まず人々の頭に浮かぶのはイラク戦争であろうと思う。「嘘をつかれた」という思いはなかなか消えない。北アイルランドの和平合意達成が自他共に認める最大の功績だろうか。今日の紙面では、インディペンデント紙で「奇跡」と書かれていた。

 10年の首相在位を振り返ると、一体何を達成したのか?経済が好調だったので、そういう意味でいろいろ成し遂げたと挙げることもできるのだろうが、「サッチャリズム」に該当するような大きな社会変革を成し遂げたのか、高い信念があったのかどうかというと、どうなのだろうか。「第3の道」というのが有名になったが、これも心から信じていなかったという説もある。

 週末からブレア氏の10年を振り返る記事が新聞に結構載るようになり、まとめて少し読んでみると、「信念のある首相ではなかった」、「内閣や官僚を信頼せず、自分たちの仲間内だけで物事を決めていた」、「どう見せるかに力を入れた」、「学生時代は全く政治に興味がなかった」などなど。タイムズ紙のコラムニスト、マシュー・ペリー氏がBBCのラジオ4で言っていたのだが、「ブレア氏がやってきたことは、前の政権の政策を継続しただけだ。たいしたことをしていない」。他の出演者は驚いていたけれど、「退任後、本当に自分の興味を持つことに、本気で取り組んでみたら?とブレア氏に言いたい」と述べていた。かなりひねた見方のようにも聞こえるとは思うが、何せ、これまで出版されたブレア氏の自伝を読んだコラムニスト(オブザーバー紙)も同様のことを言っているので、一理あるのかもしれない。

 ガーディアン紙のカメラマンでダン・チャンという人がいる。何度か写真家賞をとっているカメラマンでブログも書く。前に会う機会があって、ブレア氏を撮った時の印象を聞いてみた。「どんなに写真を撮っても、どんな人物か読めない人だった。目を覗き込んだら、空っぽだった」。これも驚きの発言だが、今いろいろ考えると、分かるような気がしないでもない。イラク戦争も含め、何がブレア氏の思想面での原動力だったのか?この答えはなかなかでない。

 アンケートを見ると、国民の大部分はブレア氏に信頼を置いていないが、それでも、「良い首相だった」と思う人が多いようだ。

ー議会でのパフォーマンスは?

  月曜日のBBCのラジオ番組Today in Parliament (ウエブサイトから番組を聴けるようになっている。来週の月曜日には更新されてしまうが)が、ブレア氏の議会でのパフォーマンスを振り返っていた。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/programmes/bbc_parliament/3081534.stm

 最初にブレア議員が議会で発言したのは1983年。英国北部のアクセント+エスチュアリー英語(ロンドンの今風英語の一つ)が突如混じる話し方、と分析されている。

 議会での討論をあまり好まないタイプだったという。議会での討論よりも、テレビやラジオ、スピーチなどで自分の言いたいことを伝えるのを好んだという。これはおそらく、ニュー・レイバーの議員たちがそうだった可能性もある。

 また、首相になってからは、法案への採決に加わった回数が、他の首相と比べても非常に少ないという。それまで週に2回あった、首相の「クエスチョン・タイム」という時間(首相に与野党の議員が質問する形をとる)も、週1回になってしまった。

  しかし、2003年3月、イラク開戦直前、議員が採決をする前のスピーチは、「最高」のレベル(労働党トニー・ライト議員)だった。私自身もこのときのスピーチの記憶がある。「今こそ行動を起こすべきだ、英国がリードするべきだ」という、非常に感動的なスピーチは誰が聞いても心が熱くなるほどだ。今から考えると、舞台劇の名場面の1つのような感じもあった。(この時の様子もこの番組でちらっと放送される。BBCのウエブサイトを開けば、どこかでこの時のスピーチのみが聞けそうである。)戦争の前に議会で参戦すべきかどうかを採決にかける、というのもこれがはじめてだったらしい。

 労働党の党首だが、中身は保守党(ミドルクラス、オックスフォード大学出身)といわれてきたブレア氏。

 英紙の報道によると、ブラウン財務相が首相になったら、毎月開かれていた首相会見はなくなるか、ぐっと回数が減るようだ。毎月、1時間、ジャーナリストたちと過ごしてきたブレア氏。なかなか、これを維持できる人はいない。(ブラウン氏がどんな首相になるのか、どんな政策を打ち出すのか、現時点でははっきりとしていない。英紙の政治記者たちがそう書いている。しかし、何かしらあっと驚くことをするのでは、とも言われている。英中央銀行を政府から独立させたように。)

 明日の会見だが、あくまで退任予定日の発表であって、明日退任するわけではない。6月末頃退任し、末から7月頭にかけて新しい首相が活動を開始する見込みだ。

 退任後は何をするのか?に関しては、「英国ニュースダイジェスト」のサイトが詳しい。(5月10日号 ウイークリーアイ)

http://www.news-digest.co.uk/news/component/option,com_wrapper/Itemid,25/
by polimediauk | 2007-05-10 02:54 | 政治とメディア