ブレア首相、6月27日に退任
「自分が正しいと思ったことを実行した」
ブレア首相が、英中部セジフィールドの選挙区で会見をし、6月27日で労働党首を辞任し、首相を退任する、と発表した。
テレビで様子を見ると、会場には労働党支持者・ブレア支持者で一杯だった。ブレア氏が出てくるまでに、音楽が流れ、出席者の数人が手で拍子をとるなど、一種のコンサート状態。「ありがとう」と大きく掲げたプラカードを掲げた人もいた。
自分の最高の支持者たちの前で、拍手を受けながら、10年間(党首としては13年)を振り返る・・・何とパーフェクトな設定だろうか、自分を最高のイメージで出したい場合は。ドラマというか、一種の演劇の1場面のようだった。
ブレア氏が出てくると、大きな拍手。ちょっと打ち解けて仲間内のジョークなどを言いながら、首相としての在位を振り返った。最後の方の決めせりふは、「自分が正しいと思ったことをやった」。言葉をかみ締めるように話し、大見得を切ったような感じで、歌舞伎チックでもあった。
見ているうちに、これは大きなプロパガンダだなあと思った。一種のショーと言ってもいい。この会見の様子は世界中で流れるはずだ。自分が好意的に見える最高の舞台を用意し、スピーチを行ったブレア氏。どこでいつこの会見をするかは昨日メディアに一斉に流れたので、英メディアは十分な準備をすることができた。BBCウエブサイトも「ブレアの10年」真っ盛りの報道だ。ずっと準備してきたのだろう。http://news.bbc.co.uk/
スピーチの途中で、「9・11テロで3000人が亡くなった。ブッシュ大統領とともに戦うことになった」というようなくだりがあった。「3000人」という言葉が響いた。何しろ、イラク戦争では2003年以降数十万人(65万という説もある)もが亡くなったと聞く。罪深いことに思えて仕方なかった。
また、その前に、「英国は介入する国」になった、というくだりも。これは誇ることなのだろうか?
内政にもいろいろ触れたが、ヤフージャパンのニュースを見ると、日本の新聞各紙が詳しく報道しているようだ。1つ、子供の養育ケア(マザー・ケア、母親が外に働きに出かけられるように、政府が出すお金)も欧州1になった、といっていたが、英国は働く母親への支援が少ないことで有名というか、この点はかなり大きな不満の1つになっているはずで、???とも思ったけれど、数字だけ比較したら欧州で最も大きいのかもしれない。
さて、在任中の特徴は?コメントを下さった方も少し触れていたが、右・左の境界線がぼやけた点をまず考えてもいいのかもしれない。
ブラウン財務相(次期首相候補)のアドバイザーだったデレク・スコット氏によると、ブレア政権というと有名な「第3の道」だけれど、これは実は「あまり実体のないものだった」という。
「第3の道」とは? 毎日新聞(10日付け)によると、市場経済を重視する改良型社会民主主義のこと。
デレク・スコット氏によると、「現労働党政権の経済政策はその前の保守党政権の継続と言っていい。第3の道を提唱したアントニー・ギデンズ教授の言うことも、たいしたことない。ブレア政権が第3の道といったのは、便宜上。中身はあってないようなものだった」。
また、ブレア・ブラウン政権下で経済が好調だったのは、「サッチャー経済の効果が出てきたから、英中央銀行を独立化させたから、国際的投資環境の変化、欧州為替相場制度をから抜けたこと」が要因だと分析。ブレア政権は形を変えた保守党政権だった、ブレア氏はサッチャーの後継者などという見方を裏書した発言となった。
今日は一日ブレア氏の話題で持ちきりだろう。明日の紙面も。ブレア氏にとって、これほど痛快なことはないかもしれない。