小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


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欧州・アメリカのフリーペーパー 2


対抗策

 続けて、日本新聞協会発行の「新聞研究1月号」から、廣瀬英彦さんの、欧州とアメリカにおけるフリーペーパーの記事(「若者をとらえ、都市に浸透」から、一部を紹介したい。

 欧州では日刊フリーペーパーが人気で、いわば「戦争」が起きている、ということだった。そこで、フリーペーパーの進出に対して既存の新聞はどのように対応しているのか?廣瀬氏によると、(1)排斥、(2)対抗的フリーペーパーの発刊、(3)歓迎、(4)共同経営、(5)フリーペーパーへの転換、といった動きが見られるという。

(以下、抜粋紹介です。)

第一の「排斥」は、出版労組員がフリーペーパーのパリでの印刷を拒否したり、トラックで運ばれてきたメトロや20ミニュット(注:それぞれ別のフリーペーパー)の束を路上やセーヌ川に投げ捨てたりといった、すでに触れたような妨害行為が代表的な事例になる。

これと同様の反応はメトロがアメリカに上陸した際も見られた。メトロが00年1月にフィラデルフィアに進出して地下鉄駅構内での配布件を取得したとき、地元の「フィラデルフィア・ニュースペーパーズ」など3社が「メトロへの交通局の優遇行為は違法、不公平」として、連邦地裁に対して発行差し止めの仮処分を申請した。しかし、3社の申請は通らず、メトロは無事フィラデルフィアへの進出を果たすことができた。

だがメトロは配布権と引き換えに、フィラデルフィア市交通局に対し、月額3万ドルの構内使用料、月額1万5千ドルの清掃料、毎号1ページの広告スペースの提供といった負担を求められ、新聞の内容についても「客観的かつ非党派的」「交通局の編集基準に合致」といった制約を課されている。

第2の「対抗的フリーペーパーの発刊」は、北欧版フリーペーパーの進出に対抗して、地元の新聞がみずからフリーペーパーを発行し、相手の勢力拡大を抑えるという対応である。

(中略)

第3の対応はフリーペーパーの登場をむしろ歓迎し、かえってそうした事態を利用しようとする対応である。フリーペーパー問題を国際会議でも取り上げてきた、パリに本拠を置き世界各国の72新聞団体、1万8000紙が加盟する世界新聞協会(WAN)のキルマン広報部長は、「フリーペーパーはなによりも若い、新しい読者を開拓してくれる。これらの読者が新聞を読むことに慣れてくれれば、やがては有料新聞の読者に育ってくれるという希望がある」と語る。

舞台はヨーロッパから離れるが、メトロのアメリカ上陸を契機に、主要都市の各紙がフリーペーパーを発行しあい、「タブロイド・フリーペーパー戦争」と呼ばれる状態を現出したアメリカで、「ダラス・モーニングニュース」がフリーペーパー「クイック」を創刊したのは、「クイックが読者を親新聞に導いてくれ、広告事業を活性化してくれる」が1つの狙いであったと同紙の責任者が語っている。

第4はさらに一歩を進め、既存の新聞が進出してきたフリーペーパーの経営に参加するという洗濯である。スペインの東部で地方紙を発行する「エディシオネス・プリメーラ・デ・アリカンテ」は、メトロと共同で「メトロ・パレンシア・オイ」と「メトロ・アリカンテ・オイ」を創刊した。国際・全国報道はメトロが、地方ニュースはスペイン側が受け持ち、広告収入は折半する。

(中略)

最後に第5は既存の新聞自体がフリーペーパーに移行してしまうという動きである。ヨーロッパではまだ具体的な事例はないが、アメリカでは、「サンフランスシスコ・エグザミナー」が03年3月にフリーペーパーに転換し、ジョージア州アレクサンドリアの「ジャーナル・ニュースペーパー」が傘下の地域判を順次フリーペーパーに移行させている。こうした動きの背景には、「USAトゥデー」のメディア・アナリストが「アメリカには、将来は購読収入が意味をもたなくなうという考えが現れ始めた」と語ったような意識の変化が生じ始めているように見える。
(引用終わり)
by polimediauk | 2005-02-08 18:09 | 新聞業界