小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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CIA秘密収容所疑惑とBAE賄賂疑惑のテレビ


 11日夜、英国の視聴者はCIA秘密収容所疑惑〔チャンネル4〕とBAE賄賂疑惑(BBC)のドキュメンタリー番組を目にする幸福に恵まれた。

 チャンネル4は8時からでBAEは8時半からだったので、前者は途中になったが、どちらも怖くなるほどの迫力があった。

 CIA秘密収容所疑惑の件は既に報道がかなりされているが、米CIAがテロ容疑者を海外に移送し、拷問まがいの尋問を行なっているとするもの。2005年までCIAの欧州部門の統括者だった人物や、欧州評議会の調査員が秘密収容所が実際にあったことを示す証拠を元に話す。CIAにいた人が実際にこうした収容所を批判している。「あのような拷問を通して得られた情報は意味がない。目的は諜報情報を取ることだった。無罪の人もたくさん捕まっていることは内部でも承知だった」と語る。

 BBCの「パノラマ」は30分番組で、駆け足で語った・・という感じ。もう少し長ければと思ったが、この事件(英国が、サウジアラビアへの兵器売却に関し、巨額の裏金をサウジ王子の1人に払っていたという話)の一部始終は知っていたが、(1)サウジ側から、お金を払う代わりに(あるいはその一部として)でかいタンク一台分の石油を英国に送っていた、(2)この裏金疑惑を英重大不正捜査局が捜査していたのだが、年末になって、政府が「国益のために」捜査を中止させた背景の情報が初耳だった。

 捜査を中止させた背景だが、サウジアラビアはテロの戦争と戦う上で、かつ中東の一国という戦略的意味で非常に重要だから、「国益のために」捜査を中止させた、という内容をブレア首相やゴールドスミス法務長官がこれまでに述べてきた。

 この「国益」、「テロ」にはことのほか重要な意味があった。

 パノラマによると、サウジのバンダル王子は、自分の銀行口座に入っていたお金・裏金の情報が重大不正捜査局に伝わるのを恐れ、関係者にプレッシャーをかけることにしたという。そこでまず、英国にプライベート・ジェットで飛んで(このジェットも英政府がプレゼントしたもの)捜査中止の何らかの交渉をしたようだ。その後、フランスに飛び、シラク大統領に会っている。当時、英国とサウジは新たな兵器売却契約の交渉中で、「英国がうるさいことを言えば、フランスから兵器を買うぞ」という示威行為。その後、今度は英官邸に。そこで、ここが驚きなのだが、「もし捜査が続けば、治安上のリスクがある」ようなことを言ったらしい。

 そして、この説明の時に、2005年のロンドン・テロの様子が映った。まるで、「言うことを聞かなければ、また爆弾が破裂する」とでも言うような。すごい解釈で、ここまでもし脅かされていたとすれば、捜査は引っ込めるしかなかったのか?パノラマのインタビューで、重大不正捜査局の局長は、「人命に関わると言われたら、捜査を止めるしかない」と答えている。

 パノラマの最後が、バンダル王子の米テレビでのインタビューの一部で、「賄賂なんて昔から、どこにでもある。サウジだけの問題じゃない。アダムとイブだって、木の下で悪いことをしたから、楽園から追放されたんだから!」とにっこりするのだった・・・。

 パノラマの過去の作品はウエブから見れる。今現在は出ていないようだが、2,3日後にでも以下のアドレスから興味のある方はごらん頂きたい。

http://news.bbc.co.uk/1/programmes/panorama/archive/2007/default.stm


〔私のウエブでは最後のアルファベットが何故かうまく表記できないが、...default.stmであることにご注意ください。)
by polimediauk | 2007-06-12 07:01 | 放送業界