小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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「壊れた社会」英国


 短かった一時の夏の暑さがどこかへ消えてしまったようで、英国では夕方になると初秋を思わせる涼しさが続いている。あっという間だったなあと思うばかりだ。

 今度の総選挙がいつあるか、まだ未定だが早ければ今年10月、あるいは来年春、という話が出ている。休暇から戻ってきた野党保守党のキャメロン党首は、「社会崩壊」が最も大きな争点になる、と昨日テレビで言っていた。

 英国の壊れた社会と結婚制度の廃れに関して、8月21日発売の投資雑誌「zai(ザイ) 」(ダイヤモンド社)10月号に、コラム記事を書いた。書店で見つけたら手に取っていただけたら幸いだが、犯罪率の上昇やシングル・マザーが増えている状態に多くの政治家が危機感情を抱いている状況を説明した。

 英国(=欧州一般)は日本に比べるといろいろな意味で自由度が高いように思うけれども、その自由度の高さゆえに、問題も出てくる。

 前に、イランで拘束された英水兵たちがメディアに体験談を売ってお金をもうけたことを書いたが、この時も感じたが、社会の様々な分野で権威の崩壊というか、「社会には一定のルールがあって、国民・住民はこれを順守する」という暗黙の了解がどこにもであると思うが、英国ではこれが段々崩れてきているように見える。ルールの内容自体が変わっている、ゆるくなっている感じがする。

 その理由は、知人らによると、1つには1960年代以降の権威主義の崩壊・社会変革と言うが、どうだろうか?

 生活してみると、「崩れ」が目に付く。日本と比べるから「崩れ」と思うのかというと、英国人自身も気づき、何とかしてもう少しきちんと立て直そうと思うのだが、これがうまくいかない。「社会には一定のルールがあって、・・・」などと言おうものなら、反発される。権威主義を徹底的に嫌う流れがある。とにかく、「リベラル」であることが重要とされる。

シングル・マザーが増えたって、「個人の選択の自由」なのだ。若くして犯罪者となり、刑務所に入れられたら、「環境が悪かった」から、となる。子供が甘いものを食べ過ぎて、肥満児になって困ると嘆き、「子供が食べたいと思うような広告を出す製菓会社の責任を問う」。

 英国では結婚をせずに子供産む男女が増えている。現在、子供全体の40%ほどが婚姻をしていないカップルから生まれた子供たちだ。日本は殆ど全員の子供が結婚した夫婦から生まれている。この点だけ見ると、日本は非常にガチガチっとした社会にも思える。結婚してからでないと子供を産まない・産めないと考えるなら、出産率はなかなか上昇しないのではないかと心配にもなる。どっちの国が住みやすいのかは個々の判断で違うだろう。

 資本主義の国、同じ先進国といっても、日英は微妙に違い、決して同じではない。
by polimediauk | 2007-08-22 02:35 | 英国事情