小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


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ウイキペディアと英コラムニスト


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 BBCが、地球温暖化に関する番組の制作を中止した。来年放映予定となっていたもの。理由は、「公平性に欠ける可能性がある」からだ。

 2005年にも、世界の貧困撲滅を狙って、「ライブ8」を企画し、放映したが、その後のBBCは「キャンペーン運動を行っている」ということで、批判されている。

 予定されていた番組は、人気キャスターや著名コメディアンが司会となるはずで、おそらく娯楽番組の体裁になっていた模様。「娯楽の形を取りながら、地球温暖化をとめる・遅らせる」という目的のキャンペーンをしては「中立でない」ことになるからのようだ。

 インディペンデント紙はこれを一面で扱っている。

 一方、月曜のインディペンデントのメディア特集面で、気になる記事があった。

http://news.independent.co.uk/media/article2919837.ece

 スティーブン・グラバーというコラムニスト(デイリー・テレグラフを立ち上げた人の一人)が書いたもので、ウイキペディアと英ジャーナリストの関係について、である。

 グラバー氏がウイキペディアを見たところ、数人の英ジャーナリスト・コラムニスト(ガーディアンのポリー・トインビー氏、タイムズなどのマシュー・ペリー氏、デビット・アーロノビッチ氏)の項目が、「異様に詳しい」ことに気づいたという。

 つまり、あまりにも詳しいので、おそらく「自分たちで書いているのだろう」と氏は推測する。本当はどうなのかは分からないけれど、そういう可能性も「あり」かなあと思ったりする。

 前に、日本の作家で平野啓一郎さんが、ウイキペディアで間違った情報を書かれ、困ったということを自分のブログで書いた、という経緯を、コメントを下さった方から教えてもらったことがある。

 ウイキペディアには、いくつかのトピックに関して、自分が確実に知っていることを追加しようかと思うことがあるが、何となく手続きが煩雑なような気がして、まだやったことがない。

 しかし、「自分で書いている」というのが本当なら、英コラムニストは本当に神経が太いというか、驚いてしまう。

 しかし、政治家などならともかく、コラムニストやジャーナリストは、書いた記事だけで基本的には評価してもらうのが一番良い、すっきりするのではないかと思う。

 グラバー氏も書いているように、ウイキペディアに自分の情報が載らないことの方が幸せのようだ。本当に不思議な世の中になったものだ。



 追記:下にあるmik?さんのコメントもご参考に
by polimediauk | 2007-09-07 02:32 | ネット業界