マデリンちゃん事件 他
*欧州のビジネス情報サービス「NNA・EU」のサイトに、「ヨーロッパのブロガーたち」というコーナーがある。この中に私もサイトも紹介してもらっているのだが、他のブロガーたちのブログをのぞくと、それぞれ思うことが書かれている。読んでいて、ブログもずいぶん進化・成熟したなと思った。市民メディア「オーマイニュース」を待つまでもなく、どんどんいろいろな人が書いている。英国に関心のある方は、このサイトの「ヨーロッパで働く女社長のブログ」を見ると、おもしろい。ほとんど毎日更新され、その日のニュースに関して書かれている。http://news.nna.jp/free_eu/blog/
*デイリーテレグラフが、このところ1面で、タイムズ紙の発行部数とウエブサイトのページ・インプレッション数を比較した棒グラフを載せている。7月はテレグラフの毎月のページ・インプレッションが73,230,038で、タイムズは72,154,927。8月の紙の発行部数はテレグラフが887,664部でタイムズが638,820。「勝っている」ことを示したいのだろう。テレグラフ内部の人に聞くと、ライバルは実はタイムズではなく、タブロイド紙のデイリー・メイルと言うけれども。新聞社のウエブサイトは、FT,ガーディアン、タイムズ、テレグラフが「黒字化している」(漠然とした書き方だが)そうだ。
*今メディア報道で段々問題化されているのが、5月、ポルトガルの保養地で行方不明になった、マデリン・マッカーンちゃん事件だ。行方不明当事は3歳で、現在生きていれば4歳だ。両親が、メディアを通じて大々的な捜索キャンペーンを開始し、テレビや新聞でキャンペーンの様子がしょっちゅう報道された。人気キャスターもポルトガルに飛び、現地報道をした。9月上旬、4ヶ月に渡る捜索キャンペーンの後、ポルトガル警察が「夫妻が容疑者」と判断してから、やっと英中部の自宅に帰った。最寄の空港から自宅まで、テレビ局各社は、ヘリコプターを出して、夫妻の様子を追った。家はどこか分かっているのだから、果たして、例えばBBCがヘリコプターを飛ばす必要があったのかどうか?BBCの朝の番組「ツデー」はこれを批判したが、担当ディレクターは、「必要だった」と述べる。こういうことをするから、お金がかかってしまう。
*マデリンちゃん事件はいまだ犯人が見つかっていないが、新聞やテレビで際限なく報道があるので、過熱王室報道のようなおもむきを見せている。果たしてこれほど来る日も来る日も報道していいのかどうか、何故これほど関心が高いのか?などを、BBCラジオの「メッセンジャー」などで議論していた。「国民はミステリーを知りたがるものだから」というのが1つの答えだったが、ふと、「本当に視聴者・読者はこれほどまでに知りたいのかな?」とも思う。メディアが作っている部分もあるのではないか。それにしても、マデリンちゃんの両親やマデリンちゃん自身の映像は非常に魅力的だ。何とかしてあげたい、という思いを多くの人が持つのではないか。http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/6984836.stm
*それでも、私は一抹の違和感を持ち続けていた。それは、マデリンちゃんの両親はメディアと非常に親しい関係を持ちながら、キャンペーンを拡大させたが、メディアは簡単にてなづけられるような存在ではなく、必ず過熱化し、いったん何らかのきっかけがあれば、あっという間に敵対的な顔を見せる。どれほど一時、自分たちに同情的な顔を見せても、中傷記事がとめどなく出る現象に遭遇することもある。夫妻は、今、広報担当者・メディア交渉者を置いているようだ。そして、今でもメディアをひんぱんに利用して、自分たちの思いを伝えている。なんだかすごいことになってきたな、と思う。これほどまでにメディアを使う必要があったのかどうか?サンデータイムズ紙(16日付け)が拾ったところによると、ネット上では夫妻を中傷する書き込みが非常に増えているそうだ。容疑者となってしまったので、「最初からどこかおかしいと思っていた」などの書き込みだ。中傷的記事を書いたポルトガル紙を、夫妻は訴えてもいる。しんどいことになっており、もう少し控えめにできないものかと思う。
*前は、メディアの過熱報道があるとき、もっぱら悪いのはメディア側のような構図があったと思うが、今は、この夫妻のように、自分たちからメディアに情報を出す、メディア側にアプローチをとる場合が増えているように思える。