小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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BBCのニュース・スタッフが書簡で抗議

  ガーディアンの4日付によると、BBCのニュース部門にいる約100人のスタッフが(著名キャスターのギャビン・エスラー、ジョン・ノクティーなどを含む)、BBCトラスト(元の経営委員会)のトップに向けて、「ニュース部門の削減をしないでほしい」という抗議の書簡を出したそうである。

 BBCの経営は国内の受信者が払うTV受信料でまかなわれている。値上げ率はBBCが希望する額を出し、最終的には政府が承認する。今後6年の決定額は、BBCの希望額より3%下だった。でも、「値上げなし」となったのではなく、上げ率が思っていたよりも低かった、ということ。

 これにあわせて、BBCの社長は「カットできるところはカットするように」と全スタッフに伝え、部門ごとに削減額を指定している。

 つい最近も、ニュース部門に働くスタッフ一人一人に対し、「何故あなたの仕事が必要だと思うか、200字で書いてください」という手紙が経営陣から送られたばかり。

 そこでBBCのニュース部門100人の書簡提出、ということになったわけだが、「BBCでニュースは最も大切な部分なので、カットしないで」という文面がある。こういう話を読んで頭に血が上ってしまうのは、一視聴者としてBBCを見ていると、ずいぶんお金を使っているように見え、「ニュースが最も大事」と書かれると、他の部門で働くスタッフはどうなるのだろう、と思ったりする。

 ニュースも、他の番組も、ドラマ部門だって、それぞれ大事だろうし、管理部門も一定の人がいないと回らないだろう。「自分たちが一番大事」というBBCニュース部門の、ある意味でいやな感じ・ごうまんさは時々、BBC批判者も声に出す。作品に情熱とプライドを持つのは重要だが、「自分たちが一番・・・」というのが、あーあと思ってしまう。

 BBCニュースががお金をかけているなあと思うのは、飛ばさなくてもいい飛行機を飛ばしてニュースの素材を追っている、行かなくてもいいところに重量級のニュース・キャスターを出張させる、などなど。具体例は、マデリンちゃん事件で、両親が数ヶ月ぶりに自宅に帰ってくるところで、飛行場から自宅までの道のりを、飛行機を飛ばして空の上から、両親の車を撮影するなど。もちろん、こういうことをしないと「最先端にいる」ことにならない、という理由付けになるのだろうけれど、困ったなあという感じがする。つまり、民放に張り合っている。

 それと、もう1つ気になるのは、BBCの経営陣がいわば勝手に作り上げた予算額と比較すれば、「低い受信料設定だった」と言えるだろうけれど、値上げがないわけではなく、もし最終額が期待より低かったら、「現状のカット」というよりも、予算案が生まれた壮大な計画案を見直せばいいだけなのではないか??

 ・・・と言っても、こういうことは日本人の私だからこそが考えること。ここ英国では、このニュースのスタッフたちのように、声をあげたものがきっと勝つのだろうと思う。いったん抗議をしてしまえば、「カットするにもしにくくなる」事態を狙っているのだろう。

 それにしても、マルチ・チャンネル化がますます進む中で、BBCも、すべての分野でトップに・・を狙おうとしてたくさん予算を欲しがっても、やはりそれでは無理ではないかと思う。民放チャンネルも複数あるし、衛星放送も、ネットもある。いつまでも、張り合うために受信料の永遠の上昇を願っても無理なのだ。実際、現在から6年間の受信料の値上げ率は既にほぼ確定しているが、7年目からは政府は「後で決める」としているのだ。上がる一方の受信率、というビジネスモデルはもう破綻しているのだ。

(アドレスをつけようとしたらうまく行かなかったので、ガーディアン記事のタイトルは以下。)
BBC News staff protest over cuts
by polimediauk | 2007-10-05 06:37 | 放送業界