小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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BBC 逆編集で「謝罪」の件

 もう1つ、BBCが「時系列を逆編集」した件が最近あった。

 6月末、元財務相のブラウン氏が首相になった。就任前日の26日、BBCのニュース解説番組「ニューズナイト」で12分ほどのクリップが放映された。

 独立ドキュメンタリーメーカーのジェイミー・キャンベル氏が制作したクリップの中で、労働党の党首を決めるコンテストの際に、ブラウン氏とのインタビューを取り付けようとする場面があった。財務省の広報官ボルシャン・イゼット氏は、(1)ブラウン氏がイスラム教徒たちとの会合のために姿を現したところで、アプローチをするキャンベル氏をさえぎった。(2)次にキャンベル氏が広報官イゼット氏と出くわした時、広報官はキャンベル氏を見つけて、警察を呼び、反テロ法で尋問することを要求した・・・。

 実際は(1)と(2)は時系列が逆で、2週間の間があいていた。一見したところ、同様のエピソードの列挙(1)+(2)あるいは(2)+(1)という感じで、たいしたことはないようにも思えるが、財務省からすると、(1)から(2)という流れの編集は「事実に反する」上に、「広報官がキャンベル氏個人をターゲットにしている印象を与える」と言う。隠しカメラで撮っていたので、ブラウン氏の警備官が「ブラウン氏は恥ずかしがり屋で内向的」と話す言葉も拾っていた。

 私自身フィルムを見ていないので判別がつきにくいが、説明された部分だけで判断すると、「インタビューには応じないブラウン氏」、「広報官がキャンベル氏を特別視して意地悪をした」印象が出る。(1)だけでもいやな感じ、手荒な感じが出るが、(2)が(1)の次に来ると「警察まで呼ぼうとした」、つまり広報官の行動がエスカレートしたことになる・・・ということか??(でもそれほどたいした違いはないかも。ただ、取材されたほうからすると、怒るだろうな・・・。)

 BBCは非公式に財務省に謝罪した。

 この件があきらかになった7月19日のガーディアンの社説を読むと、時系列を逆編集した件を含めて、BBCのさまざまな不正編集をかなり怒っている。公共放送でありながら、「民間の衣をまとい」、他のメディア同様、きわどい表現を度々しようとしている・・・点を批判している。

 BBCの内部調査でぽろぽろ、「実は・・」という件が明るみにでており、一部には「まあ、細かいことまで言わなくてもいいじゃないか」という声もあるにはあるのだが、BBCの中で「何かがおかしい」印象がぬぐえないのが現状だ。

http://media.guardian.co.uk/print/0,,330220903-105236,00.html

(次回、ノーザンロック事件)

by polimediauk | 2007-10-10 05:35 | 放送業界