小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk

かつてのニック・クレッグ氏 ベリタより


 英国第2野党自由民主党の党首が誰になるか?という問いで、早速クリス・ヒューンと言う議員が立候補することにしたようだ。

 最も大きな期待がかかるニック・クレッグ氏だが(でも今党首になってしまうのは、早い気がする。もったいない気がするのだが)、3年前、取材をしたことがある。

 日本で注目している人はいないかも?と思ったが、知っている人は知っているようなので、ベリタ掲載分から転載してみたい。記事の後半に出てくる。ご参考まで。
 
2004年06月15日掲載
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200406151919352
EU脱退主張する英国右派政党が躍進、欧州議会選挙結果

 6月14日明らかになった欧州議会選挙(議席数732)の投票結果によると、イギリスでは欧州連合(EU)からの脱退を主張する英国独立党が12議席を確保し、野党第2党の自由民主党(12席)と肩を並べた。英国下院に議席を持たず、選挙前は欧州議会の3議席のみだった独立党は、EU憲法制定に反対し移民規制強化を主張する右派政党。今回の躍進は、英国民の間に存在するEUへの強い不信感を改めて浮き彫りにしたようだ。一方、英国民の欧州議会に対する評価の低さに失望した若手議員の一人は英国の次期総選挙への出馬を決めた。 
 
 英国は欧州統合には常に一定の距離をもって接してきた。正式に現在のEUに加盟したのは1973年。ユーロにも参加していない。「英国経済に恩恵をもたらす状況が整った時にのみ参加する」と政府は表明している。昨年6月、ユーロ参加で英経済が好転するかどうかを判断する「経済テスト」の結果を発表したブラウン財務相は「時期尚早」とした。 
 
 このため英国民の欧州議会への関心も非常に低く、前回1999年の選挙では投票率24%で、全15カ国中で最下位。今回も全EU諸国の平均が44.6%の中、英国は39%だった。しかし、英国ではこれまでで最も高い数字だ。 
 
 最近までは、独立党が主張した「EU脱退」という提案は非現実的と見られ、支持者は多くなかった。そうした中で反EU感情が再燃してきたのは、EU加盟国が5月から25カ国に増えたことがきっかけだった。 
 
 東方拡大実現の数ヶ月前から、タブロイド紙を中心にした英マスコミはEU拡大によって、恐ろしい結果が起きるとする主旨の記事を連日掲載した。例えば、「HIV感染者が新規加盟国から英国に押し寄せる」「病む英国」「大量のジプシーがやってくる」「英国の社会保険制度を移民たちが悪用する」といった、東欧諸国が中心の新加盟国からの移民に対して恐怖心を煽るような記事が頻繁に掲載された。 
 
 また、今月内のEU憲法制定を目指して加盟各国が交渉中だが、憲法批准に国民投票は必要ないとしてきたブレア政権が180度方向転換し、国民投票実施を決定。これが国民の間に、「果たして、本当に憲法制定にイエスと言っていいのかどうか」「そもそも、EUは本当に英国にとって必要なのか」といったことを考え直すきっかけにもなった。 
 
 もし今、ユーロ及びEU憲法に関する国民投票が行われれば、国民の大多数が「ノー」と言うだろうというのが、14日付け英各紙の見方だ。 
 
 このため、EU憲法には否定的でもEU脱退とまでは言わなかった野党第1党保守党へ流れるはずだった反EU票が、脱退の姿勢を明確にした独立党に流れたとみられている。 
 
 14日付けのフィナンシャル・タイムズによると、独立党の躍進は選挙のテーマを「EU脱退」に集約させることで有権者に分かりやすさを出し、元著名テレビキャスターや女優ら有名人を選挙運動に動員することで注目を集めることに成功したとしている。同紙によると、欧州議会選挙のように、結果が政権の交代に直結しない選挙の場合、訴えるテーマを1つに絞った政党が票を集める傾向が高いという。 
 
 独立党は「英国民は言論の自由を奪われている」とした上で、「移民問題、EU加盟、教育、女性の権利拡大などについては様々な意見がある」と表明しており、EUへの反感や増える移民への恐れなどを持っていても、“ポリティカル・コレクトネス”のため、こうした感情を言葉に出すことをためらってきた国民に訴えたとも分析している。 
 
 一方、自由民主党のニック・クレッグ前欧州議会議員(37)は、任期切れを機にブリュッセルから英国に活躍の場を移すことにした。EU本部のあるブリュッセルや月に一度本会議が開かれるフランスのストラスブール、それに英国の自宅を頻繁に行き来するという生活に「疲れ切った」という。しかし、クレッグ氏にとって体力の消耗よりもこたえたのは、「欧州議会の議員に対する英国内での理解、支持があまりにも少なかったこと」だという。 
 
 「英国では欧州議会には何の力もないと思われているが、これは真実ではない。議会の決定は欧州全体の多岐に渡る問題、人々の生活の隅々にまで影響を及ぼしている」 
 
 「例えば、河川の水質基準にしても、欧州議会が決定した水準を英国の全水道会社が遵守することが義務となる。この水準の段階によって、水道会社が使用者に請求する水道料が変わって来る」 
 
 しかし、こうした点を丹念に取材するメディアは英国にはほとんどないと言う。 
 
 英国に戻るたびにクレッグ氏は、「たいしたことをしていない」として存在を無視されるか、「すべてをブリュッセルが決定している。恐ろしいことだ」といった、人々に厭世観を与えるような報道にさらされ、「欧州議会で議員を続けても何の意義があるのか」と自問するようになった。「欧州議会で自分が力を入れた法案が通っても、英国に帰れば国民の心はメディア王ルパート・マードックが握っている。これでは、やりきれない」 
 
 クレッグ氏は、2005年頃に予定されている英国の総選挙に立候補し、国会議員としてやり直す予定だと語った。 
 
 【メモ】英国独立党(UK Independence Party=UKIP)は共通通貨の導入などを決めたマーストリヒト条約締結に反対する人々が1991年に運動を開始し、1993年に政党として結成された。本拠地はイングランド中部のバーミンガム市。裕福な資産家らが活動資金を提供し、約2万人の党員がいる。 
 
 選挙運動では、元英下院議員でテレビの討論番組のキャスターを長く務めたロバート・キルロイー・シルク氏や女優のジョアン・コリンズさんらを中心にマスコミを利用し、注目を集めた。今回の選挙結果について独立党は、「英国は欧州の連邦主義に簡単には降伏しない」という選挙民のメッセージを現政権に突きつける役割を果たしたとしている。 
 
 欧州議会の有権者はEU25カ国全体・約3億5000万人で任期は5年。議席は人口に応じ各国に配分される。EUの意思決定機関である欧州理事会(首脳会議)と立法権を共有し、予算案の承認のほか、EUの執行機関である欧州委員会委員の任命・承認・罷免権限、監督権も持つ。 

by polimediauk | 2007-10-18 05:28 | 政治とメディア