小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk

英日曜紙の未来 オブザーバーとガーディアン

 英国で、週末の新聞は随分ぶ厚くなるが、何故土曜日の新聞にテレビ特集の冊子と週末用の雑誌がつき、翌日日曜日の新聞にもテレビ・ラジオの番組予定が入った冊子と雑誌がつくのか、最初不思議だった。

 これは、月曜から土曜の新聞の編集チームと日曜の新聞チームとが違うからだった。タイトルも違う(デイリーxxとサンデーxx)わけだが、それぞれの編集長がいて、記者がいて・・・という体制になっている。

 日本のように自宅での定期購読率が高くない英国では、土曜日だけ買う人もいれば、日曜日だけ買う人もいる。

 デジタル化の進展で、日曜の新聞は危機状態にある。日曜版の編集スタッフは、週に1回の新聞を作ることだけではなく、24時間体制のウエブサイトにも記事を出すことを求められる。新聞のウエブサイトは日曜版とデイリー版が一緒になっており、ネットだけで見ると、区切りがつけにくいのが現状だ。各日曜紙は、それぞれタイムズ、インディペンデント、テレグラフ、ガーディアンなどのデイリー紙のサイトの一部になっている。

 サンデーペーパーと言うカテゴリー自体が将来的にはなくなってしまう可能性も指摘されている。

 10月29日付けのインディペンデント紙面でスティーブン・グラバー氏が、また同日付けでピーター・ウイルビー氏が書いているのが、ガーディアンの傘下にある、日曜紙オブザーバーの編集長ロジャー・オルトン氏が辞めた事件が、日曜紙の将来を予測するようでもある。

http://www.guardian.co.uk/media/2007/oct/29/
mondaymediasection.comment

http://news.independent.co.uk/media
/article3104970.ece


 ガーディアンのニック・デイビースという記者が書き、まもなく出版される本によると、10月24日で辞任したオルトン編集長の右腕となるカマル・アーメドという記者(辞任予定)は、イラク戦争開戦の理由付けとして作成された、悪評高い政府の文書作りに関わっていた、という。(デイビース氏は後にこの部分が本に入っていることを否定。)オブザーバー紙はイラク戦争開戦支持派で、ガーディアンは反対だったと言う。

 オブザーバーはガーディアンが所有しているので、「ガーディアンの日曜版」という位置づけだが、実際は結構編集方針に開きが出てきていた。ガーディアンの編集長アラン・ラスブリジャー氏とオルトン氏の間に、意見の相違、嫉妬、などいろいろなことがあったと言う。

 細かいことは際限なくいろいろあるようだが、オルトン氏の辞任の大きなきっかけは、ガーディアンが来年から事務所を移動するのにあたり、日曜紙オブザーバーとガーディアンが編集面でもっと近くなるようにプレッシャーをかけられていたから、という。

 日曜紙の編集長は自分のスタッフがデイリーの新聞のために使われるのを嫌うという。デイリーの新聞のスタッフからすれば、日曜紙のスタッフは週に1回だけ新聞を出すので、随分のんびり働いているようにも見えてしまう。

 しかし、今や新聞社もウエブの時代。紙に書いているだけではだめで、サイトにも記事を貢献するように記者は求められるようになった。

 こうした動きに反発して辞めた最近の例は、サンデーテレグラフのペイシェンス・ホイートクロフト氏だったと言われている。先月辞めたが、勤務は18ヶ月のみ。前はタイムズの経済記事を統括していた。テレグラフはマルチメディアに力を入れていることで知られているが、デイリーのニュース配信への協力や、ネットなど他のプラットフォームでの出力にも貢献するように圧力をかけられていた。

 デイリーの新聞と日曜紙の編集上の統合は避けられない流れのようで、先のコラムニスト、ピーター・ウイルビー氏によると、インディペンデント・オン・サンデーはデイリーのインディペンデント紙とは異なる紙面デザインを維持しているものの、記者レベルではデイリーのインディペンデント紙のスタッフをたくさん使っていると言う。

 サンデーテレグラフとデイリー・テレグラフは、先週、写真デスクを共有することにし、両紙の経済記事の責任者として一人の経済エディターを配置したと言う。

 インディペンデントのスティーブン・グラバー氏の説明によれば、オブザーバーがガーディアン紙に買われたのは1993年だった。

 この時、当時インディペンデント紙を所有していた、ニューズペーパー・パブリッシングという会社が、オブザーバーを買いそうになったという。この会社が目論んだのは、インディペンデント・オン・サンデーとオブザーバー紙の統合だった。一社で2つの日曜紙はいらないのだから。

 オブザーバーが消えてしまうかもしれない、というシナリオに、大きな嘆きの声があがり、ガーディアンが新しい買い手として浮上してきた時、100人の労働党議員がニューズペーパー・パブリッシングではなく、ガーディアンがオブザーバーを買うようにとする動議に署名したという。

 当時ガーディアンの編集長(で今はコラムニスト)ピーター・プレストン氏は、オブザーバーはガーディアンの一部ではなく、独自の日曜紙として存続させると誓ったと言う。(それが今は・・・。)

 ネット・デジタル化が日曜紙の存在を変えるとはまさか思わなかったが。今後も、何が起きるか分からない。
by polimediauk | 2007-11-01 23:50 | 新聞業界