小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


by polimediauk

「タイムズ編集長、来年からWSJに移籍」?

 噂が出ていたものの、かなり信憑性が高くなってきたのが、タイムズの現編集長ロバート・トムソン氏の、米ウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙への移籍だ。編集長になるのかあるいは経営陣の一人になるのかはまだ分からないが、遅くとも来年の6月までには移籍するという見方が強まっている。

 ガーディアンのスティーブン・ブルック記者(5日付)によると、トムソン氏がWSJの編集あるいは経営に関わるのはほぼ確かなようだ。

 WSJはタイムズも所有している、ルパート・マードックのニューズ・コーポレーション社が買収し、12月には買収に関わる手続きが終了すると見られている。

 トムソン氏は元々オーストラリアの出身(マードック氏もそうだった)で、タイムズの編集長になって5年だ。タイムズの前はフィナンシャル・タイムズの米国版編集長を4年間しており、米国での発行部数を3万2000部から12万3000部に増やしたそうだ。ビジネス・センスを買われてのタイムズ編集長としての引き抜きだったのだろう。

 WSJ欧州版の本部は今ブリュッセルにあるが、将来的にはロンドンに移すという計画もあるという。

 マードック氏はWSJの内容を変え、ニューヨークタイムズを「つぶす」壮大なもくろみもあるようだ。現在は金融の記事がメインだが、国内・国際ニュースを増やし、芸術、ファッション、文化記事も増やしたいと、最近、サンフランシスコで開催された会議で述べたという。NYタイムズをつぶすつもりかと聞かれ、「それも悪くない」と答えている。

 つまるところ、「マードック帝国」を、WSJを通じて米新聞界でも展開したい、そのためもあって、信頼しているトムソン氏をWSJに送る、という見方もできる。

 詳細はガーディアンのStephen Brook、Times editor headed for WSJを参照。http://www.guardian.co.uk/media/2007/nov/05
/wallstreetjournal.thetimes


 一方のWSJだが、4日付で発表したところによると、ウエブサイトの定期購読者が100万人に達したと言う。大手新聞のウエブサイトが無料化になる動きがある中で、よくがんばった、という印、という評価をロイターはしている。
by polimediauk | 2007-11-05 20:25 | 新聞業界