小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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英IPCCが警視庁を批判 青年誤射事件で

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 独立警察苦情委員会(IPCC)が、2005年7月22日、テロ容疑者と思ってブラジル青年を間違って射殺してしまったロンドン警視庁の行動を批判する報告書を、8日、発表した。
http://www.ipcc.gov.uk/

 発表までにずい分時間がかかったものだ。事件発生から約2年半。既に今月1日には、ロンドンの裁判所が職場保険安全法違反の罪で警視庁に有罪判決を下している。「数々の過ちが市民を正当化されない危険にさらした」、「これが青年の死を招いた」と検察側は主張した。

 何故「職場保険安全法」で裁判になるのか、たとえば業務上過失致死のようなことで何故裁かれないのか、これも1つの問題となった。

 IPCCの報告書は、ロンドン警視庁に手ぬるいものになるのではないか?と思ったが、予想外に大胆、厳しいものになったようだ。青年の射殺には警視庁側に「重大で、避けることが可能だったエラーがあった」、と書いている。また、警視総監のイアン・ブレア氏が、IPCCの捜査を邪魔しようとした、という(!!)。

 ブレア氏の責任を問う声が近頃強まっている。政治的圧力が非常に強く、いやいやながら、引責辞任をすることになるかもしれない。メディアを通じてのプレッシャーがものすごいからだ。おそらく、推測だが、官邸がやめて欲しいと思っているのかもしれない。誰かがブレア氏を憎んでいる。あるいは邪魔だと思っている。

 しかし、辞任コールが国民の間にももし本当にあるとしたら(青年の家族は一貫してそういっていたと思うが)、説明責任の大きな失敗に原因があるのかもしれない。

 捜査の途中にエラーは起きるだろうし、2005年7月7日にロンドンでテロがあって、21日は未遂があった。そんな特殊状況の中で、間違いが起きても、誰も警視庁を本気で責めたりはしないだろう。

 でも、一帯何が起きたのかをもっと早い段階で、出来うる限り詳しくするべきだった。関係者に一定の責任を取らせるべきだったと思う。これまでの情報によると、この青年がテロ容疑者と思った警官たちが、よかれと思って、他の市民を守るために青年を撃ったということだけれど、情報や指令自体が正確ではなかったことが分かっている。バスに乗った青年を追跡しながら何もせず、電車に乗る段階になって、急に数発射撃したのは、これまで警察官は銃を持たないのが普通だった英国では、あまりにも度が過ぎている。

 間違いは間違いとして認め、情報公開をすぐやり、責任者は責任を取る・・・ということをやったら、大きな辞任コールにはならなかったと思う。

 自分の組織を守る・・・という部分が見えすぎてしまった。青年射殺の一件が、もし担当者が責任を取る〔降格など〕ほどのことでないという解釈なら、それをもっと十分に納得がいくように説明して欲しかった。ロンドン市民よりも警視庁を守る姿勢が見えたとき、ブレア氏は支持を失っていったように思う。でも、現在の辞任コールはそれだけでなく、政治的な圧力だとは思うけれど。
by polimediauk | 2007-11-08 23:26 | 英国事情