小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


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ユーロで国民投票予定のデンマーク、英自由民主党首選

 デンマークのラスムセン首相が、近い将来、ユーロを導入するかどうかに関して、国民投票をする、と宣言した。これは英国に微妙な影響を及ぼす。

 今のところ、デンマーク国民のユーロ導入支持率は高くないようだが、もし導入することになれば、2004年5月、EUが東方拡大した以前に加盟していた国の中で、ユーロに参加していないのは英国とスウェーデンだけになってしまう。デンマークは、1973年、EU(当時は違う名前だが)に加盟してから、これまでにEUに関する問題に関して、6回国民投票を行っている。英国は1975年の1回のみ。「国民に信を問わずに勝手にEUとの統合を深化させている」と野党側の批判の的になる。ブラウン首相は、かねてから、もし英国がユーロ圏に入る場合、国民投票をする、と約束してきたが、どうなるか?

 ラスムセン首相は常に親EUだったが、11月中旬の総選挙で勝利し、第3期目になって時期が熟したと思ったのか。

 国内に目を移すと、インディペンデントの23日付が、社説で野党自民党の党首候補ニック・クレッグ氏を推すという記事を出していて、驚いた。2人しか候補者がいない時に、片方だけを強く推す。しかも、対立候補のクリス・ヒューム氏はインディペンデントの記者でもあったのに。

 しかしこれはこれで意味があるのは、当初、ニック・クレッグ氏が最有力と見られていたのだが、ヒューム氏の選挙陣営の一人が「災難クレッグ」と言う表現を使ってクレッグ氏を非難した。ヒューム氏自身はこの表現を全面的に謝罪したけれども、「ニックの言っていることは統一性がない」と指摘した。そう言われて改めてクレッグ氏の言動に注目すると、すごくいい青年という感じではあるのだが、話し方がより「クール、理論的」なヒューム氏と比べると、どことなく「何かが足りない」ようにも見えてきた。「おい、しっかりしてくれ」という記事が昨日のタイムズに載っていた。

 それでも、英国の政治の長い伝統である、2大政党制はもう古い、新しい風を起こしたい、というクレッグ氏の考えは非常に新鮮で、この点をインディペンデント紙は評価しているようだ。

 インディペンデントは、自民党に一番近い新聞とも言われ、読んでいて、やはり、とも思った。と言うのは、どの新聞もテレビ局も、「まあ、第3政党の自民党の党首選なんて、ほんのお遊び。たいしたことはない」という態度がメインなので、わざわざ真剣に社説で取り上げるということ自体が、「親自民党」という感じがする。

 18歳の女子高校生が労働党の公認候補者になるなど(エミリー・ベンの場合)、英国の政治には若返りの波が続いているような気がする。考えてみれば、43歳で首相になる(トニー・ブレア)というのも、英政治では斬新だった。ブラウン首相が56歳だから少し高年齢になってしまったが、ここらへんで、2大政党制を崩し、欧州のほかの国のような連立政権が誕生する・・・という「実験」をしてみてもいいのでは、と思う。女性首相を生み、若い首相を生んだ英国で。

 タイムズに出た本日の世論調査で、保守党支持率が労働党支持率を(おそらく1997年以来?)10ポイント近く、上回った。しかし、労働党(特にブレア??)に近いと私が見る、政治コメンテーター、アンドリュー・ランズリー氏によると、「それでも政権を取るほどまでには、保守党は支持率を上げていない」と「ニューズナイト」で評していたが。
by polimediauk | 2007-11-24 07:53 | 政治とメディア