欧州議会の慰安婦決議 クールな英国から
米国に続き、カナダ、オランダ、そして欧州議会でも慰安婦に関連して、日本政府に謝罪を求める決議案が採択され、この経緯や裏事情に関して英・欧州メディアで分かることはないかと、調べてみた。(日本語のブログでこの件で詳しいものがたくさんあるとは思う。この問題に関して「クールな英国」から見た、現況を伝えてみたい。)
まだ調べ始めたばかりで「裏」というところまでは行っていないのだが、現時点では
―12月13日の欧州議会決議案採択は、英国のメディア(4代高級紙)をネットで検索してみた限りでは、現在までに記事が見つからなかった。米国での決議案の件はタイムズで出ていたが。
―オランダの決議案の件も、ネットで英語のものを調べた限りでは、特に解説めいたものはなかった模様だ。(ただし、国会で議論されて採択されたのだから、オランダ語新聞ではかなり出ていた可能性がある。もし知っている方がいらしたら、教えていただきたい。)
―英国メディアが何故、現時点でこの件をほとんど報じていないかだが、前にもコメント欄に少し書いたけれど、私の見たところではいくつかの要素があるように思う。まず(1)この件は英国には直接関係していない。英国ででかい人権団体アムネスティー・インターショナルが元慰安婦たちを欧州に呼んで、催しを開いていたにも関わらず、だ。(2)英政府側に、現時点において日本に対して特に「懲らしめよう」という悪意・アジェンダがない。(3)在英中国コミュニティーの関心は「対日本」うんぬんでなく他のことにある。(4)最も近い例の欧州議会の件は、「欧州議会」やEUに対する反感が強い英国では、「関心外のこと」、「自分には関係ない」と思う国民が多く、よっぽどのことでない限り、報道されない(EUや欧州議会を嘲笑できるケースをのぞき)―などなどの理由があるかと思う。オランダの件も報道されたのを見ていない。オランダは同じEUの仲間だが、英国からすると、「外国」感覚が強い。一般的に言って、英メディアの報道を見ていると、他のEUの国のニュースはフランス、ドイツ、スペインがせいぜいである。(5)また、どうも人権に対する考え方も違うようだ。この説明が難しいが、人権に関して、一部の欧州諸国よりも、英国はアバウトな面があるのではないかと私は思っている。「正義よりも国益優先」というか。(6)何故オランダが?という面では、オランダには元慰安婦がいる、というのがまず最大の理由だろう。オランダが植民地化していたインドネシアに日本がやってきた時のことだ。オランダで日本に恨みを持っている人は結構多いと私は見ている。(日本を好きではない国は結構ある。外に出ると、実感される方は多いと思う。)
―もう1つ、気づいたのが、英語(グーグルニュース)で関連記事を拾ってみると、「欧州議会の採択」がらみでは、EUが出したもの以外にはブルームバーグの報道などがあったものの、他はほとんどが中国系、韓国系メディアの英語版だった。つまりこれは、「日本対中国(あるいは中国と韓国)の闘い」なのだと思う。米国、カナダ、オランダ、欧州議会という形で採択が出てきても、日本が向き合っているのは、あくまで中国・韓国だ。
―欧州議会決議までの道順だが、以下のアドレスからチェックしたところでは、アムネスティーの企画で、元慰安婦が各国を訪問し、体験談を話す、というイベントが開催され、慰安婦たちは11月上旬、欧州議会員の前で苦しみを語った。その後、12月13日、日本政府に謝罪を求める法案の可決となったが、興味深いのは討議・採択に持ち込むまでに時間がかかった(5ヶ月)そうで、それは議会の中での関心が低かったからだそうだ。この問題を取り上げようとしたがらない雰囲気が強かったのだと言う。「やっぱり・・・」という感じがする。いくらなんでもずい分昔の話だし、本当の部分は「日本対(主に)中国・韓国」の問題なのだから。
―日本政府に慰安婦制度の存在を正式に認め、その歴史的責任を謝罪することを求めた請願書に署名をしたのは54人の欧州議会議員である。議員の全体数は785人だ。
―この法案を提出したのが、ロンドン出身の議員ジーン・ランバートだった。前に難民申請者を救うための運動の一環で会った事がある人だった。明日20日、取材予定である。何故法案提出に至ったかの経緯を聞いてみたい。(注:採択日は13日だったので、後で変えました。)
以下はランバート議員のHPと欧州議会のプレスリリース。
http://www.jeanlambertmep.org.uk/contact_jean.php
http://www.theparliament.com/EN/News/200712/303a08a6-197b-42df-9425-bc36e5c8de3b.htm