小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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2008年の英政治予測 エコノミスト、タイムズから

 来年(といってももう2-3日後)の英政治界はどうなるか?

 様々な新聞、雑誌記事が予測を立てているが、エコノミスト(12月19日号)とタイムズのコラムニストでブレア前首相の自伝を書いたこともある、ジョン・レントウルの分析(12月30日付け)に注目した。

 エコノミストは第3政党自由民主党の新党首ニック・クレッグに新しい息吹を見る。

 労働党と保守党の2大政党制が続いてきた英国では、メディアも政界も自民党を「役立たず」と見て、その主義主張にあまり関心を払わない場合が多い。

 しかし、自民党は1990年代から人気上昇の流れに乗っており、前回2005年の総選挙では自民党の得票率は22%だった。1992年以降は16%以上の得票率を維持しており、下院議席数646の中で自民党は62議席を保持しているだけだが、それでも、この得票率のレベルは、エコノミストによれば第3政党としては戦後最高の高さだと言う。

 2007年は英国の政治の1つの転換期だったと見るエコノミストは、その大きな背景理由として、ブレア前首相の退陣を挙げる。ブレアは「ニューレイバー」を掲げ、かつての保守党のような政策を打ち出して政権を取得した流れがあるが、このブレアの政策は英社会の基本的な変化に呼応したものだ、と言う。この「変化」とは、古い産業を中心とした経済の没落、家柄ではなく本人のやる気が重視される考え方の進展、階級をベースにした政治闘争(労働者階級は労働党、ミドルクラスは保守党など)の終わりだ。

 現在、ブラウン首相もキャメロン保守党党首も、票を依存してきたかつての支持母体にもうたよれなくなっている。浮動票が増え、投票率も落ちている。国民の間の政治に対する無関心をいかに克服するかが各政党の課題になっている。国政に対する不信感が高まり、1つの売りを表に出す極小政党の支持に回る国民も増える。ブレアの退陣後、先行きがどうなるか分からない政況ができた。

 エコノミストによると、今後の各党の課題は、保守党に関しては、支持が弱いイングランド北部に力を入れること、つまり「地理」だ。しかし、最近の政府の失態(データ紛失、ノーザンロックのクレジット・クランチ)がどう選挙民の心理に影響するか、その時の「雰囲気」という要素もある。また、今後の景気がどうなるか、「経済」という要素も決め手になる。

 いずれにしろ、次回の総選挙(2009年か、あるいは遅くても2010年)は、保守党と労働党の議席数の差がかなり縮まると見られ、いずれかの政党は自民党との連立を余儀なくされる見込みがある。そこで、自民党党首クレッグの挙動が鍵を握る可能性が出ている。

 タイムズのジョン・レントウルによると、「噂」として、ブラウン首相の人気がかんばしくないので、2009-10年の総選挙をブラウンが党首では勝てないと考える労働党の一部が、新党首擁立を考えている、と言う。「政党内で党首を変えることで長期政権を維持するのは、まるで日本の自民党のよう」と言う人もいたそうだ。もしそうなると、例えば新党首は現外相のデービッド・ミリバンド、財務大臣として現学校問題担当大臣のエド・ボールズ(ブラウンの右腕と言われた)が挙げられている。ただし、レントウルは「ミリバンドもボールズもまだ準備ができていない」と見ている。

 静かに、しかし、ほんの少し英政界地図が変わりつつあるのかもしれない。
by polimediauk | 2007-12-30 21:20 | 政治とメディア