小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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イングランド教育の不思議+イスラム雑感

 今、イングランドの教育のことをちょっと調べているが、クラス・階級システムを背負っている部分が色濃くあって、驚き、かつ感無量だ。

 自分には子供がいないせいか、英国の教育システムのことを何度聞いてもうまく理解できず、今も結構四苦八苦しているけれど、日本語で書いた英国・イングランドの教育の本で、クラスの説明をかねているものはあるのだろうか?

 ・・・もちろん、言及している本はたくさんあるだろうが、自分でちょっと調べてみると、教育の歴史の話はまさに=階級意識の話そのもの、という感じがする。階級の差があるからこそ、これを乗り越えよう、「すべての児童に平等の機会均等を」というスローガンになるのだろう。

 夜、チャンネル4を見ていたら、イスラムのシャリア法を英国にも導入するべき、というイマムの人の番組があった。「不倫したら石打ちの刑にする、盗みを働いたら両手を切るー。一度やってみせれば、不倫をしたり盗む人はいなくなる。一回だけでいいのだ」とシャリア法の徳を説く。

 私はこの部分だけを聞いて、これはひどい!と思った。これは受け入れられない。極刑そのものの議論でなく、極刑を「戒め」と思う大衆とは、いったいどんな大衆だろうと思ったのだ。

 何か犯罪を起こして、石打の刑や両手を切るなどをしなければその犯罪を防止できない、というのはおかしい。これでは中世の時代の話だ。人間はもっと進化したはずだ。両手を切られなければ、「盗みをしてはいけない」と思えない人は、あまりにも文明度が低すぎる。イスラム教が中世でとまったままの宗教だ・・・とよく西欧人が言うのだけれど、まさにそれを裏付けてしまうような考え方だ。

 私はムスリムに寄り添ったスタンスで西欧とイスラム教の衝突をルポしてきたが、このイマムのこの発言には賛同できない。がっかりだ。英国がこういう形のシャリア法を自分の法体系の中に入れることはあり得ないと思う。すべてが何世紀も前に元に戻ってしまう。

 デンマークの風刺画問題が「問題」になってから今年年頭でちょうど2年になる。前にベリタに書いてここに出していないものがあったことに気づいた。「風刺画事件後の1年」という話なのだが、デンマークのイスラム教徒の「底抜け感」に心打たれた。よく「融合・インテグレーション」が問題にされるけれど、デンマークのイスラム教徒で私が会った人たちは、十分過ぎるほどに融合していた。「融合」うんぬんを語るのが馬鹿らしいほどに。明日以降、出していきたい。(現在の様子も後で加えたい。)
by polimediauk | 2008-02-04 07:39 | 欧州表現の自由