小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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ヘンリー王子、撤退までの報道経緯


 (ジャーナリズムうんぬんの前に、まずはビデオを見ていただきたい。ある意味では大いなるプロパガンダ、歴史的フィルムとしての意義、市民記者の報道のような感じ・・映像はやはりインパクトが違う。2つ目のビデオはお母さんのダイアナさんをほうふつとさせる。この人は、軍隊のプロパガンダに使われただけなのだろうか?)

http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/article3456189.ece

http://www.guardian.co.uk/news/video/2008/feb/28/prince.harry


 ヘンリー(ハリー)王子がアフガニスタンで従軍していることを報道しないようにと、英国防省が国内のメディア各社にお願いしていたそうである。そこで英メディアは「自主的に」このお願いを報道協定として守ることにし、その代わりと言って国防省がもちかけたのは、ハリー王子への直接の取材だった。

 中には、「こんなに近場に寄ってハリーを取材したのは初めて」という取材陣もいたようだ。

 ところが、オーストラリアの雑誌「ニュー・アイデア」が今年になって報道し、ドイツでも一部報道された。

 「ニューアイデア」側は、「英政府内で報道協定が敷かれていたことを知らなかった」と説明している。しかし、読者からはこれを批判する声が相次いでいるようだ。「英王子の海外従軍で、何らかの報道規制があると考えるのが普通」、「販売第一主義だった、恥を知れ」など。

 王子は昨年12月からアフガニスタンに派遣されており、家族が揃うはずのクリスマス時にも姿を見せず、「おや?ハリーはどこに?」という疑問の声が一部であがっていた。うすうす、「おかしいな?」という雰囲気が、報道協定を結んでいなかったメディアの側に起きてきたとしても不思議ではない状態だった。

 それでも、これが大きなニュースになったのは、米国人マット・ドラッジ氏(1966年生まれ)のニュースサイト「ドラッジ・リポート」でスクープされたからだ。

 そこでドラッジって誰?と英国民の中で疑問がわき、テレグラフ紙が結構詳しく書いていた。例のクリントン元米大統領とルウインスキーさんの仲をスクープしたことでも著名という。最近の例だと、民主党から米大統領になることを狙うオバマ氏が、2006年アフリカを訪れた際、ソマリア人の長老の格好をした写真を掲載。この写真はライバルのヒラリー・クリントン陣営から送られてきたもの、だそうだ。オバマ氏が危険なイスラム教徒であるかのような印象を与えることを意図した、と。本当にクリントン陣営から来たのかどうか分からないが、ますます無視できないサイトになっているようだ。

 現在、毎月ドラッジ・リポートを訪れる人は6億人と言われる。

 http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2008/02/28/wdrudge128.xml

http://en.wikipedia.org/wiki/Drudge_report


 英チャンネル4を中心に、「報道で政府と協定を交わすのはまずいのではないか?」という批判もある。協定をした方は「必要悪」という論理のよう。

 ハリー王子の従軍報道(こんなにがんばっています、と伝えるため)で、泥沼状態に陥ったとされる、英軍のアフガニスタン侵攻(侵攻といっていいのかどうか、迷ってしまうが、正確にはタリバン征伐+国家建設?)に良いイメージを与えたいなど、宣伝戦略(戦闘・戦争時の宣伝戦略は実際のドンパチの闘いよりもあるいはそれ以上に重要なのは周知として)の一環でもあるのだろう。

 しかし、ネットの時代に国内メディアのみを対象にした「協定」は難しいだろう(かつ、こっけいでもある)。いわば、最初からいつかはブレークされることを承知の上での協定だった。

 それにしても、誰がオーストラリアの雑誌に情報を流したのだろう?謎である。
 
by polimediauk | 2008-03-01 11:51 | 英国事情