小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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ニューズ社の新印刷工場、稼動開始 

 サン、タイムズなどを発行するニューズ・インターナショナル社が、新しい印刷工場を建設し、4月中旬から稼動が始まっている。

 その「近未来」を思わせるような巨大工場の様子は、ガーディアンのサイトから動画で見れる。

http://www.guardian.co.uk/media/video/2008/mar/14/murdoch

 この工場の稼動で、22年間、印刷の拠点としてきたロンドン東部ワッピングに別れを告げたことにもなった。

 スコットランド、イングランド・リバプールの2つの新印刷所に加え、最も大きいのがイングランド東部ハートフォード州ブロックスバーンの印刷工場。これは世界最大の新聞印刷所と言われる。というのも、約8万7000平方フィートの敷地にはサッカー競技場が23入るほど大きいのだ。

 ビデオ・クリップの中で、ニューズ・インターナショナル社(NI)の印刷部門の担当者、ブライアン・マッディー氏は、「毎時100万頁の印刷が可能になった。世界中の人に誇れる」と語っている。

 NI社はサン(発行部数約300万部)、タイムズ(60万部)、サンデー・タイムズ(180万部)、ニューズオブザワールド(320万部)、無料紙ロンドンペーパー(50万部)を発行し、ルパート・マードックの米メディア大手ニューズ社の傘下にある。

 独印刷機メーカーに既存の4頁ではなく6頁を一度に印刷できる機材を発注し、5年かけて新印刷体制への準備を進めてきたという。ブロックスバーン工場と他二つの小規模の新工場で、総投資額は6億5000万ポンド。効率性は50%上がり、これまでの3分の2の人員で稼動が可能になった。この結果、締切時間が延長され、一部地域では掲載できなかった人気のサッカーの試合の最終結果を載せることができるようになったという。スポーツ面拡充は、販売部数増加に直結する要素と言われる。

 新聞業界の別名となるロンドン・フリート街だが、ここを英新聞社・通信社が根城にしていたのは二昔ほど前だ。1985年、マードックが、ストを繰り返し業界全体の悩みの種となっていた印刷労組の抵抗をよそに新印刷工場をワッピングに建設すると、他の新聞社もこれを追ってフリート街を離れた。

 ブロックスバーン工場は自社新聞ばかりか日刊紙では最大部数のデイリー・テレグラフ、その日曜版サンデー・テレグラフも印刷する。新聞の発行部数の落ち込みが止まらない英新聞業界で、効率性の高い新システムが業界スタンダードとなっていくのは必須だ。


 工場を視察したメディア評論家ロイ・グリーンスレード氏は、「紙媒体はもう先がない」と言うのが自論だが、近未来を思わせる工場には「衝撃を受けた」と語る。「これほど効率的な印刷工場を見たことがない」。6億5000万ポンドの投資には「新聞に非常に大きな信念を抱くマードックの思いが出た」
by polimediauk | 2008-04-20 21:39 | 新聞業界