小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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チャンネル4「英携帯電話料は高すぎる」、メコム 

 英国の携帯電話料金の請求にどうも納得がいかないと思ったのは、欧州他国に出かけて使った時だった。私は買いきり・プリペイド(Pay as you go)の電話を使っているが、あまり電話をかけていないのにあっと言う間に残金がなくなってしまう。電話を受け取った時も多額の料金が取られていることに後で気づいた。

 英国の携帯を欧州他国で使った時の電話代が高すぎるー(場合にはよっては英国内でかける金額の400倍)。こんな思いをしたのは私だけではなく、とうとう欧州委員会がこれを取り上げ、一定の制限をする規則が決められた(昨年)。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/6683139.stm
http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/7020368.stm

 しかし、それでも高すぎる額に設定されていると言われる。こうした状況を、28日放送(チャンネル4)の「ディスパッチ」が詳しく報じていた。この番組が明らかにしたのは、電話通信会社と政府が一体となって、金額を下げないようにしている、という「事実」だった。

http://www.channel4.com/news/articles/dispatches/the+mobile+
phone+ripoff/2081247

 将来的に文字よりも動画を沢山見せる携帯電話を中心にしたい、そのためには英企業の基盤を強くしておきたい、という政府+企業の考えが背景にあることを番組は示唆していた。

 通話に加え、短い文字情報を送る「テキスト・メッセージング」が英国では人気で、1つのメッセージを送るのに大体5ペンス(10円)かかる。番組が小学生に聞いたところ、教室の中で半分ぐらいが携帯を持っており、「テキストは安いから」とほとんど全員が言っていた。そして、英国では毎秒5000のテキストメッセージが送られているという。これが携帯電話・通信会社の大きな利益源の1つでもある。

 テクノロジーへの投資などの諸理由から、はたから見れば「高すぎる」料金設定をしているのかもしれないが、結局のところ、消費者が犠牲になっているというか、消費者がこうした会社の投資のためのお金を肩代わりにしている構図なのか。一社が急に安くしたら、どうなるのだろう、例えばボーダフォンが?番組は「競争が十分に起きていない」状況を明らかにした。

 英国は大陸欧州からは「アングロサクソン的ビジネス=市場原理至上主義」と見られることがあるようだ。そこで摩擦が起きることもあるらしい、というのが、「ミニ・マードック=メコム」の例である。(以下、「東洋経済」4・12号の筆者記事に加筆。)
 

嫌われる”アングロ・サクソン流”

 「メディア王」ルパート・マードック氏のミニ版とも言えるのが、欧州大陸の新聞を次々に買収するデービッド・モンゴメリー氏だ。1990年代に大衆紙のミラー・グループ最高経営責任者を務め、サンの編集長だったこともある。2000年に自ら設立した投資会社メコム・グループ(ロンドン上場)を設立。欧州地方紙の買収を開始した。

 現在の版図はノルウェー、デンマーク、スウェーデン、オランダ、ドイツ、ポーランド、ウクライナなど広範。独高級紙ベルリナー・ツァイトゥング(約18万部)、デンマークのベルリンスケ・ティゲンゲ(約12万部)などを手中にした。モンゴメリー氏のターゲットは「家族経営、地元に密着、組合がない地方紙」で、大手メディア企業が狙わないような地味な企業が多い。07年12月期の売り上げは前期比3%増の14億ポンド(約2700億円)、営業利益は同22%増の1億2000万ポンド。所有する欧州の新聞の多くが定期購読制を取っていることが利益増に貢献した、とモンゴメリー氏は述べる。

 しかし、人員削減や、記者にマルチメディア体制に対応するスキル(英メディア界では常識)を求めるモンゴメリー氏に対し、外国企業に経営されたことがない欧州新聞紙の一部は反発を強めている。特に労使問題に悩むのはドイツで、「アングロ・サクソン的(=市場原理を追求)ビジネスを進めようとしている」と抵抗が起きた。05年、所有新聞の1つベルリナー・クリエ紙は1面でモンゴメリー氏の写真を上下反対に印刷し、「ノー」という言葉を添えた。07年秋には、傘下ドイツメディアの代表との集会で、ベルリナー・ツァイトゥング紙の記者に、「ドイツ語が分からないのにどうやって良い記事か出たかどうかが分かるのか」とやりこめられている。

 文化の壁は厚い。翻って英国では、テレグラフの前所有者はカナダ出身のブラック卿だし、サンやタイムズの所有者は豪州出身のマードック氏。外国人のメディア所有への拒否反応はすでにない。それに対し、欧州大陸では新聞を自国を象徴する、より高次元のものとして捉える傾向が強い。メディアを「ビジネス」と割り切るメコムは、確かに欧州大陸で忌み嫌われるアングロ・サクソン的なるものの権化なのかもしれない。

関連

http://www.guardian.co.uk/media/2008/feb/20/pressandpublishing.
mediabusiness
http://www.guardian.co.uk/media/2008/mar/26/pressandpublishing
by polimediauk | 2008-04-29 18:24 | 新聞業界