小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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ITVに罰金

 民放ITVに、通信規制団体オフコムが約568万ポンドの罰金を課した。電話を使った視聴者参加番組での不正を罰するものだった。以前何度か書いたけれど、クイズ番組で回答する、あるいは番組出演権を得るために、視聴者がテレビのリモコンや携帯電話などを使って、番組に「電話する」仕組みの視聴者参加型番組が英国で人気だ。ところが、既に正解者が決まっていたのに、電話での回答受付を続けていたり、出演者をあらかじめ制作チームが決めていたのに、あたかも視聴者全員に参加する見込みがあると思わせて、電話受付を続けていた。これでITVは巨額の利益を得ていた。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7373131.stm

 ・・・と思っていたら、同じITVがらみでもう一つのスキャンダルというか不正行為があった。それは、2005年の「英国コメディー大賞」で、視聴者が選んだ賞の受賞が、本当は「キャサリン・テート・ショー」というコメディー番組であったにも関わらず、この授賞式で賞を手渡す人物だった歌手のロビー・ウイリアムズが「受賞者がアント&デック(二人組みのコメディー俳優・あるいは司会者)でないと出演したくない」と言ったそうで、これを反映してか、アント&デックが受賞者になっていた、というものだ。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7390193.stm

 誰が最終的に本当の受賞者でなく、アント&デックに大賞をあげることにしたのかは、分かっていない。ロビン・ウイリアムス側は関与していないとし、アント&デック側も、自分たちが番組の「エグゼキュティブ・プロデユーサー」であったにも関わらず、「知らない」といっているようだ。

 今日、元テレビプロデューサーでメディア業界に長い友人とランチをしていたら、「こういう場合、誰も手をあげようとはしない。情けない」という話になった。迷宮入りになるか、一旦潮時が来た後で、知らないうちに下っ端のプロデューサーが首を切られるかー。

 このプロデューサー氏は、かつてロンドン・ウイークエンド・テレビに勤めており、この会社はもうなくなってしまったが、ルパート・マードックのもとで働いていたと言う。マードックがこのテレビ局を所有していたことがあったのだ。(ジェローム・タッチリ氏の本によれば、マードックがこのテレビ局を買収したのは、名物キャスターだったデービッド・フロストにかつてインタビューで恥をかかされたことがあるのがきかっけだ。マードックは、買収後まもなく、フロストの首を切ったそうだ。)所有者と言うポジションにいながら、現場にやってきて、番組をああしろ、こうしろ、と細かく注文をつけたという。マードックは、「自分で現場で作りたい」タイプの人間なのだ、と。「今はたくさん新聞やテレビ局を持っているから自分の手を直接下せないのが残念なぐらいではないか」と話していた。

 米ニューズデイがマードックの傘下に入るのも時間の問題のようだが。(10日時点で、あきらめたという報道あり。)
by polimediauk | 2008-05-10 06:38 | 放送業界