英レイプ報道、「特殊例伝え有罪率低下」
これはもともとインディペンデント紙で報道されたトピックだった。
http://www.independent.co.uk/news/media/report-calls-for-changes-to-rape-coverage-786543.html
ポイントは、レイプ事件では「レイプされた女性(圧倒的に犠牲者は女性)が悪い」とする見方や、レイプに関して一定のイメージがつきまとうため、これにそぐわないレイプはレイプと見なされず、裁判でも陪審員が有罪判決を出そうとしない傾向がある、という点だ。もし有罪率が「事実にそぐわない報道」のために極端に低かったとしたら、問題だ。一体事実はどうなのか?
紹介されていた報告書を取り寄せ(www.eves4women.co.uk) 関連記事を英新聞のネットで探してみると、確かに有罪率が極端に低いようであることが分かる。
http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/rape-victims-failed-by-lack-of-funds-say-campaigners-809604.html
http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/woman-who-blamed-herself-for-rape-jumped-from-bridge-774375.html
BBCサイトやタイムズサイトでもキーワードを入れるとかなり関連記事があった。
レイプ事件は本当にレイプだったのかどうかの判断が難しいと言われる。なかなか、公平な判断がしにくい、と。また、「有罪率が極端に低い」という前提そのものが正しくない、という見方もある。「やはり女性に責任があるのだ」という見方も。
http://commentisfree.guardian.co.uk/david_cox/2007/09/feminisms_rape_fallacy.html
いずれにしても、この報告書の内容とその意味合いを、先月、「新聞協会報」に書いた。以下はそれに加筆した。
英レイプ報道、「特殊例伝え有罪率低下」 慈善団体が報告書
メディアが特殊な事例を多く報道することが、レイプ事件の有罪判決率の低さに影響しているーー。英国の女性支援のための慈善団体がまとめた報告書によると、メディアが伝えるパターンに当てはまらない性犯罪事件では、陪審員が被害者の訴えを信用せず、無罪を評決する傾向があると指摘した。英報道苦情処理委員会(PCC)は、特殊な事態を取り上げるのが報道だと反論している。
報告書は、2月下旬、慈善団体「イーブス」が、女性に対する暴力の撲滅を目的とする「リリス・プロジェクト」運動の一環で作成した。2006年に英主要紙とBBCのニュースサイトで報道された、136本のレイプ・性的暴力事件を対象に調査。内務省が発表する「英国犯罪調査」などが記載する動向とのかいりを指摘した。
まず加害者は知人、友人、家族らが80%以上を占める。しかしメディアが伝えるのは、被害者の見知らぬ人物が半数に上る。発生場所も戸外など公共空間は全体の13%にとどまるにもかかわらず、報道では54%を占める。発生件数比では5.7%しかない有罪判決は、報道で取り上げられた事件では48.5%にもなる。身体に大きな傷痕が残るほどの暴力も、実際以上を占めた。
これらの点を挙げ、報告書は「性的暴行は見知らぬ人物が戸外で、過度の暴力を用いて行なう」という「神話」が作られたと述べる。
この神話にそぐわない体験をした被害者は警察への通報への意思をくじかれ、メディアや警察は女性の訴えを「作り話」と見なし、裁判で陪審員は被告を無罪にする傾向があると言う。
内務省が一部資金を提供した「リリス・プロジェクト」の調査の背景には、有罪判決比率の大きな低下がある。レイプ事件で有罪判決に至るのは現在5・7%だが、30年前は30%強だった。裁判まで持ち込んでも、被告が有罪となるのは25%だ。
無 罪件数の増加を背景に、複数の世論調査で、レイプ事件の被害者(殆どが女性)が「嘘をついている」、「服装、過度の飲酒など被害者側に落ち度があった」と、被害者に対して厳しい見方をする人が増えている。
加害者の実名報道は可能でも、被害者の実名報道は生涯禁止だが、この点を不当とする声も上がるようになり、政府は、昨年、加害者が控訴後に無罪となった場合など、一定の条件の下で被害者の生涯の匿名維持を変更する道を検討した。現在までに変更は起きていないが、報告書は、「被害者が安心して被害届けを出せる点からも非常に重要だ」として、実名発表への切り替えの動きに警告を発した。
メディアが特殊な性犯罪事件を数多く報道し、結果的に被害者の利益を損ねているとの批判に対し、PCCは「メディアの仕事は、特殊な事態を報道することだ」(2月24日付インディペンデント紙電子版)などと反論している。
**エコノミストとこの邦画のエントリーは以下に
http://ukmedia.exblog.jp/5544362/