小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


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仏出版社がウイキペディア仏語版を開始

 インディペンデント紙などによると、フランス語の百科事典を150年以上前に作成したラルース社が「現状よりももっと優れたウキペディア」のフランス語版を開始した。(以下のアドレスは私がやると途中で止まってしまう。後日また開けてみたい。)

http://www.encyclopedie-larousse.fr/

 インディペンデント記事
http://www.independent.co.uk/news/europe/french-publishing-group-sets-up-rival-to-wikipedia-827705.html

 ウイキペディア同様に無料でアクセスできる。しかし、情報の信頼性を高める工夫として、情報提供者(書き込む人)はあらかじめ個人の名前他の情報を登録し、ログインしてから、情報・記事を送る。掲載された記事にはその人の名前がつき、責任の所在が明確にされる。一旦書き込んでしまうと、簡単に変更されないよう、保護されると言う。

 また、一般ユーザーからの書き込みに加え、ラルースの百貨事典で既に出した15万の記事と、1万の画像を使う。ナショナルジオグラフィックとの提携で今年後半には動画も入れる。フランス語版ウキペディアには39万人のボランティアが協力する。

 本家ウイキペディア(記事本数一千万とされている)の方はドイツのメディアグループ、ベテルスマン社から、9月、紙に印刷したものが出るそうだ。(これはおそらく英語版が、ということだろうか?)

 産経新聞(5月14日パリ発)によると、「ラルースは1852年創設の辞書の老舗。ラルースと並ぶ辞書の老舗のロベールも今年後半には無料サイトを開設する予定で、無料サイトでの“辞書競争”が活発になりそうだ」。

 フランスは「仏語」に非常にこだわる・大切にするようだ。世界の情報が英語に支配されていることに我慢がならないのだろう。

 今回のラルースの試みが実際にいつまで続くのか、利用者はどこまで増えるのか?現時点ではまだ分からない。英仏の両言語で華々しくデビューしたが、サルコジ大統領からの支持がなくなり、フランス語をメインにすることになった「フランス24」の例もある。減速、尻つぼみにならないといいが。
by polimediauk | 2008-05-14 18:26 | ネット業界