小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

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元英タイムズ編集長がWSJの編集責任者に

 フィナンシャルタイムズやウオールストリートジャーナル(WSJ)が21日報じたところによると、元タイムズの編集長だったロバート・トムソン氏が、20日夜、マードックのWSJとダウ・ジョーンズ社の編集統括者になる合意がなされたようだ。

http://www.ft.com/cms/s/0/36a27440-26d1-11dd-9c95-000077b07658.html?nclick_check=1

 トムソン氏はオーストラリア出身で、2002年から07年までタイムズの編集長だった。マードックがダウ・ジョーンズ(DJ)を昨年買収してからは、発行人・パブリシャーというタイトルになっていたが、新しい職では、WSJのマネジング・エディター、親会社のダウジョーンズではエディター・イン・チーフとなる。FTは、マードックがWSJを自分の好みに変える作業を一層早めたい意思を表している、とする。

 自分が買収した新聞を自分の好みのカラーにすることで著名なマードックは、少しずつWSJを専門の経済・金融よりも一般的なニュースや政治ニュースが入ったものに変更中で、WSJの特色の1つとも言われる非常に長い分析記事も嫌っているようだ。

 トムソン氏の統括編集長就任には、前職者マーカス・ブローチリ(Brauchli)氏の辞任劇があった。辞任が明らかになったのは4月。 ダウ社をマードックが買収してから4ヶ月後だ。FTの以前の記事によると、ブローチリ氏は新しい所有者がWSJにたくさん資金を投資してくれれば大きな未来が開けると考えていたそうである。

 ダウ社買収の条件の一つは独立理事会の承認なしには編集陣(ブローチリ氏を含む)を変えないことだったが、買収後ほどなくしてロバート・トムソン氏が「発行人」になり、ブローチリ氏の上司になってしまった。マードック自身もよくWSJの編集室を訪れるようになったという。

 スタッフにあてた手紙で、ブローチリ氏は、新しい所有者が来たので、新所有者が望む統括編集長をたてるべき、と書いていた。

 今月上旬、マードックはWSJをこれまでの中核読者の関心ごとであるビジネスや金融中心から、一般読者の獲得を狙って政治や一般ニュースを増やしているという見方は正しくないと反撃している。編集権の独立は保たれており、独立編集委員会にブローチリ氏がもしそうしたければ訴えることもできたが、氏はそうしなかった、と述べている。

 今回のトムソン氏の就任に関し、この特別編集委員会は満場一致で賛成したと言う。ブローチリ氏の辞任にいたる過程は「受けいられない」としたが、編集権がおかされたなどの話はなかったという。

 しかし、21日付のWSJの記事では、トムソン氏は特別委員会に対し、ブローチリ氏の辞任の処理は「間違いだったと今になって思う」と述べたと言う。

 
by polimediauk | 2008-05-22 03:29 | 新聞業界