小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk

BBC1がライブ放送を近く開始、 「インディー」の1面は「時々退屈」

 スウェーデンで4日まで世界新聞協会(WAN)の編集者会議が開かれていたせいもあって、メディアの話が山盛り状態になった日が続いた。(それなのに全く更新なく、大変失礼いたしました。)日本ではこの様子、報道はされたのだろうか?こうした会議は参加費が高く、なかなかフリーでは参加しにくいが、ある程度の様子はメディアガーディアンなどが結構報じていた。やはりデジタル、ネットに将来を見る、という話が出たようだ。ついこの間まで(あるい今でも)、「(紙の)新聞に将来はない」という言い方があったと思うけれど、紙は紙だし、新聞(紙でなくなっても)の存在自体が危うくなるというよりも、「紙+広告だけに頼り切った経営は維持できない」ということだけなのだろう。危機説は、今思うとやや悲観的過ぎたように思う。最近、ネットと紙の関わりについて考えてみたところ、結論としてそんな感じがする。(その根拠はまた別に出したい。前回のワーナーミュージックの人のインタビューにも何かしらヒントがあったように思う。)

 山盛りのニュースがある中で、「ええ!」と驚いたのが、BBCが、ストリーム放送でBBC1という主力チャンネルの全番組を見れるように、年内にもする、というトピックだった。地上波では既に民放最大手ITVが主力のITV1をはじめ、デジタルのITV2、3、4などをストリーム放送(ライブ放送)を昨年夏から実行している。BBCはこれまでニュース24というデジタルのチャンネルをライブ放送(通常の放送時と同時)しているが、地上波では初めてで、テレビがなくてもPCで主力チャンネルが放送と同時に見れるのはすごい。

 http://www.telegraph.co.uk/news/2076905/BBC1-to-go-live-on-internet%2C-licence-still-needed.html

 それと、バージンメディアという有料放送のチャンネルの1つに、BBCアイプレイヤー(過去の番組を見れるソフト)が入った。アイプレイヤーを使って見逃した番組を見るのに、これまではPCで見るのが普通だったが、テレビの画面で見れるならこしたことはない。オンデマンドがますます使いやすくなった。

 先のテレグラフの記事によれば、PCでBBC1の全番組が見れるようになるけれども、「それでも受信料はもらう」BBC、と付け足すことを忘れない。テレビ受信機のない家というのはほとんどないかもしれないが、理論的にはPCだけでBBCを見ることも可能で、テレビ受信機のある家からテレビ・ライセンス料を取って、これを収入のメインにしているBBCの場合、やはりライセンス料を取る理論付けが難しくなった。PCを持っているからといってライセンス料を取る、というわけにはいかないであろうしー。

 いずれにしろ、BBCはどんどん、「テレビ受信機で見るのがテレビ番組、テレビ受信機で番組を流すのがテレビ」という形を崩しつつある。周囲の状況(ライバルのITVやスカイ、ネットの動画配信市場)がどんどん発達するので、自己変革をせざるをえないのだろう。本当に、2012年のアナログ通信停止後、どんな形の放送局になっているのか、想像をやや絶する感じがある。

 もう1つ、おどろいたのが、インディペンデントの編集長サイモン・ケルナー氏の、「インディーの表紙は時々つまらないときもある」という発言。

http://www.guardian.co.uk/media/2008/jun/05/theindependent.pressandpublishing


 インディーは新聞として中立的な立場を守るというのではなく、意見を前面に押し出すということで、「ビュー・ペーパー」と言われている。特にそのスタンスをはっきりと表すのが1面だ。しかし、今度新しく編集長(オブザーバー紙の元編集長ロジャー・オルトン)が来て、9月には前面カラーにし、紙面改革が始まる。編集方針も変わるのだろうな、と思わせるインタビューが掲載されていた。どんなおもしろい新聞に生まれ変わるのだろう?

 「過去2,3年のインディーと現在のインディーは随分違う。これから2-3年後のインディーもかなり変わっていると思う」というくだりもある。

 英国のメディア界はとにかく、変化がめまぐるしい。

 タイムズも、そういえば、今週から紙面刷新をしたのである。ほとんど前面カラーとなり、毎日つく特集小冊子(フィーチャー)がもっとカラーが多く、写真も大きくなった。フィーチャー版は「雑誌」風を目指すという。ニュース面を見ると、確かにカラーは目を引くが、「一体どうして変えたんだろう?」みたいな感じもする。各紙面のトップの見出しも随分小さくなった・・・。しかし、変えざるを得なかったんだろうな、ほかも変わるから。もう一回ぐらい変わるかもしれないな、と思わせる、近いうちに。今のところはあまり決め手のない(全面カラー化以外は)ように見えるからだ。
by polimediauk | 2008-06-06 06:51 | 放送業界