小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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秋葉原事件、神保さんのビデオに注目

 秋葉原の例の事件で、ビデオジャーナリスト神保さんのトーク・ビデオが非常におもしろい。(一部はそのまま見れるが、全て見るには会員登録。しかし、一月ほんの500円であるのがすばらしい。)ゲストは若者文化やネット事情に詳しい批評家の東浩紀氏だ。

http://www.videonews.com/

 一部を神保さんのブログから引用すると:

http://www.jimbo.tv/videonews/000459.php

 今年に入ってから、土浦連続殺人事件や岡山線路突き落とし殺人事件など、若者が見ず知らずの人を殺傷する事件が相次いでいる。政治家や世の識者らは、動機が不可解なこれらの事件の原因を、若者が抱える『心の闇』に求め、ネットやゲームなど仮想現実の影響として、規制を加えようとしている。現に、町村信孝官房長官が、事件発生直後の記者会見でナイフの規制強化に言及しているほか、サーバーを管理する事業者にネット上の「犯行予告」の書き込みを事前に察知させ、警察への通報を義務づけようとする動きも出ている。

 しかし、そうした場当たり的な規制が、今回のような事件の再発防止に、僅かでも寄与するだろうか。今回の事件について東浩紀氏東(あずま ひろき)氏は「おきるべくしておきた」と語り、この事件の背景には、若者の怒りと不満が爆発寸前まで蓄積している現状があるとの見方を示す。

 東氏は、実際にこのような事件が起きるはるか以前から、いわゆるロストジェネレーションと呼ばれる20~30代の若者たちに、不満や怒りがたまっていることは目に見えて明らかだったと指摘する。だが、昨年、論壇誌で「希望は戦争」と語った赤木智浩が、社会からある種の驚きを持って迎えられたように、彼らの怒りのメッセージはマスコミに無視され、社会には届かず、政治にも反映されてこなかった。また、彼ら自身も、投票による行動やデモなどの政治行動が、彼らの状況を改善するとは到底期待できないと感じていた。政治的な表現の場を失った彼らが、怒りや不満を社会に訴える手段として、ネット掲示板があり、そしてその究極の形としてこのような凶行を選んだと考える方が、今回の事件はより正確に理解できるのではないか。それゆえに、東氏は今回の凶行を「テロ」と呼ぶべきだと言う。事実、ネット上では、加藤容疑者の犯行そのものは断罪しつつも、彼の置かれた境遇については、共感の声が多く寄せられているという。

以上引用終わり。

 このビデオでおもしろいのは、宮台真司氏との対談であることだ。今回の事件を一種の「政治テロ」と見る東氏と、社会学の立場から検証する宮台さんの意見の相違がおもしろい。宮台氏は、超有名だから私が何かを言うほどでもないが、このビデオの中では、独特の分析を披露している。

〈宮台さんのブログ)

http://www.miyadai.com/

 神保さんのブログにこんな表記があるー「あくまでここまで開示された情報を元に判断するしかないが、加藤容疑者のゲームやネット、携帯とのつながりは、現代の若者としては何ら特別なものは窺えない、標準的なものだった。むしろ加藤容疑者の発言を追うと、彼には、携帯サイトに書き込む以外の外界とのコミュニケーションがほとんど存在しない、絶望的な孤独状態にあったことが推察される。東氏は、コミュニケーションが苦手で仮想現実に耽溺していると非難されるオタクたちの方が、むしろ安全であり、今回の事件では、そういう代替物すら持たない状況にある多くの若者を、いかに社会が包摂するかを考えるべきだと指摘する」―。

 「・・・そういう代替物すら持たない状況にある多くの若者」-。こういう若者たちを一括して表現する言葉はあるのだろうか?世代や性差、趣味などによって、ある特徴を持った人々をある言葉で大雑把にくくってしまう作業を私たちはよくするが(それはオタクかもしれないし、ギャル、あるいはオヤジ、無数にあるだろう)、今回、どうもぴったりした言葉がないか、まだ出来ていない感じがする。「ワーキング・プア」に相当するような言葉が、そのうち出てくるのかもしれない。・・というようなことを考えるのにこのトークビデオが役立つ。
by polimediauk | 2008-06-16 06:47 | 日本関連