テレグラフで雑談

7月上旬、テレグラフ編集室に行く機会があったのだが、書きそびれていた。取材ではなかったので、きちんとした報告ではなく、雑感ということで。
テレグラフはロンドンのビクトリア駅から非常に近い。歩いて2分ほどだろうか。広い編集室の上の階に経営陣の人がいて、丁度昼時だったので、経営者の隣の部屋は、ランチ・ミーティング用のテーブルがセットされていた。(どんな優雅なことを話すのだろう???リッチな人ばかりか?)
それにしても、広いなーと思った。写真を見ていただきたいが、昼だから人が少ないのかどうか?つまり、人数として(編集部、経理なども入れて、約1000人ほどのようだ)少ない、というよりも、スペースが広すぎるような。
これはある意味では深いのではないかと思った。つまり、ウェブ重視になって、技術の発展で、「図体がでかい」部分は減るべきではないのか?という議論があるからだ。今が変化の過渡期なのかどうか、テレグラフにとって。
外報ニュース担当デスクがいたので、ちょっと話を聞いてみると、何と朝8時半から来ているそうだ。帰りは午後8時半頃(早い版を作って・見てから帰るのだろう)。働き蜂である。もちろん、自宅でもニュースはチェックするのだろうし。編集会議は10時半頃と午後4時頃の2回だ。これは日本の新聞社でもほぼ同じだろう。人事の話になって、「何時誰が首を切られるのか分からないから、びくびくして、一生懸命仕事している」ということを言っていた。「まさか、外報デスクなら、安泰でしょう」と返したが、そうでもないらしい。後で、知人からこの人は解雇になるかもという噂が出ていると聞いて、申し訳ないことを聞いたなと後悔した。
長いことサブエディター職をやっている人にも聞いた。校閲+整理の仕事にあたるらしい。今、英新聞界ではこのサブエディター職をどうするかがホットなトピックになっている。つまり、職自体をなくする動きがあるのだ。見出しを書いたりする仕事だが、この人によると、「今はデザイナーがサブエディター職を兼ねるようになっている」と言っていた。
最大の失敗は?と聞くと、作家サルマン・ラシュディーの名前が見だしに入った大きな記事で、サルマン(Salman Rushdie)のつづりを、間違えてsalmon(サケ)とやってしまったそうだ。後で気づいたが、時既に遅し。謝罪記事は出したかと聞くと、「何もしなかった」。次の日はまた気を取り直して仕事を続けたそうだ。
オピニオン面の担当者(外国ニュースの人もそうだったが、この人もサンデーテレグラフから移動したばかり)は、見た目、30歳ぐらい。若そうに見えた。テレグラフのオピニオン面には昔から書いてきたうるさ型のライターも多いだろうから、調整に苦労しないのかと聞くと、「ない」そうである。日本のように(日本の新聞社がそうだ、という意味でなく、一般的に)、年長だからといって遠慮することは基本的にはないと彼は言っていた。
その他聞いたところによると、何でも、テレグラフの社説は非常に影響力があって、特に政治関係の社説の場合、翌日の影響の大きさを考えて、ある特定のトピックの掲載を故意に遅らせる、ということもあったそうである。(漠然とした書き方だが。)今はそういうことは「(少なく)なくなった」。
とにかく、テレグラフはどんどん変わっており、どんどん人も切っており、デジタル・コンテンツの提供者としての道をまっしぐらのようだった。「昔の」テレグラフを知らない私にとっては、今のテレグラフも結構おもしろいなあと思って読んではいるのだが。
それにしても、日曜紙をいろいろ手にしてみると、全面カラー化と文字など変えたサンデー・タイムズがきれいだな・・・と思う。テレグラフも9月から新しい印刷工場で印刷する(マードックのニューズインターナショナル社の印刷所)が、そうすると全面カラー化が可能になると言う。(やりやすくなる、ということだろうか、今現在不可能というよりも。)文字も含めたデザインまで変わるのかどうか、注目だ。