小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk

英政治「その筋」の話 BBC

 ブラウン首相・労働党の支持率低迷で、ミリバンド外相がガーディアンに記事を書いたら、これが「次の労働党首への立候補か?」とメディアが大騒ぎになった。

 「これからどうなるのか?」と思う人は少なからず(でも本当はそれほど多くはない気もするが、国民的にはーーどっちでもよい人が結構多いと思う)いるだろうし、メディアも何か書かなければ、ライバルに越されたくはないという思いが強いことは想像できる。

 しかし、何でもかんでも書けばよいというものでもないはず・・・。BBCニュースのサイトに「元大臣たちがブラウンに挑戦」という記事が出ていた。また反乱が起きたのかと中を見ると、

http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/7539858.stm

 名前は出されていないが、「元大臣だった複数の人物のグループが」、現在の「真空状態」を満たすために、いくつかの政策議題を出す、というものだった。この議題は今後「数週間以内にも」出る、と・・・。読めば読むほど、限りなく雲をつかむような話である。

 結局、こういう議題が本当に出されるのかどうかも皆目分からず、出たとしても時期は全く未定・・・。これでは本当に(デマに近いような)うわさのうわさに過ぎない。ブログなどで「ある筋からこういう情報があった」と、一つの情報として出すというのならまだ分かるけれどもー。おそらく、書いた本人もそれを知っているのではないか。知っていても、出さざるを得なかったのかもしれない。

 私も含め、ブログで「xx筋の話としてこういうことを聞いた」と書く時、一定の信憑性をもったことを出すのが普通だと思う。かなり信憑性はあるが、確実に裏が取れていない、でも信頼性が高いから出そう、と。そうでないと、その情報を公に出す必要がないからだ。(故意にうわさを広げようとしていない限りだが。)

 この記事を最後まで読んでも、いろいろなところからかき集めた情報で、それぞれにうわさのうわさに過ぎないのだった。こういうことを、BBCがよく出すなあと思う。「名前不明の元大臣たち」の名前がこの記事の最後にでも出ていれば、痛快のスクープになったかもしれないが。

 こういう記事を出していると、いわゆるメディアが「ウエストミンスター・ビレッジ」(「英議会村」というような意味合いになるだろうか)のメンタリティーというか、政治家と政治記者だけが騒いでいる状態になってしまい、国民はしらける。政治が国民から離れてしまった思いを強くさせてしまう。ネットは簡単に書き込んで、情報を外に出せるが、こういった記事が出るようではなあ・・・と思う。BBCは一体誰と競争しているのだろう?グーグルや個人の政治ブログと競ってもしょうがないのに。
by polimediauk | 2008-08-04 06:18 | 政治とメディア