小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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報道と金融危機 英国記者の視点

 昨今の金融危機の報道はどうあるべきか?報道が危機をあおったことはないのだろうか?あるいは、危機となる前に報道が警告をすることはできなかったのだろうか?

 ・・・という問いを、放送ジャーナリスト、スティーブン・ヒューイット氏がBBCラジオ4の「メディア・ショー」(10月1日放送)で行っている。(1週間過ぎると消えるはずなので、聞きたい方はその前に。)

http://www.bbc.co.uk/radio4/factual/mediashow/

 BBCのビジネスの記者ロバート・ペストン氏(前に「プレストン」と書きましたが、ペストンの間違いです!!)は、現在は国有化された英住宅金融ノーザン・ロックの危機(資金繰り難)を最初に報道したことで著名だ。この報道の後、ノーザンロックの支店前には預金を全額出そうとする人々の長蛇の列ができた。取り付け騒ぎが起きてしまったのである。ペストン記者自身に危機を起こした一因があるのではないか、報道の責任があるのではないか、という問いに、ペストン氏は、「ノーザンロックの構造自体に問題があった」と述べる。例えば、多くの預金者が銀行に押しかけたとき、これをスムーズに処理できるほどの支店がなかったなど。預金者の数と比較して支店数が極度に少なかった、と。

 報道記者としての責任は十分に自覚しているが、基本として、これは BBCに入る前からもそうだが、まず視聴者を「大人として扱う」ようにしている、という。

 一方のフィナンシャルタイムズ紙のジリアン・テット記者は、世界に広がる金融市場の動きを「メディアは責任を持って報道した」、と述べた。放送業界が動きを刻々と報じていったので、それに市場が反応し、これにまたメディアが報道する、というすばやい動きがあったと述べた。

 ペストン氏は「迫り来る危機を大きな声で報道することは非常に難しかったーー政治などのコンセンサスが『異常なし』という文脈を作っていたからだ」と告白。
 
 テット記者は「過去4年ほど、金融業界の先行きに大いなる懸念を持ってきたし、いくつもの記事を書いてきた」、「しかし、大きな問題は、過去7年間で金融上の改革(テクノロジーなど)が非常に大きな変化を遂げたにも関わらず、これを誰も語ろうとはしなかったことだ。そんなことを書けば、テクノロジーのオタクであると思われてしまう、という雰囲気があった。金融業界の人が語りたがらなかったのだ」。それと、「普通の人がノーザンロックの問題を知るべきではないという考えがあった。しかし私は、金融業界を運営している人だけがあることを知っていて、口座を持つ(普通の)おばあちゃんが知らない、ということは許されないと思った」として、ペストン氏の報道を弁護した。

 他にも、保守党党首キャメロンのメディア戦略の是非、公共放送の将来などのインタビューが入っている。

 来週(10月8日放送)は広告収入激減に悩み、地方ニュースを手放したがっているITVの会長マイケル・グレード氏が出演するそうである。


 
by polimediauk | 2008-10-04 11:41 | 政治とメディア