小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk
プロフィールを見る
画像一覧

カテゴリ:未分類( 42 )

c0016826_2212027.jpg
 間があいてしまったが、先月中旬に開催された、ロンドン・ブック・フェアーで聞いた、アマゾン・キンドルでの電子書籍・自己出版の話を続けたい。

 16日に開かれた、「キンドル・ディレクト・パブリッシング(KDP)」についてのセミナーに出てみた。以前から、アマゾンでの電子書籍の自己出版について、大いなる興味と期待を抱いてきた。

 新聞記事などではよい話ばかりなのだが、このセミナーに出てみて、がっかりはしなかったが、更なる疑問がどんどん出てきてしまった。

 まず、説明に立ったのは、KDP部門のアティフ・ラフィク氏である。この部門の担当者で、普段は米国勤務だ。

 ラフィク氏の説明によると、KDPでは複数の言語(英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語など)で出版できる。そして、キンドルでの出版とは、PC,タブレット、そしてキンドルなど、様々な端末で読める形になる。

 作り方はとても簡単で、まず原稿を先に作っておく必要があるが、その後、原稿をKDPの画面からアップロードし、価格など細かい点を決めて、「出版する」を選択するだけだ。これで、「早ければ、24時間後には商品として出る」そうだ。

 この「早ければ、24時間で」という言葉は衝撃的だったが、なんだかドキリともした。つまり、「早すぎはしないか?」と。通常、新聞や雑誌用に原稿を出してさえ、これをフォーマットに入れて、ゲラを作るまでには少々時間がかかる。ある意味、かかって当然でもあるだろう。「24時間」とは、つまるところ、(ほぼ)ノーチェックということでないか?

 ラフィク氏によれば、出版後は、何部売れているのかを自分で確認できるという。ここが既存の出版社とは違うところだ。

 作者の印税分だが、価格によっても変わるのだが、英国では最大で70%だという(普通の本だと、通常の印税は10%前後といわれている)。KDPでは、一定の金額以下の価格だと、印税は35%になる。

 価格は後で変えられるそうで、例えば発売直後はキャンペーンとして非常に安くするというのも手だそうである。

 KDPでベストセラーになった作家もすでにいる。前回、紹介したケリー・ウィルキンソン氏もその一人だ。

 会場には昨年11月、「オンリー・イノセント」という犯罪小説をKDPで出した、レイチェル・アボットさん(右上、写真・著者ページより)が姿を見せた。以下は一問一答の抜粋である。

―何故KDPで出したのか?

アボット:本をいつかは書きたいと思っていたのだが、仕事があって書く時間がなかった。しかし、4年前に引退し、時間ができたので、楽しみとして書いた。いろいろな人に読んでもらうと、面白いというフィードバックが返ってきた。

 いくつかの出版社にも送ってみたのだが、「面白い」「よい作品だ」とは言ってくれたが、最終的には「うちには合わない」と言われた。作家の面倒を見る、エージェントにも登録したが、よい話にはならなかった。去年の秋から、英国でもKDPができると聞いて、やってみようと思った。

―ベストセラーをどうやって達成したのか?

 最初は1日に数冊売れただけだったが、まず、ビジネスプランを作った。どうやって売ろうか、と。前にコミュニケーション関係の会社に勤めていた。3週間をかけて、マーケティング計画を立てた。実際には、ソーシャルメディアを多用した。例えば、ツイッター。作家のツイッターをフォローする人を自分もフォローした。週に7日、1日に12時間、マーケティングに専念した。今年2月、ナンバーワンのセラーになった。

ー価格付けは?

 最初は1・99ポンドで、それから1月半ばごろ、特別キャンペーンとして99ペンスで売った。

―ツイッターを使ったやり方で効果的な方法は何か?

 ほかの作家のツイッターを研究し、フォローされたら、必ずこちらもフォローした。また、一人ひとりに話しかけたり、興味深いツイートを心がけた。本の一部の内容を引用することも、意識的に行った。また、いつツイートが出るかにも気を使った。例えば、300のツイートが、3時間ごとに出るように、と。作家が読者と関係性を持つことが重要だと思う。

***

 会場からアマゾン側に出た質問を2つ、紹介する。一つは私の質問だ。

―先ほど、「早ければ24時間で出る」など、早さを強調していることが気になった。これだけ早いとすると、アマゾンのほうでは、中身についてのチェックがまったくなし、そのまま出るということを意味はしないだろうか?だとすると、キンドルで販売する、書籍の質の維持はどうやっているのだろうか?

 ラフィク氏:うーん・・・これはよい質問ですね・・・。アマゾンでは、問題があるようなものがないかどうか(私の推測だが、ポルノグラフィックなものや人の中傷などだろうか?)に目を通している。(=あまりストレートな答えにはならなかった感じがした。)

 もう1つは、「ベストセラーの話が紹介されたが、すべてがたくさん売れるわけではないのでは?KDPでは、平均どれぐらい売れるのか?」

 ラフィク氏は、「アマゾンではそういう情報を共有しないことにしている」と述べるにとどまった。

 セッションが終わって、どことなく気になったことが1つ、2つ。前回もそう思ったのだが、

 *KDPを使って、初めて本を出す人の本の価格が、いやに低すぎないか?(コーヒー一杯も飲めない価格にする必要があるのだろうか?)モノにもよるだろうが、時間をかけて作った本の場合、どんなに安くても、日本で言えば500-1000円ぐらいにはなってもいいと思う。ただ、「本とは何か?」の考え方が、ここに来て変わっている可能性もある。つまり、画像が入って、せいぜい20分ぐらいで読み切れてしまうものが主流になる「かも」しれないのだ。

 *様々な質の本が出ることになるが、もちろん、つまらない本は売れないからいいのだ・・・という説明はできるものの、「本が出しやすい」ということは、つまりは「小売店はノーチェックで本を出す」ということにもつながる。「間に入る出版社=編集者がいなくなった、よかったな、めんどくさくなくて」・・・などと言って、喜んでばかりでいいのかなあと。小売側の責任はないのだろうか?質、水準、もろもろの責任は、一切合財(基本的には)、作家に帰することになる状況は、いいのか、悪いのか?

 *このブログもそうだが、今は誰でも情報の発信者になった。文章が外に出るとき、書き手以外のほかの人の手が介在しないのが普通になってきた。フェイスブックもツイッターも、まさにそうだ。私たちはもう、こういう状況になれているのだーしかし、本もそれでいいのかな、と。

 *出した後で、実はほとんど売れていなかったりする人のケースも、レポートされてしかるべきじゃないだろうか?そのほうが、KDPで出す本の質があがると思うのだが。

 ***

 などなど考えると、どことなく、心に秋風が少し吹いた、ロンドンの夕刻であった。
 
by polimediauk | 2012-05-04 22:13
 以前に一度、拙著「英国メディア史」の書評を集めたエントリーを出しました。

http://ukmedia.exblog.jp/17371520/

 少し時間がたったので、集まってきたものを紹介します。

①まず、アマゾンにいくつか、書評が出ています。2番目のほうは最近のエントリーのようです。

 「英国メディア史」のページ
http://www.amazon.co.jp/%E8%8B%B1%E5%9B%BD%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E5%8F%B2-%E4%B8%AD%E5%85%AC%E9%81%B8%E6%9B%B8-%E5%B0%8F%E6%9E%97-%E6%81%AD%E5%AD%90/dp/4121100042/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1335181535&sr=8-2

 この方の書評もそうですが、様々な「ここは指摘しておきたい」「こうすればよかった」という点は、書き手としても、「そうだったなあ」と思えることが多く、非常に参考になります。(これを読まれた方も、よかったら、感想などお待ちしています。)

②日本生活情報紙協会(http://www.jafna.or.jp/)が制作しているフリーペーパーの機関紙「JAFNA通信」2月号での紹介記事の抜粋です。

 冒頭で小林さんは、「実は、英国でも米国そして日本同様、新聞の発行部数は低下の一途をたどっている。それでも、毎朝、駅構内の新聞スタンドに無料朝刊紙『メトロ』がうず高くつまれており、これを一部手にとって電車に乗る人が多い。帰りにはこれも無料の『ロンドン・イブニング・スタンダード』でその日のニュースが読める。電車に揺られながら新聞を読む、これが長年のロンドン近辺在住者・通勤者の習慣になっているのだ・・・」とロンドンの地下鉄の一コマを紹介している。
(中略)

 
 15世紀までさかのぼるメディアの歴史と移り変わりが全貌できるほか、「スウェーデンからやってきた無料紙『メトロ』」「ロンドン無料紙戦争」などの項目もあって、英国のフリーペーパー史と最新事情も分かる一冊となっている。



③月刊誌「GALAC」4月号に掲載された、隈部紀生(くまべ・のりお)さん(報道、ハイビジョン番組制作を担当し、BBCにもいたメディア・ウオッチャー)の書評です。(GALACは放送批評懇談会の出版です。http://www.houkon.jp)

『英国メディア史』小林恭子著

 本誌に英国メディアのホットな話題を寄稿している、在英のジャーナリスト小林恭子が『英国メディア史』を出版した。書名は学術書を思わせるが、著者自身が意図したようにエピソードで綴る英国メディアの歴史物語である。

 印刷機が英国に導入されてまもなく、「ニュース」の刷り物が登場するが、宗教と政治による厳しい検閲が続き、議会審議を報道する権利が確立したのは一七七一年だったことを教えてくれる。八五年に現代日刊紙のはしり『タイムズ』が創刊され、十九世紀はじめにはクリミア戦争で初の外国特派員が戦争の現場を生々しく伝え、その記事を見たナイチンゲールが看護を志願するというエピソードが綴られる。

 二十世紀になるとBBCが登場して、スエズ動乱のときに政府の圧力の中で報道の独立を守った有名な歴史が語られる。同時に、新聞社がスキャンダル関係者に高額を払って手記などで暴露をする小切手ジャーナリズムの風潮が繰り返されたことも指摘する。

 そのメディア界にマードックが登場して、最近、電話の盗聴問題で廃刊になった『ニューズ・オブ・ザ・ワールド』を買収し、競争に勝つために次々に新聞街の常識を覆し、衛星テレビ放送を始めて、メディアは多様化から乱戦になったが、インターネットの登場でまた新しい時代を迎えている。

 断片を紹介すると無味乾燥になるが、著者の筆致は人物を中心に平易な文章で、英国在住の実感を交えていきいきしている。欲を言えばインターネットで誰でも情報を発信できる時代のメディアについて、利用者の視点から詳しく触れてほしかった。


④ブログ「After the Pleistocene」3月1日掲載分 http://addfield.jugem.cc/?eid=812 に公開されていた書評です。

 
「英国メディア史」
 
 惜しげもなく裸体を露出したモデルの写真をトップに掲げるイギリスタブロイド紙が、イギリスのジャーナリズムを牛耳っているとは思いたくないが、ここに至るまで実に激しい競争が繰り広げられたということが、この本で改めて理解でき面白かった。タブロイド紙の興亡については、山本浩の『仁義なき英国タブロイド伝説』が詳しいが、英国メディアの流れ全体を概観するにはこちらの方が良い。

 「新聞の運営は最高におもしろい。」と、大衆紙『デイリー・エクスプレス』等を買収したリチャード・デズモンドが語るように、オーストラリアのマードックやロシアのレベジェフなどの富豪が次々イギリスのメディアを支配した。デズモンドはポルノ雑誌で財をなし、レベジェフはロシアの元KGBだった。マードックは「『セックス、スキャンダル、スポーツ』にさらに『もっとセックス』の路線で、『サン』を英国で最も売れる新聞にしようと決めた。」

 ダイアナ妃の悲劇もいわば過激なマスコミの競争の結果であったとも言えよう。これでもかと云えるほど王室のスキャンダルを暴き、政治家のゴシップ・下ネタを探す姿勢は『赤新聞』そのものだが、イギリス階級社会の歪んだ姿を反映するかもしれない。ジャーナリズムも『小切手ジャーナリズム』と言われるほど情報を金で買い、私立探偵を雇い盗聴まで仕掛けるとなると明らかに行き過ぎである。

 杉山隆『メディアの興亡』によると、ある一定部数を一新聞が発行するなら、購入読者からの購読料は不要になる、すなわち掲載する広告料が十分入ってくるから、読売、朝日、日経新聞などは紙価を只にすることが可能である、と推定できる。いまロンドンでは巷に無料紙が氾濫しはじめた。スマホなどの通信機器がますます伸びるなら、いやでも応でも既存の新聞は変わっていかねばならないだろうと予感する。

 イギリスでは国政選挙の際は、ほとんどの新聞は支持政党を明らかにする。この本に敢て注文をつけるなら、もう少しジャーナリズムの意向が政治の動向にどのような影響を与えたか、あるいは与えられなかったか、サッチャーやブレアの政権の末路で子細に語って欲しかった。イギリス世論とジャーナリズムの論調との比較を見たい。それにしても日本のジャーナリズムは静かなものではないか。福島原発の危機の時、誰がメルトダウンの発生を正確に予知したか?


⑤最後に、新聞通信調査会(http://www.chosakai.gr.jp/index2.html)が出している「メディア展望」の1月号に掲載された、東洋英和女学院大学名誉教授で元毎日新聞ロンドン支局長黒岩徹氏による書評です。

 ジャーナリストから大学教師になって、ジャーナリズム論・史を教えたとき最初、手応えを感じなかった。取材するのは面白いが、ジャーナリズムについて書いたり語ったりするのは、なぜか力が入らなかった。戦争、革命、政変など歴史的事件の渦中に立って血のたぎる思いをしたが、平穏な日々に歴史をひも解いても興奮することはなかった。

 だが、それでは理解が足りないと気付くまでに時間はかからなかった。歴史家の言葉や歴史書のあちこちに、史上の人物の悲喜劇、人間ドラマが顔を出していたのだ。それを見つけたとき興奮を覚えた。より深く事件の深層に迫るという知的興味を感じたのである。その象徴的例が、この『英国メディア史』である。

 新聞・雑誌が「プレス」(押すの意)と呼ばれるようになったのは、15世紀に押して印刷する印刷機がロンドンのウェストミンスター寺院の一隅に設置されて以来のこと──と著者は英国の印刷術が新聞・放送に発展していく道程を細かく追っている。

 『ロビンソン・クルーソー』の作家ダニエル・デフォーが小説を書く前にジャーナリストとして活躍。「自らが現場に出かけて当事者から話を聞く」という姿勢で、後に英ジャーナリトら話を聞く」という姿勢で、後に英ジャーナリズムの父と呼ばれるに至った、という興味ある歴史的事実を幾つも拾っている。

 著者が鋭く指摘しているのは、英ジャーナリズムの歴史が常に権力との戦いだったことである。デフォーでさえ英国教会の一派やトーリー派(保守的な政党派)を批判したかどで逮捕されて罰金を科され、さらし台に立たされた。

 1762年に週刊新聞「ノース・ブリテン」を発行し始めたジョン・ウィルクスは、6年後に国王を誹ひ謗ぼうする文書を作成した罪で監獄に収監された。その釈放を求めた市民と政府軍が衝突し、政府軍の発砲で10人近くの市民が命を落とした。以来、新聞が大衆を巻き込んでキャンペーン運動を展開する端緒となった。

 こうした戦いの上に現在の英国ジャーナリズムがある。だから英国人記者の当局に対する追及の仕方は厳しい。権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する──との歴史学者ジョン・アクトンの言葉を信じているからだろう。

 19世紀から20世紀初頭にかけて「エコノミスト」「デーリー・ミラー」「デーリー・メール」「デーリー・エクスプレス」が発刊され、大衆紙全盛の時代へと突入する。デーリー・メールは英仏海峡を最初に泳ぎ切った人や、海峡横断飛行を実現した操縦士に賞金を出すイベントを実施、部数拡張を図った。デーリー・ミラーも路上音楽家たちのコンテストを開いたりして新聞の売り上げを伸ばした。現在の日本の新聞でさえ、このイベント開催の伝統を継承している──こうした興味深いエピソードが豊富だ。

 著者はBBCの変遷もじっくり追っている。その歴史で特徴的なのは新聞との大きな違い──中立か、特定の政党に偏るかである。

 新聞は事実報道だけでなく主張を掲げ、支持政党を明確にしてきた。今でも英国の新聞は総選挙の際に、どの党を支持するかを明らかにする。

 しかし、BBCはラジオ時代からのゼネラルマネジャー、ジョン・リースの強いリーダーシップもあって、「不偏不党」を貫いてきた。フォークランド諸島をめぐる1982年のアルゼンチンとの戦いの際、ロンドンで報道していた筆者はびっくりした。BBCが敵国アルゼンチンの軍人から意見を聞いて、その主張も放映したのだ。英政府・議会から非難されたが、これも自国の関わる戦争といえども中立的報道を心掛けるという姿勢からだった。

 著者が最後に出会ったのは、記者による盗聴事件である。「チェック(小切手)ジャーナリズム」(=金で情報を買うやり方)が極端化し、携帯電話の盗聴によって情報を手にするジャーナリズムが現れた──と英ジャーナリズムの暗部をも冷静に描き出している。(終)

by polimediauk | 2012-04-23 22:07
 英国の新聞の発行部数(2月)を、先日、改めて確認してみた。

 英国の新聞は、地域によって、全国紙、地方紙、中身によって大衆紙、高級紙、発行頻度によって日刊・朝刊紙、日刊・夕刊紙、日曜紙、週刊新聞、お金を払うか払わないかで有料紙、無料紙に分かれるのだけれど、とりあえず、主要全国紙の比較である。

 発行部数と前年同月比でどれぐらい減ったかを、英ABCの調査でみると(最後に数字を補足)、分かっていたようでも、その下落振りにはいささかの衝撃を感じざるを得ない。

 例えば、英国の日刊紙で最も売れている「サン」(大衆紙)。これは前年同月比で、約8%の下落。同じく大衆紙で、もっとどぎつい女性の裸の写真を堂々と1面に出す「デイリー・スター」は14%の下落。

 高級紙では経済紙の「フィナンシャル・タイムズ」が16%の減少。「ガーディアン」はマイナス17%。そして、「インディペンデント」紙が42%減なのだ。(もっとも、インディー紙のここまでの減少には、後述する別の理由があるのだけれどもー。)

 こういうレベルの下落は、昨日や今日始まったことではなく、毎月発表されるABCの調査によれば、近年、継続している。

 こうした数字がしっかりと私たちに教えてくれることは、「紙の新聞を読まない人が増えている」状態から、「紙での印刷出版が、これまでの考え方の経営では成り立たないレベルに向かって、一直線に進んでいる」ことだ。紙が消えるといってしまうとなんだか衝撃的な表現となるが、少なくとも、デジタル版が主で、紙はおまけにならざるを得ない方向だ。数字がそういっている。

 道理で、フィナンシャル・タイムズが、紙版を手に取ると、本当にスカスカになり(骨組のみ、という感じ)、強気でデジタル版をプッシュしているはずである。

 新聞の内容や質に対する、読者からの何らかの異議申し立てで部数が減っているのではなく、単に、「紙では、もう読まない」ということなのだ。これが1つの大きなメッセージだろうと思う。

 しかし、最近のトレンドとして、あと2つ、特徴があろうかと思う。

 それは、無料紙の存在である。無料紙といっても、正真正銘の新聞だ。ただ、小型判で、記事が読みすい。20分もあれば、通勤電車の中で読めてしまう。

 朝は朝刊無料紙メトロ(全国では約140万部、ロンドンでは80万部)があるし、ロンドンだったら、午後から夕方にかけては「ロンドン・イブニング・スタンダード」(約70-80万部)が無料で配られている。ロンドン金融街向けの朝刊無料経済紙CITY AM(約10万部)も何とか経営を続けている。ロンドン近辺に限ると、1日に160-170万部の無料新聞が手に入るのだ。

 ロンドンで電車に乗ると、こうした無料新聞を手にしている人がとても多い。久しぶりに「スタンダード」を開いてみたら、前はファッションやゴシップが多かったが、今は、独自調査の社会派ネタが前面に出ていた。新所有者のロシア人・レベジェフ氏は、スタンダード紙を少々、高級向けにしたいと述べていたが、それが実っているのかもしれない。

 そこで、トレンド2としては、「わざわざ買っては読まないが、無料だったら、読む人が結構多い」ことだ。電車に乗ったら新聞を広げるーこれはまだまだ1つの習慣であるし、座席などに読み終わった新聞が置いてあれば、ふと手にとって読む・・・ことをしてしまうわけである。アマゾン・キンドルや時にはアイパッド、またはスマートフォンでニュースやメールを読んだりする人がいる中で、無料新聞を読む人もいる・・・そんな感じである。

 そして、もう1つのトレンド(といっても、最近の話でもないが)だが、先ほど、インディペンデント紙の発行部数が、前年比で42%落ちたと書いた。これには理由があって、それは、少し前から、同紙は弟分とも言うべき新聞「i(アイ)」を発行しているのである。

 「アイ」は中身的には無料新聞に近い。インディペンデントの記事を読みやすく書き換えたり、レイアウトを変えて、掲載の記事本数は減らして作っている。そして、値段を、本紙の5分の1である、20ペンスにしているのだ。これがものすごい伸びを示している。インディー紙が10万部売れているのに対し、アイは約24万部。すっかり逆転してしまった。

 つまるところ、読者としては、一部1ポンド(約120円)は高いと思うようになっている。新聞をたとえ読みたいと思ったとしても、まずは無料か、あるいはせいぜい20ペンス(約24円)ぐらいで入手したいと思っている、というわけだ。

 これは結構、深いんじゃないかと思う。120円(1ポンド)というのは、決して大きな額ではない。でも、読者のほうは0円から24円で新聞を読みたいと思っていること。売る側と買う側の大きなギャップである。

 だとしたら、新聞を作る側としては、定価体系の抜本的見直しや、無料新聞としては作れないのかなどを、様々な選択肢の1つとして考えるべきではないのかな、とー私がそう言っているというよりも、読者がそう言っている感じがしてならないのである。

 広告だけに頼ったら、不景気のときに困るだろうから、あくまで「選択肢の1つ」なのだが。

 そして、デジタル版が主で、紙はおまけ・・という方向にしたら、どんなビジネスモデルができるのかを真剣に考えてもいいのでは?

 読者の購買行動を見ていると、間接的・直接的に、そんなことを表現しているように見えて仕方ない。「もし紙媒体だったら、もっと読みやすくて、もっと安い新聞がほしい」-そんなことを言っている感じがする。

 ガーディアンの編集長が「紙のガーディアンは後10年後にはないかもしれない」とどこかで言ったそうだが、この言葉をショックだと思う人もいれば、当然と思う人もいるだろう。ガーディアンはデジタル投資にずいぶんと力を入れてきたからそう言ったのかもしれない。でも、見逃してはならないのは、現実に、こんなに勢いよく紙の発行部数が減っていったら、もう「主」の存在としては出せなくなってしまう将来が現実になるのは意外と近いかもしれない、ということ。紙は消えないだろうが、定価の額も含めてかなり抜本的に制作過程を見直し、それでもあくまでも「従」として生き残るのだろうな、と思う。

英国・主要紙の発行部数 2012年2月

新聞名、発行部数、前年同月比(%)の順です。

ー平日・日刊有料紙

サン 2,582,301 -8.38
デーリーメール 1,945,496 -6.04
デイリー・ミラー 1,102,810 -6.32
デイリー・スター 617,082 -14.11
デーリーテレグラフ 578,774 -7.89
タイムズ 397,549 -10.86
フィナンシャル・タイムズ 316,493 -16.43
ガーディアン 215,988 -17.75
インディペンデント 105,160 -42.38
i(アイ) 264,432 50.49

ー無料紙

朝刊紙メトロ* 1,381,142 0.67
(*のみ2011年9月ー2012年9月の平均値で比較)

(資料:英ABC)
by polimediauk | 2012-03-15 22:23
 英国で初の女性の首相で、11年にわたる長期政権を維持したマーガレット・サッチャー(在任1979-90年)の伝記映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(原題「The Iron Lady」)が、1月上旬、英国で公開となった。英国でもっとも著名な首相経験者の一人の伝記、しかもサッチャーを演じるのは、2度のアカデミー賞受賞経験がある、米国の名女優メリル・ストリープとあって、公開前から話題が沸騰した。日本でも3月16日からTOHOシネマズ日劇などで全国上映される。

 これを機会に、月刊「メディア展望」(新聞通信調査会発行)2月号に出した筆者原稿に若干補足したものが以下である。

 元首相を知る人々にとって衝撃だったのは、映画がサッチャーを認知症に苦しむ、孤独な老女として描いたことであった。亡夫デニスが登場し、これを現実と錯覚するサッチャーが夫と会話しながらこれまでの人生を回想する設定だ。

 数々の政治的業績がフラッシュバックのように流れるが、じっくりとは描かれておらず、政治家の伝記映画であるにもかかわらず、「政治的要素に欠ける、不思議な映画」(ガーディアン紙、1月8日付)と評された。サッチャーがまだ存命中に認知症の老女として登場させるのは残酷とする声も出た。

 しかし、サッチャー支持者も非支持者もおおむね認めるのがストリープの名演技だ。「信念の政治家」として、国民や内閣の反対にもかかわらず、自分が正しいと信じる政策を貫いたサッチャーの最盛期や年老いた現在の姿を、発声から顔の表情の一つ一つ、身体の動かし方まで生き生きと再現してみせた。政治映画としての評価はまちまちだが、人間ドラマとしての評価は一様に高い。

ー欧州問題に影落とす

 サッチャーが首相の座を降りてから20年以上(訂正変更、2月13日)経つが、その「遺産」は現在でも政治や社会の様々な局面で顔を出す。

 その具体例の1つが英国の対欧州政策である。1980年代、EC(欧州経済共同体、後の欧州連合=EU)は域内での市場統合、さらには通貨統合から政治統合へと向かう動きを議論していた。サッチャーは通貨統合への環境整備となる欧州為替相場メカニズム(ERM)への参加や、その先の政治統合に対し、強く反対の姿勢をとった。その強硬な反欧州の姿勢に加盟賛成派のローソン財務相が辞任し、同じく賛成派で長年サッチャーに忠誠を尽くしてきたハウ外相が実質的な権限がない副首相に更迭された後、90年11月、辞任した。ハウは議会での辞任演説で強い口調でサッチャーの独善的政治手法を批判。その演説から2週間もしないうちにサッチャーは首相の座を失った。

 「過激なほど反欧州の右派政党」―そんなイメージが、その後も保守党について回った。サッチャーを引き継いだメージャー政権を経て、1997年、18年間の野党生活の後に成立したブレア労働党政権は、当初、親欧州の姿勢を見せた。しかし、EUの共通通貨ユーロへの参加を見送ったことで、欧州との間に一定の距離を置く、相変わらずの政治姿勢となった。

 2010年発足の連立政権で首相となったキャメロン保守党党首は、昨年末、欧州債務危機を収拾するための欧州理事会会議で、財政安定化に向けての基本条約には参加しないことを決めた。ドイツ、フランスの両国はEU27カ国全体の合意となることを望んだが、英国が反対したためにEU条約の改定とはならず、一部関係国間での合意を目指すことになった。

 この一件は英国では「キャメロンが(条約改定に向けて)拒否権を発動した」と報道された。交渉に参加した27カ国中一国のみ合意しないという状況は、キャメロンが「国益のために合意しないことにした」と説明すればするほど、反欧州強硬派サッチャーの影が色濃く見えるようであった。サッチャーはEC農業補助金にかかわって割戻金を獲得するなど、自国の利を最優先したからだ。

 もともと、独立独歩の精神が強い英国民の中にはEUへの不信感が強く、「欧州懐疑派」が少なからず存在する。1対26カ国という結果になったことで、キャメロンの交渉手法は「稚拙だった」という声が政界、メディア界では強かったものの、「拒否権発動」以来、キャメロンおよび保守党の支持率は上がっている。保守系歴史学者ニール・ファーガソンは「英国がEUから脱退しても問題はない」、「むしろその方が経済的、政治的に好都合」と何度となく述べ、一定の支持を得ている。

 欧州の債務問題の解決に時間がかかり、フランスをはじめとしたユーロ圏数カ国の格付けが下がる中、ポンド維持の強みが日々、顕在化している。めぐりめぐって、欧州統合には一定の距離を置くのが得策として、「やっぱりサッチャーは正しかった」という結論が出ないとも限らないこの頃だ。

―国を二分した首相

 サッチャーの「鉄の女」の映画公開日、イングランド北部ダービシャーで数十人の元炭鉱労働者たちが抗議デモを行った。プラカードの一つには「真の鉄の女たち」と書かれていた。映画は「サッチャーが男性優位の既得権を持つ層に勇敢にも立ち向かい、男女同権運動の主導者であったかのように描いている」が、これが「まったくの虚構だ」ということを訴えたかったという。 

 サッチャーは国営企業の大規模な民営化を続々と実行し、労働法の改正によって労働組合を改革した。公営住宅の払い下げによる住宅取得を奨励して中流階級の拡大を目指す一方で、採算の取れないビジネスとなっていた炭鉱を閉鎖し、大量の失業者を生み出した。イングランド地方北部、スコットランド、ウェールズ地方は、炭鉱閉鎖や製造業の衰退でもっとも大きな影響を受けた地域である。住民は、サッチャー政権が貧富の差を拡大させたことを忘れていない。

 現在、キャメロン政権は政府債務の削減に躍起で、緊縮財政を実行中だ。大幅な公的部門の雇用削減や地方自治体の予算削減で打撃を受けやすいのが、官の雇用の比率が高いイングランド北部だ。ロンドンがあるイングランド南東部と比較して、北部は失業率が高い。英国の中で南北に経済格差がある状況は数世紀にわたって変わらないが、人々の記憶に残っているのは、サッチャーの自由主義的経済政策が失業や貧困などの痛みをもたらしたことだ。

 北東部での雇用創出のために、「人権擁護の面では不十分な(外国の)政権」にも、「武器売却を行う」必要性があるー。昨年末、こうした言及がある書類も含め、1981年以降の様々な政府の機密文書が一般公開の運びとなった。

 武器売却にかかわる一連の書類を分析したBBCラジオ4の特別番組「UKコンフィデンシャル1981」(昨年12月30日放送)によると、イラン・イラク戦争(1980-88年)時に、英国は戦争には加担せず、中立であること、両国どちらにも弾薬などの殺傷兵器を売却しないなどの取り決めを政府として掲げていた。しかし、「大きな市場となる可能性」(政府筋)から、「殺傷兵器」の定義を「できうる限り狭める」ことを、サッチャーのお墨付きで、政権内で極秘に合意したという。

 「中立」の立場から表立って武器売却ができない状態にいた英国に、イラク・フセイン大統領から「英国製戦車を補修してほしい」と依頼が来る。元は英側がイランに売った戦車だったが、これを戦争中にイラクが獲得したのである。しかし、直接イラクに出かけて補修するわけにはいかないので、第3国としてヨルダンを選んだ。ヨルダンでの補修はまもなくイラクでの作業に取ってかわり、武器売却ビジネスが拡大してゆく。

 2003年、ブレア首相が米国とともに攻撃を開始したのはフセイン政権下のイラクであった。何とも皮肉なめぐり合わせだ。サッチャーが撒いた種から育った風土や仕組みの中に、現在の英国民の生活がある。(終)

新聞通信調査会ウェブサイト
http://www.chosakai.gr.jp/index2.html
by polimediauk | 2012-02-06 22:12
 丁度1年ほど前に、「ネットとリアルの切れ目がない」ということを書いたのだけれども、英国では大手メディア(新聞、放送)がネット・メディア化、さらに言えばデジタル・コンテンツ・プロバイダー化している。

 この点は、英国に住んでいるとなんとなく周知のことになってしまい、十分に強調してこなかったような気がする。

 つまり、「BBCが・・・」というとき、「ネットメディアでもあるBBCが・・・」という意味合いになる。ネットメディアと大手既存メディアとが分かれていない。一緒になっている。区分けはある意味ではどうでもいいわけだが、ネットに利用者や広告主が移動しているわけだから、メディアとしてはそっちでもビジネスをやらざるを得ないーそれもかなり積極的に。といって、もちろん、ネットオンリーのメディアがないわけでなく、例えば、ガーディアン・メディア社の一部になっているが、デジタルメディアの話を伝えるペイドコンテントがその1例。

 英国の新聞は紙の発行という意味では斜陽産業なのだけれど、これまでのブランド力とコンテンツを持っているという強みがある。互いとの競争(報道では放送業界との競争もある)はシビアだが、これはいかに早く、利用者が好みのサービスを提供していくかの競争でもある。

―主戦場はウェブサイトではなく、携帯・タブレットへ

 ・・・と見出しを書くと、あまりにも聞きなれた表現になってしまうのだけれども、つまり、かつては、ウェブサイトをいかに利用者にとって利便がよいように充実するかの競争があった。サイトからいかに収入を生み出すかについてもさまざまな議論が起きた。無料、有料、スクープ、「ウェブファースト」、動画、著名コラムニストの充実、グーグル検索に引っかかりやすいような見出し作り、リンク、収益を上げるためにデート・サイトなどの広告掲載など、様々な工夫をしたわけである。勝つための主戦場はウェブサイトであった。

 ところが、もうすでに私たち自身が経験していることだが、メールやニュースを読むのでも、PCを開いて・・というよりも、携帯機器でまずチェックすることが多い。そこで、(言わずもがなだが)戦いは携帯機器の画面上で起きている。

 ・・この点もいままで言われてきたことだし、現時点で新しくはないのだけれど、このところ、「本格的にそうなってきたな」という感がある。「もうウェブは見ない」「携帯機器のみ」という未来が、中高年の人も含め、現実化しつつある。

 ・・・そんなことをひしひしと感じたのは、ガーディアン、フィナンシャル・タイムズ(FT)、エコノミストの動きである(以下、主にペイドコンテントの記事を参考)。

 まずFTだが、昨年6月に提供を開始した、新たな携帯機器専用アプリをダウンロードした人が、現在までに100万人に達したそうだ。FT・コム(FTのデジタル版)の頁ビューの中で、20%が携帯(スマホ、タブレット)を通じてのものだった。PCのウェブサイトから閲読する人よりも、スマホやタブレットを使っている人の方が滞在時間が長く、フィードバックの率も高い。

 このアプリはアイチューンズで購入する形にはなっていない。ロンドンのウェブ・アプリケーション会社アッサンカ(Assanka)が中心となって、独自のアプリを開発したのである。アプリのダウンロード自体は無料である。前に、FTのデジタル担当者に取材したことがあったが、「自前でやる」ことを重要視していた。アイチューンズに入れば、収入の30%をアップルに取られるばかりか、顧客情報も渡してしまうのがいやだ、と。

 今月、FTはアッサンカを買収したと発表した。「FTテクノロジーグループ」の1つに入った。今後、いかに機能的なアプリを提供するかにさらに力が入る見込みだ。これは昔風で言えば、「新聞販売店を丸抱えにした」ということなのかなと思う。(英国には日本のような販売店制度はない。)ちなみに、FTのデジタル購読者は25万人である。

 今度は「エコノミスト」の話である。「フリップボード」Flipboardという、様々なトピックを雑誌のように並べられるアプリ(アイフォーン、アイパッドなど)があるが、これに似たつくりの、タブレット専用の独自アプリの提供を開始した。

 内容は米大統領選に関する情報をまとめたもので、「Electionism」という。これはPCの画面上では見れないので、electionism.comというサイトから、アプリをダウンロードする必要がある。ただ、見れるのはタブレット(アイパッド、ギャラクシー、キンドル・ファイヤー、ブラックベリーのプレイブック)を使った場合のみである。「エコノミスト」の米大統領選挙がらみの記事のみでなく、米議会にかかわる発行物「ロール・コール」からの記事や、ほかのメディアの関連記事、ツイートなどが並ぶ。アプリのダウンロード及び記事の閲読は無料である。

 いかにもアクセスが大きく増えそうなトピックが読めるアプリを「タブレットでしか見れない」つまりPCをすっ飛ばしてしまった点が、今らしい。

 このアプリを作ったのはカナダのソフトウェア・デザイン会社Nualyerで、Presslyというプラットフォームを使っているそうである。

 最後に、ガーディアンだが、タブレット機器用に提供しているアプリは、50万人にダウンロードされたという。実際に利用しているのは28万人(昨年12時月時点)といわれている(ペイドコンテント)。

 現在、閲読は無料だが、13日からは有料(月額9・99ポンド=1,182円)となる。日本の感覚からするとかなり安いように思えるが、いままで無料だったものが有料になるというのは、大きな心理的障害かもしれない。

 13日以降、新規の利用者がアクセスすると、7日間は無料だが、それ以降は有料となる。

 一方、アイフォーン用のアプリの場合は1日に3本は無料で読め、もっと読みたかったら、有料となる(6ヶ月で2・99ポンド、1年で4・99ポンド、米国では無料)。

 しかし、ペイドコンテントのロバート・アンドリューズ記者が指摘するのは、スマホなりタブレットなりで、ガーディアンの通常のウェブサイトを開くと、すべてが無料で読めるので、これが足を引っ張るかもしれない、と。無料と有料が混在する、まことに奇妙な状況となっているわけである。

参考:

Guardian Starts Charging 280,000 iPad Readers From Friday; How Will It Go?
http://paidcontent.co.uk/article/419-guardian-starts-charging-280000-ipad-readers-today
The Economist Tries A Flipboard-Like Election App All In HTML
http://paidcontent.co.uk/article/419-the-economist-tries-a-flipboard-like-election-app-all-in-html/
Electionism
http://www.pressly.com/electionism/desktop.html
FT Buys Its Web App Maker; CEO Ridding’s Memo
http://paidcontent.org/article/419-ft-buys-its-web-app-maker-ceo-riddings-memo/
テレグラフの記事:Flipboard is ready to page the future says Mike McCue
http://www.telegraph.co.uk/finance/newsbysector/mediatechnologyandtelecoms/digital-media/8969325/Flipboard-is-ready-to-page-the-future-says-Mike-McCue.html
「世界初ソーシャルマガジン」アプリケーションのFlipboardが生み出す3つの変化とは?  http://gendai.ismedia.jp/articles/-/955
by polimediauk | 2012-01-11 22:54
c0016826_21554188.jpg 新たな年が明けました。今年もよろしくお願いいたします。(やっとクリスマスカードやツリーを片付け、年末のカウントダウンも済ませ、次第に生活が落ち着きつつあるところである。残すところの年末年始の「イベント」は、英国恒例の「パントマイム」を観にいくこと。本日、これから「シンデレラ」鑑賞に出かける予定だ。)

 TBSメディア総合研究所が発行している、「調査情報」最新号に、英国のテレビについての原稿を寄稿している。どこかでお手に取られて、見ていただけたら幸いである。

http://www.tbs.co.jp/mri/info/info.html

 今回の特集は「テレビ ドック―いまなにが可能か」である。以下はその目次。

テレビ ドック―いまなにが可能か
グーテンベルク以来のメディア革命のなかで(今野勉)
テレビとネットのカニバリズムは本当か?(橋元良明)
連続ドラマの活況は戻ったのか(堀川とんこう )
テレビは肉体表現者を描けるのか(武田薫)
ニュースに二時間も必要なのか?(吉川潮)
バラエティー~メディアパワー喪失の20年(鈴木健司)
テレビCMの現在~お前はすでに死んでいる?(河尻亨一)
デジタル時代で面白みが増す、英テレビ界(小林恭子)
テレビは、テレビではなくなり、生き残る(境治)
***

 雑誌はいまこちらに郵送途中で手にとってはいないが、読むのが楽しみな構成である。

 自分自身、どちらかというと英国の新聞界に関する原稿を書く事が多いのだが、今回は放送業に目をやる機会があって、いろいろ考えさせられた。ひとつ、テレビについて書くのはよいのだが、ラジオ界の話を書く機会がなかなかない。英国を含む欧州では、ラジオが知識人の論考のネタになったり、質の高い娯楽の提供メディアになっている(日本ではそうなっていない、という意味ではないが、日本と比較すると、ラジオの重要度が高いような気がする。)今年はこのブログなどでラジオの話も出していければと思う。
by polimediauk | 2012-01-05 22:00
 欧州債務危機問題と英国の話で、欧州の外に住む人にとっては(マーケット関係者を除き)内向きの話かもしれないが、週明けの状況を自分へのメモとしても書き留めておきたい。

 昨今のテレビ・新聞を見ると、一部の新聞には最初「よくやった、キャメロン」(債務問題を解決するための欧州首脳会議で、英国は「国益を守るために」新財政協定に参加しないと決めたこと、将来の金融規制に対する英国の拒否権が保証されない限りだめだとして、「拒否権を発動した」と報じられている件)という雰囲気があったけれども、「いくらなんでも、EU27カ国のなかで、1対26になったのはまずい」という、悲壮な論調が目立つ。これは左派・リベラル系の新聞が特にそういっているのと、BBCテレビの報道を見ても、「困ったな」という論調が出ているせいだろう。

 欧州首脳会議が閉幕になった9日、当初は結果をあきらめた感じで受け止めていた、ニック・クレッグ副首相(連立政権のパートナー、左派リベラル系自由民主党の党首)が、12日になってBBCのテレビに出演し、「苦々しくも失望した」と自分の本音を切々と語った。(キャメロン)首相(保守党党首)と副首相の意見が違っているようでは、まずい。これも大きく報道された。「連立政権に、新たな亀裂?」といった論調である。

 12日、親欧州のシンクタンク「フェデラル・トラスト」(政治的に中立ということだが、自由民主党への支持が強い)は、「英国とユーロ」という題で会議を開いた。

 そこで拾った声としては、

*首相の判断の賛否はいろいろあるだろうが、結論自体よりも、「やり方が悪かった」、「26対1になったのは外交的失敗だった」

 というのがメインだった。金融街シティーの利益が守られたのかどうかと言うと、これも疑問というのが圧倒的であった。むしろ、何らかの復讐(?)があるのではないかと心配する人もいた。

欧州全体の話としては、

*これを機会に、欧州の政治家がほかの国の内政にもっと干渉するようになる。汎欧州的な政治の駆け引きが本格化する(元欧州議員のジョン・スティーブンス氏)

 という見方が新鮮であった。

懸念は

*英国はまだEUの加盟国なのに、議論の全てに関われなくなるのでは?
*保守党内にいる、いわゆるEU懐疑派(EUからの脱退もいとわない)が喜んでおり、これを機会に脱退に向ける流れができるだろうーーこれを止めないといけない

また、キャメロン首相の決断は
*首相自身の、あるいは政府内の意志というよりも、保守党内のEU懐疑派・右派をなだめるためだった

という分析が出た。

何故、電光石火の「拒否権発動」になったのかについては

*事情をよく知る外務省関係者が最後には締め出され、官邸側近が事態に対応していたから
*官邸側近らは、まさか26対1になるとは思わなかった
*英国の提案書がEUトップや独仏トップに出されたのは、午前2時過ぎだったという。最終的な結論が出るのは4-5時だから、「あまりにも遅すぎた」――もともと、提案が通るとは思っていなかったのか、あるいは単に外交上の失敗かのどちらかだ。

など。

 フェデラル・トラストの代表ブレンダン・ドネリー氏(元欧州議会議員)に論評してもらうとー

―キャメロン首相の行動で何が起きたと思うか。

 ブレンダン・ドネリー氏:あの会議で英国の孤立がはっきりと示された。複数の国が英国の側には立っていないことが分かった。本当に情けない状況になってしまった。EU諸国は英国には指導されたくないと思っているし、EUに期待するものが英国とはまったく違う。英国はEUを脱退するべきと思う国民がいる国なのだから。

ー何故このような結果に?

 戦略上の失敗だと思う、最初から提案が通らないように計画したわけではないと思う。偶然にもそうなった。キャメロン首相は大雑把には欧州懐疑派だが、特に強い感情はなかったと思う。欧州は両刃の剣であることを知っており、党内に強い懐疑派をかかえているために、任期中に欧州問題がでかくならないことを望んでいた。

 事態はどちらかというと悲劇よりも喜劇だと思う。EUの財政緊縮策や規制には「ノー」と言ったが、実際に、国内ではそうしている。金融街シティーの利益を守りたいとキャメロンは言ったが、この点では何も変わっていない。心理的及び政治的ダメージを残しただけだ。クレッグ副首相は大失敗と考えているのに、キャメロン自身は成功したと思っているようだ。

 キャメロン首相は特に強い政治信条があるタイプではない。確信を持たない政治家だ(その反対がサッチャー元首相)。首相に就任することに関しては強い思いがあったものの、自分の強い政治信条がないことが墓穴を掘った。というのも、党内に欧州懐疑派がいて、この主張を押し返すことができないからだ。

―英国のみならず、ギリシャでも、EU加盟国の国民の中では、どうも物事が民主的に進んでいない、官僚や政治家が国民不在で物事を決めてゆくという思いが、特に最近強くなっているではないか?そういう意味では、EU懐疑派の主張を最初からバカにするのではなく、これを機会に立ち止まって、国民とEUとの関係を見直す時ではないか?

 確かに、EU内で民主主義の危機というのあるかもしれない。政治家たちは国民の言うことにもっと耳を傾けるべきだという人は多い。それでも、有権者というのは、つじつまのあわないことを望んでいる。

 例えば、ギリシャでは、国民はユーロを維持したいと望んでいるが、自分たち自身はお金を払わずに、自分たちの都合の良いようにユーロを使いたいと考えている。ギリシャの国民が、自分たちが望む政策を、EUのほかの国に住む人々全員に押し付けてもいいものだろうか?

 私が考えるに、欧州で民主主義の危機が起きているというとき、これはつまり、政治家たちが国民に対し、難しい真実を告げていないことにあるのだと思う。

 それともう一つ、単一通貨があるEUで暮らすときに、単に加盟国のそれぞれの政府が集まって物事を決めるだけでは十分ではないという点がある。欧州レベルでの政治体系が必要なのだと思う。これは本当に基本中の基本となること、知性の意味でも、政治の意味でもそうだと思うけれども、つまり、単に国の政府を集めただけでは、EU市民全員を巻き込む問題を決定できない。欧州レベルでの民主主義を反映させる構造が必要だと思うーー現状の欧州議会の制度では不十分だ。

―経済のみならず、政治的にももっと統合されるべきと?

 個人的にはそう思う。欧州レベルの政党や政治家がいてこそ、欧州の問題に欧州的な解決策を与えることができる。

***
 
 以下は、13日から14日にかけてのアップデート情報。

ロイター:欧州が財政統合強化へ、スウェーデンの新協定署名には不透明感
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE7BD01Q20111214?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0
(一部の抜粋)

 欧州連合(EU)のファンロンパイ大統領は13日、英国を除くEU加盟26カ国が参加を表明している新財政協定について、2012年3月までにはまとまるとの見方を示した。大統領は欧州議会で「遅くとも3月上旬までに財政協定は署名される」と語った。

 外交筋によると、新財政協定の草案の第1稿は来週には策定される。ただ、ユーロ加盟17カ国以外で新協定に参加する国のうち、スウェーデン、ハンガリー、チェコなどは新協定を全面的に支持するために議会での承認が必要になる。EUは26カ国すべてが来年6月までに新協定を批准することを目指すとしている。

 また、スウェーデンのラインフェルト首相はこの日、欧州の新たな財政協定に同国が署名するかどうかは不透明だと述べた。これを受け、同国が英国と同様に新協定への参加を見送る可能性が高まった。

ブルームバーグ:キャメロン首相の独自路線で、英国のEUからの独立高まる公算小さい (一部の抜粋)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LW4IL00UQVI901.html

  12月13日:キャメロン英首相は欧州のユーロ救済の取り組みから距離を置くことを決定したが、だからと言って英国のEUからの独立性が高まる公算は小さい。

 以前と状況が異なるのは、キャメロン首相の独自路線の決定を受け、同国の外交官が失地回復に努めなければならない可能性があることだ。問題になるのは、金融サービス、エネルギー、農業助成金、防衛協力などの規制にかかわる決定だ。

 ロンドンの英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のディレクター、ロビン・ニブレット氏は電話インタビューで、「現在、英国に対してはあまり善意が示されていない」と述べ、「短期的には、英国の外交官に対しい幾らか悪感情が示されるだろう」との見方を示した。

 キャメロン首相は8、9両日の欧州連合(EU)首脳会議で、将来の金融規制に対する英国の拒否権が保証されることなしに、財政協定に合意することを拒否。ロンドンの欧州の金融センターとしての地位が脅かされるためだと説明した。

by polimediauk | 2011-12-14 23:56
 欧州の債務危機収拾のために、ブリュッセルで開催されていたEU首脳会議が9日閉幕した。会議の中で、英国・キャメロン首相が「英国の国益を守るために」、「拒否権を発動」し、EU全加盟国27カ国の中で「孤立した」と英国では報道され、昨日から大騒ぎとなっている。

 産経新聞の報道を引用するとー。

EU26カ国で新協定 財政規律強化 英は不参加 
http://sankei.jp.msn.com/world/news/111209/erp11120919540008-n1.htm

 「欧州債務危機の解決策を協議する欧州連合(EU)首脳会議は9日午後、遅くとも来年3月までに、欧州単一通貨ユーロ圏17カ国のほか、9カ国が議会の承認を得たうえで政府間協定を結び、財政規律を強化することで合意して閉幕した。EU新基本条約の制定は英国の反対で断念した。国際通貨基金(IMF)の支援を仰ぐため、ユーロ圏を中心にまず最大2000億ユーロ(約21兆円)をIMFに拠出する方針だ。」

 「『新財政協定』と呼ばれる財政規律強化策は(1)財政規律の違反国に対して自動的に制裁を発動(2)財政規律を憲法に明記(3)予算案を事前にEUの執行機関、欧州委員会に提出-などが柱。財政赤字を国内総生産(GDP)の0.5%内に抑える方針も示した。」

 「規律強化策をめぐり、ドイツとフランスはEU新基本条約締結を目指したが、非ユーロ圏の英国などが反対した。」

 ***

 昨日、夕方から夜にかけて英テレビ各局のニュースを見ていたが、論点は以下であった。

*26対1になるなんて、これでは今後、英国は孤立してしまう。首相の「国益」とは金融街シティーを守るためだったが、今後はEUから手痛いしっぺ返しを食うかもしれない。EU内での影響力が大幅に低下するのではないか、という大きな懸念。「低下しない」という声もある。

*英国国内の政治動向への懸念。与党保守党内では長年、EUへの(これ以上の)関与を嫌う傾向が根強い。EUから脱退するべきという声も一部にあり、保守党右派の声がさらに強くなるだろう。1990年代のメージャー保守党政権を思い起こさせるという人もいる。同政権の内部分裂の1つの要素はEU嫌い。キャメロン政権も分裂の危機か?現在、連立政権を組んでいる左派系自由民主党の一部の議員が、キャメロン氏を大きく批判。また、野党・労働党党首ミリバンド氏も、キャメロンは「破壊的な決断をした」と表現。

*一方、スカイ・ニュースの「ジェフ・ランドル・ショー」という番組に出ていたのが、ブレア元首相(労働党)の経済アドバイザー、デレク・スコット氏。同氏は、孤立は悪いことではない」と述べていた。今回まとまった、EU側が出す資金というのは「本当に小さい額」であり、「どうせ失敗する」のだから、英国がその失敗に関与する必要はなし、と。「ユーロ経済は成功していなかった。それに参加できないからと言って、嘆くことはない」と語る。保守党のアドバイザーでなく、労働党のアドバイザー、しかもEUシンパとも言える(しかし、政権担当時にはEUに関しては何もできなかったといわれる)ブレア氏の経済顧問の見方であることが面白い。どうせ失敗するというのは「どの国も(負債率などの)数字で、本当のことを言っていない」、「フランスだってあぶないぞ」など。

*「拒否権発動」という表現自体が、そもそもおかしいという見方もある。英国が参加するしないに関わらず、26各国が新協定を成立させるほうに動いているわけだから、「何かを止めたわけではない」(基本条約の改正の動きは止めたわけだが)と。自国が参加しなかっただけである、と。

 私自身は、今回のキャメロン発言をどう評価するか、まだ判断がつかない。今回の首脳会議では、英国のことを考えるというよりも、欧州全体のことを考えて決定するべきと思ったので、他国と足並みをそろえなかったことはショックだったけれども(それも26対1である)。「国益」云々――シティーを守るとかーーという意味さえ、本当かなという感じもする。

 ちなみに、AFP報道によれば(http://www.afpbb.com/article/politics/2845153/8183087)キャメロン首相は英国にとって死活的に重要な金融セクターが守られないくらいなら「外部にいたほうがましだ」と述べたという。「ロンドン中心部にある広さ1平方マイル(約2.5平方キロ)ほどのシティーには、欧州全体の金融サービスの約75%が集中している。英政府は『金融取引税』を課そうという独仏の動きや、金融取引に対する新しい規制の導入に抵抗している」という。

 しかし、本当にシティーを守るためだけだったのかどうか、そして、実際に守りきれるのかどうかについては、コメンテーターの意見は割れている。来年3月に向けて新協定を成立させることを「めざす」といっても、それまでの間に何かが起きるかもしれない。「26カ国」は果たして一枚岩だろうか?いまは英国は「孤立」しているけれど、周囲の状況は変わるかもしれないのだ。

 現在の独仏を主導とした危機打開策はずいぶんともたもたしているように見えるけれども、これはやはり、事実上は「誰も責任を取る人がいない」せいなのかなとも思う。各国の政府があって、その上にある組織だけれど、なんだか実権を持つトップの人がいない感じである。

 それと、これはもう多くの人が指摘しているけれど、今回決まったことは、「現在の危機(つまりはギリシャを含む数カ国の負債問題)を解決する策ではない」こと。市場は少しは今回の合意を評価したようだけれど、「よし、これでユーロ圏あるいはEU圏は大丈夫だな。投資しよう」という決断をさせるまでにはいっていないようだ。

 投資決断をさせるための1つの注目点が欧州中銀ECBの動きと言われる。ECBがもっとドーンとお金を出せばいいのにーーこんな声を英国ではよく聞く。しかし、ECBにはそうする意思が(いまのところは〕ないようである。ない袖がふれないのかもしれないし、「モラルハザード」がいやなのかもしれない。

 あるコメンテーターが言っていたけれど、「これはつまり、加盟国に『ドイツのようになれ』ということだな」と。緊縮財政を実行させ、負債を減少させ、金融規制を厳しくし・・・と。しかし、その国によって国民性や経済のやり方がいろいろ違うのである。

 とりあえずの雑感である。いろいろ面白い論評も出ているのだが、また次回。

参考記事:
英、独仏と亀裂深まる EU首脳会議 ユーロよりシティー(産経)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/111209/erp11120920000010-n1.htm
by polimediauk | 2011-12-11 00:15
 昨日の夕方、無事、英国に戻りました。

 なぜか飛行機がとても空いていて(クルーが15人、乗客が187人と言っていましたが、不景気なのか、それともヒースロー空港でストがあるということで大きなキャンセルがあったのかは不明)、非常によく面倒をみてもらって、あっという間に時間が過ぎました。

 飛行機の中で仕事をするのは、もう体力・年齢から自分では無理になって久しいのですが、今回は何冊かの本を読むことができ、楽しい時間でした。〔ちなみに、読んだのは「大人の流儀」伊集院静著、講談社、「決闘:ネット『光の道』革命」孫正義VS佐々木俊尚、文春新書、「南沙織がいたころ」永井良和著、朝日新書、途中が「ジャーナリズムの陥し穴」田原総一郎著、ちくま新書。)

 帰国中はほぼ東京をベースにして、いろいろな方に会いましたが、家族と一緒にいる時間も今回は重視して、お会いしたい方全てに会うことができませんでした。お声をかけていただきながら、失礼をするようなことになり、大変、申し訳ありません。

 お会いできた方たちや様々なレベルで助けてくださった方、本当にどうもありがとうございました。ご好意にジーンと来て、感涙もたびたびでした。

 ヒースロー空港には家族が車で迎えに来ていたのでまともに外に出ておらず〔途中パブによりましたが)、どれほど寒いのかはまだ分かりませんが、午後4時ぐらいの時点で「7度」というのを聞きました。

 今朝は早く起きてしまったので、新聞やほかの定期刊行物の整理や手紙などを見たり、仕事の準備をしたりの一日になりそうです。

 日本にいて、あれ?と思ったことはいろいろありましたが、「もっとこうしたほうが、楽しくなれるのではないか」、「不便だなあ」と思ったことも結構ありました。

 たとえば、具体的な例を1つだけあげると、無線WI-FIネットワークは日本でもずいぶん進んだようですがーーもしかしたら、私が使い方を間違っているのかもしれませんがーーいざ公的空間にいて、使おうとすると、まずどこかに契約していないと使えないようでした。〔間違っていたら、教えてください。)ソフトバンク、あるいはほかのサービスに、事前に契約をしていないとー。欧州(や複数の地域の国)だと、その場で、1時間とか、1日とかのWI-FIの契約が、PCの画面上でできます。ですので、WI-FIの機器を持っていれば、ふらっとサービスが使えます。(もしかして、マクドナルドやスターバックスでは、どこにも事前契約しなくても、使えたのかもしれませんー確認していないのですが。)

 携帯電話(スマートフォーン)も同様の経験をしました。つまり、いわゆる、プリペイドの携帯がないようですので、海外からふらっとやってきて、携帯(スマホも)を気軽には使いにくいですーーSIMロックがフリーになったのというので、喜び勇んで量販店に行きましたが、これはあくまで「NTTドコモの電話を、日本人が海外で使う」ということが前提になっていると聞きました。

 いろいろ裏技とかはありそうですから(そして、海外で買ったスマホでも、国際電話・国際データ通信になることをいとわなければ、使えますので)、それほどたいしたことじゃないともいえるかもしれませんが、実はこんな「たいしたことではないこと」でも、不便なことが結構あって、つまるところ、「外に開かれていない」(日本に定住している人を前提にサービスが成り立ち、外からやってくる人や、日本人が日本を出たり入ったりして、動き回る場合を想定してない)という結論がおぼろげながら出てきたりします。なんだか紋切り型で恐縮ですが。

 そんなこんなで、いろいろ考えると、「もっと自由に、もっと選択肢を多く、もっと幸せに」生きられるはずなのに、そうなっていない感じがしました。そんな印象を勝手に持ちました。いま、日本国民が幸せでないという意味ではなく、「もっとxxxなはずなのになあ」という思いです。

 翻って、英国の人は幸せなのか?というと、これもまた???なのですが。

 とりあえずは、遊びとも仕事ともつかないことですが、またまた英国で新聞を読めたり、テレビを見たり〔テレビが大好きです)、ネットで情報収集ができるなあ・・・と少しうれしい気分です。

 
by polimediauk | 2011-12-03 15:59
c0016826_22302383.jpg
 昨日(25日)、日本記者クラブが主催した「世界の新聞・メディア」研究会で、1時間半ほど、英国の新聞・放送・ネットの動向、ニューズ・オブ・ザ・ワールド事件とウィキリークスについて、話す機会がありました。

 その模様は、クラブのサイト及びユーチューブで視聴できるようになっています。

Youtubeから
http://www.youtube.com/user/jnpc
クラブのトップページから
http://www.jnpc.or.jp


 動画の全体は1時間半ほどですが、私のプリゼンテーションは約30分ほど。後は、出席したクラブメンバーの方からの質問に答える形を取りました。

 先ほど、自分で視聴してみたところ、タイムズの元編集長「ロバート・トムソン」を、「ロバート・トンプソン」といい間違えていたり、マードックのビジネスの話で、SNSのマイスペースを「高く」売却したといってしまったり(実際は、買収価格よりはかなり低い価格で売却したので、高い買い物だったと言いたかった)、若干、不正確な箇所がありましたが、大体、英国のメディアの雰囲気は伝わったのでないかと思いました。

 それと1つ、後で気づいたのですが、ブレア元首相の自伝「ブレア回顧録」(いま、書店で平積み)を訳された石塚雅彦 さんからの質問で、「政治権力とメディア」の関係が日英でどう違うかを聞かれて、私が十分に答えていなかったなあと反省。マードックの事件が頭にあり、英国の「政治とメディアの癒着の問題」を指摘しましたが、それよりももっと大きな特色を言い忘れていました。つまり、英国の(政治)メディアと政治勢力とは敵対関係にあるのです。常に、丁々発止の闘いがあります。英メディアは、それこそ「第4の権力」として、強大な力を持っている感じがします。・・・ということを言えばよかったなあ・・・と。ついつい、既に自分では分かっていることの説明をするのを忘れてしまったなと反省しております。

 それでも、

 「日本のジャーナリストと、英国のjournalistの意味の違いは?」
 「英国の記者によるブログ活動やツイッターでの情報発信の現況」
 「何故左派系高級紙が保守系よりも部数の落ちが大きいのか?」

 などなど、鋭い質問が飛び、自分でも知的な刺激を受けた時間でした。

 会場まで足を運んでくださった皆様、本当にありがとうございました。

 事務局の方には大変お世話になりました。

 もしお時間のある方で、英国のメディアにご関心がある方は、ご視聴くださると幸いです。
by polimediauk | 2011-11-26 22:29