小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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カテゴリ:放送業界( 162 )

 TBSメディア総合研究所が隔月に発行している「調査情報」誌の今年元旦発売号(201年1-2月号)に、英国のテレビ界の現況をまとめた原稿を出した。http://www.tbs.co.jp/mri/info/info.html 3月初旬、同誌の最新号発行を機に、拙稿を以下に転載したい。

 この原稿は、「2012 テレビドック -いまなにが可能か」という特集の一部である。この中で、日本のテレビ界の様々な批評記事が載っているので、マスコミ批判など、このテーマに関心のある方はどこかで手にとっていただけたらと思う。

 私自身は、この特集のほかに、「メディア論の彼方へ」というコラムで、金平茂紀氏が書いた、「『御用ジャーナリスト』について僕が知っている2,3のことがら」という記事に、かなり衝撃を受けた。金平氏は、彼がいうところの「御用ジャーナリスト」の何人かの名前をはっきりと挙げている。(誰がそうなのかは、ページをめくってみていただきたい。)最後に、故・清志郎の『軽薄なジャーナリスト』のラスト部分を引用している。「軽薄なジャーナリズムに のるくらいなら (中略) あの発電所の中で 眠りたい」。

***

―デジタル時代で面白みが増す、英テレビ界

 日本では新聞やテレビなどマスコミの先行きを悲観視する議論が活発なようだ。ジャーナリズムの面からも大手メディアに不満を抱く人が増えていると聞く。英国では、日本同様、新聞の発行部数は減少の一途をたどるものの、テレビ界は活況を呈しているように見受けられる。

 確かに、2008年のいわゆるリーマン・ショックで広告収入が激減したテレビ界で、民放は大きな打撃を受けた。多チャンネル化が進んでいるため、各チャンネルの視聴占有率(一定の時間にあるチャンネルが放映する番組が視聴されている割合)は相対的に下降している。財政緊縮策が実行される中、公共放送最大手BBCはテレビ・ライセンス料(日本のNHKの受信料にほぼ相当し、現在年間145.50ポンド=約1万7000円)の値上げを凍結させられ、役員の給与カット幅の増加、人員削減、番組の制作本数の減少を強いられている。

 経営陣にとっては厳しい情勢となっているわけだが、視聴者の側からすれば、これほど面白い時代はない。

 デジタル化・多チャンネル化の進展で、番組の選択肢が広がっている。無料で利用できる見逃し番組再視聴サービス(BBCのアイプレイヤーなど)や1時間後の番組を放映するチャンネル(=タイム・シフト・チャンネル)が提供され、「いつでも、どこでも、好きなときに、好きなプラットフォーム(テレビ受信機、携帯電話、タブレット型端末など)で」、様々な番組を楽しめる状況となった。

 こうした状況にあって、現在の英国のテレビ業者とは、かつてのようにあらかじめ決められた放映予定表に基づいてテレビ受信機に向けて番組を流すための業者ではなく、利用者が様々な視聴を行えるよう、複数のプラットフォームに向けて番組コンテンツを配信する業者(=デジタル・コンテンツの提供者)に変身している。テレビ受信機に向けての番組配信(=放送)は、あくまでも1つのオプションなのである。ちなみに、2003年施行の通信法をもって、英国では放送と通信の融合が法制化された。

 情報通信庁「オフコム」の計算によると、テレビ業界の総収入(広告収入、有料視聴契約料、公的資金援助その他の合計)は2010年で約117億円ポンドに上り、前年度比で5.7%増。複数のテレビを持つ家庭は多いが、主となるテレビのうち、93%がデジタル放送を視聴できる状態にある。各家庭の一人当たりのテレビ視聴時間は平均で1日に4時間余。国内の放送局の数は510に上る。

 英国の広告市場(2010年で約165億ポンド、英インターネット広告局調べ)で存在感を増しているのがネット広告だ。その総額は2010年で約40億ポンド、全体のほぼ4分の1を占めた。

 2011年上半期(1月―6月)では全体の27%(約22億ポンド)に達し、テレビの広告総額が占める26%を超えた。前年同期と比較すると13・5%の増加だ。広告市場全体の増加は同時期で1・4%増となり、はるかに高い数字となった。

 テレビ局としては、広告主や利用者が生息する場所、つまりはネット上のサービスの拡充で競争することになる。SNSも組み込みながら(ネット上で過ごす時間の25%がSNSやブログの閲読という)、いかに利便性の高い視聴環境を提供できるか、かついかに面白いと視聴者に思ってもらえる作品を作るかが大きな課題となる。

―歴史に裏打ちされた「公共のための放送」

 英国の放送業の始まりは、1922年、無線機の製造業者が集まって作った民間会社英国放送会社(British Broadcasting Company)である。

 放送業は公共体が運営するべきという考えが当時の政府、知識層、アマチュア無線愛好家たちの間でほぼ共有され、1927年、先の会社が英国放送協会(British Broadcasting Corporation)として生まれ変わった。初代の経営陣トップとなったリース卿がBBCの目的は「楽しませ、教育し、情報を与えること」と提唱したが、娯楽一辺倒ではなく、何かしら知的に意味のあるサービス=放送業というイメージが確立してゆく。

 1950年代半ば以降はITVを初めとする民放が次々と開局した。誰でもがテレビをつけさえすれば番組を視聴できる地上波の放送局BBC、民放ITV、チャンネル4、チャンネル・ファイブには「公共サービス放送」(Public Service Broadcasting, PSB)という枠がはめられている。公共の電波を使うから「公共サービス」と呼ぶのではなく、「公益のための放送サービス」という意味である。

 PSB枠に入ると、バランスの取れたニュース報道、一定の本数のドキュメンタリー、児童番組や地方ニュースの放送が義務化される。オリジナル性がある番組や国内で制作される番組の制作も一定の比率で求められる。番組の質の維持にはBBCの場合はBBCトラスト(NHKの経営委員会に相当)が、民放の場合はオフコムが目を光らせる。

 しかし、質の高さを競わせる土壌を作るのはオフコムによる規制というよりも、開局当初から20数年間英国の唯一の放送業者だったBBCの歴史が関係する。

 英国では、自分の懐から出たお金で運営されるBBCに対する期待や批判を声に出す習慣がある。現在でも、国民がBBCやほかのテレビ局の番組あるいはラジオ番組について、喧々諤々の議論を行うのが常になっている。新聞や雑誌はテレビやラジオ番組の批評を書籍や演劇、美術展の批評と同位置におき、テレビ番組評論家によるレビュー記事が切磋琢磨の環境を作り上げる。

 番組制作者たちの熱い思いを垣間見れるのが毎年夏、スコットランド・エディンバラで開催されるテレビ祭だ。各放送局の編成幹部、制作者、作家、出演者に加え、企画を売り込みたい若手など約1000人が参加する、年に一度の集まりだ。業界関係者が一堂に集まるお祭りであると同時に、テレビ業界の今後を作りあげるためのアイデアや情報を交換する場でもある。

―広がるデジタルサービス

 有料テレビ(ペイ・テレビ)市場の最大手は衛星放送のBスカイBだ。1000万人の契約者を持ち(ちなみに英国の人口は日本の約半分の6000万人前後)、サッカーのプレミアムリーグの独占放映権、再視聴サービスの拡充など、地上波のテレビでは見られない番組を提供することで契約者を増やしてきた。

 第2位の市場規模を持つのが、ケーブル・テレビ、電話、インターネット・サービスを一括して提供するバージン・メディアだが、こちらは約370万人の契約者で、BスカイBに大きく水をあけられている。

 多彩なデジタル放送を視聴する1つの方法は、BスカイBやバージン・メディアなどの有料契約者となることだが、もう1つの方法は地上波デジタル放送のプラットフォーム「フリービュー」を使うことだ。1台約15ポンドのセット・トップ・ボックスを購入する必要があるが、購入後は追加で料金を出す必要はない(一部、有料契約を結ぶチャンネルもある)。これをテレビ受信機の側に置くと、数十のデジタル・チャンネルの番組が楽しめる。BBC,ITV、チャンネル4、BスカイBと通信インフラ企業アーキヴァが株主だ。

 今年はフリービューのサービスをさらに進化させた「ユービュー」が開始予定だ。開発にはBBC,ITV,BT,チャンネル4、チャンネルファイブ、通信業者トークートーク、アーキヴァが参加している。ユービュー用のセット・トップ・ボックスをテレビにつないで使う。ブロードバンドにつながっている必要はあるものの、追加の利用料が請求されずに、大手放送局の番組が再視聴でき、番組を録画もできる。

 世界最大のSNS人口(2011年9月22日現在、8億人超)をもつフェイスブック。例えばこのフェイスブックで友人同士がお気に入りの番組の情報を交換し、一つの番組を同時視聴することができたらどうだろうか?

 BBCニュース(2011年9月11日付記事、Beyond the couch: TV goes social, goes everywhere)によれば、テレビ技術の会社シーチェンジは、画面をマルチスクリーン状態にし、友人たちと番組視聴を共有するソフトを開発している。これを使えば「仮想空間上のパーティー」が行える。フェイスブックの担当者は同記事の中で、SNSの活用で「テレビ業界にルネッサンスが起きる」と述べる。

 日本でも、ネット上の動画に参加者がコメントを書き込めるサイト「ニコニコ動画」が大人気と聞く。感動的なコンテンツを同時に視聴することで、体験の共有ができる「場」を提供するテレビの重要性は今後も増すだろう。

―刻々と発信されるニュース

 英国のテレビが「面白い」、「いつでも、どこもで視聴できる」と先に書いたが、一つの具体例として、ニュース報道を挙げてみる。

 大きな役割を果たすのが24時間、ニュースを流すチャンネルの存在だ。

 ブロードバンドが入っている家庭では少なくとも3局(BBC,BスカイBのスカイ・ニュース、米CNNなど)視聴できるため、世界で大きなニュースが起きると、テレビは大活躍となる。テレビ受信機の前に座っていなくても、パソコン、スマートフォンなどでも視聴可能なのは言わずもがなだ。

 24時間のニュース専門局の存在は、ありとあらゆる視点を出す機会を提供する。つまらないゲストや視点が狭いと視聴者はほかのチャンネルに行ってしまうので、誰をいつ出すのかに制作者側は知恵を絞る。

 情報はツイッターでもどんどん入ってくる。テレビの報道局の記者らがツイッターのアカウントを持っているので、たとえばアラブの春などのニュースが発生すると、現場から、そしてスタジオから、一斉につぶやき出す。刻一刻と事態が変化してゆく様子を利用者は追体験できる。

 英国の新聞界では、スクープがあったときに紙媒体の発行まで伏せておくという習慣はもはや消えたが、テレビ界では、記者ブログでスクープを出しておく手法も珍しくなくなった。

 例えばテレビ局が基幹のニュース番組とするのは午後10時放送分になるが、これを待たずに、記者が自局のウェブサイト上に設けられた自分のブログの中で、まずスクープ報道を行う。その後で、基幹番組で同様のトピックを自分で報道することもアリとなる。刻一刻と動く国内外の情勢を、複数のプラットフォームで競うように出していくのが英国のテレビである。

―未来はデジタルに

 英国テレビの特徴を際立たせるためにデジタル・コンテンツの提供者としての側面を書いてきたが、多チャンネル化による市場の変化で失敗もある。

 先に、多チャンネル化で各チャンネルの視聴占有率が相対的に低下していると書いたが、広告収入の減少を補い、自局の番組に視聴者をもってこようとあせったテレビ局が手を出したのが、広い意味の「視聴者参加型番組」の制作であった。

 歌手あるいはタレントになるためにそのスキルを競うオーディション番組(ITVの「Xファクター」など)や、視聴者がドキュメンタリー番組の出演者となる番組、若者たちを合宿所で生活させ、外界との接触を禁じながら、生活の様子をカメラで撮影・放送する番組(チャンネル4の「ビッグ・ブラザー」など)など、その種類は様々であった。

 こうした視聴者参加型テレビには、テレビ局に電話をかけさせる仕組み(「フォーンイン」と呼ばれる)を組ませることもあった。

 例えば、オーディション番組では視聴者が気に入った出演者に「投票」(テレビのリモコンを使ったり、テレビ局が指定する電話番号に電話する形を取る)させたり、クイズ番組で正解を当てさせたりした。視聴者は自分が番組に直接参加した思いがし、クイズの賞金をもらえるとあって、投票行為に続々と参加した。テレビ局側には視聴者がかけた電話の料金の一部が懐に入った。

 視聴占有率を上げながらお金も入ってくる方法で、重宝されたが、テレビが単に換金行為のための「箱」(昔、図体がでかかったテレビのことを「ボックス=箱」と呼んだ)に成り下がった面があった。ところが、こうした番組が乱立して、不当に電話料金を請求していたことが発覚し、テレビ局はオフコムによって巨額罰金の支払いを命じられるという事件が、2007年、発生した。

 BBCへの近年の批判の1つは、タレント出演者に対する高額報酬の支払いである。

 受信料で国内の活動をまかなっていることから、これを正当化するためにBBCにはより良質の、かつより多くの視聴者が来る番組を制作するよう圧力がかかる。こうした圧力をかわす一つの方法が、人気があるタレント(多くが番組の司会者)への高額報酬の支払いであった。これで高い視聴率が取れる番組の制作を狙った。

 また、BBCの経営及び編集幹部の給料が高すぎるのではないか、経費使いが荒いなどの批判も常に浮上している。特に報道機関としてはライバルとなる新聞業界は、スキャンダルが起きるとこれぞとばかりにBBC批判の論考を大々的に掲載する傾向がある。

 受信料の上昇を凍結されたBBC,広告収入の上下に経営が左右される民放など、経営上の悩みはつきないが、視聴者の利便性や番組内容の質の面からは優れた水準を維持しているのが英国のテレビ界である。

 未来はデジタルにあるーこれを経営陣が周知のこととし、視聴者のためにサービスを拡充することに英国のテレビ業者は頭を絞る。現在及び将来は決して暗くない。
by polimediauk | 2012-03-02 19:48 | 放送業界
 英国のテレビ界の団体、ロイヤルテレビジョン協会(RTS)は、毎年、英国内外の優れたテレビ報道を選定し、これを数々のRTS賞として発表している。23日、2010-11年度の各賞が発表された。

 最優秀ジャーナリスト賞は、「アラブの春」など海外の事件を報道した、スカイ・ニュースのアレックス・クローフォード(女性)が受賞した。彼女は4年連続の受賞である。リビア報道も優れており、特に「カダフィ大佐が自国民を攻撃している証拠を最初にスクープ」するなど、数々の勇気ある報道が高く評価された。

 最優秀チャンネル賞はアルジャジーラ英語チャンネルが獲得。やはりアラブの春での圧倒的な報道がほかと差をつけたようだ。

 スクープ賞、国内の最優秀時事報道賞、若いジャーナリスト賞を取得したのが、BBC1という、BBCの基幹テレビチャンネルで放送された、時事報道番組「パノラマ」及びジャーナリストのジョー・ケーシーであった。制作チームは、ある養護施設でいかに患者が手荒く扱われているか、その虐待ともいえる状況を隠しカメラで捕らえ、これを「パノラマ」で放映した。

 独立部門賞は、ITN/チャンネル4で放送されたクリップを作った、ジャマール・オスマンが受賞。オスマンは政治混迷が続くソマリアで、オリンピック出場を目指す人々を追った。

 最優秀報道番組賞は、BBC2で夜10時半から放映される、ニュース解説番組「ニューズナイト」が取得。

 そして、審査員賞はNHKに与えられた。その受賞理由の説明を抜粋すると、昨年3月11日、大きな地震が日本を襲うと、NHKは「数分で中継のストリーム放送を開始し、NHKの報道チームが目撃者の証言を集め」、津波がやってくることを該当する地域の人に伝えたという。14機のヘリコプターと70台の衛星用トラックを使い、NHKは「巨大な津波がやってくる様子を生中継で伝えた」。

 「NHKには地震の際の緊急体制」があったものの、それでも実際に地震が起きると、大変な仕事であった、世界中の放送局がNHKから画像を取ることができた、「空から、しかも生中継で、津波の全威力の画像を放送するのは、私たちにとって初めてであった」。

参考:
プレスリリース
http://www.rts.org.uk/rts-television-journalism-awards-2010-2011
「プレスガゼット」記事
Alex Crawford is RTS journalist of year for 4th timehttp://www.pressgazette.co.uk/story.asp?sectioncode=1&storycode=48820&c=1
by polimediauk | 2012-02-24 21:58 | 放送業界
 以下のエントリーに、間違った表記があることが分かりました。このブログだけでなく、ヤフートピックスなど他媒体に掲載された後、気づかれた方からご指摘をいただきました。 

 爆発的ヒットにならない「NHKオンデマンド」とダントツ人気の英BBCアイプレイヤーhttp://ukmedia.exblog.jp/15953138/


 この中に、ソニーのプレイステーションの話が出てきますが、最初、「パワーステーション」と間違って表記されていました。また、任天堂WiiをWII表記しておりました。訂正しておりますが、間違った情報を出してしまったことを、お詫びします。
by polimediauk | 2011-10-29 07:33 | 放送業界
 BBCのテレビやラジオの番組を放映・放送後7日間再視聴できる、いわゆる「見逃し番組視聴サービス」=BBCアイプレイヤーが、28日から、欧州11ヶ国で利用できるようになる。当初は、アイパッド(アップル)のみのサービスだ。年内には米国を含む、世界他国にも広げる予定だという。

 サービスが利用できる欧州11ヶ国とは、オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、ルクセンブルグ、アイルランド、オランダ、ポルトガル、スペイン、スイス。毎月6・99ユーロ(約780円、あるいは年間49.99ユーロ、約5000円)の利用料を払う。

 サービスはBBCの商業部門となるBBCワールドワイドが行う。視聴できるのは、放送から7日間の番組ばかりではなく、新旧取り混ぜたラインアップになる模様。

 BBCの担当者は、アイプレイヤーは国内では「見逃し番組のキャッチアップ」サービスだが、海外版は「オンデマンド・サービス」となるという。「過去50―60年間で放送分の番組を混ぜる」という。約1500時間に上る番組の中から視聴したい番組を選べるようになっており、今後、一ヶ月で100時間分の番組が追加されてゆく。

 番組はWIFI環境下ばかりでなく、3Gでも視聴でき、ダウンロードもできるので、ネットにつながっていないときでも番組視聴ができる。番組の60%はBBCが制作・放映したもので、30%が独立制作会社が制作してBBCで放映されたもの、残りの10%は他局ITV,チャンネル4が放映したものになるという。

 フィナンシャル・タイムズ紙の取材に答えた、ブロードバンド及びTVのアナリスト、ニック・トーマス(インフォーマ社)は、欧州で今年販売されたアイパッドの台数は約750万と推測され、その大部分が英国で販売されたものであったので、28日から開始された、国際版アイプレイヤーの市場は「ニッチ(希少な)」ものであるという。

 BBCは経費削減への圧力が、最近非常に大きい。国内では大人気となったアイプレイヤーだが、無料で視聴できるため、投資をしたわりには収入を得られないのが難点だった。今回のグローバル版は1年間のパイロットという面があるそうだが、本格的に稼動した場合、大きな収入が得られる可能性がある。BBCのネームバリューから言って、国境を越えたオンデマンド・サービスの第一人者になる可能性もあると思う。

 ますます、テレビ番組は「受信機の前に座って、テレビ局が設定した時間に見る」ものではない状況が現実化している。

http://www.bbc.co.uk/news/technology-14322604
http://www.ft.com/cms/s/2/0b00eca4-b85f-11e0-b62b-00144feabdc0.html
http://www.guardian.co.uk/technology/appsblog/2011/jul/28/bbc-iplayer-global-ipad-launch
by polimediauk | 2011-07-28 18:19 | 放送業界
c0016826_1761582.jpg 米CNNの看板トーク番組「ラリー・キング・ライブ」が昨年末で終了し、その後を引き継いだ新番組のホスト役に抜擢されたのは、英国人で元デイリー・ミラー紙の編集長ピアス・モーガン(Piers Morgan)であった。

 モーガンは、英兵らによるイラク人への「虐待」写真が本物ではなかったことが分かり、同紙を解雇された過去を持っている。一体どのようにして、米国テレビ界のスター番組を担うところまで上り詰めたのだろう。モーガンの人気の秘密を、「英国ニュース・ダイジェスト」最新号(9日付)にまとめてみた。〔「英国ニュース・ダイジェスト」:http://www.news-digest.co.uk/news/index.php) 以下はそれに補足したものである。

―経歴

 左派系大衆紙デイリー・ミラーの元編集長で、今年1月から米CNNの新トーク番組「ピアス・モーガン・ツナイト」の司会者、ジャーナリスト。熱心なツイート利用者(@piersmorgan)でもある。1965年、英南部サリー州ギルフォード生まれの46歳。幼少時に父を亡くし、再婚した母と3人の兄弟とともに育つ。ハーロー・カレッジでジャーナリズムを勉強後、ロンドンの複数の地元紙に原稿を書く記者となる。大衆紙サンに転職し、ニューズ・オブ・ザ・ワールド紙の、そしてデイリー・ミラーの編集長に就任。2004年、ミラーを解任されてからは、月刊誌「GQ」でコラムを執筆するほか、テレビ界に本格的に進出。著名人とのランチの逸話などが入った「ザ・インサイダー」(2005年)など、著書多数。2010年、デイリー・テレグラフの記者シリア・ウォルデンさんと再婚。先妻との間に3人の息子をもうけた。クリケットが大好き。サッカーはアーセナルのファン。

―モーガンのこれまで

 25年間続いた米CNNの看板トーク番組「ラリー・キング・ライブ」の代わりとして、今年から始まった「ピアス・モーガン・ツナイト」の司会者であるピアス・モーガンのこれまでを振り返ってみる。

―28歳で日曜大衆紙の編集長に

 モーガンの幸運は、メディア王といわれるルパート・マードックにその存在を知られたことだった。学業を終えてロンドンの数紙の記者をしていたところ、マードック傘下の大衆紙サンに引き抜かれ、ゴシップ・コラムを担当した。このコラムを通じて芸能界のみならならず幅広い人脈網を築き上げたモーガンは、マードックの一声で、同じく同氏傘下の日曜大衆紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドの編集長に、28歳にして抜擢された。

 しかし、日刊紙の編集長を夢見たモーガンは、1995年、ニューズ社のライバルとなるミラー・グループ発行の大衆紙デイリー・ミラーの編集長に鞍替えした。約10年に渡り、同紙の編集長としてダイアナ元皇太子妃やブレア首相(当時)を含む著名人、政治家などと頻ぱんに食事やお茶をともにし、人脈網を拡大させた。

 2004年、イラクのアブグレイブ刑務所での米兵らによるイラク人拘束者への虐待写真が暴露された。モーガンは、頭部に袋をかぶせられた数人のイラク人拘束者に英兵らが放尿するなどの虐待写真を1面に掲載した。衝撃的な写真はミラーの部数を伸ばしたが、この写真が偽物である疑惑が発生した。本物ではないとする見方が確定すると、モーガンは編集室から護衛付きで追い出され、解雇処分となった。

―カムバックへ

 モーガンの評判は地に落ちた。2005年、著名人との交流が興味深い、編集長時代の日記を元にした自著「ザ・インサイダー」が出版されると、「有名人好きの実態のない奴」「傲慢」というイメージがさらに強化された。

 その後、モーガンは政治家や著名人から思いがけない一言を引き出す人物として知られるようになった。2008年、雑誌「GQ」用のインタビューで、自由民主党党首ニック・クレッグの口から「30人ほどの女性と寝た」という文句を引き出した。2010年2月にはITVの番組の中でブラウン首相(当時)をインタビューし、首相が生後まもなく亡くなったジェニファーを思って涙する場面を作った。

 2006年ごろからはテレビ界に進出し、タレント発掘番組の制作者で友人のサイモン・コーウェルの口利きで、「アメリカズ・ガット・タレント」の審査員役になった。「コーウェルが友人だった」-ここに、モーガンの成功の秘密があった。その後は次第にテレビ出演の機会を増やし、米国テレビ界の重要人物になるべく、歩を進めた。

―人懐っこさと真剣さ

 モーガンの魅力は、下世話な話題へのあきることのない関心と普通であれば失礼と思われるような話題を相手に聞いても、決していやな気持ちを与えない、天然のソフトさであろう。今年1月から始まった「ピアス・モーガン・ツナイト」で、モーガンはコンドリーザ・ライス元国務長官に「あなたを誘惑するにはどうしたらいいですか」と聞いている。怒るどころか、ライスはこれに嬉々として答えた。
 「なんだか憎めない奴」として出演者がモーガンを許してしまうのは、モーガンの人懐っこさやその童顔の笑顔が効いているせいもあるだろう。

 その一方で、モーガンは時には「厳しい質問を放つジャーナリスト」という面も見せる。米軍によるオサマ・ビンラディン殺害の是非を映画監督マイケル・ムーアに聞く中で、ムーアが「オバマ米大統領の決断を支持する」、「オバマは言行が一致している」と話すと、「でもキューバの米グアンタナモ基地をオバマは閉鎖するといっておきながら、まだ閉鎖してないではないか」と切り返した。

ムーアのインタビューの一部:http://piersmorgan.blogs.cnn.com/2011/05/06/clips-from-last-night-michael-moore-on-bin-ladens-death-republican-party-focus/

 窮地を一瞬にして自分の利にする手際も抜群だ。米俳優チャーリー・シーンが番組に出演することになっていたある日、シーンは放送の打ち合わせに姿を見せず、番組が成立しない危機に見舞われた。オンエア5分前にシーンが放送局に入ると、モーガンはツイッターで「今、シーンがやってきました。この後、すぐ生中継です」と打った。このたった5分で、約50万人が番組にチャンネルを合わせたという。

 独自に作り上げた人脈網、著名人・有名人を取材対象として限定していること、持ち前のソフトさ、そしてこれに相反するようなジャーナリスティックな視点―そんな複数の要素を内包するモーガンは、これまでにいくつもの人生の浮き沈みを乗り越えてきた。本国英国よりも米国でもっと著名になる可能性もあるだろう。

―モーガンの人生の浮き沈み年表

1965年:誕生。幸福のスタート?
1987年:地元紙の新聞記者として取材に専念
1989年:サン紙の編集長ケルビン・マッケンジーに「才能」を見込まれ、芸能ゴシップ・コラム「ビザーレ」担当として引き抜かれる
1994年:メディア大手ニューズ社の最高経営責任者ルパート・マードックに気に入られ、28歳にしてニューズ・オブ・ザ・ワールド紙の編集長に就任
1995年:デイリー・ミラーの編集長に就任
2000年:IT企業ビグレン社の株購入にインサイダー取引の疑惑が発生。この件で部下二人が解雇された。
2002年:9・11米国中枢大規模テロの優れた報道で、ミラーが最優秀新聞賞を取る
2003年:BBCのドキュメンタリー番組に出演
2004年:英兵らがイラク人らを虐待する写真を掲載。偽装写真と判明し、編集長職を解任される
同年:チャンネル4の番組で司会役を務める
2006年:米国のタレント発掘番組「アメリカズ・ガット・タレント」の審査員に
2007年:本家英国の「ブリテンズ・ガット・タレント」(ITV)の審査員に
2008年:米著名人版の「アメリカズ・ガット・タレント」で勝利者に
2009年:世界各地を訪れる旅のドキュメンタリー「ピアス・モーガン・オン・・・」(ITV)が人気に。 
同年:著名人の人生を振り返る「ライフ・ストーりーズ」(ITV)開始
2010年9月:米CNNの「ラリー・キング・ライブ」が翌年から「ピアス・モーガン・ツナイト」に引き継がれると発表
2011年1月:「ピアス・モーガン・ツナイト」開始

―関連キーワード

Daily Mirror:デイリー・ミラー。1903年創刊の大衆紙。英国で元祖新聞王といわれるアルフレッド・ハームズワース(後のノースクリフ卿)が、女性が作る女性のための新聞として創刊した。当初部数が伸び悩んだ。1904年、全員が女性だった編集陣は解雇され、男性編集長ハミルトン・ファイフェの下に、写真を中心にした紙面に変えて再出発。第2次大戦中、兵士や国民の思いを汲み取る新聞として部数を大きく伸ばした。1940年代末から1960年代半ばが人気の頂点で、500万部の部数を誇った。その後はセックスとゴシップを前面に出したライバル紙サンの攻勢に、大衆紙トップの座を奪われた。左派系ミラーは労働党を一貫して支持する。現編集長はピアス・モーガンの後を継いだリチャード・ウォレス。
by polimediauk | 2011-06-09 17:04 | 放送業界
(この中に、ソニーのプレイステーションの話が出てきますが、最初、「パワーステーション」と間違って表記されていました。また、任天堂WiiをWII表記しておりました。訂正しておりますが、間違った情報を出してしまったことを、お詫びします。)

 以下は「週刊東洋経済」のテレビ特集号(14日発売)に掲載された分に補足したものであるが、今回、NHKのオンデマンド放送を調べてみて、何故無料で提供されていないのかの根拠が、「放送法第9条第2項第2号」にあることを知った。〔先の段落に情報追加) 

 これによって、NHKオンデマンドサービスは受信料を財源としないことが定められている。そこで、いろいろ工夫をこらしながら、様々なお試しコースを設けて、なんとか利用者を増やそうとしている。

 何故、放送法のこの項目がそうなっているのか(受信料外の業務とされたのか)の背景が、よく分からなかった。これはつまり、「放送と通信の融合」が法律的に実現しなかったことと関係があるようだと推測したのだが、もしご存知の方は教えていただきたい。私が調べたところでは、新たな法律ができることになっていたが、「民主党への政権交代で」、結局法律は成立しなかった、なのでそのままになっている、ということなのかどうか。(総務省の担当部署にメールを送ったが、お返事はなし)。

 そして、何か放送業界〔民放?)からの圧力があったのかどうかー?(ネットでどんどん番組が配信されてもらっては困る、放送と通信は別々であってほしいーとか?)こうした事情に明るい方からのご一報をお待ちしています。

(追加)
放送法
第2章日本放送協会
第2節:業務―第9条2-2をご参照
http://www.houko.com/00/01/S25/132.HTM

放送法第9条第2項第2号の業務の基準

http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/netriyou/index2.html

総務省の基準ーー受信料を使ってやる業務と、受信料以外を使ってやる業務を規定している。
http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/netriyou/pdf/netkijyun2.pdf
この文書の「第2」の受信料以外の財源で行う業務として、見逃し番組サービスの提供など。


***
 
ネット対応優等生BBC -「世界制覇」へ挑む! 

 NHKの多メディア展開戦略の一つとして2008年12月から開始された、放送済み番組を有料で視聴できるサービス「NHKオンデマンド」。昨年12月末、PC会員(ブロードバンドにつながったPCでサービスを利用する人)数は57万人に達し、第3四半期(2010年10月―12月)の売上げ総額は過去最高の1億4176万円に達した。3期連続の上昇である(NHK「業務報告」)。

 しかし、いまだ「爆発的成功」とはいえないようだ。NHKオンデマンドの今年度の売上げ収入は昨年12月末時点で総額3億8500万円。今年度末までの達成目標額は11億円となっており、約3割にしか達していない。3月末までの目標達成は、逆立ちしても無理そうだ。

 一方、英国では公共放送BBCの番組再視聴サービス「BBCiPlayer(アイプレイヤー)」が大人気だ。

 アイプレイヤーへの番組視聴リクエスト数は、昨年12月で1億4500万回に上り、これまでで最高となった。前年同月比では27%増だ。民放局や有料衛星テレビのスカイが提供する同様のサービスの利用率と比較すると、BBCアイプレイヤーの人気はダントツだ。

 英国の放送局によるネットを使っての番組配信は2006年頃から本格的に市場に登場し、BBCは後発組。しかし、その後の巻き返しが目覚しい。実験配信の期間を経て、2007年12月、子供から大人まで幅広いファンを持つSF連続ドラマ「ドクター・フー」を再視聴できることを売りものに本格スタート。その後何度かの技術変更を経て、番組(テレビ及びラジオ)の放送から7日間の見逃し番組の視聴、30日間のダウンロードといった基本サービスに加え、連続番組のスタッキング(7日間を過ぎても、シリーズが終わるまで初回放送分から視聴できる)、フェイスブックやツイッターでお勧め番組の情報を友人たちと共有できる仕組みなど、サービス内容を拡充させている。バージン・メディアやBTなどのブロードバンド・プロバイダーと契約すれば、テレビの前に座って、リモコンを使って番組を楽しめる。ソニーのプレイステーション、任天堂のWiiなどのゲーム機、携帯電話からも視聴可能だ。

 アイプレイヤーの最大の功績は、英国の視聴者の行動を変えたこと。オンデマンド・サービスは他局もやっていたが、視聴率シェアが最も高いBBCが2007年末に本格市場参入したことで、サービスが一気に普及した。民放の「プラス・ワン」のチャンネル(あるチャンネルの放送内容を、そっくりそのまま一時間遅らせて放送する)も人気で、放送局側が決めた時間にテレビの前に座るのではなく、「自分の都合がよい時間に、見たい番組を取り出してみる」のが英国で普及している。

―簡単でタダ

 NHKオンデマンドと比較したときのBBCアイプレイヤーの最大の利点は、ズバリ、無料であることだろう。PC上から、アイプレイヤーの独自デスク・マネージャーを立ち上げて選ぶか、テレビの前に座って、リモコンを操れば好きな番組が難なく視聴できてしまう。アイプレイヤーは、とにかく楽なサービスなのだ。どれほど見ても全く懐が痛まない。貧乏人から金持ちまで英国に住んでさえいれば誰でもが視聴できる。

 残念ながらNHKは、国内法の制限から見逃しサービスの提供に受信料を使ってはいけないことになっている。「無料で放送された番組に何故再度お金を払うのか」という視聴者側の割り切れなさがいつまでも付きまとう。

 放送と通信の融合が刻々と進展する英放送業界で、今年最大の注目が無料ネット・テレビのプラットホーム・サービス「YouView(ユービュー)」の開始だ。BBCのほかには民放3局、通信業界からはBT,Talk Talk、 Arqivaが参加する。視聴者はブロードバンド・インターネットに接続された「セットトップボックス」をテレビの上に備え付けて番組を視聴する。高品位画像設定や番組の途中での巻き戻しや録画ができ、有料・無料のオンデマンド番組の視聴ができる上に、インターネットのコンテンツにアクセスできる。複数の配信サービスの一元化で、利用者にとっては、オンデマンドの利便性がぐっと向上することになる。インターネットにつながったテレビは現在英国で200万台ほどで、年内には700万台に増加すると言われている。

―運営予算削減の逆風

 BBCの目下の悩みは予算面での不透明感だ。緊縮財政を進める英政府は、昨年秋、2014年から4年間のBBCの受信料収入を「値上げなし」とする方針を決定した(BBCの受信料収入の値上げ幅は時の政府と交渉の末に決まる。)BBC試算によれば、値上げの凍結は、実質、年率16%の予算削減に当たるという。また、外務省が運営資金を出していたBBCの商業部門、BBCワールドワイドに対し、政府は資金の拠出を14年から停止と決め、BBCが自力で運営することになった。

 BBCオンラインの予算も13年度末までに大幅削減され、今後2年で360の職が消える。アイプレイヤーがどれほど国内で人気となっても、所詮は無料サービス。何とか収入を上げられないかと経営陣は頭をひねる。

 BBCは現在、アイプレイヤーで提供される番組を他のオンデマンド・サービスに組み込んだ形で提供する「シンジケーション」サービスを、原則許可していない(例外がバージン・メディア)が、アイプレイヤーから他局のオンデマンド・サービスに飛べるようにする「アウト・リンキング」の技術を開発中だ。これが実現すれば、トラフィック増大を切望する民放には朗報で、BBCに一定の収入が入る可能性もある。

 BBCが将来の大きな収入源の一つとして期待するのが、現在国内でのみ利用可能なアイプレイヤーの海外展開だ。商業部門BBCワールドワイドの手によって、有料購読サービスとして提供するのである。すでに、約1千本の個別の番組がアイチューンズなどを通して販売されており、2008-2009年で1000万ポンドの売上げとなっている。

 そこで年内に、まず米国で有料サービスを開始予定で、当初はiPadでの視聴のみとなるようだ。「お金を払ってもBBCの番組を見たい」という声は世界中で強い。ネットを利用して番組を視聴する時代となりつつある今、BBCは英国内のみならず世界のオンデマンド市場でトッププレイヤーになる可能性を秘めている。〔終)

 

 
 
 
by polimediauk | 2011-02-21 18:28 | 放送業界
c0016826_2022562.gif 放送批評懇談会が発行する月刊雑誌「GALAC』3月号の「海外メディア最新事情」の中で、英国の新聞界のお助け人、アレクサンドル・レベジェフ氏について、英メディア界の人のコメントを入れて、エッセイ風に書いてみました。書店などで軽い気持ちで読んでくださると幸いです(・・しかし、表紙の人は非常にきれいですね、驚きですー檀れいさんという方だが、昔の松原智恵子を少しほうふつとさせるー知っている人は今は少ないかもしれないけど)。

 この雑誌を読むと、日本のテレビ・ラジオ界でたくさん意欲的な試みがあることが分かる。普段、ネットで日本に関する情報に触れる私からすると、驚きのことが一杯だ。業界は、結構、熱い感じがするー。

http://www.houkon.jp/galac/index.html

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 フェースブック関連で、日本で、実名を使って登録しなかった人のアカウントが消されたことを知った。

 
「春の垢BAN祭りが始まったよ! 」
http://togetter.com/li/98417

 この件の是非はいろいろあることが分かるが、「実名で書いたことが外に漏れるのが怖いな」ということを書かれている方のコメントが印象に残った。
by polimediauk | 2011-02-09 20:21 | 放送業界
 見逃した番組を無料で視聴できるBBCのアイプレイヤーは大変な人気である。多くの人の生活の一部になっていると思う。私も非常に重宝しているが、今度、これの海外版が出ることになった。

http://paidcontent.co.uk/article/419-bbc-plans-subscription-only-u.s.-iplayer-on-ipad/

 ただし、海外版は有料サービスで、はじめは米国である。また、使える機器はアイパッドのみ。こちらでは大人気の「ドクター・フー」などの番組を提供して収入をあげることを狙っている。
 
 アイプレイヤーは英国で最も人気がある動画サービスで、10月には1億3900万回の視聴リクエストがあったという。

 北米では動画サービス、フールーが人気(ちなみにリクエストは2億6000万回―複数の放送局の番組を提供)だ。

 ペイドコンテンツの調べによれば、BBCの番組だったらお金を払っても視聴したいという人が海外にたくさんいるという。在外英国人のみではなく、いわゆる現地の人もそうだという。だとすれば、BBCにとっての新たな収入源として、大きな期待がかかる分野である。(日本でもそのうち、利用できるようになればいいなと思う。)

 一方、BBCに加え、ITV,チャンネル4などの民放が協力して、動画サービス「ユー・ビュー」を来年から開始するが(現在はそれぞれのサービスが個別に提供されているので、これを一体化する。ただし、個々のサービスが消えるわけではない)、これに加入していない有料ケーブル・サービスのバージン・メディアが、新たにネット・テレビを売り出すサービスを、年末から年明けにかけて、開始する予定だ。これはいわゆるグーグルテレビ、アップルテレビに対抗するような、単にテレビの番組を見れるだけではなく、インターネットも使える、という代物。当初、テレビの機器代を190ポンドぐらい(約2万5000円)払うが、毎月の支払いは、すでに契約をして月間の料金を払っていれば、追加料金として3ポンドぐらいを払う仕組みだ。
 
 今年までに、見逃し番組の再視聴や録画が次第に浸透してきたが、来年からは、ネットが使えるテレビの競争がどんどん起きそうだ。
by polimediauk | 2010-12-03 19:00 | 放送業界
 20日、英政府が、財政再建のために政府の歳出計画を見直す「歳出見直し」を発表した。今後4年間(2014-15年まで)に、政府歳出を各省庁ごとに平均19%削減する予定だ。この結果、政府予測では49万人近くの失業者が出る可能性があるという。

 なんとも大きな削減になりそうで、今日一杯は、このニュースで持ちきりだった。

 メディアがらみであっと驚いたのがBBCの話である。4年で16%の経費削減となったのである。

 振り返ってみれば、BBCも一つの公共機関であるから、何らかの削減をしてしかるべきではないかー?そんな声が政府から聞こえてきた昨今であった。

 一方、BBCは設立許可証と王立憲章でその役割や活動が規定されている、特別な存在である。したがって、政府の大規模歳出削減が行われるからといって、BBCが犠牲を強要されることはないのではないか、という声もあった。

 しかし、BBCには政府に握られている弱みがあった。それは、毎年のテレビ・ライセンス料(受信料に相当)の値上げ率である。10年毎に決定される、先の設立許可証と王立憲章だが、ライセンス料に関しては、政府との交渉で決めることになっている。しかも、今回の10年(2007-8年から、2016-17年)のうちで、ライセンス料の値上げ率を大体決めたのは最初の6年間のみ(2012-13年分まで)だった。

 ライセンス料の2013年分以降をどうするかは、BBCと担当の文化・メディア・スポーツ省の大臣が、来年春ぐらいから交渉するはずになっていた。

 事態が急転したのは、比較的最近である。財務省から歳出カットのプレッシャーを受けて、文化省はBBCに対し、75歳以上の視聴者のテレビ・ライセンス料を、BBC自らが負担するようにして欲しい、と持ちかけたようだ。どういうことかというと、75歳以上の視聴者はライセンス料を払わなくていいのだが、この分を、雇用省が負担していたのである。それを、今度からはBBCに負担してほしい、と。

 BBCは、これに大慌てになったようだ。経営陣もBBCの活動内容を検証するBBCトラストも猛反対。もしBBCがこれを払ったら、まるで「福祉のコストを払ったことになる」「放送業者としてのBBCの活動内容からはずれる」、と。

 すったもんだの交渉があって(一時、トラストのメンバーがもしどうしても政府が言うことを聞かないなら、辞職するという話も出たらしい)、結果は、BBCはこの費用を負担しなくてもよくなった。その代わり、

①ライセンス料は現在の金額のまま、2016-17年度(今回の10年間の最後の年)まで、凍結する。
②外務省が資金を負担していた、商業国際放送のBBCワールドサービスと、世界中のニュースをチェックするBBCモニター(内閣府が資金を出していた)、ウェールズ語放送のSC4を、BBCが面倒を見る
③BBCの予算の中で、テレビのデジタル化への移行資金として使われていた分を、今後は、英国内のブロードバンド敷設費用として使う

 などが決まったのである。非常に急な決定で、最終的にBBC経営陣、トラスト、政府が合意したのは、歳出見直しが発表される前日であった。

 そして、①から③のために、BBCは4年間で実質16%の予算削減となった。

 各政府省庁の歳出が平均19%削減(予定)であるのと比較して、「たいしたことはない」・・・とはいえないだろう。何しろ、これで、新たに3億4000万ポンド(約43億6000万円)ほどの経費を、BBCはまかなわざるを得なくなったのである。これは、もし75歳以上の視聴者のライセンス料をBBCが負担した場合の5億5600万ポンド(約71億4000万円)よりは、確かに少ないが、喜ぶほどではない。何しろ、「新たに」この金額が追加となるのだから。

 私が懸念することの一つは、あっという間にBBCのライセンス料の額やBBCワールドを傘下に入れる、ということが決まってしまったことだ。通常、BBCの一挙一動は、トラストなり、政府なりが、まず国民や視聴者の意見を聞く機会を設ける。委員会が設置されることもあるだろう。意見を聞く前には、提案者が提案書を作る。数ヶ月かけて、大体の枠組みを決めて、最後は議会なり、トラストなりが決定を下す。それが、ほんの短期間にー実質的な交渉は一日か二日でー決まってしまった。

 BBCとしては、今後6年間のラインセンス料収入が、今からきっちりと決まっているため、ある意味では、安定した計画が立てられる。75歳以上の視聴者は今後増えるばかりであろうから、そのライセンス料を負担することを断ったのも、良い展開であった。

 しかし、いざ!というときに、政府側の都合で、急にまた何かをさせられるのではないか、という懸念は残る。

 また、BBCワールドの資金を負担していたのは外務省だが、一種のパブリック・ディプロマシーというか、外交の意味があった。それを今度はBBCが全部資金を出してやる、ということなると、どんな意味合いになるのだろう?また、BBCワールドは商業活動を行っているが、この点から、ますますライバル放送局から批判されないだろうか?

 BBCとは一体どんな放送局で、何を目指すのか?その目的や意味合いが、ぼやけてきたようにも思う。ライセンス料という形で視聴者から運営費を集め、時の政府からは(編集上の)独立を得る、というBBCの枠組みが、なんだかあやうくなってきた。

 お金の采配を政府に握られているために、どこまでもどこまでも、妥協させられるのではないか?そんな危惧を持っている。

(情報源はBBCとガーディアン、テレグラフ)

http://www.bbc.co.uk/news/entertainment-arts-11572171

 
by polimediauk | 2010-10-21 07:35 | 放送業界
 思わず息を呑み込むほどの大邸宅、これを取り囲む大庭園、たくさんの召使に囲まれて、登場するのはフリルやレース使いがぜいたくな装束に身を固めた美しい男女たちー。こんな登場人物が織り成すドラマに、英国民はついつい熱中してしまう。「コスチューム・ドラマ」(時代モノ・ドラマ)は英国のお家芸の1つだ。英民放ITVの新ドラマ「ダウントン・アビー」を例に、時代劇が受ける理由に注目した。

 以下は「英国ニュースダイジェスト」最新号のニュース解説に補足したものである。(掲載分は電子ブックで読める http://www.news-digest.co.uk/news/index.php )

英国の「コスチューム・ドラマ」は何故受ける?

 英国の民放ITV1で、英国の貴族が住む大邸宅を舞台にした新ドラマ・シリーズ「ダウントン・アビー」(=邸宅の名称)が、9月末から放映中だ。

 ドラマの設定は1912年。第1次世界大戦勃発直前。イングランド地方の田園に建つカントリーハウス「ダウントン・アビー」で暮らすグランサム伯爵一家とその召使たちの数年間が描かれる。グランサム卿の跡継ぎに予定されていた人物が、沈没したタイタニック号に乗船していたことが分かり、一家は大パニックになる。グランサム卿には娘しかおらず、遠縁に当たる人物が邸宅を引き継ぐことになったからだ。「よそ者」に財産を引き渡したくないグランサム卿の母と妻は策謀をめぐらす。果たしてダウントン・アビーの将来はいかにー?

 「ダウントン・アビー」では、巨大な庭を持つお城のような邸宅に住み、毎朝、寝室から使用人を鈴一つで呼びつける貴族の贅沢な暮らしがテレビ画面を通して映し出されてゆく。優雅な暮らしを続けるグランサム伯爵一家を支えるのは、階段を上り下りしながら忙しく働く、使用人たちだ。「使う人」と「使われる人」という対照的な関係にある2つの階級に属する人々のドラマが展開されてゆく。

 「ダウントン・アビー」は、典型的な英国のコスチューム・ドラマ(あるい
はピリオド・ドラマ、日本流に言えば時代劇)の1つといえるだろう。過去のある時代にドラマを設定し、登場人物がその時代の衣装や建物の中で演技する。

 コスチュームドラマはすでに著名な小説などから、テレビ化あるいは映画化が多いが、「ダウントン・アビー」は脚本家ジュリアン・フェローズのオリジナル作品である。

 フェローズは上流社会を描いた映画「ゴスフォード・パーク」(2002年)の脚本でアカデミー賞を受賞している人物だ。1949年、外交官の息子としてエジプトで生まれ、俳優、小説家、映画脚本家、監督になった。妻はケント公伯爵夫人の女官エマ・ジョイ・キッチナーで、90年の結婚後、ジュリアン・キッチナー=フェローズに名前を変えている。

 ケンブリッジ大学やドラマ学校で勉学し、テレビ界で俳優としてのキャリアを積んだ後、「ゴスフォード・パーク」で一段と著名になった。映画監督デビューは「セパレート・ライブズ」(2005年)。ビクトリア女王を描いた「ヤング・ビクトリア」(2009年)のオリジナルの脚本も書いた。上流社会をテーマにした小説「スノッブス」を2004年に上梓。貴族、王室、上流階級の人々のドラマを手がけることが多い。

 コスチューム・ドラマと一口に言っても、選択する時代やドラマの種類は千差万別だ。古代の戦闘映画「ベン・ハー」(1959年)、エリザベス・テーラーが出た「クレオパトラ」(1963年)、シェークスピアもの「マクベス」(1971年他)、タイタニック号沈没を扱ったレオナルド・ディカプリオ主演の「タイタニック」(1997年)など、その扱うテーマや時代は幅広い。


ーオースティンが代表格

 しかし、英国のコスチューム・ドラマの中で一つのジャンルの域に達しているのが、18世紀から20世紀初頭を背景に描かれた、中・上流階級の恋物語と人間ドラマであろう。

 その代表格はなんといっても小説家ジェーン・オースティン(1775年生-1817年没)の数々の作品だ。現代からすれば少々窮屈そうな装束に身を包んだ男女が、直接的な表現が許されない時代の制約を受けながらも、最後はそれぞれの幸せな場所を見つけてゆくドラマは、現代人の心にも強く響く。

 「ダウントン・アビー」もそうだが、使用人を使う側と使用人として使われる側の対比を描くドラマも、繰り返し登場している。ITVが放映した「アップステーアズ、ダウンステアーズ」(1971-75年)は、ロンドンにある大邸宅を舞台に、「アップステアーズ=階上の使用人を使う側の世界」と「ダウンステアーズ=階下での使用人の世界」を描いた。その後、同様の設定のドラマが続出した。BBCはITVドラマの続き物を同題名「アップステアーズ、ダウンステアーズ」で制作中で、年内に放送予定といわれている。

―何故人気?

 時代モノは何故人気があるのだろう?番組制作者側からすれば、「一定の視聴率が稼げる」「すでに評価の高い小説を元にしているので成功率が高い」などの理由があるだろう。

 時代モノの専門サイト「ピリオド・ドラマ」によれば、人気の理由は「視聴者が現実を忘れて、没頭できるから」。つまり、「別世界」だから、と。歴史となった過去の日々へのノスタルジー感も喚起する。

 さらには、「うっとり感」もあるのではないだろうか。多くの人にとって、上流階級の暮らしや贅沢な所持品、装束は手の届かない、憧れの存在だ。その生活をドラマを通して垣間見ることで、一瞬でも、自分もその中の一部になった思いがする。その一方で、使われる側の人間ドラマに共感を抱く人も多いだろう。

 コスチューム・ドラマは、階級制度の名残が残る、英国らしい楽しみごとの1つのようだ。

*英国コスチューム・ドラマのトップ10(選定はPeriod Dramas.com による。www.perioddramas.com)

1 「北と南」(2004年、BBC)(時代設定:1851年、監督:ブライアン・パーシバル、原作:エリザベス・ギャスケル、脚本:サンディー・ウェルチ、主演:ダニエラ・デンビーアッシュ、リチャード・アーミテージ、一言:社会問題と恋愛物語が平行して進む。放映後、すぐにDVD化)

2 「高慢と偏見」(1995年、BBC)(時代設定:1811-12年、監督:サイモン・ラングトン、原作:ジェーン・オースティン、脚本:アンドリュー・デービス、主演:ジェニファー・エール、コリン・ファース、一言:ファースのダーシーを超える人はいまだいないかも)

3 「リトル・ドリット」(2008年、BBC)(時代設定:1805-26年、監督:アダム・スミス他、原作:チャールズ・ディケンズ、・脚本:アンドリュー・デービス、主演:マシュー・マクファーデン、ジュディー・パルフィット、一言:刑務所に入った父の面倒を最後まで見た可憐なドリットに幸せが訪れる)

4 「ジェーン・エア」(1973年、BBC)(時代設定:1829年、監督:ジョアン・クラフト、原作:シャーロット・ブロンテ、脚本:ロビン・チャップマン、主演:ソーカ・キューザック、マイケル・ジェイストン、一言:小説に忠実に作った作品として、米ワシントン・ポスト紙が絶賛)

5 「ジェーン・エア」(2006年、BBC)(時代設定:1829年、監督:スザンナ・ホワイト、原作:シャーロット・ブロンテ、脚本:サンディー・ウェルチ、主演:ルース・ウィルソン、トビー・スティーブンス、一言:ロチェスター役スティーブンスのニヒルな物腰と純真なウィルソンの演技が光る)

6 「分別と多感」(2008年、BBC)(時代設定:1795年、監督:ジョン・アレクサンダー、原作:ジェーン・オースティン、脚本:アンドリュー・デービス、演:ヘイテイー・モラハン、ダン・スティーブンス、一言:これまでなく性を前面に押し出した脚本といわれる。)

7 「ラーク・ライズ・ツー・キャンドルフォード」(2008年、BBC)(時代設定:1891年、監督:ジョン・グリーニング他、原作:フローラ・トンプソン、脚本:ビル・ギャラハー、主演:オリビア・ハリナン、ジュリア・サワルハ、一言:郵便局を舞台にした人間模様。地味だがついつい見てしまう作品)

8 「ある晴れた日に」(1995年、映画)(時代設定:1790年、監督:アン・リー、原作:ジェーン・オースティン、脚本:エマ・トンプソン、主演:エマ・トンプソン、ヒュー・グラント、一言:才女トンプソンが脚本も書いた作品。なぜかグラントが「弟」に見えてしまう)

9 「エマ」(2009年、BBC)(時代設定:1815年、監督: 、脚本:ジェーン・オースティン、サンディー・ウェルチ、主演:ロモラ・ガライ、ジョニー・リー・ミラー、一言:エマがあまりにも憎たらしいので新聞では酷評されたが、女優の名演技の証拠かも?)

10 「ブライト・スター」(2009年、映画)(時代設定:1818年、監督:ジェーン・キャンピオン、脚本:ジェーン・キャンピオン、主演:ベン・ウイショー、アビー・コーニッシュ、一言:詩人ジョン・キーツの恋物語。映画評は、どれも絶賛)
by polimediauk | 2010-10-15 17:23 | 放送業界