小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk
プロフィールを見る
画像一覧
通知を受け取る

カテゴリ:放送業界( 162 )

 「メディア展望」(10月号、新聞通信調査会発行 http://www.chosakai.gr.jp/index2.html )に、BBCを中心とした放送業界の現状について書いたが、原稿を書いた後で、いくつかの動きがあった。
 
 まず、視聴者を代表としてBBCの活動内容を監視するBBCトラストの委員長が、来年5月、4年間の就任が任期切れとなった時点で委員長職を辞めたい、と申し出た。トラストの委員長職はパートタイム勤務だが、実際の仕事量がパートタイムの仕事の限界を超えている、というのが理由だ。
http://www.bbc.co.uk/news/entertainment-arts-11296324

 BBC批判の矢面に立って、BBCを常に弁護してきたが、重圧に耐えられなくなった、という面もあるかもしれない。

 これに続き、BBCトラストは、BBCの国内活動の主な収入源であるテレビ・ライセンス料の2011年分と2012年分の値上げを辞退する、とも述べた。
http://www.bbc.co.uk/news/entertainment-arts-11325325

 ライセンス料は毎年2-3%程度上がるように設定されていた。これに対し、ジェレミー・ハント文化・スポーツ・メディア大臣は、2011年度の現状凍結については歓迎したものの、2012年分は未定とした。2012年分に関しては、政府は削減を計画しているといわれている。
 
 BBCは、緊縮財政ムードを汲んで行動を起こしている、そして、ライバルメディアがいうところの「際限ない拡大」はしない、というメッセージを内外に伝えているのかもしれない。

 以下は「メディア展望」掲載分である(9月上旬時点の話)

岐路に立つBBC
 -受信料削減、規模の縮小化の先は何か?


 BBC(英国放送教会)の規模の大きさに対する批判が、英国内で年を追う毎に熾烈化している。巨大さ批判は以前から存在していたが、メディア環境の変化や不景気のために広告収入が減少した結果、民放他局が地盤沈下状態になり、BBCの「一人勝ち」状態が目立つことになった。

 BBCには景気の動向に左右されないテレビ・ライセンス料(NHKのテレビ受信料に相当)収入があり、これを原資にしながら、テレビ,ラジオ、ネット、オンデマンド・サービスとさまざまな分野に進出できる。BBCは放送業界の方向性を決めてゆく場所にいる。

 しかし、巨大さ批判はライバル他局からのみではもうなくなった。BBCが使う著名タレントへの高額報酬の提供や経営幹部の高額経費使いが明るみに出たことで、国民の中に、「自分が支払うライセンス料が無駄遣いされている」という思いが強く出てきた。

 不景気で緊縮財政ムードが高まり、BBCが規模の拡大やライセンス料値上げを容易にはできない情勢となった。

 一方、デジタル化の進展で、人々の番組視聴行動は大きく変化している。多チャンネル化が定着し、BBCも含めた各放送局のチャンネル視聴率は低下傾向にある。

 現在のように、視聴者から強制的にライセンス料を徴収し、これをBBCという一つの放送局が独占するやり方は、次第に合法性を失っているのである。BBCは今、岐路にあるといえよう。

 本稿では、来年から始まるBBCと政府との間のライセンス料体制の交渉を前に、BBCの置かれている現況と将来像の可能性を考えてみる。

―「公共サービス放送」が中心に

 1920年代に誕生したBBCは、1950年代半ばで民間放送ITVが参入するまで、放送市場を独占していた。

 1982年にはチャンネル4(政府保有だが広告で運営費を捻出)、89年に衛星放送スカイテレビ(翌年衛星放送BスカイBと合併)、97年に民放ファイブ、と新規放送局の発足が進行した。放送・通信監督団体「オフコム」の計算によれば、地上波・衛星を含めたデジタル放送も入れると、チャンネル数は490に上る(2009年)。

 BBCの初代会長リース卿はBBCの役割を国民に「情報を与え、教育し、楽しませる」ものとして定義したが、放送業を公共の利という観点からとらえる伝統が今でも続いている。

 そこで、公共放送局BBCだけでなく、商業放送としてくくられるチャンネル4(ただし非営利法人が運営という独特のしみ)、株式会社が運営するITV、ファイブなどを、英国では「公共サービス放送」(PSB=Public Service Broadcasting)と分類している。PSBとしての各放送局は、一定の時間数のニュース、時事、事実に基づいた番組、児童番組、ドキュメンタリーを放送するよう義務付けられている。

 この枠の外に、米メディア大手ニューズ・コーポレーションが主要株主となる有料衛星放送BスカイB、ケーブルテレビサービスのバージン・メディアなどがある。

 放送業、通信業の監督・規制団体が先のオフコムで、放送・通信市場の現況についての報告書を定期的に発表しているほか、不祥事があった場合、業者に処罰を課す権限も持つ。

―「身震いするほど恐ろしい」と巨大さ批判

 昨年夏、英スコットランドの首都エディンバラで開催された国際テレビ祭で、ニューズ・コーポレーションの欧州・アジア部門の会長兼最高経営責任者で、BスカイB会長のジェームズ・マードック氏による基調講演が話題を集めた。

 同氏はニューズ・コーポレーション最高経営責任者ルパート・マードック氏の二男である。同社の子会社ニューズ・インターナショナルは英国で高級紙タイムズ、サンデー・タイムズ、大衆紙サン、ニューズ・オブ・ザ・ワールドを発行し、マードック両氏(父及び息子)の発言は市場の動向に大きな影響力を持つ。

 ジェームズ・マードック氏はテレビ祭の基調講演で、「英国の放送市場を支配するBBCが独立したジャーナリズムの存在を脅かしている」と述べ、広告収入の減少で厳しい状態にある民放各局と比較して、その巨大さが目立つBBCを批判した。

 テレビからネットまで、複数の領域に手を広げる「巨大なBBC」の存在は「身震いするほど恐ろしい」とマードック氏は表現した。

 「規制を撤廃し、BBCを縮小させ、『顧客』に選択の自由を与えるべき」と提唱した同氏は、独立したジャーナリズムを保証する唯一のものとして「利益」を挙げて、壇上を降りた。公益を重視する英国の放送業界の常識に、真っ向から挑戦する講演となった。

 BBCの規模に改めて注目すると、従業員は世界で約2万2000人、国内では約1万7000人が働く。BBCのテレビ番組のコンテンツは、スポーツを除く国内の全テレビ番組の3分の2にあたる。

 毎週2900万人がアクセスするウェブサイトへの年間投資額は約1億9900億ポンド(約257億円)。テレビ(約23億ポンド)、ラジオ(約5億ポンド)に比べればはるかに少ないが、全国紙の年間制作経費(紙媒体とウェブ)は1億ポンドと言われており、BBCのウェブ制作経費はその2倍である。

 主要財源はテレビ受信機を所有する者に課すテレビ・ライセンス料だ。現在、カラーテレビで年に145・50ポンドである。今年3月決算のライセンス料収入総額は約34億4000万ポンド。これにラジオ国際放送の「ワールドサービス」(政府交付金で運営、2億9300万ポンド)、商業部門BBCワールドワイドの収入(約10億7400万ポンド)などを加えると、BBCの事業収入は47億9000万ポンドに上る。

 一方、民放最大手ITVの従業員数は約4200人(09年、以下同じ)。BBCの国内の人員の4分の1である。昨年12月決算で総収入は18億7900万ポンド(前年20億3000万ポンド)、利益は2億5000万ポンド(前年は27億ポンドの損失)となった。

 規模で他を圧するBBCの動向が業界の方向性を決めていく構図が出来上がる。具体例が、「いつでも、どこでも、好きな時に視聴できる」をキャッチフレーズとして広がった、番組視聴のオンデマンド・サービス、BBC iPlayer(アイプレイヤー)の人気である。

 番組再視聴サービスは2006年以降、チャンネル4が先陣を切って提供し、他局もこれに続いた。しかし、07年末、BBCが本格的に市場参入した後で、広く利用されるようになった。

 08年、収入の大部分を広告に依存していた地方紙業界がリーマン・ショック以降の広告収入減で大きな苦境に陥ると、BBCは地方支局の拡充を計画。地方ニュースを掲載するウェブサイトに動画を増やし、地方紙がまかないきれない市場のギャップを埋めようとした。地方紙のウェブサイトにとっては大きなライバルができることになる。明らかな民業圧迫であるとして、地方紙の業界団体がBBCの計画の反対運動を展開した。最終的に、BBCは地方サイトの大幅拡充をあきらめざるを得なくなった。

 動画が豊富で充実したBBCのニュースサイトは、新聞各社にとっては大きな競争相手となる。タイムズとサンデー・タイムズが7月以降、ウェブサイトの閲読を有料化したが、ライセンス料を元手に無料でネット・ニュースを提供するBBCは「ニュースは無料」という感覚を利用者に植え付けていく。

 海外でBBCの番組販売や出版を行うBBCワールドワイドに対するほかのメディアからの批判も、毎年、強くなる一方だ。

 ワールドワイドの収入は、今年3月期決算で前年比7%増の10億7400万ポンド。利益は1億4500万ポンドで、前年比36・5%増。民放や新聞各社からすれば、なんともうらやましい数字だ。

 ライセンス料は運営の原資として使われていないが、ライセンス料を使って制作した番組や他のコンテンツを利用してビジネスを行っているのは事実だ。非営利目的のはずの公共放送であるBBCが商業活動に従事する事態が生じている。

 BBCはワールドワイドで得た収入の一部(株主配当金他)をBBC本体に還元しており、これを番組の制作費に投入しているが、商業部門がBBC本体をさらに大きくするためという自己目的化しているという疑念が根強い。

―縮小化、さらなる削減への圧力

 2004年にBBCの会長(=ディレクター・ジェネラル、経営陣トップ)職に就任したマーク・トンプソン氏は、前職のチャンネル4の経営陣であった時から、思い切った経費削減には定評があった。「バリュー・フォー・マニー」(金額に見合う価値)を合言葉に、ライセンス料を払った視聴者が納得するようなサービスや番組の提供に力を入れてきた。トンプソン会長の主導で実現した成功例がBBCアイプレイヤーである。

 BBCの運営は、存立、目的、企業統治を定める特許状と、これに沿った業務の具体的な内容を定める協定書(BBCと所管の文化・メディア・スポーツ相との間で交わされる)が基本になる。

 特許状、協定書ともに10年ごとに更新されるのだが、前回、07年からの10年を対象とする政府との交渉の際に、トンプソン会長からすれば、不服の結果が生じた。

 まず、一時は廃止されるという噂も出たライセンス制度は維持されたものの、インフレ率に数パーセントを上乗せする従来の値上げ方式は停止となった。例えば、インフレ率が2%の時、値上げ率が同率であると実質ゼロの伸びになる。これを避けるために、上乗せする方式が導入された。新たな取り決めでは、前年比2-3%増となったのだが、実質は現状維持か目減りする可能性ができたため、経営陣は活動計画の大幅変更を迫られた。景気の動向に左右されないはずのライセンス料収入が、もはやそうではなくなった。

 さらに、当時の労働党政権は「放送業界の変化の予想は困難」として、具体的な値上げ率が設定されたのは最初の6年間のみ(07年から12年)で、2013年以降は未定となった。ライセンス制度がこれ以降、続くのかどうかさえ、定かではなくなった。

 昨年6月、政府白書「デジタル・ブリテン」が発表された。この中で、政府は、BBCのライセンス料収入の中で、テレビの完全デジタル化(2012年予定)移行準備のために使うためにとっておいた資金を、移行が終了した時点で、地方ニュースの制作費として他局が使う案を提唱した。

 この案は政権交代(今年5月、保守党・自由民主党による連立政権が発足)で廃止されたが、BBCはこれまでにも、チャンネル4がライセンス料の一部を共有したいとする旨の案を退けてきた過去がある。BBCにとっては、ライセンス料は聖域であり、他の公共サービス放送の制作にまわすのは論外だった。

 しかし、「デジタル・ブリテン」は「ライセンス料はBBCだけが独占するものではない」と明記し、BBCのライセンス料=聖域説を脅かした。
 
 多チャンネル化により、BBCが提供するチャンネルの視聴シェアは相対的に低下している。視聴行動の変遷を記録する団体BARBによると、BBCの主力チャンネルBBC1(NHK1チャンネルに相当)の視聴シェアは、ITVとの二大巨頭体制の最後の年1981年には39%だった(ITV1は49%)が、その後年々減少し、09年には約21%にまで下落した。12年からのテレビの完全デジタル化で、各チャンネルの視聴シェアはさらに分散化する見込みだ。徴収した受信料をすべてBBCが使う、という方式がますます正当化できなくなる。

 視聴率シェアでは最大のライバルとなるITVが広告収入減で経営が苦しくなり、チャンネル4も同様の窮状を訴える中、BBCの人気出演者への高額報酬(推定額)の報道や、経営陣の高額経費使いが情報公開法の請求によって、ここ2年ほどの間に明るみに出た。不景気感が募り、「金遣いがあらい」ように見えるBBCへの批判が国民の中からも強く発せられるようになった。

 国民感情や市場動向の変化を察知した「BBCトラスト」(視聴者の代表としてBBCの業務全般を監督する)は、経営陣に対し、戦略見直し策の提出を求めた。

 今年3月、経営陣がトラストに提出した見直し策には「質を優先する」という題名がついていた。「より少ないことをより良くやる」ことを主眼にし、際限のない拡大にストップをかけることを宣言した(ライバル局はこれでも「不十分」とするが)。

 7月、トラストは、見直し策に対する中間報告を発表した。英国が緊縮財政下にあり、ライセンス料を払う視聴者も不景気悪化の影響を受けているとして、さらなる経費削減、節約分野を見つけるように経営陣に注文した。

 また、今後3年間で経営幹部の給与を25%削減するというBBCの経営陣による計画に対し、トラストは3年ではなく1年半で実行するよう要求し、15人の経営幹部は年に一カ月分の給与削減、トラストのメンバー(全12人)も、給与を8・3%削減することになった。

 トラストによる最終評価は今秋までに発表され、年内にはBBCの2016年までの活動計画の大枠が決定される見込みだ。

―将来像は?

 今年のエディンバラ・テレビ祭で、基調講演を行ったトンプソンBBC会長は、前年のジェームズ・マードック氏によるBBC及び伝統的な公共放送体制に対する批判への反論を行った。

 英国の放送界は「公共放送と商業放送の組み合わせで構成されているがゆえに、質の高い番組を制作するための競争が働き、同時に、利益のみでは正当化できない企画に投資できる」。

 また、BBCの年間テレビライセンス料収入34億ポンドをはるかに超える59億ポンドの売上げを持つBスカイBが今後も巨大化すれば、「BBCばかりか、商業放送も含めた英国の放送業全体を取るに足らないほど小さな存在にしてしまう」、と警告した。

 この警告には真実味があった。BスカイBの株を39%所有する米ニューズ・コーポレーションが、最近になって、残りの株の取得の意向を示したからだ。

 トンプソン会長はまた、有料テレビ市場最大手のBスカイBに対してオリジナル番組の制作の投資を増やすべきと注文をつけ、民放ITVなど他局の番組をスカイのサービスの中で放映する場合、「再放映料を払うべきだ」と提案した。

 放送業界関係者一千人近くが集うテレビ祭でのマードック氏、あるいはトンプソン会長の発言は、メディアで大々的に報道される。お互いに自局に好意的な世論を喚起することが基調講演の大きな目的の一つである。

 トンプソン会長は、12年度で終了する現行のライセンス料体制の取り決めに関しては、「BBCの予算の一ポンドの削減は、英国のクリエーティブ産業が一ポンドを失うことを意味する」と述べて、将来の大幅削減が起きないよう、ライセンス料交渉の相手である政府をけん制した。

 さて、今後のテレビ・ライセンス料体制の行方やBBCの規模はどうなるだろう?

 現在のところ、視聴者からライセンス料を徴収し、これを公共サービス放送が使用する方法自体がすぐになくなると見る人は少ない。また、BBCがその規模を自ら大幅削減する可能性も低い。

 したがって、①視聴者から徴収したライセンス料で番組制作などの活動資金に使う仕組み自体は今後も続く、②しかし、BBCがすべてを独占するのではなく、一部は他の公共サービス放送に回る、③ライセンス料の金額の値下げや削減は名目的にはないが、「現状維持」という形での削減はあり得る(注:最初の補足で書いたように、すでに、来年4月からの2%値上げ分をBBC側は辞退)-が、今後2年ほどの動きになろう。

 一方、ライバル局から特に批判の高いBBCワールドサービスについて、ヘイグ外相は、9月上旬、その活動資金となっている政府交付金を削減する意向を表明した。連立政権は財政赤字解消のため、さまざまな分野で平均25%の政府支出削減を目指している。交付金削減もこの一環だが、BBCにとっては、厳しい将来を予測させた。

 英放送業界はBBCが主導役となって発展してきた歴史がある。しかし、旗振り役がいなくなったら、あるいは力を失ったら、放送業界を束ねる役をどこが担うのか?「市場競争=利益を原動力とすればいい」というマードック氏のようには割り切れないように思う。

 まずは今秋以降発表される、BBCの戦略見直し策を注視したい。(終)
by polimediauk | 2010-10-03 18:43 | 放送業界
 一人勝ちといわれる状態を維持するのは無理とみたのかどうか、BBCが「これだけはゆずらない」としてきたいくつのかのことを、放棄しつつある。

 先日は国内の活動の主な運営資金となるテレビ・ライセンス料の値上げを凍結する(すでに前年比で2%増となっていたが、これをあきらめる)と自分から言い出した。今のところ、BBCのライセンス料の年間値上げ料は2012-2013年度までそれぞれ決まっているが、BBCトラスト(視聴者を代表して、BBCの活動内容をチェック)が「最後まであげない」、と最近宣言している。

 BBCのライセンス料の値上げ率は、政府との交渉で決まる。

 担当のメディア・文化・スポーツ大臣は、来年4月からの1年分の値上げ率放棄は事実上承認したようだが、その先の数年に関しては「今のところは決めない」ことにしたようだ。

 さらに、22日付の報道によれば、BBCのお金の使い道に関して、監査局(NAO、行政府から独立した機関。行政府の予算執行を監査し議会に報告する)が検証することになった。現状では、この仕事はBBCトラストが担当している。外部の団体がBBCのお金の使い道を原則すべて検証するのは初になる、という。これまでは、BBC側からのリクエストがあった場合にのみ、検証することができた(例えば、あるサービスがお金を効率的に使っているかどうかをチェックする)。

http://www.bbc.co.uk/news/uk-11386735

 問題は、これでBBCの編集の独立が保てるのかどうか、ということ。NAOは最終的に議会に報告する義務があるわけだから、政府とは独立していても、政治家・議員がいる場所(=議会)からの干渉があり得るーすくなくとも理論的には。

 そこで、編集の独立権を維持するために、NAOが数字をチェックした後、その結果はBBCトラストのほうに戻す、という仕組みになるようだ。議会に報告書を直接出すのではなく。そして、トラストが文化大臣を通じて、議会に結果を報告する、という。

 ・・・この部分は、理屈的には分かるが、すっと頭に入ってこない感じもする(間にワンクッション置いただけ、という感じが出る。)
 
 また、従来、BBC側が「商業的に(公開すれば)まずいことが起きる可能性がある」と判断した情報・数字にはNAOはアクセスできない仕組みになるようだ。すべてがNAOに公開されるわけではないのだ。例えば、BBCはトップタレントへの報酬の公開をこれまで拒んできた。この部分は外には出さない、ということだろう。

 それでも、なんとなく分かりにくい(特に第3者からは)話だが、最終的には、「外部(BBC以外の)手や目が、BBCの活動内容を検証する」ということ。これは今までになかったことだし、今後も外部の手が入ることへの布石かもしれない。

 つまるところ、BBCは先手を打とうとしているのだろうーライセンス料制度自体がつぶされないように(国民からライセンス料を徴収して、それを「全部」自分の懐に入れている――他の放送局にまわさずーという仕組みを維持したい)と考えているのだろう。

 8月末のエディンバラのテレビ祭でも、ハント文化・メディア大臣が、「BBCは普通の世界に降りてこないと」という発言をしている。削減は必須だと見て、先手を打ち始めているのだろう。
 

(**PS:MI6の初期の歴史の公式本が出ました。最初の50年ぐらいの話。まだ手にしていないのですがー。テレビや新聞で大きく扱われました。でも、「何故今、税金を使って作らせたんだろう?」という疑問がいつまでもありました。今は、国内外のテロに関する情報収集に大きく人材を割いているようですね。)
 
by polimediauk | 2010-09-23 08:16 | 放送業界
 BBCトラスト(視聴者の代表としてBBCの活動内容を監視・検証する)のトップ、マイケル・ライオンズ氏が、来年、辞任することになった。4年間の就任期間が来年の春終了し、第2期目を続けると夏には話していたのだが、第1期だけにとどめたい、と政府に伝えた。

 BBCトラストの前身は同様の業務内容を持つBBC経営委員会で、2007年、発足した。トラストのトップ(便宜的に委員長と呼んでおこう)はパートタイムの仕事で、週に3-4日の勤務というのが条件だが、ライオンズ氏は、委員長職の責務が非常に大きく、パートタイム以上の仕事が要求されるようになり、他の同氏の仕事との兼任が難しくなったという。

 BBCは来年から、政府とテレビ・ライセンス料(NHKの受信料に相当)の交渉に入るが(現在のライセンス料体制が2013年で終わりになるため)、この重要な時期にBBCトラストのトップが交代にすることになった。

 5月に発足した連立政権を担う保守党は、野党時代、トラストの廃止を要求したこともあった。BBCにとっては厳しい政策を実行するのではないかと言われている。

 次期トラストの委員長職には、「ユーガブ」という世論調査団体のトップか、すでにトラストの委員の一人になっている、パトリシア・ホッジソン氏が候補にあがっているという(噂段階)。「もし」ホッジソン氏になれば、BBC経営委員会及びトラストで、女性がトップに来るのは初めてになる。

http://www.guardian.co.uk/media/2010/sep/14/sir-michael-lyons-bbc-trust

 16日から19日まで、ローマ教皇ベネディクト16世が英国にやってくる。教皇が英国に来るのは28年ぶり。ブラウン前首相が昨年招いた。

 英国とカトリック教の関わりを「英国ニュースダイジェスト」の16日付けに書いたのだが、ウェブサイトのニュース解説の面に、今日明日中には載るはずである。(今はまだ出ていないが。)

http://www.news-digest.co.uk/news/index.php


by polimediauk | 2010-09-15 18:01 | 放送業界
 日曜大衆紙「ニューズオブザワールド」紙の盗聴疑惑と元編集長アンディー・コールソン氏の責任問題が再燃(再・再燃)している。ここ2-3日、ツイッターでもつぶやいてきたが、その経緯を知りたい方は、ご参考に、前のエントリーをあげておきたい。

http://ukmedia.exblog.jp/13816821

 この件がまた注目を浴びたのは、米ニューヨークタイムズに改めてこの問題が詳しく報じられたからだが、コールソン氏が今、官邸のコミュニケーション担当幹部になっているため、与党保守党と野党労働党との戦いのようにもなっている。

 もともとは、ガーディアン紙がずっと追ってきたトピックだ。この件が、どうにも腑に落ちないのは、①編集部内で盗聴という手法を使ってでも取材するという方針を、編集長が果たして知らずにいたのかどうか、そんなことはあり得るのだろうか、②本当に警察は十分に捜査をしたのだろうかーという点である。(以下はガーディアン記事)

http://www.guardian.co.uk/media/2010/sep/06/phone-hacking-home-office-police

 私はコールソン氏が辞職するべきと思うが、辞めても、裏でメディア戦略を担当するとか、関係は切れないかもしれない。

***

 エディンバラで開催された、テレビ祭のことを、新聞協会報9月7日号に書いたので、これに若干追加したものを以下に出したい。いくつか、こぼれ話があったので、次回、書きたい。

***

 英放送界の経営陣、制作・編集幹部など千人余りが毎年参加する「エディンバラ国際テレビ・フェスティバル」(ガーディアン紙他主催)が、英スコットランドの首都エディンバラで8月27日から3日間、開催された。初日の基調講演でBBCのマーク・トンプソン会長は、公共放送と商業放送が混在する英放送界の重要性を訴えるとともに、有料衛星放送BスカイBの巨大化に大きな懸念を示した。多チャンネル化、デジタル化が進み、大きな変革期にある放送界を牛耳るのはどこか? フェスティバルでの議論を追ってみた。

 昨年の基調講演で、米ニューズ・コーポレーション欧州・アジア部門の会長兼最高経営責任者でBスカイB会長のジェームズ・マードック氏は、全英向けテレビ8局、ラジオ10局のほか地域放送、国際放送を持ち、ウェブサイトやビデオ・オン・デマンド・サービスでも圧倒的影響力を持つBBCの存在を「身震いするほど恐ろしい」と形容した。BBCを中心とした英国の公共放送体制を否定し、独立したジャーナリズムを保障する唯一のものとして「利益」を挙げた。

 これに対する反論として、トンプソンBBC会長は今回、放送界が公共放送と商業放送の組み合わせで構成されているがゆえに競争が働くとともに、利益のみでは正当化できない企画に投資でき、結果として質の高いオリジナルの番組制作が可能になっていると述べた。

 そして、BBCの国内事業の主要収入源であるテレビ受信料(年間約34億ポンド、約4380億円)をはるかに超える59億ポンドの売り上げを持つBスカイBが今後も巨大化すれば、「BBCばかりか、商業放送を含めた放送業全体を取るに足らないほど小さな存在にしてしまう」と指摘した。

 会長はまた、有料テレビ市場最大手のBスカイBに対し、オリジナル番組の制作への投資を増やし、民放ITVほかの放送局の番組を放映する際には「再放映料を支払うべきだ」と、経営にまで踏み込む発言を行った。

 BBC自体が、民放局や新聞社からしばしば「民業を圧迫している」とその巨大さを批判されてきた。著名タレントへの高額報酬の支払いや経営陣による高額経費使いが近年明るみに出て、事業サービスの縮小・停止、役員報酬体系の見直しなどへの圧力が高まっている。

 目下の最大の注目点は、BBC運営の根幹をなすテレビ受信料体制が今後も継続するかどうかだ。現行体制は2012年末で終了となり、13年以降、大幅削減となるかあるいは制度そのものが消滅するのかは未定だ。トンプソン会長は「1ポンドの削減は英国のクリエーティブ産業が1ポンドを失うことを意味する」として、来年から始まる受信料体制の政府との交渉を前に、大幅削減がないよう釘を刺した。

 一方、講演の翌日、ジェレミー・ハント文化・メディア・スポーツ相は、受信料体制の将来は「来年から交渉に入るのでなんとも言えない」が「削減を度外視しない」と述べた。政府機関の予算が平均25%削減される中、公的機関のBBCにも同様の削減が期待されていると説明した。(実はさらに次の日、BBCの経営委員会の元委員長だったーー委員会はBBCトラストの前身ーーマイケル・グレード氏が、「BBCはコントロールできないほど大きい」と話している。先のトンプソン会長と一緒に働いていたグレード氏がそう言ったのは重要だ。内部の人さえ、そう思う、と。)

 メディア評論家スティーブ・ヒューレット氏はガーディアンのコラム(8月30日付)の中で、トンプソン会長のBスカイB巨大化批判には一理あるとし、同局の株39%を所有する米ニューズ・コーポレーションが残りの株取得を目指していることを指摘。もし実現すれば、既に傘下の子会社を通じて英新聞市場で複数の大手紙を発行する同社を経営するマードック一家が、英メディア界でさらに大きな影響力を持つ可能性があると警告した。この事態を避けるため、政府がBBCの側に立つ、つまり受信料の大幅削減を打ち出さない可能性もあるという。

 放送界を主導するのはBBCか、あるいはニューズ・コーポレーション所有のBスカイBか? 受信料交渉が始まる来年、議論が白熱化する見込みだ。(終)

フェスティバルウェブサイト(動画他)
http://www.mgeitf.co.uk/home/mgeitf.aspx
by polimediauk | 2010-09-07 16:50 | 放送業界
 c0016826_2293643.jpg朝日新聞出版から出ている「Journalism」の最新号(8月号)に、方向転換を求められる英国「放送の巨人」BBC――と題する原稿を書いています。もしどこかでご覧になったらお手にとって下さると、幸いです。

http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=11824

 8月号の特集は記者会見というテーマ。民主党政権発足からだいぶ経ち、良いタイミングであろう。津田大介さんによるネット時代のジャーナリスト介在の意義や、ジャーナリスト、江川紹子さんの検察会見の様子など、読み応えがある。外国人記者の視点も欠かせない・・ということで、英インディペンデント紙の特派員、デービッド・マクニール氏の寄稿も。伊ベルルスコーニ政権下のメディアの現状の記事もある。

 日本の記者会見公開問題、記者クラブに関しては、私もいろいろな感想を持っているのだが、ある意味、思いがたくさんありすぎる感じもするー。先ほど、書き出したら、長ーくなってしまったので、別の機会に改めてー。ただ、①上杉さんと神保さんの尽力はすごいと思う+尊敬と、②会見出席がフリーランスを含めて、すべての人にオープンになっても、本当の問題・目的が「真実を探りあてる」ことだとすれば、完全オープン後の先の話が、実は非常に重要と思っていることだけを記しておきたい。

 「Journalism」がもしまた記者会見特集をやるとすれば、記者クラブ員とフリーのジャーナリスト側、官庁側との者(あるいはクラブ員とフリーの2者)が対談をすれば、と思う。それぞれの意見を代表する意見がそれぞれ別個の記事になると、話が平行線になって、いつまでも解決しない感じがするが、どうだろう。

 上杉さんの記事で、私が心から驚いたのが、「現代ビジネス」のサイトに載っていた、「日本の政治記者が、政治家から現金をもらい続けていた」という話(今年6月)。「あの人はもらったのかな?」といろいろ考えてしまった。記者会見問題が宇宙のかなたにぶっ飛ぶほど大きな問題だと思った。これでは、英国の「小切手ジャーナリズム」(カネでネタを買う)を笑えない・・・・。記事から察すると、もうこの習慣はなくなっている印象もあるけれど。


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/657

http://www.ustream.tv/recorded/7412783
by polimediauk | 2010-08-12 22:13 | 放送業界
 BBCのプレスリリースによれば、4月から、BBCオンラインが新しいモバイルアプリを提供する。

http://www.bbc.co.uk/pressoffice/pressreleases/stories/2010/02_february/17/mobile.shtml

 具体的には、BBCのニュースとスポーツコンテンツの提供だ。世界中からアクセスできて、無料(携帯電話の使用料金は通常にかかるが)。アイフォーンなどのスマートフォーンで利用できる。見逃した番組などを見れる、大人気のアイプレイヤーのサービスは英国に住む人だけが利用できるが、これも無料だ。

 今でもBBCニュースは携帯で見れるし、専用アプリもあるのだが、これをさらに使いやすくしたものになるようだ。もっとスピーディーにコンテンツにアクセスできるとか、ツイッターとかフェイスブックとかに直接投稿できる・・なども入るのだろう。アプリは今後どんどんアップデートもしていくだろうし。

 有料・無料問題で悩む英新聞サイトにとって、最大の強敵である。もちろん、利用者にとっては、うれしいけれども。

 BBCのニュースサイトはほぼ辞書代わりに使えるところがなかなかよい。英語も放送局のサイトだからなのかどうか、おそらく故意にシンプルにしてある。そういう意味では、ネット向きなのだーさっと読んで意味が通る。(ただ、全部が全部ではないが。)

 BBCの拡大策略(!)は、ある意味、国家戦略(英国発のメディア・コンテンツを英語で広める)にもつながるだろう。

 マードックがぶっとびそうな動きである。

 英国に住む人にとっては、BBCの携帯サイトが利用者に何かを売ろうとしているものでないことが、ほっとする。(どの「無料」サイトもほぼ必ず広告が入るのとは別、という意味で。)BBCのイメージは売っているのかもしれないけど。

 もうBBCに勝てる英国の放送局はないのかな。
by polimediauk | 2010-02-18 07:43 | 放送業界
 日本ビジネスプレス(JBPRESS)というところが、あっという間にフィナンシャルタイムズの記事を翻訳してくれている。すごいものだ。FTのガッパー氏の記事だが、同氏は有料化は1つのビジネスモデルとして悪くないのではないか、意味があるのではと説いてきた。

ニュースに課金するか赤字を垂れ流すか
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2613

一部引用

 購読料を払って顧客になる読者の数はごくわずかだろう。しかし、それは必ずしも問題ではない。調査会社アウトセルが今週公表したところによれば、米国でオンラインの新聞を読んでいる人のうち、有料化されてもオンラインニュースサイトを利用すると答えた人の割合はわずか6%だった。

 もしこれを額面通りに受け止めるなら(筆者はそうすべきだと思わないが)、ガーディアンはオンライン版の購読者を210万人獲得できる計算になり、一気に黒字に転換できるだろう。そう、わずか1%が残るだけでも35万人の購読者を獲得できるのだ。(
引用終わり)


―チャンネル4に新CEO

c0016826_2011178.jpg 一方、長い間CEOのポストが決まらないでいたチャンネル4に、やっと人材が見つかった。有料テレビ(視聴料を払って見る:事実上はケーブルテレビのチャンネルの1つ)UKTVのトップ、デビッド・エイブラハム氏(46歳)だ。

 同氏の就任の時期は未定だが、前任者のアンディー・ダンカン氏が11月に辞任してから、なかなか次のCEOが決まらないでいた。

 この人事はチャンネル4にとって、一つの区切り的な意味を持つ。

 振り返れば、市場の激変(オンデマンド、ネット、広告収入の減少)への対抗策として、前CEOのダンカン氏はBBCとの提携をめざし、さまざまな交渉を続けてきた。BBCは自分のところのテレビライセンス収入を分けてほしいというチャンネル4の本音を拒絶し、提携はあっても実際にお金は出さない方向で結論を出した。

 一方、政府のデジタル制作の白書「デジタル・ブリテン」(昨年6月発表)で、何らかの支援策が明記されるのではないかとダンカン+チャンネル4側は期待したものの、めぼしいものは出なかった。

 一気にダンカン氏の去就が問題になりだし、最後には辞任に至った。ところが、代わりにチャンネル4のために頑張ろうという人がなかなかいなかった。広告収入は思うほどに増大しておらず、「沈みかける船」に飛び乗って、これを何とかしようという人、できる人はなかなかいないように見えたのだった。

 エイブラハム氏の就任で、チャンネル4にとって、新たな時代が始まることが期待されている。チャンネル4の会長職も来週には変更となり、ルーク・ジョンソン氏からテリー・バーンズ氏になる。

 エイブラハム氏の経歴だが、BBCの商業部門BBCワールドワイドと、ケーブルサービスのバージンメディアとの合弁ビジネスとして2007年できたのがUKTV。UKTVG2というチャンネルを「DAVE」と名称を変え、人気チャンネルにした手腕で知られる。推定年棒は49万ポンド(約7000万円)だそうである。(テレグラフ、ガーディアンより)
by polimediauk | 2010-01-23 19:40 | 放送業界
 数日前の話になるが、BBCジャーナリズム学校(BBC College of Journalism)のトップ、ケビン・マーシュが、BBCのジャーナリズムを変えた大きな要素として局内のスタッフによるブログを挙げた。

 ロンドンで14日開催された「ジャーナリズム・リワイヤード」という会議での発言による。「プレスガゼット」より。

http://www.pressgazette.co.uk/story.asp?sectioncode=1&storycode=44903&c=1

 ラジオ、テレビ、ネットと幅広い媒体で情報を伝達するBBCは、2008年8月、報道部門を「マルチメディア・ニューズルーム」として一つにまとめた。局内のベテラン記者や編集者はBBCのサイト上でブログを書く。記者たちはスクープを出す時でも、自分の名前がついたブログを使うようになったという。BBCの夜の10時のテレビ・ニュースは、NHKの夜のニュースのような重要な役目を持つのだが、記者たちはこのためにスクープを抑える・・ということをしなくなった。

 BBCニュースの人気ブロガーといえば、政治記者のニック・ロビンソン(Nick Robinson)や経済記者のロバート・ペストン(Robert Peston)がいる。

 2007年9月、ペストンは大手住宅金融ノーザン・ロックの経営危機を、自分のブログ上でスクープ報道している。
 
 マーシュによれば、大手メディア企業だからと言ってそれだけでダメと考えるのは早い。BBCのジャーナリストたちはマイクロソフトのメッセンジャー機能を使って情報を交換・収集する方法やデータの探し方、使い方、ビデオの利用など、さまざまなスキルを学んでいるという。(ただし「もちろんマルチメディアのスキルだけではストーリーは作れず、あくまで最善の方法で報道するための手段」、と付け加えるのも忘れない。)
 
 BBCがソーシャル・メディア、マルチメディアに力を入れるのはいいのだが、BBCという大きな傘の中でやる、というのはどうかなと個人的には思う。スピンオフというか、まったく別の企業・構造にしてしまったらどうだろう。どんなに素晴らしい技術・考え、それに例えばおいしい食べ物でも、常に「頼りになる父親」から、口元まで運ばれるという構図を想像してみてほしい。自分で選んで自分でスプーンを口に運びたい、と思うのが自然ではないか。「父抜き」で情報を利用したいと思う。ソーシャルメディア(+ニューメディア?)とBBCはどうも最終的には相いれない感じがする。

 …本題から外れたが、自局のジャーナリストにブログを書かせ、ブログでテレビやラジオより先にスクープを出せる、というのは本当にすごいと思う。昔は、ラジオのニュースを読むのに、アナウンサーはタキシードを着ていたらしいので、随分変わったなと思うし(フォーマルからインフォーマル)、記者個人の声が直接出る・直接視聴者と結びつける仕組みを作っているのは、「中抜き」(途中のもろもろの編集過程をすっ飛ばす)でもある。ある意味では自己否定(制作・編集過程を無視し、記者個人をミニ・メディア化している)ともいえるかもしれない。
by polimediauk | 2010-01-20 21:10 | 放送業界

(最後です。)

―新聞社サイトにニュースを提供

 「1人勝ち」とされる批判を防ぐためか、BBCはライバルメディアとの協力体制を何度か発表している。2009年3月にはイングランドとウェールズ地方でITVと地方ニュース制作で協力するという合意書を出した。人材や機材を共有する合意だが、実施予定は2010年から。放送評論家スティーブン・ヒューレット氏は「限りなく実現が未定の事業計画」と評する。

7月にはテレグラフ紙、ガーディアン紙、インディペンデント紙、デーリー・メール紙のウェブサイトに英国の政治、ビジネス、健康、科学・技術に関する動画を提供すると発表した。ITVに向けてニュースを制作する会社ITNはテレグラフに既にニュース動画を提供している。ITN担当者はヒューレット氏の同月のラジオ番組「メディア・ショー」で「こちらには何の連絡もせず、発表があった」「民業圧迫だ」と不満を述べた。BBCの活動が民業を圧迫せず、「公的価値があるかどうか」を判断するBBCトラストは「問題なし」としてこの提携を承認していた。「十分な調査が行われなかったのではないか」とBBCのライバル他局から不信感が高まった。

 無料のアイプレイヤーから収入を上げることを望んだBBCは、ITVやチャンネル4にBBCの商業部門を組ませ、複合オンデマンドサービス(通称「カンガルー計画」)の開始を試みたが、英競争委員会が2009年2月、「競争を疎外する」という理由でこれを停止させた。現在はITV,ファイブ、BTと組んで、フリービューなどを通じてオンデマンドサービスを提供する「カンバス計画」を推進中である。その一方で、アイプレイヤーのサービスを技術面でチャンネル4やITVと共有する案は、BBCトラストが「公的価値という点で認められない」と却下した。ライバル他局から「自己の保身ばかり考えている」と批判を浴びる羽目になった。

 2010年春までに行われる予定の総選挙では、野党保守党が勝つ見込みが高いと言われている。複数の世論調査で保守党の支持率が与党労働党を最大で20ポイントほど上回っているからだ。デビッド・キャメロン保守党党首は政権取得後、ライセンス料の値上げを凍結するとしている。ライセンス料制度自体の崩壊も含め、BBCにとっては厳しい時代となるかもしれない。(この項終わり)(「新聞研究」2009年12月号掲載記事を転載。引用などご利用の際は出典を明記のこと。)
by polimediauk | 2010-01-18 19:35 | 放送業界
 元時事通信の湯川さんが、ライブドアサイトに「テックウェイブ」というブログサイトを立ち上げた。

 http://ow.ly/1n46Am

 以下、引用

 ライブドアの担当者さんは「広告でメディア事業が成立するという確信を持つに至りました」と自信いっぱいに語ってくれるのだが、実は僕自身はまだ半信半疑である。ほかの人、ほかのコンテンツなら成立するかもしれないが、僕が作り出すコンテンツ程度では難しいんじゃないか。僕の個人ブログもそれほどアクセス数が多いわけじゃないし。

 でも、とりあえずこのブログメディアを使って、ライブドアが確立した広告ノウハウの実証実験をしてみたい。当面は僕とオカッパ本田の二人体制。ゲストエントリーも入るとは思うが、とりあえず二人体制で半年以内に黒字化が可能かどうか試してみたい。

 半年後には、その結果をここで公開したい。われわれが身を持って実験するので、もし本当に成功すれば、フリーのライターやブロガー、メディア企業とその社員たちに、あとに続いてもらいたい。日本のネットを良質なコンテンツであふれるようにしてもらいたい、と思う。(引用終わり)
 

 期待大である。

 テレグラフ紙でデジタル部門にいた男性が、同社を去ることになった。以下の記事参照。どことなく、気概が似ているような気がしてならない。

 特に、この人が既存メディアを「でかくて単調なメディア」(平面でヒエラルキー的)と呼び、自分が作るメディアは「フラット度が高く、スリムで、開発力が高い」とする部分だ。また、こうも言っているー「未来はもっと多彩だ。未来は個々のジャーナリストの手にあるー大きなメディアではなく」。

 http://paidcontent.co.uk/article/419-telegraph-digital-dev-chief-quitting-for-more-entrepreneurial-future/

 ライブドアの広い意味での新メディア宣言
「プロの書き手に場を提供したい」――ライブドア、専門ブログメディアを横展開
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1001/15/news038.html

***

 BBCの話の3回目(次が最後の4回目)。

「新聞研究」12月号よりー「1人勝ち」BBCのメディア戦略の行方③

―「聖域」にメス

 BBCに対し、他のメディアから改めて民業圧迫の声が2009年になってあがった。メディア環境の激変による他社・他局の地盤沈下が原因だ。慢性的に続いてきた読者と広告主の新聞離れとネットへの移動、多チャンネル化、ネット利用者の需要の洗練化(最新の情報を最新の形で出していかないと利用者が満足しない=例えば携帯電話への読みやすい形での情報提供)が起きていた。ダブルパンチとなったのが、昨年9月以降のいわゆるリーマンショックからの金融危機や広告の不景気度の悪化だ。特に打撃を受けたのが収入の80%ほどを広告に依存していた地方紙や地方ニュースの制作を公共放送枠で義務化されている民放ITVだった。非営利団体が運営するが活動費用を広告収入から得るチャンネル4も収入激減に悩んでいた。

 地方ニュースが手薄になれば「裁判報道が減少し、自治体の腐敗を監視する報道もできなくなる」「ジーナリズムの危機」ひいては民主主義の危機(ガーディアン紙アラン・ラスブリジャー編集長談)とする声はメディア界のあちこちで聞かれた。

 一部の放送局はBBCとの提携を模索した。広告収入源による資金不足で「調査報道ができなくなる」としたチャンネル4のアンディー・ダンカン最高経営責任者(当時)はBBCの商業部門との提携やライセンス料収入の共有の道を模索したが、BBC側から却下された。

 一方のBBCは、2008年、地方ニュースをカバーする自局のウェブサイト充実させることで、地方紙のウェブサイトを保管する計画を立てた。予算の見積もりまで立てたが、地方紙の複数の発行元からの大反対にあい、断念した。

 株価が過去5年間で80%以上下落した民放大手ITVが地方ニュース制作からの撤退の意向を通信監督機関「オフコム」に漏らし、状況の深刻さがあらわになった。地方局の集合体となるITVが「地方を捨てるほど苦しいのか」と衝撃が走った。

 2009年6月、政府のデジタル政策白書『デジタル・ブリテン』はブロードバンドサービスのユニーバーサルアクセス化など情報通信インフラの整備や国民の「デジタル参加」の推進などを定めたが、BBCにとって驚くべき提言が含まれていた。

 それは、デジタル化支援関連予算としてBBCが計上してきたライセンス収入の3・5%相当額(年間約1・3億ポンド)を、他局(事実上ITV)で放映する地方ニュースの制作・放映資金に回す、というもの。ニュースの制作は新設の「独立コンソーシアム(independently financed news consortia=IFNCs)」が手がける、とした。IFNCsの想定参加者は放送、新聞、通信業者など。

 ライセンス料はBBCが創設当時から独占してきたが、「聖域」にメスが入る動きだった。BBC側は「番組の質に影響が出る」と真っ向から反対したが、10月、スコットランドの放送局STVと英領北アイルランドのUTVが、それぞれ地方色を強化したニュース制作を公的助成を受けて開始したいと表明した。白書は2011年までにIFNCsによる地方ニュース制作の試験版をスコットランド、ウェールズ、イングランド地方で開始すると書いた。あくまで試験版で、ライセンス料自体が瓦解したわけではないが、瓦解への第一歩と見る人は多い。(続く)
by polimediauk | 2010-01-17 17:33 | 放送業界