小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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カテゴリ:イラク( 27 )


「永遠に外国の軍隊がいることを望んでいるイラク人は誰一人いない」

 BBCオンラインが13日の早朝伝えたところによると、イラクのタラバニ大統領が、在イラク英軍が来年末頃には撤退し、イラク軍に仕事を引き継ぐことができるだろうと述べたという。しかし、今すぐの撤退は、「破滅」の道になり、内戦になると、英ITVの政治番組の中で述べた。このインタビューは、英時間昼の12時40分ごろ(日本時間夜9時40分頃)から放映される。英軍の撤退時期に関しては、これまでにも様々な説が出されているが、状況が刻一刻と変わっているので、どれが最終的に正しいことになるのか、予断を許さない。しかし、イラクの大統領が現状をこのように把握している、ということが分かったという点で、重みがあるコメントだ。
 
 「イラクに永遠に外国の軍隊がいることを望んでいるイラク人は誰一人いない」としながらも、現時点で撤退時期の詳細に関して英政府と合意しているわけではなく、「現状を見ての推察だ」と述べた。「英国民が、軍隊を撤退させることを希望していることは、了解している。自分たちの息子が帰ってくることを要求する十分な権利を英国民は持っている。特に、主要な任務、つまり独裁政権を倒す、ということをやり終えているのだから」。

 タラバニ氏は、段階的撤退を望むと述べた。

 また、12月の選挙に向けて、暴力行為が増加することを認め、イラク戦争とロンドンの7月の同時テロの関連性はない、とした。後者のコメントが気になる。というのも、英政府は、イラク戦争とロンドンテロが関係していない、としているからだ。しかし、果たしてイラク戦争がロンドンテロの直接の引き金になったかどうか?に関しては、「直接」とまでは言わなくても、心情的なファクターだったのではないかという見方は英国では定説になっているといってもいいと思う。「直接的引き金となった」とする説も有力である。しかし、英国で生まれ育ったテロ犯たちが、イラク戦争に関して、ある意味では、勝手にシンパシーを感じ、テロを起こした、という部分があるであろうし、英国側からすると「何らかの関係・影響はあっただろう」という見方が大方になってはいても、イラク側からすると「関連はなかった」とするのが、真実に近いということになるのだろう。

 ・・ややこしい説明になったが、いやだなあと思ったのが、イラクの大統領が「関連性がなかった」というと、ブレア首相やストロー外相が、「ほら、関係なかった」という文脈でこれから発言をしていく可能性が高く、結局、大統領のコメントが英国の文脈の中で「使われるだけ」になってしまうのが見えるようだったからだ。

 また、もちろん、英国民にとっては、英兵がイラクから帰ってくる時期が分かるのは、大きなニュースだ。今日・明日はこのニュースがかなり繰り返して報道されるだろう。今日13日は、リメンバランス・サンデーのセレモニーがある。戦争で命を落とした兵士を追悼する日だ。英国のあちこちで、市民たちが集まり、平和の行進をし、2分間の黙祷をする。http://www.bbc.co.uk/religion/remembrance/history/ タラバニ大統領のコメントの一部が繰り返されている背景には、リメンバランス・サンデーの儀式がある、という要素も影響しているのだろうか?戦争で犠牲になった人に対し、英国民の多くが思いをはせる日である。



 
by polimediauk | 2005-11-13 18:33 | イラク

「みんながこの男の死を望んでいる」の意味

イラクのフセイン元大統領に対する裁判の初公判が19日、イラクの首都バグダッドで開かれることになるが、有罪の場合、判決後30日以内に死刑になる可能性もある。死刑を妥当と見るかどうか、英BBCオンラインが識者と読者に意見を聞いた。

 多くのイラク人は国民に大きな苦しみをもたらしたフセイン元大統領が、なるべく早く死刑になるべきだ、と思っているとBBCは指摘しながらも、一方では、死刑となった場合、一種の復讐と見なされ、新法治国家としてのイラクに国際社会が疑念を持つ可能性も出てくる、としている。

 イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)のバハ・アルワキル氏は、「もし有罪になったら、早急に死刑にするべき」派。今回の裁判では、1982年、バグダッド北方のドウジェイル村で起きたイスラム教シーア派住民の虐殺事件で起訴されているが、もし全ての犯罪の裁判結果を待っていたら、この先「永遠に待つ」ことになるからだ。

 「これまでに、元大統領の独裁政権下で、何百万人もの人々が犠牲になってきた。イラク国内で、家を焼かれたり、家族の誰かを処刑されたり、戦争で命を落としたり、身元不明になっていない家庭などないくらいだ。この暴君を殺すことで、正義が行われた、ということを国民に見せる必要があると思う。『新しいイラク』を作ろうとするなら、35年間もの間残忍な行為や犯罪を犯してきた男とその仲間たちが罪を負わずに済む様にできるわけがない」。

 また、氏は、いまだに、フセイン元大統領を怖がっているイラク国民も多く、こうした人たちのためにも、死刑にすることが重要だ、と述べている。

 毎日のように自爆テロや武装集団が引き起こす暴力事件で人々が亡くなっている中で、「フセイン元大統領が亡くなったからと言って暴力事件が一度に止まるとは思わないが、裁判が長引けば長引くほど、暴力事件は増える一方になると思う」。

 一方、人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」の国際法担当のリチャード・ディッカー氏は、正義が実行されるためには、「例え被告がいかに残忍な犯罪に関わっていたとしても、弁護団は被告が無罪であることを証明するために活発な弁護を行うことに力を注ぐべき」とする。もしこれが正しく行われないと、国民の復讐心は満足させることはできるかもしれないが、裁判は政治ショー化してしまう。

 死刑は、「人間の、生に対する権利を侵害する、残酷で非人間的な罰則だ。どれほどフセイン元大統領に憎しみを持っていても、だからといって死刑にしてしまう、というのでは、法治国家以前の古代の風習に戻ってしまう」。

 有罪となっても、元大統領は控訴する権利を持つべきだし、もしこの権利が保障されないと、「イラクは何も変わっていない」と思われるだろう、と述べた。

 BBCオンラインに寄せられた読者の意見の中から拾ってみると、

 「イラク人がどうするかを決めるべきだ。私達西欧人が死刑を非人間的な行為だと見なしても、イラク人はまた別に考える可能性もある。西欧式の考えをイラク国民に押し付けてはいけない」(ドイツ)

 「どんな人間も死刑になってはいけない。どんな宗教を信じていても、人間には一旦死んだ人を生き返らせる力を持っていないのだから、命を奪ってはいけない」(英国)

 「問題は、裁判が合法でフェアかどうかだ。外国に駐屯している占領軍が、裁判を行えるなんて、一体どうしたことだろう。誰が米国にこんな権利を与えたんだ?米国はまずイラクを去り、イラク人に全権を返すべきだ。かつての独裁者をどうしたいのか、イラク国民に決めさせるべきだ。イラク国内の裁判所で有罪で死刑と結論づけたのならば、死刑が妥当だ。21世紀、国家の元首が犯罪を起こし、逃げ切ることはできないことを世界に示すことができる」(サウジアラビア)

 「まだ裁判が始まっておらず、冒頭陳述も、弁護も聞いていないのに、死刑にするべきかどうかを問うなんて、本気なのか?」(英国)

 「イラン人の私としては、イラクの法律に従って、フセイン元大統領を裁いて欲しい。しかし、英国、米国、サウジアラビアなど、この悪い男をイラン・イラク戦争の間に支援した欧米や中東諸国の政府も同時に裁かれなければ、真実が明るみに出ないと思う」(カナダ)

 「みんながこの男の死を望んでいると思う。正義のためじゃない。後で本でも執筆して、いったい誰が最初に自分を助けてくれたのかを明らかにしたら、困るからだ。フセイン元大統領の手を染めている血は、米国、英国、そのほか、1960年代後半からこの政権を支援してきた多くの西欧の政府の手にもある」(タイ)

 「クルド人としては、フセイン元大統領が国民に何をしたか知っている。元大統領は、信条や宗教に関係なく、たくさんの人々を殺してきた。どんな暴君でも正義の名の下に裁かれるべきだ。しかし、私は、フセイン元大統領は生き続けるべきだと思う。見つかったときのような小さなねずみの穴のようなところに入れておき、過去30年間苦しめてきた国民が平和に暮らしている様子を目撃するべきだと思うからだ」(英国)。



今回の特別法廷の仕組み、問題点などを詳細に調べた報告書を、王立国際問題研究所が出している。(アドレスは以下。非営利利用は無料。保存しようとすると新しいアクロバットを買うようにメッセージが出る場合があるので、印刷するだけがいいかもしれない。)


http://www.chathamhouse.org.uk/pdf/research/il/BPtrialhussein.pdf

BBCの、公判に関する簡易な説明は

http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/middle_east/3850989.stm――

時事通信のニュースが詳しかったので貼り付ける。

2005/10/18-22:46
フセイン元大統領を告発=大量虐殺や化学兵器使用で-イラン
 【テヘラン18日AFP=時事】イラン政府は18日、イラクで19日にサダム・フセイン元大統領に対する裁判の初公判が開かれるのを前に、イランとしての告訴状をイラク政府に送ったと発表した。罪状にはイラン国民に対する大量虐殺や化学兵器の使用が含まれている。
 カリミラド法相は、告訴状について「原告はイラン国民全員だ。(フセイン元大統領の)犯罪はイランの全家庭に影響を与えた」と強調した。フセイン元大統領がイランの油田を狙った1980~88年のイラン・イラク戦争では、毒ガスなどの使用で多数のイラン人が殺害された。(了)
2005/10/18-16:01
独裁者を断罪へ=フセイン元大統領、19日に初公判-イラク特別法廷
 【カイロ18日時事】サダム・フセイン元イラク大統領に対する裁判の初公判が19日、首都バグダッドの特別法廷で行われる。2003年4月のフセイン政権崩壊、同年末の元大統領身柄拘束を受けた今回の裁判は、24年間にわたり独裁権力を振るった元大統領の犯罪をイラク人自身の手で裁くもので、歴史的な裁判となる。
 元大統領は1982年にバグダッド北方のドゥジェイル村で起きたイスラム教シーア派住民140人余りの虐殺事件で起訴された。ラマダン元副大統領ら元側近3人、旧支配政党バース党関係者4人の計7人も起訴されており、有罪の場合、いずれも死刑を言い渡される可能性がある。 
 安全面への配慮から、裁判を担当する5人の判事の名前は公表されていない。また、法廷が開かれる具体的場所も明らかにされていないが、警備が特に厳重なバグダッド中心部の通称グリーン・ゾーン内とみられる。裁判は厳戒下で行われ、元大統領は防弾ガラスに覆われた被告席に座る可能性がある。テレビ中継があるかどうかは明らかでない。
 関係筋によれば、初公判は判事が罪状などの文書を読み上げる程度で、元大統領への尋問もないとみられる。ただ、元大統領が特別法廷を批判して発言することはあり得る。元大統領の弁護人ドレイミ氏は、元大統領との接見が制限されているなどとして、審理の先送りを求める考えを示している。(了)

by polimediauk | 2005-10-19 00:26 | イラク

「イラクは無政府状態に」「西欧諸国の関与が続く限り、平和はない」、英紙中東ジャーナリスト


 新憲法案の国民投票が開始されたイラク。

 自爆テロが横行してきたイラクは無政府状態に陥っており、駐留外国軍が国内に存在する限り、平和はやってこないー左派系新聞「インディペンデント」紙の中東専門ジャーナリストが、警告を発している。

 2年前のイラク戦争開始後も、身の危険をかえりみず何十回とイラクを訪れ、多くのイラク市民に取材をしながら原稿を書いてきたロバート・フィスク記者は、新刊「文明のための偉大な戦争―中東の征服」(仮訳。原題はThe Great War for Civilisation: the Conquest of the Middle East)の出版を記念して開かれたインディペンデント紙主催のイベントの中で、新憲法への国民投票が行われるイラクの今後を語っている。この模様は13日付のインディペンデント紙で紹介された。

 フィスク記者によると、イラクのほとんどの地域が無政府状態になっており、イラク人武装勢力が国内を支配している。バグダットの通称旧連合国暫定当局(CPA)管理区域「グリーンゾーン」から500メートル離れた地域でさえも、イラク武装勢力の支配下にある、という。 (私も書いている日刊ベリタの斎藤力二郎記者が伝えるところによると、イラクでは、国民投票開始直前にも同国の指揮命令系統の乱れを象徴する交戦事件が相次いで発生している。)


 過去何世紀にも渡る、西欧による、中東地域への「継続した、集中した関わり」が「多くの中東のイスラム教徒たちが我々西欧を嫌う理由だ」、「私たちは(こうした関与の歴史を)終えることができる。中東諸国は終了する側にはないのだ」。

 フィスク氏は、米英の政治家たちが本気でイラクに民主化をもたらそうとしているかどうかに関して疑問をはさみ、外国軍がイラクに駐留する限り、本当の平和はやってこない、とした。「中東では、確かに人々は西欧型の民主主義をいくらかは欲しいと思っているだろう。人権も少しは保障されたいと思っているだろう。しかし、同時に、我々から自由になりたい、とも思っている」。

 「アメリカ人はイラクを去らなければならないし、実際、去ってゆくと思う。しかし、本当には関与をやめないと思う。従って、これからも砂が血に変わる、という状況が続くと思う」。

 フィスク氏は、治安状況の改善策として、米国側がイラクの反乱軍と話し合いの機会を持つことが大切だ、と指摘する。「しかし、どうやってそんなことができるのか?私自身、分からない。国連や国際赤十字など、間をとりもつ役割を持つ団体の建物が爆破されているのだから。イラクを民主化するというプロジェクトは終わったのだと思う。イラクの大部分は無政府状態だ」。

 イラクの市民に実際に話を聞いてきたフィスク記者の目からは、イラクに民主主義を導入し、そのために憲法の国民投票を行う、といった西側の指導者が成果としてあげる動きは、多くのイラクの国民にとっては、「現実性のないもの」にしか聞こえないという。

 バグダッドでは女性や子供たちは身代金目当てや奴隷にさせられるために誘拐されるかもしれないので、家にじっとしており、多くの国民は電気が止まらないように自家発電の装置を動かすためのお金を調達するために死ぬほどの努力をしており、「部屋で憲法の国民投票に関して議論をしている」といった状態ではない、とフィスク氏は述べる。

 また、「グリーン・ゾーン」付近でさえも治安状態が非常に悪いため、取材活動を続けるジャーナリストたちの身にも危険が迫っているという。「バグダッドに行く度に状況は悪化しており、こんな場所で取材ができるのだろうか、と毎回自分に聞いている。つまり、こんな危険を冒してまで、原稿を書くべきなのか?と」。

 一方、フィスク記者は、英テレビが戦場の惨状をそのまま放映しないことへの不満も漏らした。「(ベトナム映画の惨状を描いた)米映画『セービング・プライベート・ライアン』や他の映画を観てほしい。頭部が切り落とされるシーンも出てくる。本当に頭部が切り落とされたら、テレビのスクリーンでは放映されない。テレビは(イラク戦争を開始した)政府にべったりしすぎているのではないか」。

 戦争で亡くなった人々の無残な様子が鮮明なカラー写真で新聞各紙に掲載された点に関し、こうした報道は亡くなった人々の人間としての尊厳を傷つけたことになるのでは?というイベントの会場からの問いに、フィスク記者はこれに同意せず、「亡くなった人々は、私たちジャーナリストに、自分たちの身に何を起きたかを記録して欲しいと思っていると思う」と述べた。

 政治家の側でなく、常に市民の視点から記事を書いてきたフィスク記者だが、ジャーナリストの基本は客観性を保つこと。イラク戦争の悲惨な様子がフィスク氏の客観性を鈍らせることはないのかどうかを聞かれ、「大量殺戮の現場に遭遇したら、人は強い怒りを覚えると思う。私もそうだ」と答えている。
by polimediauk | 2005-10-15 18:08 | イラク

ブレア英首相「イラクの大統領が望む限り、英軍は駐留する」

 6日の夜、おもしろいテレビ番組があった。テレビ欄を見てみたが該当するものがなかったので、チャンネルが分からないのだが・・。市民大学講座のような番組で、高橋和夫さんという人が、「国際政治とテレビ」というようなタイトルで、2001・9・11以降の国際政治を分析していた。(もし見つけることができる方がいらしたら、来週からでもぜひご覧ください。週一回のようです。メディアと政治に興味のある方向きです。また、NHKの「クローズアップ現代」がNHK衛星第2で午後11時55分から放送されます。これが本日午後7時半の分の再放送としたら、これもおすすめです。ロンドン・テロに興味のある方に。)

 この中で、いかに各国政府がテレビというメディアをプロパガンダとして使ったかという興味深い事例が紹介された。その中の1つで、私自身知らなかったのが、2003年11月(米)感謝祭の時に、ブッシュ大統領が在イラク米軍を尋ねた際の、あるエピソードだった。

 感謝祭の肉を大きなお盆に乗せて、これを兵隊たちに提供するような格好をしたブッシュ大統領が、一般の兵士たちと夕食をともにする・・・という場面だった。このときの写真や映像を当時見ていたはずだが、全く気づかなかったのは、この肉が、プラスチック製だったことだった。

 米兵の士気を高める、ということがブッシュ氏訪問の目的だとしたら、「その目的を最も果たせるのが、最高においしそうに見えるプラスチック製の肉を乗せたお盆を持ったブッシュ大統領」である、というホワイトハウスの判断によるもの、という説明がなされた。

 確かに、その当時はこれで目的が果たせたのだろうが、やはり何やらごまかし感という印象はぬぐえないように思う・・・。驚きだった。

 イラク関連トピックだが、BBCで、日本時間午後8時ごろのニュースとして、ブレア英首相の英軍のイラク駐留に関する記事が流れている。

 これによると、ブレア氏はロンドンを訪れたイラク大統領に対し、「大統領がそう望む限り(どんなに長くても、というニュアンス)、英軍はイラクに駐留する」と述べている。一方のタラバニ・イラク大統領は、英米軍の早期撤退は、「カタストロフィーになる」と続けている。(蛇足かもしれないが、これは必ずしも、先に報道されている来年4-5月頃の撤退あるいは縮小とは違う話、ではないだろう。ブレア首相はいつもこういうのである。また、うがった見方かもしれないが、「イラクの利権にはずっと長く関わっていたい・支配権を持ちたい」というのは、本音であろうから。第一、憲法国民投票が目前に迫り、撤退云々などの方に関心をそぎたくないだろう。「英国はイラクのために、深くコミットしている」ことを、常に内外にアピールしたいのである。)

 また、ブレア氏は、イランに対し、イラクのことに干渉するな、と警告したという。これは、イランがイラクの暴徒たちに武器を提供している、とする疑いがあるからだ。 (BBCによれば、である。英政府高官らの間では、イランの関与が常に言われてきた。)

 イラクで英兵士が殺害された際に使われた装置はイランが使用するとされたものに似ているが、「断言はできない」とも述べている。
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 タラバニ大統領は、在イラク多国籍軍が国内のテロの原因とする説を否定した。

 タラバニ大統領とブレア氏が会談をしたのは、イラクの新憲法に関しての国民投票が来週行われるからだという。今回の大統領の訪欧は4月に大統領に就任してから初。

 関連で、日刊ベリタに無料記事で出した記事をくっつけてみる。


2005年10月06日掲載  無料記事
イラク情勢
「イラクでの英兵殺害にイランが関与」 英政府高官が言明

 【東京6日=小林恭子】5日のBBCオンライン報道によると、英政府高官が、今年に入ってイラクで命を落とした英軍兵士計8人の死にはイランが関与していた、と述べた。この政府高官は匿名を条件にロンドンで記者会見した際、イラン関与に言及した。イラクの治安悪化にイランが関与している、という見方は長い間英政府内でささやかれてきたが、英軍兵士の戦死に関し、名指しでイランの関与を明言したのは、今回が初めて。 
 
 BBCは高官が会見に応じたことについて、英国とイラクとの外交関係が、イランの核開発問題を巡って既に悪化している状態であるため、何を発言しても「失うものはない」と考えているからではないか、としている。 
 
 この政府高官によれば、イラン革命防衛隊が、イラク南部のイスラム教徒シーア派に、殺害を引き起こす爆破方法を教えた、という。細かな爆破技術はレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラがイランを通じて伝え、「爆発物」が製造されたという。 
 
 実行犯は、イスラム教シーア派の指導者ムクタダ・サドル師の民兵組織「マフディ軍」から分かれた者たちで、このグループのリーダー格と言われるアーマド・アルファルツシは既に英軍に逮捕され、「現在、英国式歓待を楽しんでいる」(政府高官)という。この逮捕をきっかけに、現在も続くイラク南部バスラでの反英抗議活動が起きた、とBBCは伝えている。 
 
 政府高官によると、英政府はこの件に関しイランに抗議したが、イラン政府は関与を否定したという。 
 
 イランがなぜ、英兵に爆弾を仕掛けたのか?高官によれば、核開発に対する英国をはじめとする各国の非難に対し、「イランは、もういじめられるのはたくさんだ、と思ったのかもしれない」。. 
 
 高官は、10月19日に始まるフセイン元大統領の裁判が、12月に予定されているイラクの選挙の後まで延期になる可能性がある、とも指摘している。 
 
 一方、イラン外務省のハミド・レザ・アセフィ広報官は5日、イランのテレビ番組に出演、英政府高官の見解を「ウソ」と決め付けた上で、英政府がイラクの治安不穏状態を悪化させようとしているだけだ、と反論した。さらに 同広報官は、「英国こそがイラクの危機の原因だ」と主張した。 

by polimediauk | 2005-10-06 21:53 | イラク

イラクのこれから


(以下、若干追加します。26日午後5時)

 イラクから英軍がいつ撤退するのか、それは来年の5月頃らしく(英オブザーバー紙25日付け)、予定策定が進んでいる、といった報道を、ロイターや産経、読売などで見た(ヤフー・ジャパンより)。それに関し、ブレア首相が、26日のBBCテレビで「いつとは決まっていない」というようなことを言ったようだ。

 本当はどうなのか?

 オブザーバーのスクープ(=真実)という可能性はあるし、「いくつかあるプランの中の1つ」というケースもあるようにも、思う。(何も考えていない、策定していないわけがない、というのが常識と見たほうが正しいだろうから。イラク戦争の時も、開戦するには、戦車、人、物資を動かすわけだから、実際に動き出すXデーがあったであろうし。すぐには全部動かせないので、数ヶ月前に決めていた「はず」・・・・。)

 繰り返しになるが、「いくつものプランをいろいろなレベルで考えている」という要素も、私自身は心に留めていたいと思う。以前にも、何度か撤退時期が噂され、報道されてきたので。(つまり、全ての報道=いくばくかの真実)

 新聞には新聞の事情もあり(後で間違ってもいいから、とにかく先に出したいーー英国の場合)、また「そのときは正しかったんだけど、後で事情が変わった」という展開もある。

ーー以上追加分終わり。---


 雑感になるが・・・・。

 日曜日(25日)の朝の政治・時事番組(黒岩さんというキャスターの方がいらしたと思う)だったと思うが、この中で、イラクの自衛隊を引き上げることについての質問に、政府高官らしい人が答えていた。12月に現在の派遣の基礎となる法律の期限が切れるので、これをどうするか?と。(他のことをやりながら見ていたので、恐縮だが、この高官の名前を記憶していないのだが。)構図として、キャスター・ジャーナリストが、政府高官を問いただす、論理のつじつまがあわないような部分をつく・・といった感じだったように思う。それに対し、高官がやや苦しそうに答えていたように記憶している。

 見ていて、高官はつらいだろうな、と思った。日本の意向だけでは決められないのだから。英国でさえも、イラク駐留の英軍の規模縮小及びいつ撤収させるか、に関して、自国では決められない、という状況があると思う。つまり、決めるのは米国だ。日本政府の高官が、「(いつ撤収させるか)そんなこと、知らない。分かるわけないだろう。アメリカに聞いてくれ」というのが、本当は一番正直な答えになるのかもしれない。

 BBCオンラインによると、ブレア英首相は、「イラク政府が望む限り、英軍はイラク駐留をする」と述べているそうである。http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/4279618.stm (約30分ほど前のニュース)

 一方、21日ごろ、英南部バスラで英国人二人がイラク人警察らに捕まり、後に拘留されていた刑務所を、英軍の装甲車が攻撃。150人の受刑者が逃げた、数人が負傷・・・という項目を書いた。装甲車も攻撃にあい、火だるまになったような英兵の一人が、装甲車から飛び出して逃げ出す様子がカラー写真で世界に報道された。

 そこで、事件のもともとの部分、つまり英人二人が何をしていたのか?を疑問に思っていたが、日刊ベリタwww.nikkanberita.comで、斎藤力二郎さんという、アラビア語ネットを専門にチェックしている人が、その「真相」を報じている。

 以下はその一部抜粋(無料掲載部分。ベリタは購読システムをとる)

2005年09月22日掲載  

英人秘密工作員2人が巡礼者に発砲 マハディー軍の警官が拘束

 【東京22日=齊藤力二朗】日本のメディアは詳しい報道を行っていないが、イラクでは今、英国人2人が一時拘束される事件が発生、関心を集めている。21日付のイラク・パトロールが信頼できる筋から得た情報として、バスラで起きた同事件の真相を報じた。 
 
ーーー

 残念ながら内容は有料購読者のみへの公開になるが、ここで明らかになったのは、この英国人二人が、イラクの対立するシーア派とスンニ派の亀裂を深くするために、何らかの工作をしていた、という疑いだ。

 つまり、わざと、紛争を起こさせ、いつまでも暴動が治まらないようにして、結局はイラク政府が、英米軍の駐留をいつまでもお願いする、といった形を仕組んでいる、というものだ。

 これを信じるか、信じないか?

 2003年のイラク戦争の開始直後のあたり、米政府高官らが、「イラクには必要とされるだけ、いる。10年、20年、30年・・・」といっていたのを思い出す。事態をあおるわけではないが、「わざと紛争を引き起こしている、分断を大きくしている」という説をいちがいに否定もできない気がしている。
by polimediauk | 2005-09-26 00:55 | イラク

イラク 現場の記者の声


状況はひどくなるばかり。解決策・・・いまのところ、なし

 バグダッドからみた国内の状況はどうなっているのか?

 9月17日の英時間朝7時から始まった、BBCラジオ4の看板ニュース番組「TODAY」が、イラクの内情を二人のジャーナリストから聞いている。両者ともにバグダッド在で報道を続けている。

 文章にすると雰囲気が伝わってこないが、後半、インディペンデント紙の特派員との一問一答になると、あまりにも状況が悪いので、トーンが段々暗くなってゆく。質問をするほうは、驚き、だんだん落胆してゆく。答えるほうも、やや間をおきながら言葉を発するようになり、「かなり絶望的な状況」であることを伝えている。

 以下はその内容:

 ニュース・プレゼンターのジョン・ハンフリーズ氏が聞く

ハンフリーズ:今週もイラクではたくさんの死傷者がでています。250人が亡くなったことになります。なくなったのはほとんどがシーア派でした。いよいよ、最も恐れていた「内戦」がイラクではじまったのでしょうか?安全保障問題の特派員ゴードン・コレラが報告します。

コレラ特派員:毎日様々な名前のもとで戦いが続いていますが、シーア派の住民による、スンニ派にたいする聖戦、というゴールはかわりません。少なくとも、(スンニ派の過激派「イラク聖戦アルカイダ組織」を率いる)ザルカウィ容疑者はそういっています。ザルカウィ氏は、アメリカのハリケーン・カトリーナに触れ、あのハリケーンで米軍がうまく機能できなかったのは、イラクで疲れ果てたから、と言っています。そして、イラク国民の大部分であるシーア派に対する全面的な戦いを開始する、としています。

先週から続いている惨事を見ていると、(イラク国民の間で)内戦が起きているともいえるでしょう。しかし、それは必ずしも正確ではないかもしれません。第一、ザルカウィ氏はヨルダン人であって、イラク国民ではありません。自爆テロを行う人々の多くも外国人です。しかし、目的は内戦を起こすことなのです。イラクを分裂させ、スンニ派をとりこむことです。イラクの反乱者たちの中で、ザルカウィ氏をはじめとする外国人は、数の上では10%ぐらいと見られています。残りの90%はイラク国民です。主にスンニ派で、米軍の駐留に抗議する人たちです。しかし、こうした人々の暴力の度合いは限られています。

ザルカウィ氏はスンニ派をとりこみたいと考えていますが、まだそうなってはいないようです。政治と暴力は密接に関連しています。ザルカウィ氏は交渉には応じません。しかし米政府やイラク政府が望んでいるのは、スンニ派の住民たちを暴力から切り離し、政治の場に組み込み、ザルカウィ氏を孤立化させることです。今後の新憲法草案への国民投票で政治的高まりを作ることができれば、反乱を抑えることができるのです。終わらせることができなくても。

しかし、政治が失敗すれば、ザルカウィ氏は宗派の違いによる偏狭さを表に出してコミュニティーを分断化し、暴動も激化し、本当に内戦になってしまいます。多くの内戦は国家をコントロールするための政治の戦いの果てに起きています。ザルカウィ氏のこれまでを見ていると、国民同士の対立はかなり激しいものになりそうです。

ハンフリーズ:さて、1978年からイラクを報道してきたのがインディペンデント紙のパトリック・コッコバーン記者です。現在はバグダッド特派員です。BBCの記者の分析はあたっていると思いますか?

コッコバーン:そう思います。状況は毎日悪くなっています。全面的な内戦とはまだいえないかもしれませんが、バグダッドの一部では、内戦と呼んでいい状態になっています。そう感じます。

ハンフリーズ:内戦の定義は、市民が他の市民と戦う状態ですね?

コッコバーン:そうです。戦う、というより、互いを殺しあっている、という意味ですが。バグダッドでは、特に西や南のバグダッドでは、暗殺だけでなく、シーア派住民が、住んでいる場所から追われたりなどといったことが起きており、スンニ派が固まって住む地域ではそういうことが起きています。

ハンフリーズ:民族浄化のようなことですか?それともこの言葉は強すぎますか?

コッコバーン:いいえ(強すぎるということはありません)、もし該当する地域に住んでいる人だったら、確かに民族浄化でしょう。自分の友達が殺されて、自分も出て行け、といわれるといった状況ですから。民族浄化、といっていいでしょう。大げさなことは言いたくはありませんが、これはほんの始まりだ、ということです。たくさんの死体がでてきていますし、多くの人が、生まれ育った土地から、追い出されています。

ハンフリーズ:現地に住んでいるということで、私たちより状況が分かっているでしょうけれど、状況は悪化している、ということでいいですね?それ以外にいいようがない、と。

コッコバーン:はい、残念ながら、亀裂は深くなっています。他の勢力も活動しています、最も影響力があるシーア派最高権威アリ・シスタニ師が、宗派の違いによる争いを止めるような発言をしています。例えば、「もしシーア派の人口の半分が殺されたとしても、復讐をしてはいけない」といっています。こういうことを言うのは重要です。しかし、バランスは日を追うごとに変わっています。

ハンフリーズ: 政治的盛り上がりがあれば、状況は変わるんですよね?BBC特派員が言っていたように?

コッコバーン:変わればいい、とみんなが望んでいます。もうすぐ、10月15日に、新憲法草案の国民投票があります。もしこれが承諾されれば、国内に約500万人のスンニ派アラブ住民を怒らせることになります。もし承認されなければ、クルド人やシーア派住民が怒ります。従って、この国民投票で国全体が一つにまとまることはない。国家的な和解が達成されるようなことも入っていませんし。

ハンフリーズ:つまり、新憲法には、両グループを統一させるようなことが書いていないわけですか?そうおっしゃっているんですか?

コッコバーン:憲法自体には、そういうものはありません。スンニ派のアラブ人たちは、憲法の中の連邦制の概念に反対しています。スンニ派は投票しないかもしれない、投票すること自体が憲法を認めたことになるから、など言う人もいますし。でも、これもどうなるか不透明です。全体的に、市民に話を聞き、また政治家などに話を聞いても、この憲法が何をもたらすかに関し、うんざり感があるようです。

ハンフリーズ:気がめいるような質問ですが、何ができるんでしょうか?できることはあるんでしょうか?解決策はあるのでしょうか?

コッコバーン:今のところ、完全な解決策、というものはありません。人々ができる最善の道は、これ以上事態が悪化しないようにすることです。これ以上地上で起きるひどい自爆テロをなくすこと、仕事がのどから手が出るほど欲しい日雇いの人がやっているのが自爆テロです。政府も、今朝、南西バクダッドで、200-300メートルおきにチェックポイントを作るなどやっていますが、自爆テロ犯をとめるのは、非常にむずかしい。

ハンフリーズ:ということは、かなり悲観的な意見を持っているということですね?

コッコバーン:残念ながら、かなり悲観的です。悲観的になりたくないのですが。死体の数を毎日見ていますし、その数が増えているのですから。


http://www.bbc.co.uk/radio4/today/listenagain/ の9月17日分より (7時33分から始まるクリップ。若干言葉の補足、省略あり。)

 なお、参考として、時事通信の記事を。

 英、イラク駐留軍削減計画棚上げ=内戦突入を懸念-日曜紙

 【ロンドン18日時事】18日付の英日曜紙サンデー・テレグラフは、イラクが全面的な内戦状態に入るのではないかとの懸念の高まりを受け、英軍がイラク駐留兵力を来年、大幅に削減する計画の棚上げを決めたと報じた。
 英軍はイラク情勢をにらみながら、状況が許せば、治安維持任務をイラク側に段階的に移管し、約8000人の駐留部隊を3000人程度まで削減する計画の策定を内部で進めていた。 
(時事通信) - 9月18日9時0分更新
by polimediauk | 2005-09-18 20:46 | イラク

「バスラに行ってみませんか?」

 ・・・というメールが、英外務省から来たのは昨日だった。

 イラクのバスラから撤退するオランダ軍を引き継ぐのが英軍。この引継ぎの様子とバスラ市内の見学を含んだ取材旅行だ。英軍と常に行動を共にし、来月頭から9日間ほど滞在する。

 戦争は終わっているものの、一種の「従軍記者」状態となる。必要な保険は自分で加入しておくこと、防弾用具は「もし持っていないなら」、貸します、とのこと。

 英外務省と国防省のジョイントのプロジェクトだが、宿泊費他の費用は全て国防省が持つ。つまり、英国民の税金だ。

 在英外国人記者の中から、オーストラリアから1名、オランダから1名、日本からは2名(そのうち1名は在中東の日本人記者)で、日本からは読売と共同の2社が選ばれたことを、新たなメールで知った。「失望させて申しわけないが、競争が激しかった。またの機会を作るので、待っていて欲しい」と、している。
 
 ・・・しかし、国民の税金を使って、他国のジャーナリストのために、どうしてここまでやるのだろう?

 考えて見ると、やはり対外宣伝というか、プロパガンダなのだろう。

 といってしまえば、見もふたもないように聞こえるかもしれないが、選挙も終わり、現状がこうなっている、ということを外国メディア自身の言葉で語ってもらいたい、と。

 日ごろから、英外務省は、こうしたことに力を入れていることを、前に書いた。省内に外国メディア担当課を作り、頻繁に様々なプログラムを提供し、ブリーフィングや取材旅行を企画・実行している。広い意味でのプロパガンダ、願わくばイギリスのいい面を世界に広く知らしめて欲しい、というのが狙いだと聞いた。

 しかし、今回、参加する記者・メディア側にとっても、かなり利点があるだろう。やはり実際に見る、体験するのと、本やネットだけで情報を得るのは、違う。いわゆる「従軍」待遇で取材をすることに批判があるのは承知しているが、あらゆる機会を利用して、数多く見ておくことは、どんなことでも重要だと思う。

 イギリスの場合、こうした取材の後でかなり批判的な記事を書いても、それによって仲間はずれにされるということがない。

 この点でイギリスは太っ腹だなと思っていたが、上がいた。

 フィンランドに取材に行ったとき、官僚が、フィンランドの教育システムの悪い点を私に話す。「どうして自分から欠点をジャーナリストに話すのか?」と不思議に思って聞くと、官僚は、担当する分野に関してジャーナリストに取材されたとき、良い点だけでなく、悪い点に関しての情報も公開することが法律で決まっている、という。

 話が飛んだが、本当に様々な考え方の国があるものだ。

 

 
by polimediauk | 2005-02-26 02:26 | イラク