小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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NHK-3

(これまでの年表)(ネット新聞 jan janより)

NHK2001年1月30日放送
『女性国際戦犯法廷』めぐる経緯

【2000年】
8月
 ドキュメンタリー・ジャパン=DJ(プロダクション)の女性ディレクター坂上香さん(1965年生まれ)にNHKの関連会社NHKエンタープライズ21=NEP21のプロデューサーA氏(※)より、同年12月に開催される「女性国際戦犯法廷」を舞台に番組を作らないか、というオファーがなされる。A氏は高橋哲哉(※)東大助教授の講演からこの情報を得た。NHKのETV2001を担当するNHK教養番組部も意欲的だった。

※池田 恵理子さん 1973年早稲田大学卒業後、NHK入局。ディレクターとして、教育、女性、医療、エイズ、人権、「慰安婦」問題などの番組制作にあたる。主な番組に「体罰~なぜ教師は殴るのか」「埋もれたエイズ報告」「東ティモール最新報告」「50年目の『慰安婦』問題」「グアテマラ 二度と再び」など。その後、NHKエンタープライズ21のプロデューサー。1997年に自主ビデオ制作集団「ビデオ塾」を結成。各国の「慰安婦」被害者の証言記録運動を始め、2000年には「沈黙を破って~女性国際戦犯法廷の記録」を制作した(京都精華大学HPより)

※高橋哲哉さん 
 1956年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。哲学者。
20世紀のヨーロッパ哲学を研究しながら、戦争責任や歴史認識の問題に積極的に発言し、現在は「憲法再生フォーラム」共同代表も務める。著書に『戦後責任論』、『歴史認識論争』、『デリダ―脱構築』など。

 坂上ディレクターは、高橋助教授の話を直接聞く中で番組づくりの意義を感じ、引き受けることに。但し、企画が通る可能性は低いと感じていたという。坂上ディレクターは、NEP21のAプロデューサーからNHK教養番組部のBプロデューサー及びデスクを紹介され、準備が進む。

9月
 坂上ディレクターは2回シリーズの企画書を完成させる。シリーズ1回目は日本軍の戦時の暴力を裁く「民衆法廷」を軸に、シリーズ2回目は「民衆法廷」の一環として行なわれる「公聴会」を軸に、性暴力被害者の証言を聞くといった内容。この企画書は練られて9月末にDJからNEP21に提出された。これが、後、2回シリーズから4回シリーズに拡大する。NHK教養番組部が企画を書き直した。

10月
 「VAWW-NET Japan=バウネット・ジャパン」(「戦争と女性への暴力」ネットワーク:松井やより代表※)に、NHKの番組を制作しているDJ(代表取締役 橋本佳子  牧 哲雄  山崎 裕)から企画の相談が持ち込まれる(※)。バウネットが関わる「女性国際戦犯法廷」を取り上げたい、というものだった。バウネットはこの趣旨に賛同し、取材協力を約束。

※松井やよりさん
 1934年生まれ。1961年東京外国語大学英米科卒業。在学中ミネソタ大学とソルボンヌ大学に留学。1961年朝日新聞社に入社。社会部記者として福祉、公害、消費者問題、女性問題などを取材。1977年「アジア女たちの会」設立。1981~85年シンガポール・アジア総局員。1994年朝日新聞社定年退職。1995年「アジア女性資料センター」設立。国際ジャーナリスト。アジア女性資料センター、VAWW-NET Japan代表。2002年12月27日没。

※当シリーズは外部委託番組だった。NHK教養番組部がNHK関連会社NEP21を通じてDJに発注した。DJは1981年にスタートしたドキュメンタリーを専門とするプロダクションで、NHKが外部制作会社に発注を開始した90年初頭から関わってきた。NHKスペシャル「あなたの声が聞きたい」は郵政大臣賞など数々の賞を受賞するなど、ドキュメンタリーに定評がある。

 当シリーズは当初2回で企画され、その企画書を作ったDJの坂上ディレクターも、HIV問題を扱った「僕たちずっと一緒だよね」のディレクターを務め、BS-1日曜スペシャルでも企画・制作・デシレクターを務めた「ジャーニー・オブ・ホープ」が文化庁芸術祭優秀賞を授賞するなど、数々の授賞暦がある優秀なディレクターだった。このDJを核に、NEP21、NHK教養番組部が加わり、3者合同会議(構成会議)が開催され、合意を経ながら番組は制作されていく。

12月9日
 NHKニュース及び「おはよう日本」などが「女性国際戦犯法廷」が開始されたことを報道するや、NHKに右翼からの抗議が始まる。ETVシリーズで放送されることが広まるにつれて、抗議はエスカレートし、放送中止要求も。

中旬
 NHK局内で3社合同構成会議が開催される。なお、4回シリーズのうち、シリーズ2回目の「民衆法廷」のDJ側のディレクターはCさん、シリーズ3回目の「公聴会」のディレクターは坂上ディレクターが務め、残り2回はNHK教養番組部の制作となった。この会議で、シリーズ2回目は教養番組部プロデューサーB氏の提案通り、「民衆法廷」に絞って制作し、特にVTRについては、「民衆法廷」に限ることになったという。DJのCさんの提案の中にあった様々な要素は、高橋東大助教授と米山リサ氏※(アメリカ・カリフォルニア大学準教授)の対談でカバーすることに。

※米山リサさん カリフォルニア大学サンディエゴ校文学部準教授.スタンフォード大学人類学部Ph.D.社会科学調査査委員会マッカーサー財団奨学生を経て1992年より現職.著書にHiroshima Traces: Time, Space and the Dialectics of Memory (カリフォルニア大学出版、1999年)、共編著に Perilous Memories: Asia-Pacific War(s)(デューク大学出版、2001年).日本語論文に、「記憶の弁証法――広島」『思想』(1996年)、「記憶の未来化について」小森陽一・高橋哲哉編『ナショナル・ヒストリーを超えて』(東京大学出版会、1988年)、「天皇のページェント―近代日本の歴史民族誌から」(翻訳)NHKブックス。


 右翼からの圧力を教養番組部の担当者が頻繁に口にし始める。

【2001年】
1月19日
 NHKではそれまでは稀だったシリーズ2回目の最初の吉岡民夫教養番組部部長試写が行われる。ここで、部長より様々なダメ出しが行なわれた。激怒したとも伝えられる。これにより、VTRは「民衆法廷」のみの方針は変更され、海外の法廷情報も加わった。

1月20日
 右翼団体から抗議のFAXがNHK教養番組部部長宛に送られる。プロデューサーの自宅にも抗議や脅迫電話があった(衆議院総務委員会で明らかに)

1月24日
 シリーズ2回目の第2回目の部長試写が行われた。教養番組部部長のほか、局やNEP21からも参加した。部長よりここでも修正箇所が指摘される。加害者証言、対談部分の米山氏の発言も否定される。ここに至り、DJ側の担当ディレクターは、以後の作業はNHKの方でお願いしたい、旨、述べる。天皇有罪の判決(ナレーション)、加害者兵士の証言、法廷主催団体の基礎的な情報も削除される。

1月26日
 松尾放送総局長と伊東律子番組制作局長が試写(読売・05年1月20日)

1月27日
NHKに右翼団体が抗議行動。街宣車も。

1月28日
 NHKに右翼団体が抗議行動。
 1月30日オンエアの『戦争をどう裁くか』第2夜『問われる戦時性暴力』(22時~22時40分)に関して、急遽、秦郁彦氏のインタビューが撮影・挿入される。その後も、この日の夜中から30日のオンエア直前まで手が加えられた、と言われる。

 シリーズ2回目の改変だけでなく、この日あったシリーズ3回目(DJ坂上香ディレクター)の局長レベル試写会の後、「公聴会」開催のナレーション、女性国際戦犯法廷のテロップ、元「慰安婦」が映っている場面、説明ナレーションのカットなどが行なわれた。

1月29日
 NHKのETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』第1夜(22時~22時44分)

 松尾放送総局長、野島直樹担当部長、自民党安倍氏と面談(日刊スポーツ05年1月20日)。

 夕刻、松尾放送総局長、伊東律子番組制作局長が試写。編集作業(読売・05年1月20日)

1月30日
 NHKのETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』第2夜『問われる戦時性暴力』(22時~22時40分)で大幅な番組改変が行なわれる。内容は、既述のように2000年12月、東京九段会館で開かれた日本軍慰安婦制度を裁いた「女性国際戦犯法廷」を取り上げたもの。

 これは、日本軍の「慰安婦」制度を裁いた民衆法廷で、昭和天皇、日本軍の幹部(※)、日本政府を被告とし、12月8日から九段会館で3日間の審理を経て、12日に日本青年館で「天皇に有罪」「日本政府に国家責任」を求める判決が言い渡された。2001年12月4日にオランダのハーグで最終「判決」。裁判官、主席検事、書記官は、国籍・民族・人種・性を超えて構成され、「法廷」の権威は、いかなる国家、いかなる政治組織により生じるものでもなく、いかなる権力にも支配されない。法廷を開催するために、日本、被害国、国際諮問委員会の3者で国際実行委員会が結成された。

※昭和天皇ほか、A級戦犯など9名。

 国際実行委員会の日本側の中核を担ったのが「VAWW-NET Japan=バウネット・ジャパン」(「戦争と女性への暴力」ネットワーク:松井やより代表)だった。

 削除された内容は「誰が何のために法廷を開いたか、被告は誰でどのような罪で起訴されたか。どのような審理が進められ、どのような判決が出たのか」(バウネット副代表西野瑠美子=月刊「創」2001年5月号)。

 具体的には、法廷会場九段会館、「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」の看板、書記官の開廷宣言、裁判官や検事、韓国、インドネシア、台湾の証言、町永俊雄アナウンサー※のナレーション(改変された)、韓国・北朝鮮、中国、東チモールの”慰安婦“の被害者証言、元日本軍兵士の証言、裁判官が判決を読み上げている場面、総立ちになって拍手を送る会場の様子、など。

(放映2日前、NHKにドキュメンタリー・ジャパンが納品したものには基本情報が入ったビデオが制作されていた。)

※改変された町永アナのナレーションについて、『正論』2001年4月号は、海老沢会長がビデオを試写して制作担当者を呼びつけて内容の修正を厳命した、と書いている。放映前日か、当日の改変と予想。

1月31日
 NHKのETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』第3夜(22時~22時44分)

2月1日
 NHKのETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』第4夜(22時~22時44分)

2月2日 伊東律子氏と野島直樹氏、中川氏と会う。(日刊スポーツ05年1月20日)

2月6日
 バウネット・ジャパン、この日付けで、NHK海老沢会長宛に11項目の公開質問状を送付。

2月13日
 この日付けでNHKより回答(教養番組部長吉岡民夫名)。内容は「シリーズ全体の企画意図・編集方針は、2000年11月にNHKが番組シリーズの制作を決定した時から先般の放送までの間、一貫して変わっていない」というもの。遠藤絢一番組制作局主幹も同様の発言。

 バウネットはこの後、上記2人と対話。NHKは「右翼の頻繁な抗議があったこと」「放送直前まで手を加えたこと」を認める。

2月26日
 同日発売号の週刊新潮が1月27日、28日の右翼団体の抗議、伊東律子番組制作局長が自民党の議員に呼び出された…報道。

3月2日
 朝日新聞が「NHK、直前に大改変」の大見出しの記事。内容は、「29日頃、会長側近の局長や放送総局長による異例の試写が行われたこと」「放送直前に局長以上からOKが出ていた番組の改変指示」

 同日発売の「週刊金曜日」では、竹内一晴氏が「カットを指示したのは松尾武放送総局長で、当日、43分バージョンになったものをさらに3分カットしたうちの数箇所は松尾総局長が直接指示」と書いた。

 こうした報道を受けて、バウネットは、国際実行委員会の抗議声明、NHKで教養番組部吉岡部長、番組制作局遠藤主幹と話し合う。

3月16日
 衆議院総務委員会で民主党の大出彰議員が質問に立ち、この番組の改編問題を取り上げ、NHK海老沢勝二会長、松尾武放送総局長に真偽を質す。「NHKの報道の自由、企画者の表現の自由、NHKの編集権の独立が侵害されたのではないか」「一部の政治勢力に屈したのではないか、また、それに配慮する形で自主規制したのではないか」という質問に、海老沢会長は「いろいろな意見が出たと聞いている。編集責任者が、そういう中で公正を期して番組を放送した」と回答。

 「伊東律子番組制作局長が自民の大物議員に呼び出され、クギを刺された」(週刊新潮)のではという質問に、松尾武総局長は「番組制作局がこの件で呼び出されたという事実はない」と答える。「海老沢会長、松尾総局長が改編を支持したのでは」という質問にも「そのような事実はない」と否定。

 海老沢会長は「できるだけ公平を期し、我々の自主性、自律性を守りながら質の高いものを出していく精神にはいささかも変わりないし、今後とも公平公正、不偏不党の立場に立った番組づくりに努力するというのは当然だ」と締めくくる。

 社民党の横光克彦議員は、「ETV2001シリーズ、これは非常にいい。NHKでなければできないような、いわゆる挑戦的な意欲が感じられる企画だと思っている……こういったテーマにアプローチすることに現場が萎縮するようなことがあってはならない」と発言。

7月
 バウネット・ジャパン、2001年7月24日東京地裁にNHKを相手取って提訴(裁判は15回の口頭弁論を経て2003年12月15日結審)。提訴の主旨は、NHK側の提示した企画内容に合意したからこそ取材協力したにもかかわらず、別の内容に改ざんされたことにより、信頼(期待)利益を侵害され、また、NHKが番組改変の説明義務に違反したために損害を受けた、の2点。

 坂上香ディレクター、ドキュメンタリー・ジャパンを退社。ETV2001「シリーズ 戦争をどう裁くか」での改変体験に続き、2001年4月26日、NHKBS1ウィークエンドスペシャル「希望の法廷~地域で向き合う少年犯罪~」(坂上香企画・ディレクター兼編集)が放送2日前に放送延期(アメリカの少年たちの社会復帰がテーマ。被取材者の許可を得た後の顔出し・実名報道だったが、なぜか、番組基準にそぐわない、人権上問題があるとの理由)になったことも影響。改変要求を呑み、5分の短縮を行なうことに。この過程で、NHK、NEP21への疑問、黙するドキュメンタリー・ジャパンへの疑問が募り、結論。
 
 坂上ディレクターは、月刊「創」2002年3月号ほか、媒体に告発手記を寄せ、そこでこう書いている。

 「同業者からは共感やエールよりも『とうとう地雷を踏んじゃったね』という嘲笑まじりの『お悔やみ』という諦めの反応の方が圧倒的に多い……日本のメディアにはタブーが溢れている。実際、私はいくつもの地雷を踏んだのだろう。しかし、地雷を撤去しようとするのでなく、地雷を放置して踏まないように恐る恐る避けて歩くメディアの姿は、なんとも哀しくないか」

【2004年】
3月24日
 東京地方裁判所で、「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(以下「バウネット」)ほかを原告、株式会社ドキュメンタリージャパン(以下「DJ」)、日本放送協会(以下「NHK」)及び株式会社NHKエンタープライズ21(以下「NEP21」)を被告とする損害賠償請求事件(平成13年(ワ)第15454号損害賠償請求事件)の判決出る。

 判決内容(東京地裁・小野剛裁判長)は、「番組内容は、当初の企画と相当乖離(かいり)しており、取材される側の信頼を侵害した」と認定、しかし、自民党や右翼の圧力により、番組を改変したNHKに責任はなく、改変は「編集の自由」の範囲内とした。その上で判決は、最終段階で制作から降りたプロダクション、ドキュメンタリー・ジャパン=DJ社に対し、「取材に協力したVAWW―NETジャパンに国際法廷の忠実なドキュメンタリーが作られるかのような期待を抱かせてしまった」として、「原告に百万円を支払え」と命じるものだった。これはジャーナリズムの現場を知らぬばかりか、事実認定、解釈、判断を見誤った重大な瑕疵を含む結論と言えまいか。表現・報道の自由に対しても重大な足枷を課す内容でもあろう。

 対して全日本番組制作者連盟・ATPは以下のような見解を公表した(一部)。

 「とりわけ、本地裁判決においては、放送番組の編集、放送に関して直接的な権限を持たない番組製作会社に対して、放送番組の内容に関して取材対象者が一定の期待を抱くような取材活動を行わないようにする注意義務があるとしていることや、放送番組に関する取材活動は、番組製作会社が制作委託契約に基づき行なうものであり、放送事業者側の関与は認められず、放送事業者側には取材活動に関する責任がないとしていることなど、番組製作会社は制作委託者である放送事業者との綿密な打合せなしに番組製作のための取材活動や編集作業は行い得ないという、当業界における一般的常識や実態に照らし合わせても、相当程度疑問と思われる判断や認定がされています」
http://www.atp.or.jp/news/20041215.html

 この判決の意味は大きい。

【2005年】
1月13日
 NHKの番組放送(2001年1月30日)前に自民党の有力政治家がNHK幹部と面談し、番組内容がその後、大幅に改変された問題を内部告発していたNHKの番組制作局教育番組センターの長井暁チーフプロデューサーが東京都内で記者会見。

 「放送2日前(2001年1月28日)には通常の編集作業を終え、番組はほぼ完成していたが、1月下旬、中川昭一・現経産相らが当事のNHK国会担当の担当局長を呼び出し、番組の放送中止を求めた。NHKの予算審議前だったこともあり、担当局長は放送前日(29日)の午後、NHK放送総局長を伴って、再度、中川氏や安倍晋三・現自民党幹事長代理を訪ね、番組について説明。放送総局長は、番組内容を変更するので、放送させて欲しいと述べた」

 29日午後6時過ぎ、ほぼ完成した番組をNHK局内で松尾武元放送総局長から「内容を変更するので見せて欲しい」と言われ、長井氏も同席し、国会対策担当の野島直樹局長(現理事)と伊東律子番組制作局長と異例の局長試写。その後、「天皇に責任がある」とした民衆法廷結論部分などのカットや法廷に批判的な識者のコメントの追加などが長井氏に指示された。

 手直しは野島直樹局長がリードした。これで、44分の番組が43分になった。続いて、放送当日の30日に、松尾放送総局長が「責任は自分が取る」として、元慰安婦の証言部分など3分間のカットを指示、結局、通常44分の番組は、40分となった。この2度目の改変に対して、現場は全員、反対した。改変は現場の議論とはまったく異なる内容で、現場の意向を無視していたという。

 長井氏は「海老沢会長はすべて了承していた。信頼すべき上司によれば、担当局長が逐一、会長に報告していた。会長宛の報告書も存在している。その上で、政治介入を許した海老沢会長や役員、幹部の責任は重大。海老沢会長になってから政治介入は恒常化している。海老沢会長は旧竹下派の力をバックに会長に上りつめた人。政治家に気を使うがそれがNHKが議員につけこまれることになったのではないか」と述べている。

 これに関連して、長井氏は2004年12月9日、コンプライアンス通報制度に内部告発したが1カ月以上たっても聞き取り調査さえ行なわれていない、という。また、野島直樹局長はヒアリングを拒否していることも明らかに。

 自民党中川経産相と安倍幹事長代理は、「偏った内容だ。公正な番組にするように」などと指摘したことは認めているが、安倍氏は「NHK側を呼びつけてはいないし、番組の中止も求めていない」と新聞各紙にコメント。

 NHK広報局は「これにより、番組の公正さ・公平さが損なわれたということはない。編集責任者が自主的な判断に基づいて編集・放送した。コンプライアンス推進室は通常の手続きに従って調査をしている。途中経過は通報者に知らせている」とコメント。

1月14日
 NHKは中川昭一氏とは放送前に面会したことはない(2月2日が最初、8日、9日)、との関根昭義放送総局長の見解を発表した。中川、安倍氏とも告発内容を否定した。安倍氏とは1月29日の面会した模様(朝日新聞1月14日)。しかし、朝日新聞は、2005年1月10日には、中川氏は朝日新聞に対し、放送前日に面会した事実を認めた上で「NHK側があれこれ直すと説明し、それでもやると言うから『ダメだと言った』と答えた」などの反論を掲載。

1月15日
 NHKは朝日新聞本社に抗議。朝日新聞は「取材を重ねてきた結果だ」と回答。

 中川経産相は14日、プラハで、野党が関係者の国会参考人招致を要求していることについて、場合によっては応じる考えを示唆。

1月16日
 NHKの労組、日本放送労働組合が14日、内部告発者の長井氏を「言論・放送の自由を守るという立場から支援する」との声明を発表(朝日新聞1月16日)。

 テレビ朝日「サンデープロジェクト」に安倍幹事長代理が出演。「なぜ、この時期に。朝日新聞の捏造だ。民衆法廷の検事役は北朝鮮工作員であることが分っている。公平公正にやってくださいと言っただけ」などと弁明した。田原総一郎氏は安倍氏を弁護しつつ、問題はNHKが放送直前に2度改変した。その内容ではないか、と主張した。

1月17日
 自民党安倍晋三幹事長代理、16日、フジテレビとテレビ朝日の番組に出演し、朝日新聞の報道について、悪意ある捏造だ、と語った。安倍氏は放送前日にNHK幹部とあったことは認めつつ、「私が呼びつけたのではなく、予算と事業計画の説明に来た。その後、番組について説明があり、『公平公正にお願いします』と申し上げた」と述べ、また、NHKのプロデューサーに対しても「全部、伝聞で言っている」と批判した。「放送後4年もたっているのに、なぜ、今頃、取上げられるのか。北朝鮮に厳しい私と中川経済産業相を狙い撃ちしており、何か意図を感じざるをえない」とも話した。

 対して、朝日新聞は、「安倍氏やNHK幹部を含む関係者への取材を重ねた上で報道しており、内容には自信を持っている。『捏造』との批判は見過ごすことができない」と17日朝刊で書いている。
by polimediauk | 2005-01-22 06:16 | 日本関連

NHK問題-2

ますます問題は大きくなってゆくようだ

 若干前になるが、ネット新聞JAN JANがこれまでの経緯をまとめている。

 「天皇が有罪判決を受ける映像をNHKならずともプライムタイムに全国ネットで放送できる放送局が果たしてあるだろうか。つまり、この問題の本質は、日本のジャーナリズムのタブーにNHKが踏み込んだということにほかならない」とする指摘に、はっとさせられる。

NHK大改革の潮目になるか 政治圧力改変問題 2005/01/17

 NHKが揺れている。度重なる不祥事、受信料不払いの増大、NHK会長批判。そして、泣きっ面に蜂。すでに、解決済みの問題の再燃である。突如、焦点化され、日増しにフェーズが格上げ状態になっている「政治圧力による番組改変」騒動、いや、事件である。

 問題の番組は、2001年1月30日放送の「NHK・ETV2001・シリーズ『戦争をどう裁くか』第2夜『問われる戦時性暴力』(22時~22時40分)である。

 4回シリーズの中のシリーズ2回目が、日本軍の戦時の暴力、天皇の戦争責任を「民衆法廷」という模擬裁判で裁くという、「VAWW-NET Japan=バウネット・ジャパン」(「戦争と女性への暴力」ネットワーク:松井やより代表)を核とする企画(九段会館で開催された)を中心に構成されたことから、想像を超えた反響が巻き起こり、結果として、当初の番組は大きく改変され、このことがNHKの報道姿勢の是非、報道の自由の問題、表現の自由の問題にまで発展、国会でも問題にもなった。2001年のことである。

 この国はいまだに過去の戦争責任を総括していないと考え、日本の軍隊を「慰安婦」制度、女性の人権、性暴力の観点から非妥協的に問題提起をするバウネット・ジャパン、弱者の視点から良質なドキュメンタリーを次々とテレビ界に送り出すドキュメンタリー・ジャパンという硬派なプロダクション、「人道の罪」「国際法廷」という新たな視点に、人間の持つ可能性を感じとり、それを人々に伝えることに情熱を燃やしたNHK教養番組部の制作者たち。これにNHKの関連会社エンタープライズ21が加わり、NHKプレゼンツの優れた作品が作られるはずだった。

 にわかに暗雲が垂れ込めはじめたのは2000年12月9日からである。九段会館で始まった『女性国際戦犯法廷』のニュースが流れたのだ。さっそく右翼団体から抗議が始まり、ETV2001でも取り上げられることが分かるや一層、NHKに対する抗議は激しさを増す。なぜか。『女性国際戦犯法廷』では、日本の軍隊の幹部、昭和天皇、日本政府が被告とされていた。韓国・北朝鮮、中国、東チモールの”慰安婦“の被害者証言、元日本軍兵士の証言なども予定されていた。

 事前の番組宣伝も手伝って、永田町でも大きな話題となり、批判的な声は当然、NHK記者等を通じて、NHKの幹部にも伝わっただろう。当事、関係者の書いたものやメディアの報道などを見ると、2001年、放送日が近づくに連れて、NHKの上層部の方で、“心配”が肥大化し、口出しが始まっている。

 番組制作者たちは、素人ではない。当然ながら、このテーマが極めてセンシティブなものであり、右翼の対応についても、報道の自由の裏側に担保されている公平・公正についても自覚的だったろう。しかしながら、現場の認識をはるかに超えた“危機感”がNHK幹部には醸成されていたのだった。しかも、1月末といえば、NHKにとっては最重要課題である予算審議が控えていた。こうして、放送直前には、NHK幹部のなりふりかまわない、ヒステリックな対応がなされたようである。

 思うのだが、「天皇が有罪判決を受ける」映像をNHKならずともプライムタイムに全国ネットで放送できる放送局が果たしてあるだろうか。つまり、この問題の本質は、日本のジャーナリズムのタブーにNHKが踏み込んだということにほかならず、換言すれば、この国のジャーナリズムの質こそが問われているとも言える。2人の政治家の露出は、その裏側に無数のサイレントマジョリテイがついていると見るべきで、解決はある意味、容易ではないだろう。

 杞憂は、“命がけ”で内部告発を行なった長井暁CPの今後である。「地雷をふんじゃった」と嘲笑されはしまいか。今の職場を追われ、関連会社に飛ばされるのではないか、ほとぼりがさめた頃に。海老沢会長にNOを出した日放労が非組合員である長井氏の防衛を宣言したのがせめてもの救いだが。

 知り合いのドキュメンタリー・ジャパンの女性ディレクター、坂上香さんは、実は、このETV2001・シリーズ『戦争をどう裁くか』の企画書を書き、シリーズ第3回目を担当したが、番組改変の過程で、長年、活躍したDJを2001年7月に突然、退社してしまった。日本の学校で辛酸をなめ、アメリカに渡って映像を学び、DJの橋本佳子代表取締役に手紙を書いて採用された経緯を持つ優秀なディレクターだった。これは非常に不幸な出来事だったと思っている。DJもまた下請け構造の中で経営的に対応が難しく、1社員の想いに十分、応えられなかったのだと想像する。

 現場から犠牲者はもう出して欲しくない。『踊る大捜査線』の警視庁刑事部 捜査一課管理官、室井慎次のような現場を大事にする幹部はNHKにはいないのか?


(年表は次のブログで)
by polimediauk | 2005-01-22 06:12 | 日本関連

メディア関係者の緊急記者会見

 「市民記者がレポートするインターネット新聞」というJAN JANというサイトで、NHK問題に関する会見の様子を伝えている。

 http://www.janjan.jp/media/0501/0501192730/1.php

 NHKへの政治介入問題などについて、18日午後、参議院議員会館第1会議室(東京永田町)にて、メディア関係者らが「NHK問題に関する緊急記者会見とアピール」を開き、そのコメントを拾ったものだった。

 こうした意見だけ読んでも、様々なポイントがあって、頭の中で整理するのが難しいが、イギリスで言うとBBCと時の政権の関係に似ているな、と思う。

 実は、日本の外側にいると、何故今までこうしたこと、つまり時の政権とNHKの対立が表に出なかったか?と不思議でさえある。また、大手新聞に政府が干渉して大問題に・・・という話が何故でないのだろう?そういう、時の権力との対立が、日本でないはずがない。

 心に残ったのが、最後の二人のコメントで、まずDAYS JAPAN編集長・広川隆一さんの「僕がバグダードに行った時には、現地報道の中では『こんなことが行われているんだ』ということがあって、それが当然世界でも伝わっていると思ったら、日本に帰ってきて、そういうことが一切伝わらない状況がありました。それを報道しようとするジャーナリストは日本にも存在する。だが、その人の意向のままに表現できるような場所がない、メディアがない」

 このとき、「表現できるような場所がない」というのを、広川さんはもしかしてメディアの自己規制とか、そういうことを言っているのかもしれないが、イギリスにいて思うのは、ただ単に想像力の欠如というか、ニーズが十分に開拓されていない、という部分もあるのではないだろうか。

 日本から出てみると、いや、日本でなくても他の国でもいいのだが、ある国から外にでて生きてみると、その国ではまったく選択肢にあがらないようなことが、他の国では重要な問題として扱われていることがあるからだ。

 も1つ残ったのが、最後のフリーライター・岩本太郎さんのコメントで、「市民は今、自分たちが抱えている問題を、マスコミがなかなか取り上げてくれないという意識が強い」。情報の受け手の、いらいら感が伝わってくる。(ただ、「市民」というのが、どうも日本語としてピンと来ないのだが・・・。他にいいようがないのだとは思うが。)

   以下のコメントは、JAN JAN記事からの抜粋である。

◇『放送レポート』編集長・岩崎貞明さん――

 「政治家が個別の番組について、その放送局の幹部に何らかの意見を言うこと自体、非常に問題だと思います。これは、呼びつけたか、もしくは出向いたかということとは一切関係ないと敢えて言いたいと思います」

 「問題の番組については、ずたずたに編集された跡がはっきり分るような、このままオンエアにかけるのはしんどいなと思うような出来の番組だったと言えます。民放でこういうことをやったら、間違いなく放送事故と言われ、場合によっては、放送免許に関わるような事態です。こういうことを『通常よくある』なんていうような説明をしたNHKって、いったいどうしてきていると思わざるをえません。また、今回の一連の事態について、NHKの報道ははっきり偏向していると言っていいのではないでしょうか。自民党の議員側の言い分が非常に大きく取り上げられて、長井さんの記者会見ではNHKはカメラも出していませんでした。自分の問題でも客観的に伝える義務があるのではないでしょうか」

◇映像ジャーナリスト・坂上香さんは、ドキュメンタリー・ジャパン(DJ)の元ディレクターで、ETV2001・シリーズ『戦争をどう裁くか』の第3回目を担当した。番組改変問題を原因に、DJを2001年7月に退社した。坂上さんは4年前の経験についてこう語った――

 「今新聞報道で問題になっているのは28日以降ですが、実はもっと前から異常な事態が発生していました。決定的なのは、19日に部長試写というものが行われてから、どんどん番組の軸であった部分が削られていった。しかも、現場が納得するという方向ではなくて、一方的な業務命令という言葉でカットされていった。しかし、この数日の報道の流れでは、安倍さんやNHKの発言によって、番組の内容はどうだったのかという感じで変にねじれ現象が起こってきていると思います」

◇『週刊金曜日』編集長・北村肇さん――

 「非常に大きな問題があるにもかかわらず、ここのところでは、『安倍さんが呼びつけたというのは事実であるかどうか』というようなことに問題が収斂されていて、またしても重要な問題がすりかえられたと、非常にヤバイ状況だと思います。また、メディア全体としてこれだけ重大な問題であるにもかかわらず、そのすり替えのような動きに乗ってしまっています」

◇月刊『創』編集長・篠田博之さんは、メディアの自主規制を政治介入の「現代型」表現だと呼ぶ――

 「今回の問題は『放送レポート』や『週刊金曜日』などが2、3年前にかなり取り上げていた話です。それが今回初めて発見されたかのように大騒動になっているのに驚いています。この間の報道を見て気になるのは、『政治介入』という時に、すごく古典的な、1960年代のイメージであまりにも固められている印象があります。今回は、明らかにNHKが自主規制をしていたけれども、外部の介入と圧力が自主規制という形に変わってきているというのは、ここ20年のメディアの特徴です。昔の『政治家がやめろと言って、メディアが抵抗する』というような古典的な構図ではなく、自主規制という現代型です。そこのところを踏まえて議論しないと、(両議員が)『やめろ』と言ったか言わなかったかという消耗的な言い争いになっているような気がします」

◇元立命館大学教授・松田浩さんは、「政治介入を許す法制度」、そして新聞社、テレビ局などの「権力に弱い企業文化」を問題の根源だと見ている――

 「NHKは権力に協力することによって組織を拡大し、権益を獲得する。例えばハイビジョンとか、デジタル化とか、新しい財源を手にする。一種の権力との共犯関係ができていると思います」

◇ビデオジャーナリスト・綿井健陽氏――

 「政治家にとっては、メディアは取り込む対象になっている。メディアも、取り込まれることについて、はね返そうとしない。メディアと政治家はどんどん近づいてきて、いわば馴れ合いの中で作られてきた構造の問題だと思います」

◇ジャーナリスト・原寿雄さん――

 「NHKはもう完全に政治部支配で、エンタテイメントの番組の製作現場にも政治部の人が来て大きな声で言うと、それに逆らえない。なぜそうなったかというと、政治部が一番大事な国会対策、政府対策を一身に引き受けてやっているから、政治部のOBを含めて、その頂点が海老沢会長ということになる。ですから、NHKの経営政策の中心は、政治工作をいかに完成させるかということで、それはほぼ完成に近い状況ができていた。外に対して『うちの中では、政治部が完全にどの職場の番組にも干渉できる体制になっている』とする。政治権力から職場の末端まで、一本の線がずっと完結する、ほぼそれに近い状況ができつつあった。この中での今回の事件だということを考えると、非常に意味が深い」

◇立正大学教員・桂敬一さん――

 「報道に対する権力の介入はけしからんということで、メディアは一致しないというところに非常に大きな問題があります。今は報道した朝日とNHKが敵対する関係になっています。そして、そのNHKを支えるものとして読売と産経が朝日叩きに躍起になっています。私は、『朝日』だって決して一枚岩なんてとても思いません。社会部がこういう叩かれている状況の中で、どうやって共にやっていけるかは大変な問題になっていくと思います」

◇『DAYS JAPAN』編集長・広川隆一さん――

 「僕がバグダードに行った時には、現地報道の中では『こんなことが行われているんだ』ということがあって、それが当然世界でも伝わっていると思ったら、日本に帰ってきて、そういうことが一切伝わらない状況がありました。それを報道しようとするジャーナリストは日本にも存在する。だが、その人の意向のままに表現できるような場所がない、メディアがない」


◇フリーライター・岩本太郎さん――

 「市民は今、自分たちが抱えている問題を、マスコミがなかなか取り上げてくれないという意識が強いです。日本で初めてNPOが放送免許を取った京都コミュニティ放送では、市民がボランティアで番組を作るだけじゃなくて、市民がスポンサーになるという考え方がある。例えば、週1回の3分番組が1ヶ月5000円で。受信料を発信料にするわけです。つまり市民が公共放送を支えるんであれば、市民はそこで発信する権利がある。例えば、受信料の中の何%をそういうメディアの育成に投入する。もちろん、放送法などの問題でいろいろ難しいと思いますけど、長期的にみれば、そういうことも検討して、市民とメディアとの関係性を再構築していかないと、今回のような問題があった時には、市民を味方につけていくことができないんですね」


by polimediauk | 2005-01-20 18:39 | 日本関連
もう、「上から」は通用しない

 日本新聞協会が出している月刊誌「新聞研究」の1月号が、「ネットと新聞と」いう特集をしている。

 ネット上で内容が公開されていないので、若干抜粋の上ここで紹介してみたい。

 現在の日本の新聞業界の懸念は、若者の新聞離れとインターネットの新聞購読数への影響だ。

 日本経済新聞社、日経デジタルコア事務局代表部幹事の坪田知己さんという方が「柔軟な発想でビジネス再構築を」という題名の記事を特集の中で書いている。

 坪田さんは慶応大学でも教えており、自分自身もウエブログを読んだり(書いたりも?)しているようだ。理論だけでなく、実体験からにじみ出た原稿は、やっぱりそうか、とうなずける部分が多いものだった。

 「大学生と日常的に接していて、驚くのは、新聞の購読者数が非常に少ないことだ。彼らは、『ニュースはネットで知るし、必要な情報はネットやテレビ、友人とのメール交換などで充足している』という。新聞を購読しない理由が『お金がもったいない』が大多数だ。学生の支出として、携帯電話は必須で、次にインターネットの利用料を払うと、新聞への支出の余裕はないというのが本音だ。」

 沖縄出身のバンド「モンゴル800」が口コミやメール交換で人気が出たという例を挙げ、「・・・専門化・多様化した情報ニーズに対して、新聞は応えられていない。取材源が行政、警察、企業、有名人なので、『型にはまった』情報しか伝えられていない」。

 どきっとするような指摘だ。確かに、行政から出た情報を追う傾向があるからだ。

 ブログなどが人気になっている例を挙げ、「つまり、社会の構成が1つの権威の下に不特定多数がぶら下がるピラミッド構造から、顔が見える関係、メールをやりとりする関係の特定中数の複合という関係に変わりつつあるのではないか」。

 「情報伝達の構造も、報道機関の記者が取材して、紋切り型の記事を書いて伝えることよろも、現場の人々の肉声や、書き込みを見るほうが真実味があるし、体温が感じられる」。

 「・・・残念なのは、ネットに親しんでいる人々から見て、新聞社は大変時代遅れに見えていることだ。リンクについての制限や、見出しについて著作権を主張して訴訟を起こすとかは、ユーザー側から見て『ネットとの付き合い方に慣れていない』という印象を与えている」。

 これも、うなずける発言だ。

 結論として、「『未来永劫、新聞社が守るべきものは何か』と問われたら、私は、『ジャーナリズム』という以外にない」。

 「インターネットがブロードバンド化して、ネット上は映像の時代になるという人がいる。私はそうは思わない。映像は情緒的だが、文字は論理的で、冷静に物事を考えるには、文字は絶対的に有利だ」。

 「・・文字系ジャーナリズムという大きな資産を持っている新聞社が、それを生かして100年後にも生き残る道を考えるべき時期に来ている」。

 坪田さんは、「文字は残る」としているが、「紙jは残る、とは言っていない。ネット上で、あるいは電子の紙(?)などで読むことを想定しているのだろうか?

 通常、日本の新聞関係者は「紙は残る」といいたがる。それを言わなかった坪田さん。英ガーディアン紙の編集長が、「ネットで勝負」といっていたのを思い出させる。
 

 世界の中で、ネットを使った新聞で一番進んでいるのはどこだろう?

 それは、(知る人ぞ知る)オーマイニュースに代表される韓国だと言われている。

 (次回、「新聞研究」1月号のネットと新聞特集から、韓国の記事を抜粋紹介します。)


by polimediauk | 2005-01-10 08:10 | 日本関連