小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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カテゴリ:日本関連( 107 )


 前回のNHK問題の判決結果に対し、いろいろコメントを頂いた。それぞれに重いコメントで、考えさせられた。

 再度裁判所の判決部分を読んでみた。

 法律に詳しい人・専門家から見たら又違うのだろうが、毎日に出ていた判決部分を読んだ限りでは、この一連の事件で、とかげの尻尾きりのような構図が浮かぶ。つまり、トップは政治家たちだ。

 何故トップは政治家だ、政治家にまず責任があるのではないか?と考えるのかを説明するのは難しい。

 実際に手を下したのはNHKの人で、これに関する裁判・判決があったのはこれはこれとした場合でも、「番組作りは公平・中立であるようにとの発言」をした人・政治家の責任はどうなるのか?という不思議感は消えない。

 繰り返しになるが、《説明義務違反と不法行為》の判決の箇所で、「番組制作者や取材者は特段の事情がある時に限り、内容や変更を取材対象者に説明する義務を負う」となって、「特段の事情」と但し書きがあるにせよ、これも変だなあ・・・という思いがする。

 訴えた側に反対の立場あるいは支持の立場をとっているわけでなく、前代未聞の判決に驚いた、といったところだ。

 あまりにも多くのメディア上の問題が含まれている件なので(言論・報道・表現の自由、編集権、取材された側の権利+タブーとされているトピックをどう扱うか)、すぐに答えが出ない。

 いずれにせよ、鍵つきコメントを寄せてくださった方が「もう一度再放送」と書かれていたが、今後の訴訟の行方は別としても、視聴率を払っている人(+払っていない人)のためにも+議論を続けるためにも、(1)今一度再放送するか、(2)いつでも見て、考えたり議論できるようにウエブ上、あるいはDVDを入手できるようにするか、(3)上映会を頻繁に開く、などの機会があっても良いように思った。

 この番組が取り上げたトピック(慰安婦、戦後の責任、天皇など)は、もちろん日本人であれば(そして日本のことを知っている多くの人が)知っているように、タブーというか、論争を呼ぶ、センシティブな問題で、なかなか自由には議論・番組作りがしづらい。もっと自由に議論できるようにならないか、と思う。

 英国でこの裁判がどう報道されたのか?ざっと見たところで私が見つけたのはBBCだけだった。

 クリス・ホッジ記者のレポート(1月29日付、電子版)、第3段落目に、「現在の首相を含めた政府高官の介入で、NHKが変更を加えた」とある。5段落目に、日本では「昭和天皇に関するどんな批判も論争を呼ぶ」。さらに、「放送前に安部現首相がNHKに対し、内容の変更を求めた。それは、番組内容が偏向していたと安部氏が思ったからだ」。「安部氏は番組に関して不満を述べたのは認めているが、NHKに圧力をかけていないと主張してきた」。

 レポートは淡々と書かれてあるが、首相の関与が疑われていた事件、という捉え方だ。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/asia-pacific/6310291.stm

(追記)

 日刊ベリタに無料記事でこの件の分析が出ている。ご関心のある方は。

http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200702011913264

 これを読むと、日本ではNHKに対する反感が相当強いことが分かる。政治家にも責任がある、と上に書いたが、その上は?と考えると、国民(一部かもしれない)が見えるように思う。政治家は一定の支持者の支援を減らしたくないから、「中立に」という話をNHK制作者側にするのだろう。メディアの問題からは離れるが、オリジナルの番組をそのままでは受け入れられない存在がまだまだ強い、ということのなのか、と。この点の方が気になる。
by polimediauk | 2007-02-01 08:43 | 日本関連

 NHKの番組改編問題で、東京高裁が29日判決を出したことを知った。ネットで記事を読んだだけだが、全体を理解するには再度読み直しが必要だ。

 それでも、最初に疑問に思ったのは、NHKバッシングなのかな、と。政治家の責任はどうなるのだろう?「番組作りは公平・中立にして欲しい」というリクエストを出した政治家は?政府高官からそう言われたら、かなりプレッシャーを感じるのは普通だろう。安部首相の進退にも関係するのかどうか知りたくてヤフーなどを見ていたが、どうもそういう議論にはなっていないようだ。

 実際の番組を見ていないことをお断りしておきたい。

 BBCと英政府の関わりと重ね合わせてしまう事件だが、おそらく、これは100%仮定の話だが、もしこういうことが英国で起きていたら、番組の編集内容に関して政府の高官がBBCの番組編集者と会っていたこと自体が問題になるのでは、と思ったりした。つまり、BBCの編集権に介入しようとするとは何事か、と。メディアの編集権、表現の自由が金科玉条のごとく扱われる(必ずしもいいとは言えないのだが)雰囲気が強いので、時の政府に都合が悪い・良いかを考えてメディア側が編集を変更してはいけない、という暗黙の了解があると思う。もちろん日本もそうだとは思うが。

 もう1つ、表現の自由に関する懸念も気になる。一般的な話だが、制作者側の表現の自由、編集権の自由の点だ。

 最後に(というほどでもないが)、「真実」は何だったのだろう?と多くの人が思うだろう。NHK側が「政治家に言われて、故意にセンシティブな部分を取った」「あえてそのことを取材された側に言わなかった」などなど、本当のことは誰が知っているのだろう。いろいろ、タブーのトピックが多いようだ。タブーがあることは日本だけではなく、欧州でも例えばホロコーストの否定など、そういうトピックはあるが。

 日本にいらっしゃる方のほうが詳しくご存知とは思うが、BBCと英政府の関係にどうしても重なって見える事件だ。

番組改編訴訟、NHKの賠償責任も認める…東京高裁
 NHK教育テレビが放送した戦争特集番組を巡り、制作に協力した民間団体などが「放送直前、当初の説明とは違う趣旨に内容を変更された」として、NHKと下請け制作会社2社に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が29日、東京高裁であった。

 南敏文裁判長は、「NHKは国会議員などの『番組作りは公平・中立であるように』との発言を必要以上に重く受け止め、その意図を忖度(そんたく)し、当たり障りのないように番組を改編した」と認定し、民間団体側の期待と信頼を侵害したとして、NHKと制作会社2社に計200万円の賠償を命じる判決を言い渡した。NHKは即日上告した。

 一方、この番組に関して朝日新聞が2005年1月、「政治介入で内容が改変された」などと報道したことから、控訴審では政治的圧力の有無が争点となったが、判決は「(政治家が)番組に関して具体的な話や示唆をしたとまでは認められない」と介入を否定した。

 1審・東京地裁はNHKの賠償責任を認めず、下請け会社1社にだけ100万円の賠償を命じていた。

 問題となったのは、NHKが01年1月に放送した番組「問われる戦時性暴力」。判決によると、NHKの下請け会社は、民間団体「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(バウネット)が開催した「女性国際戦犯法廷」を取材する際、「法廷の様子をありのまま伝える番組になる」と説明して協力を受けた。

 しかしNHKは放送前に編集作業を繰り返し、「法廷」が国や昭和天皇を「有罪」とした個所などを省いて放送した。

 判決は、放送事業者の「編集の自由」について、「取材対象者から不当に制限されてはならない」とする一方、ドキュメンタリー番組や教養番組については「取材経過などから一定の制約を受ける場合もある」と指摘。その上で、「NHKは次々と番組を改編し、バウネットの期待とかけ離れた番組となったのに改編内容の説明も怠った」と、NHK側の責任を認めた。(2007年1月29日21時52分 読売新聞)


番組改編 NHKに2百万円賠償命令 「政治家発言」認定
1月30日10時20分配信 毎日新聞

 戦時下の性暴力に関するNHKの番組を巡り、取材協力した市民団体が「政治的圧力で事前説明と異なる内容で放映された」として、番組を改変(判決では改編)したNHKと制作会社2社に4000万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が29日、東京高裁であった。南敏文裁判長は、NHK幹部が放映前に安倍晋三首相(当時は官房副長官)らに面談し「相手の発言を必要以上に重く受け止め、その意図をそんたくして改編した」と初めて認定し、NHKなど3社に200万円の支払いを命じた。NHKは即日上告した。

 1審・東京地裁判決(04年3月)は、取材を担当した制作会社ドキュメンタリー・ジャパンのみに100万円の賠償を命じ、NHKとNHKエンタープライズの責任は認めていなかった。

 問題とされたのは01年1月30日に教育テレビで放映された「ETV2001 問われる戦時性暴力」。「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(バウネット)が00年12月に開いた「女性国際戦犯法廷」を取り上げたが、「ありのまま伝える」との事前説明と異なり旧日本軍の性暴力被害者の証言や判決がカットされたとして同ネットが訴えた。

 判決はまず、放送事業者の編集権は憲法上尊重されるとしながら、ニュース番組と異なり本件のようなドキュメンタリー番組などでは「特段の事情」がある場合、編集権より取材対象者の番組への期待と信頼が法的に保護されると1審と同様の判断を示した。今回は取材の経緯から「特段の事情がある」とし、その上で、番組改変は「期待と信頼を侵害した3社の共同不法行為」と認定。内容変更を原告側に伝えなかったことも「説明義務違反」と指摘した。

 改変の理由について判決は「NHK予算の国会審議に影響を与えないように、説明のため松尾武放送総局長(当時)らが安倍官房副長官(同)らと接触した際『公正中立な立場で報道すべきだ』と指摘された。発言を必要以上に重く受け止め、当たり障りのない番組にすることを考え、現場の方針を離れて編集された」と認定した。一方で「政治家が番組に関して具体的な話や示唆をしたとまでは認められない」と直接的な圧力は否定した。

 NHKは「編集の自由」を主張したが、判決は「改編は自由の乱用」と退けた。【高倉友彰】

 ▽NHKの話 判決は不当で極めて遺憾。直ちに上告手続きを取る。取材相手に期待権が生じるとしたが、番組編集の自由を極度に制約する。国会議員らの意図をそんたくして編集したと一方的に断じているが、公正な立場で編集した。
 ▽NHKエンタープライズの話 番組取材、編集、表現の自由を制約する判決で、到底認めることはできない。直ちに上告の手続きを取る。
 ▽ドキュメンタリー・ジャパンの話 判決は表現の自由の根幹を成す取材の自由を脅かすもので到底受け入れがたい。

 ■解説 裁判所が「期待権侵害と説明義務違反の両方認める」
 東京高裁判決は、(1)NHKは市民団体(バウネット)が抱いた番組内容に対する期待権を侵害した(2)NHKは、事前説明とは異なる番組となったにもかかわらず、その変更について放送前に説明しなかった--の2点において不法行為責任を認めた。事前に説明を受けていれば、市民団体側は、取材を受けないなどの判断ができたり、問題を他の報道機関に明かすことなどができたが、その機会を奪ったというわけだ。弁護団によると、期待権の侵害と説明義務違反の両方を裁判所が認めたのは初めてという。
 期待権について判決は「ニュース番組とは異なり、ドキュメンタリー番組、または教養番組では取材される者の重大関心事」だとして、報道とは区別する姿勢を示した。だが、判決は違いの理由を示さず、期待権が発生する条件についても「特段の事情がある場合」としただけで、具体的な基準を示さなかった。元共同通信編集主幹でジャーナリストの原寿雄さんは「説明責任を果たすべき立場にある政治家や官僚など公人に対する取材活動にもこの理屈が認められると、真実を追究するための取材に支障が出る恐れがある」と指摘する。報道機関への萎縮(いしゅく)効果も懸念される。
 取材の結果、当初の狙いとは異なる番組や記事になることはある。NHKによる期待権の侵害や説明義務違反は、本来、ジャーナリズムの倫理として論議する問題だ。【臺宏士】
 ■NHK番組改変訴訟の東京高裁判決の要旨は次の通り。
 《期待を抱く特段の事情》
 放送事業者の編集の自由は憲法上も尊重されるべき権利で、取材対象者が番組に何らかの期待を抱いたとしても、番組の編集、制作が不当に制限されてはならない。他方、どう編集されるかは、取材対象者が取材に応じるかどうかの意思決定の要因となり得る。この両面を考えると、取材者の言動により取材対象者がそのような期待を抱くのもやむを得ない特段の事情が認められるときは、取材対象者の番組への期待と信頼が法的に保護されるべきである。
 被告の説明や取材、原告の協力にかんがみれば、番組は女性法廷の判決までの過程を、被害者の証言を含め客観的に概観できるドキュメンタリーか、それに準じる内容になるとの期待と信頼を、原告が抱くのもやむを得ない特段の事情が認められる。

 《期待、信頼の侵害と理由》
 放送された番組はドキュメンタリーとはかい離し、原告らの期待と信頼を侵害するというべきである。NHKは01年1月26日、普段立ち会いが予定されていない松尾武放送総局長、国会担当の野島直樹総合企画室担当局長が立ち会って試写を行い1回目の修正がされ、修正版について現場を外して2人と伊東律子番組制作局長、吉岡民夫教養番組部部長のみで協議し、その指示でほぼ完成した番組になった。さらに放送当日に松尾総局長から旧日本軍兵士と元慰安婦女性の証言部分の削除が指示され、最終的に番組を完成しており、本件番組は制作に携わる者の制作方針を離れて編集されていったことが認められる。
 その理由を検討すると、番組放送前に右翼団体から抗議されNHKが敏感になっていた折に、予算の国会承認を得るため各方面へ説明する時期と重なり、番組が予算編成に影響を与えないようにしたいとの思惑から、説明のため松尾総局長と野島局長が国会議員と接触した際、相手から番組作りは公平・中立であるようにとの発言がなされた。2人が相手の発言を必要以上に重く受け止め、その意図をそんたくして当たり障りのない番組にすることを考えて試写に臨み、その結果、改編が行われたと認められる。
 原告らは政治家が番組に対し直接指示をし介入したと主張するが、面談の際に一般論として述べた以上に政治家が番組に関し具体的な話や示唆をしたことまでは認めるに足りない。

 《説明義務違反と不法行為》
 番組制作者や取材者は特段の事情がある時に限り、内容や変更を取材対象者に説明する義務を負う。本件で原告は番組内容に期待と信頼を生じ、特段の事情がある。被告が説明義務を果たさなかった結果、原告は番組からの離脱や善処申し入れの手段を取れなくなり、法的利益を侵害された。
 NHKは番組改編を実際に決定して行い、放送したことから、原告の期待と信頼を侵害した不法行為責任を負い、説明義務を怠った責任も負う。NHKは制作担当者の方針を離れてまで国会議員の意向をそんたくして改編し、責任が重大であることは明らかである。

by polimediauk | 2007-01-30 20:04 | 日本関連

 ロンドンテロのことを考えていたら、イラク・バグダッドでは、爆弾を仕掛けた車が爆発して、一日で60人以上が命を落としたことを知った。

 衝撃を受けている中、イラクの現地報告の記事を、読売新聞で読んだ。在ロンドンの飯塚記者は前にも英軍と同行してイラクに取材に出かけている。この結果を、通常の記事以外に、「新聞研究」という雑誌に書いていて、英軍のいる場所から比較的近いところにいた自衛隊の取材をすることができず(日本政府から許可がおりない、という理由だったと思う)、苦しい思いをしたくだりを書いていた。

 今年6月にも取材に出かけており、そのときの様子を6月29日付の新聞で書いている。イラクがいかに危険か、取材さえままならない状況かがしみじみと分かる。

 もう1つ、ウエブを見ていたら、日本政府が英外務省に対して、日本人記者を英軍同行取材者として受け入れないように依頼した、という報道があった。

 危険だから、という理由なのだろうか?

 それにしても、メディアは政府とは独立しているのだから、日本政府がこのような形で口を出すとは、どういうことだろうか?英軍があるいは英外務省が、「危険だから日本人記者は連れて行けない」というのなら、まだ分かるのだが。日本政府が英外務省に頼む・・・という構図は、メディアを独立機関として扱っていないように見える。不自由な感じ、息苦しい感じがする。

 2つの記事をペーストしてみる。
 
外務省、日本人記者のイラク英軍同行拒否を英側に要請
イラク情勢
 【ロンドン=飯塚恵子】英外務省は6月28日、イラク南部ムサンナ県で7月に行われる英側からイラクへの治安権限移譲式典について、日本の報道機関の同行取材申し入れをすべて却下した。

 日本政府が27日、イラクへの英軍同行取材に日本の報道機関の記者を受け入れないよう英外務省に申し入れたのを受けたもので、英側は「極めて異例な措置だが、(日本政府の要請に)配慮せざるを得ない」としている。

(2006年6月30日23時43分 読売新聞)



2006. 06. 29
[イラク取材記](上)軍ヘリも欠航 テロの街(連載)

 ◆記者2人、警護に英兵16人 「無謀だったか」一瞬弱気 
 イラク南部で6月8日までの9日間、英軍と行動を共にした。1年3か月ぶりの南部取材だった。セ氏50度に迫る酷暑に焼かれ、テロ警戒の緊張感に息をのみ、取材の制約で欲求不満が高じた毎日。ボロぞうきんのようになってロンドンに帰り、取材帳を読み返し、取材行の意味を考えてみた。(ロンドン 飯塚恵子)
 砂漠のただ中のバスラ空港に英軍C130輸送機で降りたのは5月31日未明。英軍基地は空港に隣接し、敷地面積約25平方キロ・メートル。記者(飯塚)とロンドン駐在の中村光一・本紙カメラマンの英軍宿営地暮らしが始まった。仏国営テレビ記者とカメラマン、オランダ紙記者の計3人も一緒だ。
 同日夕、マリキ・イラク首相が同国第2の都市、バスラ市に1か月間の非常事態を発令。「取材はできるのか」。テントの寝袋で、なかなか寝付けなかった。
 同市は基地の東約8キロ・メートル。前回取材時は防弾仕様の四駆車で市中を動き回れたが、今回は装甲車両でなければ無理という。爆弾があちこちに仕掛けられている。この5月、ヘリ撃墜や路上爆弾で英兵9人が犠牲に。基地と同市を結ぶ軍用ヘリ便も「危険情報」でしばしば欠航する。治安は著しく悪化している。
 6月1日午前5時過ぎ、陸上自衛隊の駐留する、ムサンナ県サマワに向けて英軍宿営地を出発。昨年のサマワ取材では記者3人に対し警護兵は4人だったが、今回は我々2人を警護する英兵は16人。加えて、イクバル・ハミデュディン報道官(英海軍大尉)(29)も同行した。装甲車3両と防弾仕様の四駆車1両でコンボイを組み、約250キロ・メートル北西へ。
 7時間後、サマワにある英軍とオーストラリア軍の合同宿営地に到着。ヒューゴ・ロイド英陸軍大尉は「ムサンナ県がイラク民主化と復興の象徴になる」と語り、「自衛隊関与の歴史的意義」を強調した。ただ、出会ったイラク人たちは「自衛隊が来て2年たったのに暮らしは良くならない」「最も必要なのは電力。自衛隊は街に来て、地元の要望をもっと聞いて欲しい」と不満を口にした。
 帰路、「輸送機からあぶれた。どうしても今日中にバスラに戻る必要がある」と言う英陸軍大佐が我々の軍用車に乗り込んだ。記者が衛星電話で通話していると、「見せてくれ」と取り上げ、電池のフタを外すなど調べ回して、「変だ」。
 理由を聞くと、「この車には電波妨害装置が搭載されている。路上爆弾の遠隔操作を不可能にするためだ。電話が通じてはいけない」と説明。報道官に後で尋ねると、「装置のことは秘密」と困った顔をした。
 数日後、仏テレビのマガリ・フォレスティエ記者がすごいけんまくで怒り出した。「早くバスラ市内で英軍の活動を撮りたい!」
 3日は市中心部の市場で車爆弾がさく裂し市民ら28人が死亡。4日未明にかけて市内のイスラム教スンニ派モスク内の集団と警察の銃撃戦が発生、モスクの9人が死んだ。「危険」を理由に市内入りできない日が続いていた。
 ヘリ便で市内に入ったのは5日。英部隊の警戒パトロールに同行すると、50メートルほど先で火炎瓶が破裂。数分間、地面に伏せた。「やっぱりイラク入りは無謀だったかも」と一瞬弱気になった。警察車両にカメラを向けると、「撮るな!」。「写真が出回ると、テロリストに狙われる」と警察官。
 イラク人通訳(25)は酷暑の中でも目出し帽を決して脱がない。英軍勤務が知れると、「僕も家族も消される。警察は頼りにならない」と言う。
 サマワの治安は不安定のまま。バスラは非常事態にある。陸自はサマワ撤収を進め、英国はムサンナ県に続き、残る南部3県も順次イラク側に治安権限を移譲し、年内には撤収したい意向だ。
 残される人々の不安を思う。

by polimediauk | 2006-07-01 23:03 | 日本関連

商業捕鯨


 今、英国では、捕鯨に関しての報道・会話で、日本を支持する人はほとんどいない。

 「英国では」と書くと言い方がでかすぎるように聞こえるかもしれないが、実際、メディア報道がそうだし、友人、知人、誰にしろ、この件に関して、日本に好意的な発言が出ることは、まずないといっていい。しかも、この件を話すと、みんな(英国の人やインタビューされている人)は、怒っている。相当感情的になっている。日本は戦犯扱い、という感じだ。

 イランの核開発に関しても、英国はかなりドラマチックにイランを批判していたが、それがそのまま日本に適用されているような思いもする。

 以下は共同の記事。

商業捕鯨再開へ警戒感 英BBC

 【ロンドン19日共同】英BBCテレビは19日、国際捕鯨委員会(IWC)が商業捕鯨一時禁止決定に批判的な内容の宣言を採択したことについて「日本が捕鯨推進の採決で勝利」と繰り返し報じ、警戒感を示した。
 BBCは、もりを撃ち込まれた鯨が、苦しみ、血しぶきを上げる捕鯨の映像を併用。「捕鯨」を「(鯨を)殺害」と言い換え、宣言採択は「商業捕鯨再開への一歩となる可能性がある」と強調した。
 その上でBBCは、商業捕鯨禁止の内容を見直し「より効果的な規制」を行うことで、日本が調査捕鯨名目で「殺害」している鯨の数を減らすことができる可能性もあると指摘した。
(共同通信) - 6月19日11時59分更新

 本当はどうなのか?悪いことを始めようとしているのか?

 私は捕鯨に関して詳しいわけではない。ただ、IWCが政治的集団化している、決して中立的な団体ではない、という認識を持つようになったのは、梅崎 義人さんというジャーナリストが書かれた記事を読んでからだ。(例えば新聞通信調査会報の平成16年版のいくつかの記事など。) http://www.chosakai.gr.jp/index2.html 梅崎さんは、長年の交渉の様子を細かくウオッチングしているようだ。

 日本が、IWCで自分の地位を確かにするために(=商業捕鯨を再開するために)、小さな国のIWCの会員権を代わりに払い、それで票を増やそうとした、という報道も頻繁にあった。(日本側は票を買おうとした、という報道を否定。)昨日ラジオで小耳にはさんだのが、こうした小さな国のいくつかが、「私たちはどのような票を投じるかを自分たち自身の意志で決定できる。日本に影響を受けて票を決定するなどというのは、欧米の植民地主義的考えだ」、と反発している、という。

 あるBBCのテレビ番組で、鯨肉をおいしそうに食べている人々がいる日本の食堂の様子が放映されていた。いかに鯨肉が人気があるか、を描いていたが、実際、日本全体では鯨肉は(私も小さいときに食べていたのを記憶しているが)ひんぱんに食卓に出るものではないと記憶しているが、どうなのだろうか。

 また、日本は、「IWCがうまく機能しなければ、日本+有志で新たな捕鯨の団体を作る」、と言ったと報道された。「2,3年後に」、そういう団体を作るかもしれない、と。これ自体は事実かもしれなかったが、報道のトーンとして、「自分のやりたいことが通らなければ、新たな団体を作る日本」、つまりは、「何が何でもやりたいことを通そうとする、理不尽な日本」という感じがあった。

 いずれにしろ、誰しもが感情的に鯨の将来を語る英国の雰囲気は、「本当にそうかなあ」と、思ってしまう。
 


 
by polimediauk | 2006-06-19 16:10 | 日本関連
 

 皆さん、軍事力に関して、いろいろインプット、ありがとうございました!!!大変恐縮です。

 毎日、自分自身が日本の軍事力に関してどう思うのか、中国に関してはどうなのか、漠然とでも掴んでおかないとけない状態にさらされています。英国の新聞を読んだり、在英ジャーナリスト、コラムニストの人に会う機会があると、日本や中国の「脅威」あるいは軍事力に関し、どうも偏見があるのではないか、という思いを強くします。今はまだきちんと言い返せないのですが、変だなあという気持ちがあります。公表されているデータを中心に、一先ず読んでみようと思っていますが、頭の中を整理するまで時間がかかるかもしれません。

 関連・別件ですが、英国(米国も?)では「中国脅威説」が強いようです。先日もあるメディアの集まりに出ていたのですが、「だから中国はダメなんだよね・・」という物言いが強く、しまいには腹がたちました。いつも出くわす光景なのですが、「どうして、自分たちのほうが中国より進んでいる」と思うのかなあ、と。「中国も、この先、自分たち=西欧のレベルにまで進むだろう」・・と。

 しかし、「外国」のことを見るとき、ステレオタイプから逃れるのは、本当にむずかしい・・と思って帰ってきました。


ーーー

 別件ですが、イラクがまたまたひどいことになっているようです。

 BBCを見ていたら、イラクにいるアメリカ兵に対して、道徳・倫理を教えることになった、とのこと。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/americas/5036686.stm

 市民を殺害した件があったので、と。

 イラクが分裂化するだろうこと、内戦状態になる可能性があること、戦争後のプランを米英の政府が持っていないこと、などなどが、この3年で英国では何度も議論され、報道されてきており、そうした多くの予想が現実のものになっていくのをみると、恐ろしい感じがします。あまりにも予測が当たっているようなので。

 5月17日、エコノミストの元編集長ビル・エモット氏を囲んでの集まりに行ったのですが、そのとき、米映画「シリアナ」を作った(!!)という人が、「イラクの現状は、誰も予測できなかったので」ということを話しており、「私たちは国民は知らされていなかった」とコメントを残していました。米国では、「知らされなかった」というか、「知らなかった」といことなのかどうか?

 英国では周知のこと=イラクの現況の予想=他の国ではそれほど周知となっていなかった??という図式が成り立つのか、どうか?

 ・・・しかし、こうなることが学者レベルではかなり声高に予測されていたにも関わらず、イラク戦争に踏み切った英国・・・。

 亡くなった英兵が母国に帰ってくる様子の報道などを見るにつけ、戦争を続けている国、英国に住んでいることを実感する毎日です。
 
 
by polimediauk | 2006-06-02 06:37 | 日本関連

 昨日、英シンクタンクIISSというところが、「ミリタリーバランス2006」という情報を出した。

 以下は共同の記事。

中国軍事費、公表の3倍超 英戦略研報告書

 【ロンドン24日共同】英国の有力シンクタンク国際戦略研究所(IISS)は24日、各国の軍事力と地域情勢を分析した報告書「ミリタリー・バランス2006」を発表した。2004年の中国の軍事費が、研究開発費などを加えて人民元の購買力平価などに基づく独自のドル換算をした結果、公式発表の3倍超になるとの試算を明らかにした。
 03年の軍事費は独自のドル換算前の段階で公式発表の1・7倍だった。
 報告書では、04年の中国の軍事費は843億ドル(約9兆5000億円)で、ロシアを抜き米国に次ぐ世界第2位の規模。05年は995億ドルで、チップマンIISS所長は「急激な増加傾向にある」と指摘、軍事力強化を急ぐ中国の姿が浮き彫りとなった。
(共同通信) - 5月25日12時41分更新

 ーーー

 そうだったのか・・・中国ってすごいな、と思い、日本はどうなっているのだろうと新聞を買ってみた。

 ガーディアンの紙面を開いて、驚いてしまった。(ここからが無知・不勉強をさらけだすことになるが、お許し願いたい。)それは、日本のことだ。

 日本にいるときは、あまり意識しなかったのだが、英国に住んでいると、「日本の軍事費はでかい。日本は(予算の面からは)軍事大国だ」という意見を、よく聞く。軍事力の話をするとき、「日本は実際の戦闘に関わっていないから・・・」ということで、何となく漠然とした態度を示すと、「甘い!」とよく言われるのだった。

 そこでガーディアンを開くと、日本は戦闘員の数=軍事力と見た場合、約26万ほどで、世界19位になるのだが、軍事費ということで比べると、世界第4位だ。(米国、英国、フランスにつぐ。日本の下は中国。)

 大きさの面からは19位なのに、軍事費からは4位?

 これは一体、どういうことなのか?(ご存知の方は教えていただきたい。)高い機材があるということなのか、米軍の肩代わりをしていることなのか。

 ちなみに、英国、フランス、日本の軍事費はほぼ似たり寄ったりだが、米国はこの3つの国のそれぞれの額の、10倍である。異様に大きい。力で世界を席巻???

 それと、中国だが、日本が大体26万から30万の戦闘員がいるとして、中国は公式には225万、実際には700万、とIISSは結論付けている。

 共同以外では、この報告書を記事にした日本の新聞はあるのだろうか?共同の記事は、何故全く日本のことに触れないのだろう?日本の状況は、(私以外の)多くの日本人が既によく知っているから、なのだろうか?
 
 今までぼうっとして(あまりにも)していたが、これもきちんと見ていこうと思った日だった。


 
by polimediauk | 2006-05-26 00:28 | 日本関連

映画「SAYURI」の裏事情?


 先日、映画を観にいったときに、予告編の1つが「Memoirs of Geisha」という小説を映画化したものだった。日本語でも「さゆり」(主人公の芸者名)という題名で翻訳・出版されている。米国人アーサーゴールデン氏書いたベストセラー小説だ。私自身は原作を読んでいなかったものの、題名だけは知っていた。

映画「SAYURI」の裏事情?_c0016826_20262271.jpg 予告編を見ていてあることに気がついた。この映画のポスターはロンドンの地下鉄によく貼られているので、知識としては知っていたのだが、映像で見るとまた迫力が違う。つまり、小説の中の日本人芸者は日本人の女優さんが演じていないのだ。

 主演の中国人女優チャン・ツィイーは、前に他の中国(香港)映画で見たことがあって、きれいな人だなあという印象があった。顔だけ見ると、何人、というところまでは通常は分からない。

 そこで、英国の映画館で、「日本の芸者の話」を中国人の俳優たちが演じているのを見ると、これでいいのだろうか?という思いがあった。着物の着方も全然違うし、髪形も、典型的な芸者の髪型ではなく、全く違う。数人の日本人の俳優も出ている。英国では、「これが日本だ」と思われるのだろうなあと思うと、一種滑稽なような気もした。

 それはさておき、日本では、中国人俳優らが演じる「さゆり」をどう受け止めるのだろうか?と思っていたら、記者会見があったようで、短いニュースが出ていた。映画は「SAYURI」になっている。この短い記事だけでは、受け止め方の反応は分からない。英ガーディアン紙に出ていたので、それを出してみたいが、ガーディアンではブロガー二人の書き込みを入れた記事になっている。このブロガーたちが日本と中国の人々の深層心理を表しているものとして、おもしろい、と思って入れたのかどうかは、分からない。また、最後の中国人女優のコメントも、どのような質問の後にこのコメントが出たのか、書かれていないので、この記事が真実をついた記事だったとしても、結果的にややセンセーショナルな印象になってしまったように思う。

 いずれにせよ、中国人女優が主人公の日本人を演じる映画が、ハリウッド製とはいえ、「日本映画」として世界中に(おおげさかもしれないが)配給されることに関して、日本人の多くは、あるいは日本の映画評論家はどう考えているのだろう?(英人俳優が米国人を、あるいはドイツ人などなどを演じる例は、英テレビではしょっちゅうやってはいるのだが。)

 まず、ヤフーに出ていた、夕刊フジの記事。

渡辺謙「SAYURI」アピール、ワールドプレミア
 
芸者の純愛を描いたスティーブン・スピルバーグ製作のハリウッド映画「SAYURI」(ロブ・マーシャル監督、12月10日公開)のワールドプレミア会見が28日、都内で行われた。主演の中国人女優、チャン・ツィイー(26)のほか、俳優の渡辺謙(46)、役所広司(49)、桃井かおり(53)、マレーシア出身女優のミシェル・ヨー(43)らアジアのスターが勢ぞろい。会見には、約700人の報道陣が詰めかけた。

 ツィイーが「私たちアジアの俳優の才能を全世界に見せつける機会です」と気勢を上げると、“世界のケン・ワタナベ”も満足げな表情で「誇りにできる作品に仕上がった」と同調。英語に苦労したという役所も「素晴らしい経験ができた」と興奮気味に語っていた。
(夕刊フジ) - 11月29日17時1分更


 ガーディアンの東京特派員が書いた記事からは別の側面が見える。

 
映画公開前から、ハリウッド映画「SAYURI」は中国と日本で厳しい批判が出た。

 日本の批判の矛先は、監督のロブ・マーシャルが主演の芸者役に中国人の女優をあてた点だ。あるブロガーは、「この映画をボイコットして、メッセージをハリウッドに送るべきだ。何故日本人を馬鹿にするような映画を作ったのか?日本人がいなければ何もできないくせに」。

 中国の批判は、慎み深い芸者役の主演女優が、1930年代の京都で、舞台上で踊っているシーンが、「まるでロサンゼルスのストリップ・ショーで踊っているように見える」ということだ。

 この映画では、映画の中心となる主人公が中国人のツィイーに、もう一人重要な役割となる登場人物の役がマレーシア系中国人のミシェル・ヤオーにいった。

 しかし、日本の批判は中国の批判に比べれば、たいしたことはないのかもしれない。ある中国人のブロガーは、かつての中国の一部を植民地化した日本に関わる映画に出たツィイーは「魂を売り、祖国を裏切った。殺すだけでは十分ではない」としているという。

 東京での記者会見に姿を見せたツィイーは、「サユリ」はアジア人の俳優達にとって、一歩前進だ、と述べている。「人が考えるよりはるかに多くの事ができると思う」(注:一歩前進というのがハリウッド映画に出られたのでよかったという意味と、アジアの俳優同士が協力できて良かった、ともとれる)。

by polimediauk | 2005-11-29 20:25 | 日本関連

 「週刊金曜日」というと、他の媒体では見られない記事があって、時々日本から送ってもらい、読ませてもらっていたが、記事盗用問題がおきていたようだ。

 私が記事を書いている「日刊ベリタ」(月ぎめ課金制)で初めて知った。「週刊金曜日」に限らず、「これだから、xxx(媒体名)は、だめなんだ」という風には私は必ずしも考えないが、人事とは思えないなあ、と複雑な思いで記事を読んだ。

 まず、記事を盗用された、とする世界日報の記事と、ベリタの記事の一部を貼り付けして見る。
 
http://www.worldtimes.co.jp/special2/kinyoubi/050928.html
「週刊金曜日」が記事盗用
独自取材装い選挙総括
時事、共同通信記事から大部分を引用
関連記事:「週刊金曜日」が謝罪 2005.10.5
 ジャーナリストの筑紫哲也(TBSニュースキャスター)、本多勝一の各氏らが編集委員となっている総合週刊誌「週刊金曜日」が、時事、共同両通信社の配信記事を無断で転用、先の衆院選を総括した同誌取材班の独自記事として掲載していたことが二十七日までに、世界日報社の調べで分かった。今回の衆院選では「朝日新聞」記者による虚偽報道が発覚し、報道機関の報道姿勢や倫理観が厳しく追及されたばかり。にもかかわらず、他社の記事をあたかも自社記事のごとく平然と盗用し、読者を欺いた「金曜日」誌の責任が厳しく問われよう。


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筑紫氏ら編集幹部の責任重大
「引用やむを得ない」と強弁、公然と盗用許す体質露呈
盗用問題を起こした「週刊金曜日」誌
 問題が発覚したのは、「九月十六日付『週刊金曜日』誌に世界日報と全く同じ記事が載っている」との本紙読者の指摘から。それによると、同月十三日付本紙の第七面、「国会召集前?郵政成立後?首相―靖国参拝時期探る」の記事がそっくりそのまま「金曜日」に掲載されている、というもの。
 問題の個所は、「自民党の驕りと戸惑い」と題し同誌の「本誌取材班」が総選挙を総括した記事の中で、国内情勢や外交日程から見た小泉純一郎首相の靖国参拝の時期を予想した内容。冒頭部分に若干手を入れたほかは、四十行にわたる内容が世界日報の記事と一字一句同じだった。

 同記事は、世界日報が配信契約している時事通信社の記事を掲載したもので、同様の契約を結んでいる他の新聞社などが同じ記事を掲載することはある。この場合でも、記事の正当性に対する責任は通信社に付随する。このため、今回の「金曜日」のように「本誌取材班」を責任出稿者とした場合、基本的に引用記事の出所を明記しなければならない。

 この点について時事通信社は「わが社は『金曜日』とは契約していない」(マスメディア総合本部・山田広之企画部長)と回答、同誌が記事を無断転載、すなわち盗用した疑惑が浮上した。

筑紫哲也氏 本多勝一氏
 「金曜日」誌記事は、このほか同通信が十二日付で配信した数個の記事を切り張りした部分が計四十行ほどあることも分かった。これらの記事についても、山田企画部長は「わが社の記事であると確認した」と明言。世界日報の指摘に「明らかに盗用と言っていい。これほどあからさまなケースはこれまでになかった。(報道人として)常識外のことだ」と強く批判した。

 同通信社としては今後、編集局、法務担当で対応策を協議し、「とりあえず『金曜日』に対し、記事盗用の事実と記事の入手経路・方法などを文書で照会する」(山田企画部長)方針だ。

 一方、「金曜日」側は当初、本紙の取材に対し「わが社のアルバイトが時事から引用したようだが、大筋は編集部が取材しまとめたもので問題ない」(同誌編集部)と否定した。

 しかし、本紙調べで「『金曜日』取材班」による同記事は、共同通信社からも含め、全体で百九十一行の記事の大部分を二社から盗用した記事で構成されていることを指摘。この点をさらに問いただすと、同編集部は「あってはならないことだ。今後は、そういうことのないよう厳に戒める」と、ようやく盗用の事実を認めた。

 「ベリタ」では
2005年10月05日掲載

検証・メディア
週刊金曜日が盗用認めて謝罪 創刊以来の不祥事、社内処分も検討

  【東京5日=稲元洋】反戦・反権力の姿勢に立ち、市民の視線で環境・女性問題などを報じている雑誌「週刊金曜日」は、同誌9月16日号の「自民党の驕りと戸惑い」と題した衆院選自民党大勝後の政局分析記事の中で、時事通信社と共同通信社の配信記事を大幅に盗用していた事実を認め、4日、両社に北村肇編集長名で謝罪文を送った。 


 (追加)
 後、一度だけではなかったのでは?という検証記事が載っていたので、その一部を。

10月05日 日刊ベリタ

検証・メディア
通信社記事盗用ほかにも 週刊金曜日「本誌取材班」のお粗末ぶり

 【東京5日=ベリタ通信】雑誌「週刊金曜日」は時事通信、共同通信の記事を盗用していたことを4日に公式に認め、両社に謝罪したが、盗用を認めた9月16日号、9月23日号の二つの記事以外にも、9月2日号と9月9日号に限りなく共同通信記事の盗用に近い内容の記事があることが分かった。いずれも「本誌取材班」と銘打っている国政に関する記事。取材班とは名ばかりで、通信社の記事をつなぎ合わせ、編集していただけの欄だった可能性がある。 
by polimediauk | 2005-10-05 12:02 | 日本関連

今年中には靖国を参拝するのですか?小泉: そういったことは、言わないでおいたほうがいいと思う。これは、中国側も理解してくれている。


 alfayoko2005さんにご指摘いただいた件で、28日付タイムズに小泉首相のインタビューが載っている。一部、読売新聞に翻訳されていた。靖国神社への参拝の件で、「今年中に」といいう箇所があると、今(午後10時ごろ)、朝日ニュースターというケーブル(だと思う)の番組でいっている。コメンテーターが、「これは本当かどうか分からない。イギリスの新聞でしょう?意味を取り違ったのでは?」という。

 外国の新聞だから、相手(日本人)の言うことの意味を取り違えている・・・こういう発想もなかなかすごい(馬鹿にしている?)が、まずは何を言ったのか、インタビューを書き取ったものを、タイムズのウエブで掲載しているので、興味のある方は見ていただきたいがhttp://www.timesonline.co.uk/article/0,,3-1801759,00.html、以下に訳してもみた。

 言葉だけ追うと、「今年中に行く」ということは明記は、ない。しかし・・・判断は一人一人にゆだねたい。

 その前に、読売新聞の記事から。

衆院解散・自民大勝、首相「歴史的」を強調…英紙に

 「参院で法案が否決され、衆院が解散になったことは今までもなかったし、当分ないだろう。歴史的解散だったのではないか」

 小泉首相は28日付の英タイムズ紙(電子版)掲載のインタビューで、参院で郵政民営化関連法案が否決され、衆院解散に踏みきったことの歴史的意義を強調した。

 首相は、衆院選で自民党が大勝したことにも、「参院がかなり意見を変えてきており、歴史的であるかもしれない。衆院選で、郵政民営化という政界の奇跡が起きそうな状況だ」と語った。

 年内に靖国神社を参拝するかどうかについては、「中国の首脳は私の意思を知っている」とし、参拝する考えを示唆した。

 来年9月で切れる自民党総裁の任期延長論については、「(残り)1年でやめると言ってきている」と述べ、改めて退陣する考えを示した。ポスト小泉の能力があると見ているのは何人かを尋ねられ、「4人ないし5人だ」と答えた。
(読売新聞) - 9月28日21時42分更新


 靖国参拝の時期に関し、「いつ行くなど、こちらの意志は公的に発言しないほうがいい。それを(公的に表明しないこと)については、中国側もそう理解している」という部分を、私は興味深く読んだ。

 とりあえず、以下が全部の訳。微妙かもしれない部分は英語を残した。ご参考までに。

――

(インタビューは火曜日に官邸で行われた。)

―(総選挙は)驚くべき勝利になりましたね。これほどの勝利ですから、ひと夏で辞任するということはないのでしょうね?

小泉:もちろん、だれもこれほどの勝利を実際には予想していなかった。しかし、これまでにも、ずっと、私は1年で退陣する、と言ってきた。だから、最善を尽くし、任期の終わりまでつとめて、来年の9月には辞任するつもりだ。

―改革を行う、という使命があるのなら、あと1年では必要なことをすべてやり終えることはできない、とは思いませんか?

小泉:私が思うに、これはどの首相もそうだと思うが、首相が達成するべき仕事に終わりはない。しかし、私の任期終了までには、必要なことを終えることができると思う。

いつも言ってきたのは、私の最優先事項は、私の内閣の最高のゴールは、郵政の民営化だった。 これが改革の最後のよりどころだと言ってきた。もし実行できれば、政治の奇跡だと思う。その奇跡が今起きようとしている。

 首相に就任したとき、郵政は民営化しなければならない、民営化されるだろう、と言ったが、多くの人が(実行に)疑いを持っていたと思う。こうした疑いの念を持つのは理解できないわけではない。民営化に反対したのは野党だけではなかったし、実際には、与党の中でも反対があった。民主主義国家で、国民が(民営化の)実効性に関して懸念を持ったとしても驚くにはあたらない。

政治家になって30年だが、政治的現象として、みんなが反対した法案が、突然法案の支持に回る、といった瞬間があると思う。この瞬間が今まさに来たのだと思う。実際、8月8日、この法案は死んだのだと思う。まさか生き返るとは誰も思わなかったんだ。

―自分の歴史上の位置を意識しますか?

小泉: 衆院の解散に関して言えば、参院で法案が否決されたからといって解散になったことは、過去なかったと思う。この点からは、これは非常に歴史的な解散とも言える。

また、ある法案に反対していた人が、同じ法案を後で支持することに変わった、ということもあまりないだろうと思う。 そういう意味では、これは歴史の記録に残るような現象とも言えるし、小泉という名前は時の首相として残るかもしれない。

―郵政の改革というのは、行政上の話というよりも、象徴だったのではないですか?

小泉: : かなり複雑な様相があると思う。自民党が勝ったのは、私の過去4年間のやってきたことへの評価と、これまでに私が進めた改革への国民からの支持、それに郵政民営化への支持だったのだと思う。こうした要素がすべて影響したと思う。

日本を景気後退から抜け出させ、景気回復を実現していった私のやり方が、与党の中で摩擦を引き起こしたと思う。例えば、銀行業界の不良債権の処理で使った方法や、景気後退の時期に公共事業を減らしたことで、これは過去からの完全な決別だった。

 自民党総裁、日本の首相になる、ということは、与党内から強い支持があったことを、慣習として、意味していた。私の場合は、大きな与党の派閥の中の摩擦の中で、首相になった。この点で、私は非常に珍しい首相だと思う。

欧米では、「これが民主主義なのか?」と問う声があるのは事実だ。結局、首相になり、党首になる人物がその地位を得るのは、自分の政党からの強い支持があって、そうなる。野党ばかりか与党内とも闘いながら首相であるというのは、何かおかしいのではないか、というわけである。

私に反対をする人たちはいるし、与党内の指導者たちは、私を独裁者、「ヒットラー」とも呼ぶ。私は選挙で選ばれたのだから、これは非常に奇妙だ。現職についたのも、選挙を経た後だ。

 選挙戦中、私は、郵政民営化に反対した参院議員たちは日本国民がこの法案に反対していると信じて、法案に反対したのだ、と言った。「もし私が勝てば、参院の反対議員たちは、国民も法案を支持していると分かり、立場を変えるだろう。だから、勝たせて欲しい」と言った。最後には、総選挙の結果を見て、反対をしていた参院議員たちは、驚くべきスピードで支持に回った。

 この選挙は、国会での結論を、国民が変えてくれるよう、頼んだ選挙だった。結果、そうなった。この点から、非常に歴史的選挙だったと思う。

―もし、来年の6月、世論調査で、80%の人が首相の座にい続けて欲しいと願うとき、こうした声を無視するのでしょうか?

小泉:(笑い。)世論調査がそんな結果を出すわけないよ、70%や80%の人が私に続投して欲しい、というなんて。

ー過半数以上がそう言えば、考えますか?

小泉:そんな可能生に私が頭を悩ませる理由は全くないと思う。その頃になれば、9月には自民党総裁選挙になるので、6月には、候補者が選挙キャンペーンを開始している。

―女性が次の首相になる可能性は?

小泉:近い将来、首相候補になる可能性のある女性を本当に考え付かない。

―候補者は何人ぐらいいると思いますか?

小泉:4人か5人だと思う。

―日本は第2次世界大戦(での行い)に関して謝罪をしましたが、海外では、日本がまだ謝罪していない、と未だに見ている人もいます。第2次世界大戦における日本の立場を世界に明確にするために、何らかのセレモニーを行うことは考えていますか?

小泉: 考えていない。実際のところ、戦後の日本の過去60年の軌跡を見れば、日本が過去を反省し、後悔していることを、人々は理解していると思う。

中国や韓国との関係を言っているのだね。しかし、これまでにないほど、日本とこの2国との間では、すべての分野において交流が起きている。

中国が私の靖国参拝に反対をしているのは、政治的な理由だろうと思っている。
I would assume that it’s for political reasons that China is opposing my visits to the Yasukuni Shrine.

―中国内部の政治的事情でしょうか、それとも外部に対する政治的事情でしょうか?

小泉:国内の事情だ。それに、中国は、日本が政治的に影響力を増すことを歓迎していないのだろうと思う。例えば、中国は日本が国連の常任理事国になることに反対だ。それは、中国は国際的な舞台での日本の影響をチェックしたいからだ。 Internal reasons. In addition I would assume that China doesn’t welcome a growth in Japan’s political influence. They are opposed, for example, to Japan becoming a permanent member of the UN Security Council because they want to check Japan’s influence on the international stage.

―何故、靖国参拝に関する意向をはっきりさせないのですか?

小泉:実は、中国側は、私の考えを既に知っている。本当に、中国の指導部は、私の意向を認識していると思うし、しかし、もちろん、他国の立場も考慮にいれないといけない。従って、公にするようなことじゃないと思う。常に、他国との関係を考慮にいれることを心に留めるべきだ。
Actually the Chinese already do know my thoughts. Indeed I believe Chinese leaders are aware of my intent, but then of course you have to be considerate of the others’ position as well. So I think it’s not something that we should make public. We always have to bear in mind relations with other countries.

―今年中には靖国を参拝するのですか?

小泉: そういったことは、言わないでおいたほうがいいと思う。これは、中国側も理解してくれると思う。 I think that sort of thing is best left unsaid. That [is something that] the Chinese also understand.

―時として、日本の国粋主義と、戦後の国としてのアイデンティティーの発達とを混同する人がいますね。気になりますか?

小泉:それは誤解だ、本当に正しくない。今私たちが目にしているのは、全く国粋主義というようなものではない。日本国民は、過去について非常に深く反省をした。第2次世界大戦について遺憾に思っているし、世界中の誰よりも強く、日本人は、絶対に再び戦争を起こしてはいけない、と思っている。他の何よりも平和を愛している。

―景気は回復したのでしょうか?

小泉:景気回復の時期は、過去最長だ。しかし、インフレを克服していないし、正式にインフレを克服するまでは、正式に景気が回復した、とは言えない。

―前にお会いした時、夜は4-5時間眠るとおっしゃいましたね。今は選挙も終わり、もっと長い時間、もっと心安らかに眠っていますか。

小泉:(笑い。)長さは変わらないかもしれないが、多分、選挙の時と比べて、もっと深い眠りだし、それほど頻繁に途中で起きなくなった。

―退任したら何をやりますか?ガーデニングですか、それとも音楽をきいたり?

小泉:そんなことを考えるところまで、まだいっていないよ。今いえるのは、来年の9月までは首相としてベストを尽くすことだ。一旦やめたら、きっとたくさんやることがあると思う。

首相としては、音楽を聞くのが楽しいが、ベッドでCDを聞くぐらいだ。やめたら、コンサートや映画に行ったりするよ、DVDで映画を見るんじゃなくて。それと、首相でいるうちは、やることすべてが公務になる。首相でないと、自分を楽しませる方法はたくさんある。

―今、何を読んでいらっしゃいますか。

小泉:約400年ぐらい前の、戦国時代の歴史に関する本を読んでいる。

―現代に通用するような教訓はありますか?

小泉: 厳しさについてかなり学んでいる。戦国時代のサムライがどんなに厳しい生活をしていたか。毎日、死と直面している。教訓はたくさんある。

―どの人でしょうか。

小泉;織田信長、豊臣秀吉、徳川家康のことだ。この3人は、当時の歴史上、複雑な混乱を作り出した。

―イギリスの与党・労働党が日本の自民党に似ている、という人がいます。本当の野党が党内にいるからです。そう思いますか。

小泉: 日本では、与党は与党で、野党は野党だ。

私の内閣で難しかったのは、与党の中で私の政策に心の中では反対していても、その政策を支持するように強制しなければならなかった点だ。小泉は自民党の総裁で首相だし、日本の国民が(郵政民営化を)支持した、という現実に直面している、心の底では私に反対している与党内のメンバーのことだ。こういった人たちの気持ちを変えるように、かなりのエネルギーを使ってきた。この点で苦労した。

(以上・言葉の分かりやすさのため最後のコメントをやや意訳。他はほとんどそのまま。)



ータイムズ・トムソン編集長の戦略

 次に入れたいと思っているが、タイムズのロバート・トムソン編集長は、今、東京に来ている。28日開催の読売メディアフォーラムというイベントのパネリストの一人だった。このインタビューも東京特派員とともにやった、ということだ。

 これまでにも、何かのイベントに出席しながら、独占インタビューを東京特派員とともに行う・・・というパターンをやっている。イベント出席は別としてもファイナンシャル・タイムズのアンドリュー・ガウアー編集長も(日本に限らずブッシュ大統領インタビューなど)、似たようなことをしている。

 読売の英字紙「デイリーヨミウリ」にも、しばらく前から、サプルメントとして、タイムズの紙面が入っている。

 実際のトムソン編集長は、ひょろっとした感じで、物静か。非常に恥ずかしがり屋に見える。ちょっと赤面しながら、パネリストとして冗談などを言っていた。

 タイムズはメディア王ルパート・マードック氏が所有しており、トムソン氏は、マードック氏のあやつり人形、とも言われている。もともとは、ファイナンシャル・タイムズの敏腕記者だった。

 「競争が激しい」とトムソン氏が機会あるごとに言う英新聞業界で、やっていくー。やはり相当な人なのだろう。

 

 
by polimediauk | 2005-09-29 00:23 | 日本関連

相手を傷つけないことに神経を集中させると・・・

 まだ日本に戻って2-3日目で、ほんの印象記的な観察になるが、前に、どうも日本では必要な情報が十分に行き渡っていないのではないか?というようなことを書き、「ではどんな情報が足りないと思うのか?」に関しては書かなかった。

 テレビのニュース番組を見ていて、丁度そんなケースに遭遇した。

 水曜日(31日)頃のNHKの夜のテレビ・ニュースで、「ロシア・ベスランのテロ事件から1年」というクリップがあった。現地から特派員の報告があり、これを東京のアンカーが聞く、という格好だった。テロ事件から1年経っても、何故テロが起きたのか?その詳細が分かっていないことを嘆く、犠牲者の母親に取材したもので、現地の苦しみをよく紹介していたと思うが、「そうですか、もう1年も経ったのに、何も分かっていないんですか」という形で話が進んだ。

 「本当に、大変ですね」ということで、終わるのだが、いかにも、「プーチン・ロシア大統領も一生懸命やっているが、まだわかっていない。大変でした」というような印象があった。しかし、プーチン大統領のテロ事件の処理にロシア国内及び海外で大変な批判が起きていること、チェチェン問題の処理に関しては弾圧といってよい状態が続いていること、言論の自由が少なくなっていることに西欧諸国から大きな批判が起きていること、などが、(日本の新聞記事を読むと出ているとは思うのだが)、少なくともこのクリップからはすぐには分からないように感じた。少なくとも、「一生懸命やっているけれども、真相が分からない」のではなくて、「真相を隠している疑いが強い」「故意に情報を出していない」面があることなどは、英国にいるジャーナリストたちの間では常識で、国民の間でも、よく知られていたと思う。

 しかし、NHKのこのニュースだけでは、どうも分かりにくいのだった。(嘘を言っているわけではもちろんないのだが、あまりにもオブラードに包まれていて、最後はメッセージが明確に伝わらないのだった。)

 さて、今晩(2日)、12チャンネルの夜のビジネス・ニュース(11時から)を見ると、さかいや太一氏が、「団塊の世代はこれからどうなるか?」というテーマの特別ゲストとして出演していた。

 団塊世代が2007年にいっぺんに退職した後、どうなるか?ということなのだが、新作「エキスペリエンス(経験)」を書いた作家でもある氏が、理想的な自論を語るのに対し、キャスターの女性は、基本的には、ある意味、はれものにでも触るように、「はい、はい」と聞くだけなのだった。

 理想は理想だが、常識的に考えて、60歳で退職し、それほど簡単に再就職が見つからないであろう事は、想像に難くない。

 団塊の世代は、年金をもらいながら仕事もする、という形をとり、消費も増え、良い事尽くめのような話をする相手に対し、何の真剣な、知的で、チャレンジングな質問もないことに、驚いてしまった。

 キャスターの主な関心ごとは、「いかにしたら、このゲストをハッピーにできるか?いかにしたら、失礼のないようにするか?いかにしたら、相手を傷つけないようにするか?」らしいのだった。

 定年後の生活に一定の困難さが起きるであろうことが明らかである以上、「それほど将来は理想的にはいかないのではないか?」という点を、視聴者の代表として、言葉を変えながら、何度も聞いてもいいはずだし、もしそうしなければ、ジャーナリストとして、キャスターとして、意味がないように思うのだが。

 日本と英国では、国民がニュース報道に期待するものは違うかもしれないし、報道のスタイルも違うだろう。日本は日本であろうし、英国は英国だ。

 しかし、間違った方向で、ゲストに対して変な気遣いばかりしてしまうと、必要な情報を国民に与えないことにつながっていくと思う。そうすると、報道の意味がないのではないか?

 話は飛ぶが、雑誌AERAで、英語特集の雑誌を出している。現在書店に出ている一冊では、英国のフットボール選手ベッカム氏が表紙になっている。ベッカムといえば、例えば奥さんのビクトリアが、「生涯にただの一度も本を読んだことがない」と最近発言して、英国で失笑をかった人の夫だ。それ以上に、もちろん彼自身が、日本でも大人気だが、今回のAERAを見て、どきっとしたのは、ベッカムの会話から英語を学ぶ、という企画だった。

 ベッカムは、英国では、英語力・国語力に欠ける人として有名である。

 数年前、女性誌AN ANで、「ベッカムで英語を学ぼう」という特集があり、これにも驚いたが、AERAでもまた起きてしまった。

 ベッカム・ファンにとって、彼の話す言葉を理解したいという気持ちは強いだろう。ここでいろいろ言うほどのことではない、のかもしれない。

 しかし、私は、ここにも、「情報の欠如」の例を見てしまう。どういったらいいだろうか、どうも故意に一部の情報のみが与えられているような気がして、ならないのだ。英語の雑誌を作るほどの人であれば、ベッカムと英語について本国でどんなことが言われているのか、分からないはずがないように、思うのだが。少なくとも、読者は、知らないだろう。知らされていないからだ。一種の詐欺的なものを感じてしまう。

 AERA, あるいは上記のニュースの個々の製作者を責めているわけではないのだが、こういうことが少しずつ重なって存在していると、全体の雰囲気、言論の場の成熟度合いなどに問題が起きる・起きているのではないか、と心配になる。
by polimediauk | 2005-09-03 00:33 | 日本関連