小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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カテゴリ:ネット業界( 154 )

答えは「イエス」?

 イギリスではブログがそれほど人気になっていない。

 私の推測では既に様々な意見を表明する機会がたくさんあるので・・と思っていたが、フリーのジャーナリストで季刊誌ブリティッシュ・ジャーナリズム・レビューの編集メンバーでもあるマーク・ホリングスワース氏によれば(年齢は30代後半ぐらい)、「アメリカ人や日本人と比較して、イギリス人は新しいものに対して抵抗がある」という。連絡先を書いてもらうと、名前と電話番号だけを書くあたり、ホリングスワース氏自身が、ネットの利用では奥手である可能性もあるが。ブログのことを話していたら、「ところでブログって一体どういうもの?ホームページとは違うの?」と聞かれたせいもある。

 4月8日付けのフィナンシャル・タイムズ紙に、フィナンシャル・タイムズ・マガジン誌(毎週土曜日発行)の編集長ジョン・ロイド氏のコラムが載っていた。

 ロイド氏は5月5日の英総選挙がブログが広がるきっかけとなる、と見ている。ブログのジャーナリズムの役割をオックスフォード・インターネット・インスティテュートの教授スティーブン・コールマン氏にインタビューし、列挙しているのを読むと、まだまだイギリスのブログが発展途上段階にあることを逆に示すように思った。

 一つ付け加えると、イギリスのメディアは、政治家に対し、政策ばかりでなく性格や私生活に関しての揶揄など、かなり追求が厳しい。ブログが盛んになると、これに輪をかけての報道になり、政治家にとってはさらに厳しい環境となりそうだ。

 一部抜粋を紹介すると:

 「総選挙でイギリスでもブログが広まるようになるだろうが、これはいいことか悪いことか?答えはイエス=いいこと、だ。政治が現在以上に個人的なものになるべきだと思っているならば、だが。」

 「オックスフォード・インターネット・インスティテュートのスティーブン・コールマン教授は、ブロガーは3つのタイプとして広がってゆくとしている。一つは政治オタクで、『自分以外の誰も信じちゃいけないよ』というタイプ。2つめは政治家自身やアドバイザーたちで、普通の人たちとコンタクトを取っていることを示すため、3つめは通常の報道では言いたいことが書けないジャーナリストやジャーナリスト志望の人たちだ。例えば、(野党保守党の党首)マイケル・ハワードのあの声には我慢がならない!といったことが書ける。感情の表現であり、裏づけのない観察だ。決まったルールもなければ制限もない。自分がどう考えるか、どう感じたか、が常に中心になる』」

 「『もしイギリスのブログがアメリカ型として発展していくとしたら、政治家だけでなくメインストリームのメディアもトピックになる。ブロガーたちによれば、真実を語ることを恐れ、本当の話を落とし、事件が過ぎ去ってから記事を書く、とみなしている人たちだ。ブロガーたちは既存メディアのコンセンサス(こうあるべき、というライン)を嫌う。』」

 「ジャーナリストたちがますます政治家を強い調子で批判し政治家の性格から大きな問題を解き明かそうとする報道を続ける中で、ブロガーは、自分にとって物事がどうなのかを問題にする。政治家や政治によって自分がどんな影響を受けるのか、が重要と考える。」

 「コールマン教授によれば、『ブロガーは、ブログを書くことで、自分の考えには人々が耳を傾けてくれるほどの価値があることを確認する。ブロガーは、観客でなくプレーヤーになれるのだ』」。

 「ブログをやっている政治家はあまりいないが、労働党のクライブ・ソーリー氏やオースチン・ミッチェル氏、野党自由民主党のリチャード・アラン氏、保守党のボリス・ジョンソン氏など。ミッチェル氏は、ブログは政治家個人の意見を表明する場所だとしている。」
by polimediauk | 2005-04-09 23:10 | ネット業界

英ネット広告費が急増


60%増、でも来年はもっと増える

 米インターネット広告の業界団体、インタラクティブ・アドバイジング・ビューロー(IAB)がコンサルタント会社のプライスウオーターハウスクーパーズに依頼した調査(4日発表)によると、英インターネット広告費が、初めてラジオ広告費を追い抜いた。

 2004年のインターネット広告費は6億5330万ポンド(約1330億円)で前年より60%増加。ラジオ広告費は6億3700万ポンド(約1290億円)だった。

 オンライン広告費は英広告費全体の3.9%を占め、前年の2.6%を上回るとともに、ラジオ広告費の3.8%を超えた。

 専門家の分析によると、接続速度の速いインターネットを利用する人が増えているため、広告主がオンライン広告を大きなビジネスチャンスと見ているようだ。英国では約600万人がブロードバンドに接続していると言われ、ダイアルアップ接続のユーザーの倍の金額をオンラインで使うという。広告主からすると、ブロードバンドで、ビデオやアニメ、オーディオなどの面で凝った広告を出すことができる。

 2000年のドット・コム・ブームの時代にはオンライン広告に過度の期待がかけられていたが、一旦バブルは崩壊。しかし、今回の結果で、ネット広告が上向きになったことが証明された、というのが英各紙の結論だ。

 中心となっている広告主は、金融、人材サービス、旅行、自動車など。

 IABのチーフ・エグゼキュティブのガイ・フィリップソン氏は、タイムズの取材の中で、「ネットで買い物をする人が増えているので、自然にネット広告も増えたのだと思う」と述べている。

 広告費全体の内訳を見ると、最も大きな割合が新聞を通じての広告で、41・5%。テレビは23・9%となった。

 英広告協会の予想では、2005年の広告費総額は前年よりも4・3%増える、としている(フィナンシャルタイムズ紙)。オンライン広告に関しては、33%の増加が見込まれている。
by polimediauk | 2005-04-05 19:02 | ネット業界

「ブロガーがやってくる」


 アメリカでは、ホワイトハウスのブリーフィングにもブロガーが入った、と最近ニュースになったが、イギリスでは、ブログはまだそれほど大きな動きにはなっていない。特に、日本で花開いている個人のブログも大きくは広まっていない。

 何故イギリスでブログがアメリカ型、あるいは日本型のように流行にならないのか?

 あくまで私見、推測だが、アメリカ型のような、メイン・ストリームで出ている議論とは、違った点から物事を見るという形でのブログ・ジャーナリズムで言うと、イギリスでは既存のメディアが既に「他の視点」を提供している、という要素があるようだ。まず、BBCが英国最大の公共放送機関として、様々な視点を紹介する番組を提供している。テレビの討論番組などで人々が思い思いの意見を述べる機会も多い。商業放送(といっても、衛星放送以外は公共放送となる)が、BBCの番組に挑戦するような様々な時事番組、ドキュメンタリー、参加番組を放映している。

 日本の朝刊紙にあたる新聞は、中立であることを目標としておらず、それぞれ独自の論の展開をするので、これもまた、読者が様々な視点に触れて自分自身の意見を形作るのに役立つ。

 日本型のブログがカバーする領域の中で、裏の話、本音、悪口も含めた言いたいことを言う・・といった内容の部分は、大衆紙と呼ばれるタブロイド紙がカバーしている。

 ブロガー同士がつながる・・・といったコミュニティーの部分はどの英メディアでもカバーされないことになるが、この部分のニーズが出て広がるのか、あるいは既に存在しているメディア報道をさらに深くするための動きが出てくるのか、この先は、私自身、つかめていない。

 いろいろなメディア関係者から聞いたり、コメントを読んだりする限りでは、アメリカ型ブログ・ジャーナリズム(既存のメディアが扱っていない真実を明るみに出す)の必要性、緊急性を、感じている人は、少ないようだ。ブログで暴露されるような真実、事実だったら、ネタを買ってくれるタブロイド紙に売るか、競争の激しい既存メディアの誰かがもう既に報道している、ということのようだ。

 ・・と思っていたら、3月11日付けタイムズ紙のコラムニスト、サイモン・ジェンキンズ氏が、ブログの衝撃を書いていた。

 おもしろいと思ったのは、自分自身(大手新聞のコラムニスト)が、ブロガーとどこが違うのか?と自問自答をしている点だ。自分自身も、ブロガーと同じこと(その時々の時事トピックに関して、自分の独自の意見を述べる)をしている、と気がつく。自分だって、うかうかしていられない、と思いだす。

 日本で、大きな新聞に毎週コラムを書いている人で、ブロガーの存在に脅威を感じる人がいるだろうか?そしてそんな脅威を正直に書くだろうか?

 そんなことを思いながら、記事を読んでいた。http://www.timesonline.co.uk/article/0,,1059-1520138,00.html

 一部を、紹介してみたい。(若干言葉の補足をしてあります。)

 「明らかになったことは、既存新聞の世界をブログが一時的に嵐のように乗っ取ったということだ。」
 
 「確かに、紙としての新聞のタイムズは一日70万部売れているが、世界中で、ネットでタイムズを読む人はこの5倍もいる。私や他のコラムニストが読者から受け取る手紙も電子メールの方が多くなった。新聞を作る作業が、スクリーンとキーボードを使っての電子的な会話、になってしまった。オンラインだと新聞をただで読める時代に、新聞を買うというのは贅沢なことになったのだろう。」

 ジャーナリズムを教える学校では、既存ジャーナリズムの原則(事実の確認、調査)をネットのジャーナリズムにもあてはめようとしている。「しかし、ブログの魅力は、こうした原則から逃れることができる点にある。」

 「既存のジャーナリズムの問題は、情報収集、信頼性といったものが、(ブログの)意見の叫び声よりも価値があり、お金を出して買ってくれる根拠になる、と思っている点だ。」
 
 「(既存メディアの情報は)誰かが確認したり、書いたり、編集したものだ。既存メディアはお金を稼ぐ必要があり、そうでないとブロガーたちの情報の元(リソース)がなくなることになる。新聞の発行部数が減少し、海外支局が閉鎖される動きが世界中で起きているので、いつまで既存メディアが利益を出し存続できるのか、見通しはあまり良くない。意見を言うのは無料だが、事実(を集めるのには)はお金がかかる、というのは本当だ。」

 「(自分にとっては、ブロガーの存在は)地面が動いたぐらいの衝撃だ。私の職業の中心部分と関わることが起きている。(ブログは)意見を売る。自分が(ブロガーより)高い位置にいるふりをすることはできる。シェークスピアの引用をすることだってできる。」

 「しかし、実際、私自身もブロガーなのだ。発生するニュースからあるトピックをとりあげ、そのトピックに関しての自分の意見を、読者を説得するために書いているのだから。そして、自分はそれでお金をもらってもいる。ブロガーは、無償でやっている。」

 ブロガーの存在に、コラムニストとして自分も全力で書こうと思う、という意思表示をしている。
by polimediauk | 2005-03-11 23:40 | ネット業界

「ジャーナリズムは記事の質で勝負」
 

 ライブドア・ニュースに韓国オーマイニュース社長のインタビューが載っている。

  「ジャーナリズムは記事の質で勝負するもの。プロであるか、アマチュアであるか、もしくは大手メディアの記者か小さなメディアの記者かは関係ない」というコメントが、目をひく。

 日本語版も予定しているという。もっと詳しく知りたくなる。

 【ライブドア・ニュース 18日 東京】 - 市民アマチュア記者3万6000人を集めて、ネット新聞を展開する韓国オーマイニュース。市民の直接参加と読者との情報の双方向性を武器に、設立5年で韓国の主要報道機関に成長した。02年の大統領選では、盧武鉉政権誕生に一役買ったとされる。オーマイニュースのオ・ヨンホ社長に話を聞いた。

 問 オーマイニュースという、ネット上の市民参加型報道機関を始めたきっかけは。
 答「私は大学卒業後、雑誌で12年間記者生活を送っていたが、韓国の大手メディアが保守的で閉鎖的だと感じてきた。この韓国の大手メディア状況を、多くの市民と共に変えていきたいと考えた。そこで、『市民みんなは記者だ』というキャッチフレーズを掲げた。それは、紙媒体でなく、インターネットでこそ可能だと感じた」

 問 なぜ、一般市民のアマチュアと協働することを考えたのか。
 答「プロ記者を排除しているわけでない。オーマイニュースはプロ記者と市民記者の夢のような結合を求めている。ジャーナリズムは記事の質で勝負するもの。プロであるか、アマチュアであるか。もしくは大手メディアの記者か小さなメディアの記者かは関係ない。インターネットを利用して、記者と読者の間に(情報の)双方向性が生まれるとき、ジャーナリズムは最に望ましい姿が現れると考えている」

 問 オーマイニュースが韓国で成功した要因は。
 答「一番は『市民みんなは記者である』というスローガンだったと思う。また、オーマイニュースは利益を追求するのでなく、オルタナティブ(既存の代替的)な市民言論運動を目指したので、市民が賛同してくれたと思う。韓国の若い世代は、韓国社会全体やコミュニティを自ら変革できると信じており、その多くが積極的に市民言論運動に参加している」

 問 既存のメディアから嫌がらせや妨害などはなかったか。
 答「オーマイニュースは少人数(4人)で、ビジネスとしてでなく、市民運動的な性格を持ったジャーナリズム運動として始めたので、逆に、既存のメディアに少しは可愛がってやろうという意識があったと思う。今ではオーマイニュースは、新聞やテレビなどメディアの中で韓国第6位になり、他から警戒されてきているのは事実だ」

 問 オーマイニュースが読者から信頼を得た要因は。
 答「設立時からオーマイニュースの報道で、既存メディアが歪曲してきた、もしくは無視してきた事柄を取り上げてきたからだと思う。また、ある現象を報道するとき、既存のメディアのように一部を取り上げるのでなく、全体像を描くように心がけたことだと思う。新聞のように、締め切りはないし、紙面の制約もない。そして、一番重要なのは、市民がオーマイニュースに直接参加でき、自分の言いたいことを言えるということだろう」

 問 オーマイニュースの将来像は。
 答「韓国内では、オーマイニュースがニュース配信を始めた後、たくさんのインターネット新聞が生まれた。これが、オーマイニュースの認知度を高め、競争力の源泉となった。今ではオーマイニュース英語版があるが、多くの記事は韓国人以外の人が投稿したもの。韓国国内のジャーナリスト・ネットワークに留まらず、世界に情報を発信していくものに育てたい。市民参加ジャーナリズムが世界各国で広がることを望む。今後は日本語版も作って、日本の方にも参加してもらいたい」
by polimediauk | 2005-01-19 03:12 | ネット業界