小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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カテゴリ:ネット業界( 148 )

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 (インドのスタートアップ、innozのウェブサイト)

 今月17日と18日、ロンドンで「Wired(ワイヤード)2013」というイベントがあった。「Wired」といえば、米国が本家となるテクノロジー系の月刊誌。その英国版が開催したイベントだった。(ちなみに、日本では年に4回、紙版で発行。ネットではさまざまな記事が常時読める。)

 発想の奇抜さとテクノロジーを使って遊ぶ精神に満ちたイベントだった。テクノロジー業界の外の著名人も多数登壇した。

 例えば、中国生まれのピアニスト、ラン・ランがこれまでの経歴を語り、壇上でアイパッドを使いながら、ミニ演奏。アイスランドのミュージシャン、ビョークがマルチメディアの作品「バイオフィリア」の制作秘話を披露。米映画「トルーマン・ショー」(ジム・キャリー主演)で、主人公を助けるという重要な役割を演じたナターシャ・マケルホーンがテクノロジーの楽しさを語っていた。

 米国のソーシャルメディアに関心のある方なら見逃せない、バズフィードやキックスターターの創業者もやってきた。2005年、単独で世界一周最短記録(当時)を打ち立てたエレン・マッカーサーが世界のエネルギー循環を促進するために立ち上げた財団の活動を説明したときの迫力も忘れられない(敬称略)。

 いくつかのプレゼンテーションについて、読売新聞オンラインの「欧州メディア・ウオッチ」に書いたので、ご拝読いただければ幸いである。(27)コンピューターは嘘を見抜けるか?―WIRED 2013

 そのほかの印象深いプレゼンテーションを紹介してみたい。

ーキックスターターの創業者のお金についての考え

 クラウドファンディングのサイトとして著名な米キックスターター。創業者の一人ヤンシー・ストリクラーが壇上で英ワイヤード誌編集長デービッド・ローワンからの質問に答えた。

 現在、約70人のスタッフが勤務。ビジネスの目的は、群集(クラウド)からお金を集め、ほかの人のビジョンが形になることを助けること。お金儲け自体が目的ではないという。

 新たなビジネスを始めたい人、さらにビジネスを大きくしたい人が銀行に行くよりももっと簡単に資金を集められるようにした。創業から4年半で8億5000万ドルの資金を集めたという。来年念頭には「10億ドルに達するかもしれない」。

 どのプロジェクトを取り上げるかについて、何かルールがあるのかと聞かれ、ストリクラーは「どんな市場でも、助けてくれる人が必要だ」とした上で、ルールとして、「チャリティー団体を対象としない」という。

 「例えばある人がハイチを救うために募金を求めていて、私が詩を出版するために資金を募っていたとしよう。2つのプロジェクトが平行して並んでいたら、私がろくでもないやつに見えてしまう」。

 また、「広告という文化は不健全なものだと思う」とも発言した。「誇大宣伝につながる」からだ。

 キックスターターが目指すのは「共有、正直、他人を同列に扱うという原則がある空間を作ること」。

 1日に350件ほどの問い合わせがあるので、この中から決めるのはかなり困難だという。

 実際に希望の金額を集めることができるのは全体の約44%だという。それでも、「資金を募ってみて、誰もサポートしてくれなかったときでも、学べることがある」。自分で資金を集めようと思うかもしれないし、そのプロジェクトは捨てて、次に進もうと思えるかもしれないからだ。

 これからキックスターターを使おうとしている人へのアドバイスとして、「ありのままの自分でいるように」、「正直であれ」。

―普通の携帯電話をスマホ並みに使う

 インドの起業家ディーパック・ラビンドラン(Deepak Ravindran)は、スマートフォンではない普通の携帯電話でもスマホ並みのネット利用ができる仕組みを開発した。ラビンドランはInnoz社のCEOだ。

 スマホの利用が広がっているといっても、インドでは携帯電話のほとんどは非スマホの旧来型のものだ。そこでラビンドランが考えたのは、SMS(ショートメッセジサービス:携帯電話同士で短いテキストによるメッセージを送受信する)を使ってさまざまな情報を取得できる「SMSGYAN」というサービス。多くの人が使える、シンプルなプラットフォームを考えた。

 インドで人気があるスポーツの1つがクリケット。そこで、通信会社と協力し、クリケットのスコアをSMSで送れるサービスを開始した。

 さらにサービスを拡大し、何かあったら警察に通報できるツール、ツイッター、エバーノート、人探し、英語の学習など、さまざまなアプリを提供するようになった(アップストア)。

 2011年3月から開始されたSMSGYANの利用料は月に30ルピーで、これは約1ドルに相当するという。現在、1億2000万人が利用している。

 c0016826_018173.jpg例えばどんな感じの画面になるのか?その例を画像で見ていただきたい。左側に「インド・デリーの天気」という問いが発せられる。右側にデリーの気温などの文字情報が出る。

―イスラエルの人権擁護活動家がメディアを発足させた

 英ワイヤードのローワン編集長が数年前から雑誌に出てほしいと声をかけていたものの、「表に出たくない」として断ってきた人物が、今年初めてワイヤード誌に登場。今月の「ワイヤード2013」のステージに登壇した。

 イスラエル人のオレン・ヤコボヴィッチ(Oren Yakobovich)は、保守系の家庭に40数年前に生まれた。母国に誇りを持ち、10代で軍隊に入った。

 次第に昇進し、イスラエルの占領下にあるウェストバンク(ヨルダン川西岸地区)に配置された。そこで初めて、不当な暴力行為が発生している状況を目にした。

 軍役を果たすことを拒絶したヤコボヴィッチは刑務所に入れられた。ただし、すでに上官だったので、刑務所の待遇は「食事のまずさをのぞけば、まるでホテルに滞在しているようだった」。

 自分が目にした状況をイスラエル国民に知らせないと社会は変わらないと思い、動画を撮影するようになった。

 人権擁護団体B’Tselemに所属し、ウェストバンク近辺に住む100を超える家族にカメラの使い方を教えた。

 イスラエル人の入植者たちが、話しかけようとして近づいてきた男性を野球のバットで殴ったり、目隠しをされたデモ参加者が兵士に撃たれる様子を撮影した動画は、イスラエルの主要テレビ局で放送された。「イスラエル軍に対して説明責任を求める声が強くなり、ウェストバンクで暴力が減少した」。

 2008年、友人たちと真実を伝える団体「Videre」を結成。最初からメディアを作ろうとしていたわけではないが、世界中で何が起きているかを伝えるために、いつしか動画コンテンツの制作者になっていた。

 Videreでは、「ほかの人が隠したいことを見せる」、「市民にカメラを持たせる」が柱となる。スタッフだけでは人権侵害の様子を撮影することはできず、当事者である市民自身が撮影することが特徴だ。

 撮影していることがばれないよう、車の鍵やライターなど、小型カメラを別のものに隠しての撮影だった。
動画は容量が大きく、これを電子的に送信する機材を持っている人が少ない。また、例えば送信を政府側が把握すれば、市民が危険にさらされる。

 このため、Videreではスタッフ自らが市民を訪ね、動画をもらう形をとっているという。

 世界中に、隠密行動をとる約400人の活動家たちがいる。1500時間分の動画があり、350の物語として編集されたコンテンツは世界中の120以上のメディアで放送された。放送時、Videreの名前は出ないようにしているという。

 Videreが入手した動画の一部が、会場内で流された。もっとも私が衝撃的に感じたのは、ケニアでの「女性器切除(略称FGM)」(すべてを取り去るのではなく、一部を切除)の現状の動画だった。数人の女性のインタビューが出た。一人の女性は切除を拒否したため、父親に勘当された。もう一人の女性は経験済みで、FGMは停止されるべき、という。

 最後が中年の女性のインタビュー。この女性は村の女性にFGMを施す役割を長い間続けてきた。どんな風に行うのかと聞かれ、女性性器の一部を伸ばし、削除すると説明。その後、切られた性器の一部は「もちろん、捨てますよ」と大笑いしながら、カメラに向かって答えていた。

 アフリカ諸国の一部などで、FGMは大人の女性への通過儀礼として行われてきたが、欧米では女性虐待として非難の声が上がっている。

 地域によって習慣やものの見方は異なるが、この映像を見ていて、むごいと思わない女性は少ないのではないかと感じた。 (続く)
by polimediauk | 2013-10-22 23:50 | ネット業界
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 「あなたの好きな動物は何?」など、単純な質問に答える仕組みの交流サイト「Ask.fm」(アスク・エフエム)が、欧州を中心とした数カ国に住む10代の少年少女の間で、人気になっているという。

 利用の手始めは、新たに名前、電子メールのアドレス、生年月日などを使って登録するか、フェイスブック、ツイッター、あるいは「VK」のアカウント(主としてロシア語圏で人気があるソーシャルメディア)を使って、プロフィールを作る。友人を誘って、質問を投げかけてもらう。ほかの利用者もさまざまな質問を投げかけることができる。フェイスブックとは違い、匿名でも利用可能だ。ウェブサイトでもモバイル機器のアプリとしても使えるようになっている。

 このサービスの利用者の中で未成年者数人が、いじめを苦にして自殺したと推測される事件が相次いでいる。

 今月2日、14歳のハンナ・スミスさんが、英イングランド中部レスタシャーのラターワースの自分の部屋で首をつって自殺した。

 ハンナさんの父親デービッドさんは、自分のフェイスブックのページに「Ask.fmで娘が受けた虐待がどんなものかを読んだ。いじめた人たちが匿名であるのは許せないと思う」と書いた。父親はAsk.fmが娘を追い詰めたと信じているという(ガーディアン紙、7日付記事)。

 ラトビアの首都リガに本拠地を置くAsk.fmは、2010年6月にサイト運営を開始した。

 フェイスブックやインスタグラムのプロフィールにAsk.fmのプロフィールを入れている利用者も多く、なるべく数多くの人に質問をしてもらうことを目指して、使っているようだ。答えは写真や動画の形でも可能で、ツイッターやフェイスブックのタイムラインのように、自分のプロフィール欄の下に、質問と自分の答えが時系列に並んでゆく。

 CNETが今年6月、サイトの創業者マーク・テレビン氏とイルジャ・テレビン氏に取材したところによれば、4月、サイトは130億のページビューを記録。ユニークビジター数は1億8000万人だったという。毎日、新しい利用者が20万人増えている。

 現在、150カ国で利用できるようになっており、特に利用者が多いのが米国、英国、ブラジル、ロシア、ドイツ、フランス、トルコ、ポーランド、イタリアだ。(ちなみに、日本語でも利用できる。)

 利用者の半分が18歳以下だという。少年少女にしてみれば、大人がいない空間で、他愛ないことをおしゃべりできる点が魅力のようだ。

 質問によっては、いじめが発生することもある。例えば、ガーディアンの記事によれば、ハンナさんのプロフィールには「牛」、「太ったカタツムリ」、「見醜い馬鹿」などの言葉が書き込まれていた。

 昨年秋には、アイルランドに住む13歳と14歳の少女たちが、サイトで匿名の利用者からきつい言葉を浴びせられ、自殺した、とガーディアン紙は伝える。

 4月には、イングランド北部ランカシャー州の15歳のジョッシュ・アンワース君が庭で首吊り自殺をした。生前、Ask.fmで「お前はまったく気が狂ってるな」、「悪いことが起きて当然だな」などの文句を何ヶ月にわたり、書かれていた。

 1月には16歳の利用者アントニー・スタッブ君が自殺し、スタッブ君のガールフレンドやいとこも「ひどい」言葉を残されたという。

 アイルランド政府はラトビアに対し、このサイトと自殺との関係について調査を依頼しており、米メリーランド州の法務長官がサイトの広告主に対し、広告をひきあげるよう、呼びかけている。

 Ask.fmではこれまで、サイトのマイナス面は「社会の欠点を映し出していることを意味する」と説明してきた。昨年、自分のサイトのプロフィールの中で、創業者マーク・テレビン氏は、「問題の根本を考えるべきだ。Ask.fmは単にツールに過ぎない。電話と同じだ。ツールを責めても始まらない」。

 テレビン氏はまた、あるサイトのインタビューの中で、自動アルゴリズムと手作業によってポルノ的表現、言葉による虐待などをチェックし、その都度削除するか、利用者をブロックしている、と述べている。

 しかし、「1日に3000万の質問と3000万の答えがあり」、検証が大変であることも指摘した。

 自殺したハンナ・スミスさんの父親デービッドさんが複数の英国のメディアによる取材に応じたことで、Ask.fm事件はここ2日ほど、大きなニュースとして紹介されている。

 デイリー・ミラー紙(8日付)の報道によると、娘のハンナさんが首をつった姿を発見したのは姉で16歳のジョアンさん。父のデービッドさんはトラックの運転中だった。

 「ハンナは死んだと言って、ジョアンが電話を切ってしまった。こちらからかけ直して何が起きているかを知ろうと思った。それから兄弟に電話して、兄弟が事情を探ってくれた。ハンナが首をつったと言われて、『死んだのか』聞くと『そうだ』と言われ、泣き崩れた。すぐにトラックを家に向けて走らせた」。

 父親はAsk.fmが殺人罪に問われるべきではないかと考えている。「こんなサイトはいらない。(なくさないのなら)規制されるべきだ」。

 妹同様にAsk.fmを利用していたジョアンさんのプロフィールにも悪質な質問が出され、ハンナさんに捧げられたフェイスブックのページにも同様のコメントが送られたという。

 BBCの報道(8日付)によれば、いくつかの大手広告主がサイトへの広告出稿を取りやめる事態が発生している。取りやめを決定したのは、大衆紙サン、エネルギー会社のEDF,通信会社BT、メガネ販売のスペックセーバーなど。

 Ask.fm社は公開書簡を8日公開し、「今週ツイッターが発表したような、ツイート内で悪質なつぶやきを報告するような機能を昨年から採用している」と述べている。「これによって、懸念がある人は何でも報告できる。もし10代の利用者の親が懸念がある内容を見つけたら、このボタンを押して、モデレーターに教えて欲しい」。

 「当社のサイトの利点の1つは、すべてがオープンであることだ」、「問題があるコメントを見つけたら、誰もが報告できる」。

 今週早々には、Ask.fm社はハンナさんの死を「悲劇」と呼び、警察の捜査に「喜んで協力する」と述べている。

ー安全のためのヒント、利用規約は?

 一体どんなことが起きているのか、Ask.fmのサイトの規約を読んでみた。日本語になる部分があったので、以下はサイトからの引用である。

 安全のためのヒント

 Ask.fmのコミュニティのメンバーになることで、 利用規約に従うことになります。 安全のためのヒントはAsk.fmを賢く、責任を持って利用するための基本的な指針です。

 一般的な安全

 インターネットに接続中は、いくつかの重要な安全対策を忘れないでください:

 共有する内容に注意する。自分のページで電話番号、メールアドレス、自宅の住所などの個人情報を決して共有しないでください。 利用規約, に違反しているユーザーをブロックして、報告してください。 ターゲットにされている場合は大人に相談してください。不適切な質問には返信しないでください。

 プライバシー

 プライバシー設定 で匿名の質問をオフにできます。こうすると匿名のユーザーは質問できなくなり、受信箱で受信する内容をより安全に管理できます。 Ask.fmやウェブでは誰もがあなたのプロフィールやコンテンツを閲覧できます。投稿する前に十分注意してください。

 不適切な質問

 理由の如何に関わらず不快な質問を受け取った場合は、返信せずに両親や信用できる大人に相談してください。送り主のユーザーをブロックすると、二度と連絡が来なくなります。 それでも不愉快な行動が続く場合は、「報告」ボタンを押して当社に報告してください。警察などにも通報してください。

 匿名性

 匿名性を利用して不快な質問や有害な質問をしないでください。Ask.fmで匿名で質問をすると、あなたの名前は質問相手や他のユーザーには表示されません。 当社があなたの身元を他のユーザーに公開することはありません。 恥ずかしい時や、質問者が誰か分からない方が回答者が答えやすいと思う場合は匿名性は便利です。 規約に違反した場合は、責任を負っていただきます。必要とあれば、捜査機関に身元を特定する情報を提供します。


 そして、以下は利用規約である。読み出して、私は驚いた点があった。(お断りしておきたいが、私はフェイスブックやツイッターなどの利用規約と細かく比べてみたわけではない。あくまで、このサイトの利用規約で驚いた部分である。)

 気になったのは、3番目の項目のユーザーが送信、投稿、表示したコンテンツは他のユーザーに公開されます。ユーザーはAsk.fmのサービスを通じて送信するデータに責任を負いますという点である。(黒字は筆者。)

 4番目と5番目の項目も気になる。

 ユーザーはAsk.fmのサービスを通じて送信、投稿、表示したあらゆるコンテンツの権利を留保します。 Ask.fmのサービスを通じてコンテンツを送信することで、それらコンテンツをすべてのメディアや配信方法で使用、コピー、複製、処理、脚色、修正、出版、発信、展示、配布するための全世界共通、非独占的、著作権使用料のないライセンスをAsk.fmに付与します。 Ask.fmあるいはAsk.fmと提携している他の企業、組織、個人によって、ユーザーが送信、投稿、発信、あるいはAsk.fmのサービスを通じて利用可能にしたコンテンツに対し報酬を支払うことなく二次利用できるものとします。

 このプラットフォーム上で発信・受信したものはすべて、Ask.fmのものになるということだ。

 10番目の項目も注目だ。

 Ask.fmはコンテンツをコンピューターネットワークや様々なメディアを通じて発信、展示、配布するために修正、脚色、および/またはネットワーク、端末、サービス、メディアの要件や制限に応じてコンテンツを適合させる必要がある場合はコンテンツを変更することができます。Ask.fmのサービスの利用にあたり、好ましくない、節度に欠ける、悪趣味と見なされるコンテンツを目にすることがありますが、それらコンテンツが不適切な表現であると特定されるとは限りません。Ask.fmは匿名のコンテンツを認めており、監視を行うことはありません。ユーザーは自己責任でAsk.fmのサービスを利用し、ユーザーが好ましくない、節度に欠ける、悪趣味と見なすコンテンツに対し、Ask.fmが法的責任を負わないことに同意するものとします。

 Ask.fmは、ここではっきりと、「Ask.fmは匿名のコンテンツを認めており、監視を行うことはありません。 ユーザーは自己責任でAsk.fmのサービスを利用し、ユーザーが好ましくない、節度に欠ける、悪趣味と見なすコンテンツに対し、Ask.fmが法的責任を負わないことに同意するものとします」と書いている。

 また、プライバシーのところで「 Ask.fmやウェブでは誰もがあなたのプロフィールやコンテンツを閲覧できます。投稿する前に十分注意してください」とある。

 私が驚いたり、気になったりする理由とは、このAsk.fmの利用者の半分が10代の少年少女であるのに、「匿名でもいいですよ」、「好き勝手にやっていいですよ」、「悪趣味な言葉をかけられても、自分で責任を負ってください」――ということでいいのだろうか、ということだ。

―実際に、質問を見てみると

 利用者ではない(=登録していない、またはログインしていない)私でも「見れる」というので、早速サイトで見てみた。

 最初の画面の下に、小さな写真のアイコンが並ぶ。これをクリックすると、誰でもその利用者プロフィールと質問が読める。10人ほど、読んでみた。それぞれ、13歳から16歳ぐらい。

 時には無邪気な質問もあるが(「好きな食べ物は何?」など)、ほとんどの利用者の場合、性的な嫌がらせあるいは、性的なアプローチの問いがある。時には、子供たちは「気味悪い!」と言い返したり、「児童性愛主義者ね、あっち行って」などと切り替えしている。

 一人の男の子の顔写真の下に、フェイスブックのアドレスがあった。一体、中高生なのか、あるいは働いているのかと思って、クリックしてみた。写真がやたら多いサイトである。家族の写真もある。しかし、よく見ると、数人の家族の中で、「兄」や「姉」と説明してある人の名前が本人とはファーストネームもラストネームもまったく別なのだ。全員がすべてまったくつながりのない名前になっている。友人同士を「家族」としている可能性もあった。

 しかし、ふと、この可愛らしい写真の少年は、少年でもなんでもなく、大人だったり、あるいは女性だったりするかもしれないー。また、本当にそのままの少年で、何らかの「仕掛け」があるのかもしれない。そこで私はこの少年のフェイスブックの探訪をやめた。

 大の大人が少年少女の顔写真が一杯掲載されているフェイスブックを熱心に見ていようものなら、児童性愛主義者と見なされないとも限らない。児童ポルノは所持だけでも違法になるのが英国だ。

 「仕掛け」というのは、不用意にクリックした部分に何らかの隠れたセッティングがある可能性のことだ。(最近、テレビを見ていたら。フェイスブックの「にせいいね!」の手口の1つは、あるサイトをクリックしたと思ったら、その裏に隠されている別の「いいね!」用サイトをクリックしたことになった・・・というものであった。真実のサイトの上に、薄紙を置いたように、偽のサイトがかぶさっていたのである。別件になるが。)

 このサイトで精神的に虐待されて、自殺を図った少年少女は全体からみればごく少数かもしれないから、「サイトの閉鎖」まで行くべきなのかどうかは分からない。どんなツールを使っても、サイバーいじめはなくなりにくいとは思うし。第一、携帯メール(テキストメッセージ)でも、いじめるような言葉を発信できる。

 しかし、子供たちは、あまりにも無防備にこのサイトでわが身をさらしていることにならないだろうかー?

 考えて見ると、このサイトは

 (1)10代の子供たちに写真付プロフィールを設置している

 (2)これをそのソーシャルメディアでなくても誰でも見れる、読めるようにしている
ここまではフェイスブックやツイッターも踏襲しているのだろうが、だんだん危険度が高まってくるのが、以下だ。

 (3)匿名で子供たちに質問ができる

 (4)その質問に性的嫌がらせ、冷やかし、あるいは性的アプローチを目的とするものがかなりひんぱんに入っている

 (5)サイト運営者はチェックをしているというものの、結果的に、嫌がらせ、冷やかし、性的アプローチを目的とした質問が出るのが常態となっている

 などの点が、非常に気になる。

 実際に使っているほうの子供たちは、結構平気なのかも知れないがー。

 さて、ソーシャルメディアを楽しみ、言葉による攻撃を受け続けないようにするにはどうするか?

 BBCのデイブ・リー記者が6つの提案をしている(7日付ウェブサイト)。

 1つは「悪用を報告」ボタンをどこでも使えるようにしておく

 2つは自動的な仲裁機能(機械化)をとりつける

 3つは、実名利用を義務化すること

 4つは事態が深刻になった場合は、警察を呼ぶ

 5つは運営者のほうで、モデレーター(仲裁者)の数を増やす

 6つはオンライン上で互いに不快な言動を行わないように、教える、だ。
by polimediauk | 2013-08-09 07:47 | ネット業界
 米ワシントンポスト紙をアマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏が個人で買収した。

 すぐに思ったのは、「ほかに誰も買う人がいなかったのかなあ」と。よりによって、税金問題や働く環境の苛酷さで批判されているネット企業の創業者に買われてしまうとはー。米国で紙の新聞を印刷・販売するというビジネスは、先行きのないビジネスとして把握されているのだろうなあ、とも。将来性があって、投資家が続々と押し寄せて「ぜひ買いたい!」という代物とは見られていないのだー。

 今後、ワシント・ポスト(WAPO)紙はアマゾンの税金問題や就労環境の件を厳しく追求した記事を掲載できるのだろうか?矛先が緩むことはないのかどうか。ワシントンの政界で広く読まれている新聞だから、ロビー活動をするにも役立つという面もあるのではないか。

 それと、ベゾス氏にとっては、いわゆる「トロフィー」なんだろうな、と。つまり、「すごいでしょ」と他人に見せるものとしてのWAPO紙。

 「トロフィーワイフ」という英語の表現があって、これは富も名声も手に入れた男性が、自分の社会的地位を誇示するため迎えた若くて美人の妻のことを指す。WAPO紙を「美人の妻」というわけではないが、同紙は伝統的な、世界のジャーナリズムのトップとして名高い(映画「大統領の陰謀」をご参考)新聞だ。そんなメディアを手に入れれば、はくがつくのは目に見えている。富をたくさん手にしたベゾス氏。手に入れたいのは、「売った本の冊数がすごいだけじゃなくて、売る内容もすごいぞ!」という部分だろうか。

 アマゾンというビジネス自体も歴史に残るだろうが、WAPO紙の所有者として、ベゾス氏はこれでジャーナリズムの歴史にも名を残すことになった。

 オーストラリア出身のマードック氏(米ニュース社の会長)も、ニューヨーク・タイムズを欲しがった。英タイムズは手中にしたから、次は米メディアのトップを狙ったがうまく行かず、結局、それでもウオール・ストリート・ジャーナルを手に入れた。

 WAPO紙とアマゾン、ベゾスの買収については在米大原ケイさんのブログがほぼすべてを言い表していると思う。このトピックにご関心のある方は、ぜひご一読を。

ワシントン・ポストをベゾスが買ったワケ(「マガジン航」掲載)


***

 新聞通信調査会発行の「メディア展望」7月号に、イタリア・ペルージャのジャーナリズム祭の様子をデータジャーナリズムを中心してまとめてみた。この祭りについては読売新聞オンラインで何度か書いたが、今回は、もっと詳しく書いてみた。以下は、それに若干補足したものだ。

 最後に、データジャーナリズムについて参考になる文章を書いている方をまとめてみた。
 
―「データジャーナリズム」とは

 イタリア中部の都市ペルージャで、毎年春、国際ジャーナリズム祭が開催されている。地元のジャーナリストらが2006年に発案し、恒例行事となった。世界中からやってくるジャーナリスト、学者、メディア関係者らがジャーナリズムの現状や未来について話し合い、意見を交換する。参加費は無料で、ペルージャを訪れた人は誰でもセッション会場に入り、議論に参加できる。

 今年は4月24日から28日、ペルージャの旧市街に建つ複数のホテルを会場で200を超えるセッションが開催された。500人を超えるスピーカー、約1000人の報道陣が詰めかけ、参加者は5万人以上となった。

―データを活用するジャーナリズム

 欧州最大規模のジャーナリズム祭とされるこのイベントで目立ったテーマは「データジャーナリズム」だ。その意味するところや実践例をジャーナリズム祭での進行をたどりながら紹介してみたい。

 データとは情報を数値化したものを指し、データジャーナリズムとは「データを活用するジャーナリズム」の意味になるが、これが近年、注目を浴びている。さまざまな情報がデジタルデータ化されており、同時に、大量のデータを分析したり、視覚化するためのツールが容易に手に入るようになったことが背景にある。データ分析ツールを使い、それ以前には見えなかった事実や視点を提供するジャーナリズムを意味するようになった。

 ジャーナリズム祭の協賛組織となっている欧州ジャーナリズムセンター(EJC、本部オランダ・マーストリヒト)と英オープン・ナレッジ・ファウンデーション(OKF)は、昨年のジャーナリズム祭で、「データジャーナリズム・ハンドブック」(英語版)をオンライン上で出版した。これからデータジャーナリズムを始めようとする人へのガイド本だ。70人以上の国際的なジャーナリストたちのアイデアを基に作成された。紙版は書籍として有料販売されている。現在までに、無料オンライン版がスペイン語版、ロシア語版で出版されている。

 今年のジャーナリズム祭では、EJCとOKFは共同でデータージャーナリズムについてのワークショップ(「データジャーナリズム学校2013」)やセッションを複数開催した。

 まず、「データジャーナリズム学校」のワークショップの様子を伝えてみる。

 初日の講師となったのは、アリゾナ州立大学ウォルター・クロンカイト・ジャーナリズム・スクール教授のスティーブ・ドイグ氏だ。ハンドブックの作成にも力を貸した。

 1980年代、コンピューターを趣味として使っていたドイグ氏は、仕事にも使えることに気づいた。当時は米フロリダ州マイアミ・ヘラルド紙の記者だった。同州のハリケーンによる被害がずさんな建築基準によって悪化したことをデータ分析で証明し、1993年のピューリッツア賞を受賞している。

 ラップトップのパソコンを持ち込んで授業に臨んだ参加者の前で、ドイグ氏は「ジャーナリストがデータジャーナリズムを手がける目的は、ストーリー(ネタ)を見つけるため」と切り出した。

 小型コンピューターの普及で、記者がデータの中に「パターンを見つける」ことが容易になった、と語る。例えば、以前であれば、飲酒運転についての原稿を書くときに具体的な逸話をいくつか例に出し、結論に導いた。データを使って書けば、「単なる逸話を超えて、論拠を示すことができる」。

 データジャーナリズムが頻繁に話題に上るようになったのは「ここ2-3年」だが、米国では1960年代初期、司法体制が有色人種を差別していることを突き止めた例があるとドイグ氏は言う。

 データの分析という社会学の研究手法をジャーナリズムにも応用しようという議論が出たのは1970年代。1980年代以降、コンピューターの小型化が進展し、ジャーナリストが大量のデータを活用することが次第に容易になった。

 近年の例としては、米国ではUSAトゥデー紙の実践があるという。同紙は、生徒の試験の成績と教師が受け取るボーナスの支払い状況を分析した。結果、教師側がボーナスをもらうために試験の成績をごまかしていたことが分かった。

 データ解明ツールには表計算(エクセルなど)、データベース(アクセスなど)、マッピング・位置情報検知(ArcMapなど)、統計分析、ソーシャルメディア分析(NodeXLなど)のソフトをあげた。位置情報検知ソフトを使えば、どの場所で犯罪が発生したかを示す地図が作成でき、NodeXLは人がどんな風に他人とつながっているかを視覚化できる。

 ジャーナリズムに利用できるデータは、「例えば予算、歳出、犯罪のパターン、学校別の試験の点数、自動車事故、人口動態、大気環境、スポーツについてのさまざまな数字など」。

 データの視覚化にはデータ管理ソフトGoogle Fusion Table、プログラミングのための言語としてRuby, Django, perl, pythonなどをドイグ氏は紹介した。

 しかし、プログラミング言語を学ぶところまで行かなくても、エクセルなどの汎用ソフトを使うだけでもジャーナリストはデータをさまざまな形で分析できると教授は言う。例えばソート、フィルター、トランスフォームなどの機能を駆使し、数字の裏にある真実を見つけることができる。

 ドイグ教授は会場内で、イタリアの各都市で発生する犯罪件数のファイルを参加者に開けさせた。使用ソフトはエクセルだ。そして、人口当たりの犯罪発生件数を表示してみる。「何故この都市はほかの都市と比較して、犯罪率が格別に高いのか?ここからストーリーが生まれてくる」。

 2日目の講師マイケル・バウワー氏は、ジャーナリズム祭に参加したツイッター利用者のつぶやきを分析する方法を見せてくれた。

 どんなつぶやきを発しているか、誰が誰のつぶやきを追っているか、誰のつぶやきをリツイート(=他人のつぶやき内容を再発信する)しているかなどの要素を拾い、数理ソフトを使って、グラフ化した。ツイッターの利用者が誰にどのようにつながっているかが分かる図が目の前に広がった。

 筆者は、ドイグ教授の授業には終始ついていけたものの、バウアー氏の講義でグラフを自分のラップトップで再現するには時間がかかった。出席したほかの参加者も途中で戸惑いを感じたようで、会場内がざわつく場面が何度かあった。バウアー氏は「もし自分で今できなくても、がっかりしないでください。後で自習できる教材を流します」と説明した。

 講義終了後、データジャーナリズムを実践するには、ジャーナリスト側にはどれほどコンピューターの知識が必要なのかをバウアー氏に聞いてみた。「プログラミングができるほどの知識は必要ないと思う。コンピューター技術の専門家とジャーナリストとの共同作業がデータジャーナリズムだと思う」とバウアー氏。「しかし、データを使えば何ができるのかをジャーナリストが知っていることは重要だ。技術者は『こういうことをやってくれ』とジャーナリストから言われることを待っている」。

 授業の中でツイッターを通じた人のつながり方がグラフ化されたが、例えばこれはどんな記事を書くために使われるのだろうか?バウアー氏はこの問いにやや呆然としたようだ。少し間があり、「どんな記事ができるのか、という視点では考えていない」と答えた。筆者は、原稿を書く側にいるため、この答えは意外だった。改めて、データによって明るみに出そうとする事柄・文脈を考えるのはジャーナリスト側なのだ、と思った。

 「データの学校」の3人目の講師はグレゴール・アイシュ氏。「データの視覚化」のワークショップにはたくさんの人が詰め掛け、会場内に全員が入りきれないほどだった。同氏はグラフ作成ソフトを使って、データをカラフルなグラフに変換する具体例を次々と見せる一方で、「グラフの美しさにごまかされないように」と釘を刺すことを忘れなかった。データジャーナリズムの批判の1つが、「きれいなグラフを作るだけではないか」だからだ。

 次に、データジャーナリズムをテーマにしたセッションを見てみよう。

 初日のセッションの1つ「データジャーナリズムの2013年の現状」で、パネリストの一人で米ニューヨーク・タイムズ紙のインタラクティブ・ニュース部門を統括するアーロン・フィルホファー氏は、「データジャーナリズムという言葉の響きは地味だが、ピューリッツア賞を取る場合もある」と述べた。

 具体例は米南フロリダ州のサン・センチネル紙による「スピーディング・コップス」(スピード違反の警官たち)だ。同紙は、調査に3ヶ月をかけ、約800人の警官がスピード違反をしていたことを暴露した。2012年の一連の報道で、今年、同紙は公共サービス部門でピューリッツア賞を受けた。

 データジャーナリズムを担当するチームの話になり、フィルホファー氏はニューヨーク・タイムズでデータジャーナリズムの専門チームは自分ひとりという時代から、現在は18人のスタッフを抱えるまでになったと述べた。

 米コンピューター雑誌「ワイヤード」のイタリア語版で働くパネリスト、グイド・ロメオ氏が同誌のデータチームはいまだに自分ひとりだけだと発言すると、フィルホファー氏はデータジャーナリズムの実践には「大掛かりなチームは必ずしも必要ではない。サン・センチネルも小規模のチームで実行した」と補足する。「どのニュース編集室でも、やろうと思えばできる」。

 ニュース編集室とウェブ技術とをつなぐ活動を支援する米ナイト・モジラ・オープンニュースのディレクター、ダン・シンカー氏もパネリストの一人となった。同氏は、最近のデータジャーナリズムの優れた例として、米大統領選挙をめぐる報道をあげた。「4年ごとに行われるので、テクノロジーの進展振りが比較できる」。

 例えば、公益のための調査報道を主眼とするニュースサイト、プロパブリカが生み出した、選挙期間中に送られた募金依頼の電子メールを分析した「メッセージ・マシン」。プロパブリカはメールと人口動態から、どこでどんなことがトレンドになっているかをサイト上で示した。

 複数のパネリストが、選挙結果の予想家として知られる統計学者でブロガーのネイト・シルバー氏の分析を優れたデータジャーナリズムの1つとして挙げた。

 2008年、シルバー氏は政府が公表するデータや世論調査の結果から、大統領選で全米50州49州の勝敗を的中させた。昨年の大統領選では50州の投票結果を完璧に予測した。フィルホファー氏は「データジャーナリズムの勝利だ」という。「現状を切り取って見せたと同時に、未来を予言して見せたからだ」。しかし、「危ないのは、世界中の編集幹部が『自分たちもシルバーが欲しい』と言い出すこと」という。


 実際に、伊ワイヤード誌のロメオ氏は「何故、シルバー氏のような人材がイタリアにいないのかと悩んだ」という。

 「シルバー氏の予測はあくまでも過去の例に基づいたもの。必ずそうなる、ということではない」(フィルホファー氏)。

 聴衆の中にいた、英ガーディアン紙のデータジャーナリズム担当者ジェームズ・ボール氏は「確かにシルバー氏は間違うこともある。2010年の英国の総選挙の結果でも予測がはずれた」と発言した。

―共同作業とデータジャーナリズム

 EJCとOKFが共同開催した別のセッション「データとジャーナリズム -国境を超えた共同作業」は、ジャーナリズム祭の2日目に開催された。

 2010年、内部告発サイト「ウィキリークス」が、米軍にかかわる大量のデータを入手し、ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、仏ルモンド紙、ドイツのシュピーゲル誌など欧米の大手メディアと共同でデータを分析し、数々の報道につなげたことを記憶している方は多いだろう。データの量が膨大で、複数国にまたがる事象を取り扱う場合、共同作業は欠かせないーこれがこのセッションのメイン・テーマだった。

 ガーディアンは日常的にデータジャーナリズムのプロジェクトを手がけているため、その手法をウェブサイトに掲載し、情報を共有できるようにしている。

 「扱うデータ量が大きくなるにつれて、複数のメディア間で協力をせざるを得なくなっている」と同紙のデータジャーナリズム担当者でパネリストの一人、ボール氏が語る。税金逃れを暴露するプロジェクトの実行には、40以上のメディア組織と共同作業を行ったという。

「データの学校」のワークショップについてさらに詳しく知りたい方は関連ウェブサイトをご参照願いたい。

―データジャーナリズム賞を選出

 ジャーナリズム祭4日目の27日、非営利組織「グローバル・エディターズ・ネットワーク」(GEN、本部パリ)が今年の最優秀データジャーナリズム賞の最終候補72を発表した。世界中から送られてきた、300を超える実践例の中から、選出された。

 調査報道部門、ストーリーテリング(伝え方)部門、アプリ部門、ウェブサイト部門があり、それぞれの最優秀賞が選ばれる。1つの部門に対し、大手メディアから1つ、中小メディアから1つ選出されるため、合計8つのメディア組織あるいは個人が最優勝賞を受け取る。賞金総額は1万5000ユーロ(約190万円)だ。最終結果は6月19日と20日、パリで開催されるGENニュース・サミットで発表される。日本の媒体では、朝日新聞による、憲法改正についての政治家の姿勢を表にした例が出ている。

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補足:

この賞の結果を、朝日新聞の平和博記者がブログで報告している。

データジャーナリズム賞を受賞した7作品

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 最後に、基調講演を振り返りたい。

 3人のスピーカーの中で、最初が米テクノロジー系ウェブサイト「ギガ・オム」のブロガー、マシュー・イングラム氏だ。講演のタイトルは「魚に歩き方を教えるには?――旧来メディアが新しいメディアから学べる5つのこと」。「旧来メディア」(伝統メディア)とは新聞やテレビを指し、「新しいメディア」とはネットメディアのことだ。

 5つの提言とは①オープンであること(「読者と意思疎通を取らない旧メディアはまるで『要塞』のようだ」)、②情報源を示すこと(「ネット・サイトはハイパーリンクで情報源を示している」)、③人間らしさを出すこと(「間違えることもあることを認める」)、④ニュースを過程としてとらえること(「24時間の報道体制が現実化し、どんなニュースも『その時点でのまとめ』に過ぎない)、そして⑤「焦点を絞ること」(「すべてをカバーしようとするな」)だった。

 筆者は会場で、「ネットで無料情報があふれているが、職業としてのジャーナリズムは将来なくなるか?」と聞いてみた。イングラム氏は「これまでにもお金をもらえなくても発信をする人はいた、例えば芸術家や詩人だ」。市民から報酬をもらうためには「その他大勢とは違う何かを提供できることだ」。

 二人の目のスピーカー、エミリー・ベル氏は、米コロンビア大学のタウ・センター・フォー・デジタル・ジャーナリズムのディレクター。同氏もこれからの流れとして「特化と個人化」を指摘したのが印象的だった。「将来、ジャーナリズムの規模はもっと小さくなる」、「一人ひとりの記者が読者とつながり、一つのコミュニティー空間を作ることが必要だ」。

 最後のスピーカーは、米起業家でエンジニアのハーパー・リード氏。昨年の米大統領選挙では、オバマ大統領の再選運動に参加した。ビッグデータの分析やソーシャルメディアの活用など、デジタル技術を駆使した。ビッグデータを活用すれば、より深みのある報道ができるとして、「数学をジャーナリズムにもっと使ってもいいのではないか」―。

 日々増えてゆくデジタル・データを分析しながら、新たなジャーナリズムを生み出す過程を追体験した数日間だった。

 同時に、日本でもこのような国際的なジャーナリズムのイベントが開催されたら、大きな活性剤として働くのではないかとも思った。しかし、「個人化と特定化」といわれても、「中立報道」への圧力が強く、署名記事が一般化してしていない日本の新聞ジャーナリズムにとって、馬耳東風に聞こえる可能性もあるがー。

ご参考

データジャーナリズムについては、上で紹介した朝日の平記者のほかに、以下の方々が継続して書いている。

佐々木俊尚さんによるデータジャーナリズムとは

津田大介さんによる解釈

赤倉優蔵さんによる解説
by polimediauk | 2013-08-07 21:23 | ネット業界
 インターネットを使って、誰もが気軽に情報を発信できるようになったが、自由闊達な議論が発生すると同時に、嫌がらせ行為に相当する発言、暴力的な発言も、ネット界にそのまま流れる状況が生まれている。

 報道の自由を維持しながら、いかに暴力的な、あるいは差別的な表現から市民を守るのかが、焦点となってきた。

 英国やフランスで発生したネット上の暴言の事例を紹介してみたい。

―英国の事例 ツイッターの場合

 最も最近の例は古典学者で歴史物のテレビ番組のプレゼンターでもあるメアリー・ビアード教授のケースだ。

 長い銀髪のヘアスタイルとメガネがトレードマークとなっている教授は、過去にBBCのパネル番組に出演した後で、容姿を批判したり、女性であることを蔑視するつぶやきを自分のツイッターのタイムラインに受けるようになった。

 こうしたつぶやきを発する一部の利用者と「対話」をネット上で行うことで窮地を切り抜けてきた教授だが、今月3日、「爆弾をしかけたぞ」というつぶやきを受け、警察に通報した。

 4日時点で、ツイッター社は「個々のケースについてはコメントしない」としている。

 7月末には、新たな10ポンド(約1400円)紙幣に女性作家ジェーン・オースティンの姿が印刷されるよう、キャンペーン運動を行った女性活動家キャロライン・クリアドペレス氏と、彼女を支援した議員ステラ・クリーシー氏のツイッターに、脅し文句のツイートが1時間に数十も送られる事件が発生した。

 ツイッター社側は当初すぐには対応せず、米本社のニュース部門担当者が自分のツイッター・アカウントをロック状態にし、苦情を受け付けないかのような姿勢を見せた。

 その後、一定の知名度を持つ女性への暴言ツイートは女性の新聞記者や雑誌記者にまで拡大した。

 一連の事件がメディアで報道されると、より使いやすい「悪用を報告する」ボタンを採用するようにツイッター側に求めるオンラインの署名が、12万5000件集まった。野党・労働党の女性幹部もこの事件の重要さを取り上げるようになった。

 3日、ツイッター英国社のゼネラル・マネージャー、トニー・ワン氏は、暴言ツイートを受け取った女性たちに対し謝罪した。また、ツイッター社のブログ上で、暴言を防ぐために方針を見直すことを明言し、アップル社が採用するIOSを使う機器ばかりではなく、すべてのプラットフォームで「悪用を報告する」というボタンを9月末までに付けると発表した。

 4日、女性ジャーナリストのカイトリン・モーラン氏は、象徴的な行為として、この日一日、ツイッターを使わないと宣言した。

―既存の複数の法律で対応

 英国のそのほかのネット上の暴言の多くが、既存の法律で処理されてきた。

 昨年4月、あるサッカー選手が19歳の女性への性的暴行罪で有罪となった。性犯罪の事件では、報道機関は犠牲者の名前を報道することを禁じられている。これはソーシャルメディアにも適用される。しかし、数人がこの19歳の女性の個人情報の割り出しをはじめ、実名がツイートされてしまった。男性7人と女性2人が性犯罪改正法違反で有罪となり、罰金を科された。

 秋には、ある上院議員が、5万人を超えるフォロワーを持つ人権運動家の女性から、児童性愛主義者であることを暗示するツイートを発信された。議員はこれが事実無根であるとして、女性を名誉毀損で訴えた。裁判で、女性は5万ポンド(約750万円)の損害賠償を支払うことを命じられた。

 リアルの世界の法律がソーシャルメディアでも適用されるケースが増えている。ネット以外の世界でやってはいけないことは、ネット界でも許されないと考えると、分かりやすい。

―欧州諸国とヘイトスピーチ

 日本では、最近、在日コリアンを「殺せ」などとデモ行進をする一部団体がいると聞く。これは「ヘイトスピーチ」の1つだろう。

 ヘイトスピーチの直訳は「憎悪のスピーチ」。憎悪に基づく差別的な言論を指す。人種、宗教、性別、性的指向などを理由に個人や集団を差別的におとしめ、暴力や差別を助長するような言論だ。

 世界では多くの国がヘイトスピーチを禁止する法律を制定している。

 国際的には個々の人間の自由権に関する国際人権規約ICCPR(International Covenant on Civil and Political Rights)が「差別、敵意、あるいは暴力を先導する、国の、人種のあるいは宗教上の憎悪の主張は法律で禁止されるべき」としている。また、人種差別撤廃条約が人種差別の煽動を禁じている。

 英国(イングランド、ウェールズ、スコットランド地方)では複数の法律(公共秩序法、刑法と公共秩序法、人種及び宗教憎悪禁止法、サッカー犯罪法など)によって、肌の色、人種、国籍、出身、宗教、性的指向による、ある人への憎悪の表現を禁じている。もし違反した場合は罰金か、禁錮刑、あるいはその両方が科せられる。

 ドイツでは、「民主的選挙で政権を取ったナチスがユダヤ人大虐殺を引き起こした反省から、人種差別的で民主主義を否定する思想を厳しく批判する『戦う民主主義』を採用している」という(共同通信記事、「新聞協会報」7月30日付)。

 ヘイトスピーチには刑法の民主煽動罪が適用され、これは「特定の人種や宗教、民族によって個人、団体の憎悪をあおることを禁止し、違反すれば最長で禁錮5年」が科せられる(同)。

 ナチスやヒトラー総帥を賞賛する言動、出版物の配布も刑法によって禁じられているという。

 フランスでも英国やドイツと同様の働きをする複数の法律があり、1990年には、ホロコースト(ナチスによるユダヤ人虐殺)の否定を禁止するゲソ法が成立している。

―フランスと「良いユダヤ人」

 昨年10月、フランスで、「unbonjuif」というハッシュタグ付きのつぶやきが氾濫した。これは「良いユダヤ人」という意味だが、「良いユダヤ人とは死んでいるユダヤ人」など、反ユダヤ的な文章や画像、ホロコーストを笑うジョークなどがツイートされた。

 同時期、「もし私の息子が同性愛者だったら」、「もし私の娘が黒人男性を家に連れてきたら」などを意味するフランス語のハッシュタグを使って、人種差別的な、または同性愛差別的なツイートも発生した。

 一連の反ユダヤ主義的ツイートについて、フランスユダヤ学生連盟(UEJF)が抗議運動を開始。ツイッター幹部とミーティングの機会を持ち、問題のツイートの削除と利用者情報の開示を求めた。ツイッター社は問題となったツイートの一部を削除することに合意したものの、利用者情報は渡さなかった。

 同時期、ドイツ警察からの依頼を受けて、ツイッター社は、独ハノーバーを拠点にするネオナチ・グループが使っていたアカウントを閉鎖している。

 今年1月、UEJFが反ユダヤ的なツイートを広めた利用者の情報開示をツイッター社に求めていた件で、パリの裁判所は、この情報をUEJFに渡すよう命じた。

 もしこの命令にツイッター社が2週間以内に従わないと、1日に最大で1000ユーロ(約13万円)の罰金を科すという厳しい判決となった。

 言論の自由を信奉するツイッター社がこれに応じなかったため、3月、UEJFは同社を刑法違反で訴え、CEOのディック・コストロ氏に3850万ユーロ(約50億円)の損害賠償の支払いを求めた。

 ツイッター社は控訴したものの、7月、最後の判定が出て、UEJF側に利用者情報の一部を渡すことになった。

 ツイッター社が「フランス政府に屈服した」という評価が一部で出た。

ー市民レベルでの運動が発達

 欧州各国では、ヘイトスピーチを行った人を罰する法律が存在する場合が多く、ほかには名誉毀損法、人種差別禁止法など関連する法律を適用して、ネット上の暴言を処理している。市民が反対運動、抗議運動を行って署名を集めたり、著名人が「ツイッター利用をボイコットする」と宣言したりなど、市民レベルでの運動が活発だ。

 報道の自由の維持と暴力的な発言の削減との兼ね合いの間で、試行錯誤が続いている。
by polimediauk | 2013-08-05 08:19 | ネット業界
 英中央銀行が、作家ジェーン・オースティン(「高慢と偏見」、「エマ」など)を10ポンド紙幣の裏に印刷すると発表したことをきっかけに、女性ジャーナリストや政治家のツイッターに「殺すぞ」、「レイプするぞ」などの書き込みが殺到する事件が発生した。3日、ツイッター社の英国幹部が、悪質な書き込みを受けた女性たちに謝罪。一連の書き込みは「許されない」、今後、こうした行為をなくするようさらに努力する、と述べた。事件発生から1週間以上が過ぎており、「対応が遅すぎた」という声もある。

 中央銀行が、10ポンドの紙幣の裏に、現在描かれているチャールズ・ダーウィンの代わりに、女性の作家オースティン(1775-1817年)を印刷すると発表したのは先月24日のことだ。

 2016年からは、現在5ポンド紙幣の裏に登場する社会改革者のエリザベス・フライの代わりにウィンストン・チャーチル元首相が描かれることになっている。そうなると、エリザベス女王以外では、女性の姿が英国の紙幣から消えてしまうー。この点を懸念した英国内の女性団体は、女性が紙幣に印刷されるよう、キャンペーン運動を始めた。

 運動の中心となったのが、ジャーナリストのキャロライン・クリアドペレス氏であった。女性を選出するようにというオンラインの署名も3万5000人分が集まった。2017年以降に使われる10ポンド紙幣の裏に描かれる人物としてオースティンが選ばれたことで、クリアドペレス氏の努力が実った格好となった。

 ところが、中銀の発表直後から、「殺すぞ」、「レイプするぞ」、「爆弾をしかけてやる」などの脅しのつぶやきが、クリアドペレス氏のツイッターに押し寄せた。1日に数十回の頻度で発生したという。

 野党労働党の女性議員ステラ・クリージ氏がクリアドペレス氏を擁護する意見を表明すると、今度は彼女のツイッターに同様の悪質なつぶやきが押し寄せた。その後の数日で、ガーディアン紙、インディペンデント紙、米タイム誌の欧州特派員など、複数の女性ジャーナリストのツイッターにも「爆弾をしかけるぞ」などのつぶやきが出るようになった。

 女性たちが警察に通報し、これまでに数人の逮捕者が出ている。

 英国では、一連のツイッター事件は連日、テレビや新聞で報道された。

 しかし、ツイッター側の反応は必ずしも早くはなかった。被害にあった女性たちは脅しのつぶやきを止めるための対応をツイッター側に依頼したが、返事がないままに数日が過ぎた。

 筆者は、英民放チャンネル4の7月30日放送分で、ツイッター米本社の「信頼と安全性」部門の責任者デル・ハービー氏の返答を視聴した。同社は悪質なつぶやきが発生しないよう、ベストを尽くしていると説明していたが、何故英国で大騒ぎになるのか分からないような様子を見せ、米英の温度差を感じた。

 BBCの報道によると、「悪用を報告する」というボタンをツイッターの機能に入れるべきだという署名が、2日時点で約12万5000人分、集まったという。

 ツイッター英国のゼネラル・マネージャーとなるトニー・ウオング氏が、ツイッターの自分のアカウントから、虐待を受けた女性たちに謝罪したのは3日だった。

 「女性たちが経験した虐待はまったく受け入れられないものだ。リアルの世界で受け入れられないし、ツイッターでも受け入れられない」

 同じく3日、ツイッター英国は今回の事件や利用者からのフィードバックによって、嫌がらせについての方針をより明確にしたとブログ内で述べた。

 「悪用を報告する」というボタンはIOSを使う機器ではすでに使えるようになっており、9月からはそれ以外の機器でも使えるようにするという。
by polimediauk | 2013-08-04 07:24 | ネット業界
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(個人情報を保存しない検索エンジンDuckDuckGo ウェブサイトより)

 利用者の検索情報を保存・追跡しないという検索エンジン、DuckDuckGo(ダックダックゴー)の人気が急上昇中だ。6月初旬、米政府が大手ネット企業のサーバーに「直接アクセス」し、個人情報を収集するプリズムと呼ばれる行為を行っていると、英ガーディアン紙が報道してから、トラフィックがあっという間に増えたという。

 英ガーディアン紙の記事(7月10日付)が、DuckDuckGoの創業者ガブリエル・ワインバーグ氏(33歳)への取材を通じ、詳細を報告している。

 ワインバーグ氏によれば、プリズムについての報道が出る直前、DuckDuckGoの検索エンジンは1日に170万件ほど利用されていた。米NSA(国家安全保障局)による大規模な個人情報収集が実行されていたとする報道が連日続き、6月半ばには300万件を超えるようになったという。

 DuckDuckGoという社名は、子供用ゲーム「DuckDuckGoose」をもじったものだ。

 米フィラデルフィアにベースを置くDuckDuckGoでは、約20人が働いている。

 ネット利用者がDuckDuckGoを検索エンジンとして使う確率は低い。デフォルトで入っている検索エンジンをそのまま使い続ける人が圧倒的に多いからだ。

 それでも、クッキー(サイトの提供者が、ブラウザを通じて訪問者のコンピュータに一時的にデータを書き込んで保存させる仕組み。ユーザーに関する情報や最後にサイトを訪れた日時、そのサイトの訪問回数などを記録しておくことができる***)を使わない、利用者のIPアドレスを保存しない、ログインを必要としない、接続が暗号化されているなどの特徴があるDuckDuckGoは、次第に利用者を増やしてきた。もしNSAが利用者情報の引き渡しをDuckDuckGoに命じても、渡すべきものがないのだ。

―「グーグルでは探しだせなかったものがあった」

 ワインバーグ氏はこれまでに、友人を探すサイトOpoboxや同様のサイトClassmates.comなどを立ち上げ、売却。時間に余裕が出来たのでステンドグラスを学ぶ教室に参加したところ、先生が参考用のウェブサイトのリストを渡してくれた。このリストに載ったウェブサイトがグーグルの検索では出てこないものであることを発見し、グーグルよりもよい検索エンジンを作れるのではないかと考えた。

 そこで、ウィキペディア、米クチコミ情報サイトYelp、その欧州版Qypeなどを使って、より質の高いエンジンを作ろうと思ったという。

 利用者の検索データを保存しないことに決めたのは、個人の情報が外に出てしまいすぎると思ったからだ。2006年にはAOLが65万人の利用者によるグーグル検索履歴を流出。この情報の一部を使って、ニューヨーク・タイムズの記者が特定の個人に取材を行う事態が発生した。
 
 ガーディアンの記事によれば、パソコンを使ってグーグル検索をしている場合、グーグルはコンピューターのIPアドレスを知っている。これによって、どのインターネットプロバイダーを使っているかやコンピューターの位置情報も持っている可能性があるという。もしログイン状態だと、これまでの検索履歴も知っている。

 携帯端末でログインしている場合、位置情報の履歴についても把握しているかもしれないという。

 検索行為は非常に個人的な行為だという認識から、ワインバーグ氏は、政府がこうした情報を欲しがるだろうと想像した。「AOLの情報流出の事件を見て、政府が情報を必要とするのは避けられない動きだと思った。検索エンジンやコンテンツの制作側がデータを渡すケースも増えるだろう」。

 「検索データは最も個人的なデータだと思う。自分が抱える問題や欲しいものを入力しているのだから。ソーシャルメディアで公的に何かを入力している場合とは違う」とワインバーグ氏。

 では、グーグルは何故検索履歴などを保存しているのだろう?

 ワインバーグ氏によれば、「グーグルが、利用者についてこれほど様々な情報を保存する必要があるというのは神話だ。検索行為からグーグルが得る収入のほとんどが、利用者が検索エンジンに何を検索するか、から生じている。これ以外にはない」。

 グーグルメールやユーチューブ(グーグル傘下)など、検索以外の利用から収入を得ることは難しい、とワインバーグ氏。結果として、「ネットを利用する間、常に広告が出ている」状態となる。ガーディアンは、ディスプレー広告のサプライヤー最大手ダブルクリックをグーグルが所有することを指摘する。

―「たいがいの人はグーグルを信頼」

 検索エンジンについてのニュースを集めるサーチ・エンジン・ランドのダニー・サリバン氏は、「大多数の人は、プライバシーについて懸念を持つものの、検索をプライベートにしたいという人はほとんどいない」とガーディアンの記事の中で指摘している。グーグルの検索エンジンの利用は一日に130億件であるのに対し、DuckDuckGoは300万件なのだ。

 その理由は、「たいがいの人は、グーグルを信頼しているからだ」としている。

***クッキー情報参考サイト
by polimediauk | 2013-07-28 20:17 | ネット業界
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(米ニューヨーク・タイムズに掲載された無線ランの動きを示す画像 サイトより)

 WI-FI(無線LAN、ワイヤレス)機能は非常に便利で、私も自宅で複数の電子機器をこれでつないでいる。

 しかし、目には見えないWI-FI情報から、他者がさまざまな情報を収集することが出来る。

 この点を改めて気づかせてくれたのが、米ファッション小売チェーンNordstromのWI-FI情報を利用した顧客サービスだ。

 テクノロジーに詳しい人にとっては、今更のことだろうけれども、一部始終を紹介してみたい。

 英ニュース週刊誌エコノミスト(7月21日付、ウェブサイト)によると、Nordstromは、昨年10月から、数ヶ月にわたる実験として、米国内の17の店舗に入った客や通り過ぎた人が持っていた、WI-FI機能付のスマートフォンやそのほかの電子機器から端末識別IDや位置情報などを収集し、店舗内外での人の動きを調査していた。

 5月上旬、Nordstromは情報収集を公にし、テレビ局が報道した。ダラス州のノースパーク店では、入り口に調査の旨を告げるお知らせの紙が出されており、希望しない人はスマートフォンなどの電源を切るように書かれていた。

 情報収集の技術を提供したのはユークリッド(Euclid)という企業である。

 テレビでの報道後、Nordstromは作業を停止してしまった。

 7月になって、米ニューヨーク・タイムズがこの件を取り上げた。

 この記事には記者が取材をした動画がついている。この記事の上の写真はサイトのスクリーンショットだが、緑色の線はスマホなどを持っている人の動きを示す。

 さまざまな店舗が人の動きについての情報を収集しているのは、考えてみれば、私たちはすでに知っている。店舗内の監視カメラは珍しくもない。

 しかし、改めて情報収集の一端を知ると、驚いてしまうのではないか。

 動画の中で紹介されているのは、先の米小売のようにスマホなどのWI-FI機能から情報を収集するサービスを米シスコが提供し、コペンハーゲン空港で使われている例だ。

 また、Nordstromと同じユークリッド社のサービスを使う米カリフォルニア州のフィルズ(Philz)・コーヒーは、何人の客が店舗内に入っているかという情報によって、サービスの向上に役立てている。

 店舗内に設置されたカメラが撮影した動画を分析し、顧客(男性か女性化、大人か子供か)がどこにどれぐらい滞在したかを調査するサービスを利用しているのがリテール・ネクスト社。WI-FI機能を持つスマホを持つ人が来店した場合、たとえWI-FIにつながっていなくても、スマホは自動的にWI-FIにつながろうとアクセスポイントを探すので、顧客の位置情報を収集できるという。

 それぞれの携帯機器には個別の認識コードがついているため、ある客が2度目に店舗を訪れたことや、どのぐらいの頻度で訪れたかなどが分かる。

―洗練化されたカメラ

 ニューヨーク・タイムズの記事によれば、人の動きを監視するカメラの性能はどんどん進化しており、顧客が店内で何を見ているのか、どんな気分だったかまでを記録できるという。

 英企業リアルアイズは、ネット上の広告を人がどのように見ているかなど、顔の表情に関する情報を収集するサービスを提供しているが、リアルの世界では、実際に店舗を訪れた人が、チェックアウトのレジでどんな表情をするのかを分析している。

 ロシアのスタートアップ企業シンケラ(Synqera)は、顔の表情を基に、性別、年齢、気分を察知し、それぞれ異なる広告メッセージを提供するソフトを開発している。

 小売店に電話番号などの個人情報を提供した顧客がいれば、WI-FI機能を通して得た情報にさらに詳細な情報が加わり、個人に特定したサービスが提供できる。そんなサービスを提供する企業の1つが、ノミ(Nomi)だ。

 「私がメーシー百貨店に入ったとする。入った時点で、メーシー側は私が店舗に入ったことを認識し、私に適した情報を私の携帯に伝えてくれる。まるでネットの書籍小売アマゾンのようなサービスができる」とノミの社長はニューヨーク・タイムズに語っている。

 タイムズ紙は、多くの人が自ら進んで個人情報を提供しているエピソードを最後に紹介している。プレースト(Placed)という米企業が、小売店舗のどこにいるかを利用者に聞いてくるアプリを発売した。自分の位置情報を教える代わりに、現金やアマゾンやグーグルプレイなどのギフトカードなどがもらえる仕組みだ。昨年8月のアプリの発売から、約50万人がダウンロードしたという。

―WI-FI機能で情報収集の仕組みとは

 先のエコノミストの記事が、とのようにして情報収集が可能になるのかについて書いている。

 WI-FI機能がついたスマホ、ラップトップとWI-FIのアクセスポイント(ベース・ステーション)との間には常に情報の行き来がある。端末機器がつながることができるアクセスポイントを探しているからだ。

 その過程で、スマホなどは出荷状態の端末機器の識別IDなどの情報を公に発信している。端末機器が「スリープ」状態になっていても、エコノミストによれば、スピードは遅くなるものの、こうした情報を外に出していることは変わりないという。

 小売店の店舗内にアクセスポイントが設置されていると、これに向かって、端末機器がWI-FIにつながろうとして情報を発信し、機器の識別ID,位置、この機器を持つ顧客がどのように店舗内を動くかなどの情報が小売店側に入る。

 エコノミストによれば、これは今はやりの「小売の科学」(retail science)ともいえるようだ。

 現在、トラッキング(追跡)機能は1990年代と比較して格別に進歩しており、実際に店舗に入らず、ウインドウをのぞいただけでも、その人のスマホの識別IDなどが小売店側は取得できてしまうという。

 WI-FI機能がついた機器は、過去に無線ランにつながったアクセスポイントも通常示すので、普段どこで無線を使っているかも分かってしまう。自宅や仕事場などの情報を得ることが可能になる。

 プライバシーが侵害されていると心配する人も出てくるだろう。7月16日、先のユークリッド社などは、米シンクタンク「プライバシーの未来フォーラム」(Future of Privacy Forum)とともに、WI-FIを使ったトラッキングについて規定を設ける計画を発表している。

 以上、通信関係者には当たり前のこととは思うが、「自覚しないままに情報が取得されている」感がまだまだあるように思うので、書いてみた。
by polimediauk | 2013-07-27 20:58 | ネット業界
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 先月始まったばかりの日本版に続き、米ハフィントン・ポストが今週、新たな海外版をスタートさせた。今度は、チュニジア、モロッコ、アルジェリアなどの北西アフリカ諸国=「マグレブ」地域=に向けた、フランス語版だ。

 ハフィントン・ポストン創業者アリアーナ・ハフィントン氏のブログによると、 マグレブ向けのサイトのオープンは、この地域が「社会的、政治的、経済的に大きな変革を遂げている時」にあたる。「世界の視線はマグレブとこの地域に住む人々に注がれている」。

 新サイトはマグレブの民主主義の成長に一定の役割を果たすことも目指しているようだ。

 サイトはフランス語だが、内容を英語、スペイン語、イタリア語、日本語、ドイツ語に翻訳することで、マグレブの声が世界に伝わってゆくようにしたいという。

 6人から8人の編集スタッフをチュニジア、モロッコ、アルジェリアにそれぞれ配置する。

 ハフィントン・ポストは本国の米国以外に、英国、カナダ、フランス、スペイン、イタリア、日本でサービスを開始している。今年秋にはドイツでもスタートする予定だ。
by polimediauk | 2013-06-26 18:58 | ネット業界
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            (「BIG DATA」の表紙)

 「Big Data」(ビッグデータ)と題する本を、少し前に、書いた人に話を聞くために読んだ。5月末、講談社が「ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える」として出版した本だ。

 「ビッグデータ」(巨大な量のデータ)という言葉を意識して聞いたのは、作家・ジャーナリストの佐々木俊尚さんの有料メルマガで、「ビッグデータでプラットフォーム時代を生き延びる」という項目について書かれた文章(2012年1月、2月)を読んだ時だ。

 例えば、以下のような文章があった。

ビッグデータというのは、文字通り「巨大なデータ」。インターネットが普及するようになってから20年近くが経ち、ネット企業には膨大な量のデータが蓄積されるようになってきています。検索エンジンのデータベースや、ショッピングサイトの顧客の購買履歴。ソーシャルメディアで人々が発信した情報、ウェブメールなどでの人と人のやりとり。動画や記事。

  これらの膨大なデータが積み上がったまま放置されているのはもったいない、なにか有効活用できないだろうか?というのが、ビッグデータという考え方になって表れています。つまりビッグデータという概念は、単なる巨大なデータを指すだけでなく、それにどんな価値を見いだし、どのように有効活用するのかという方策も含まれているのです。(引用終)


  その後、さまざまなところで、「ビッグデータで儲ける」趣旨のビジネス記事を読み、「これだけでは、なんだか味気ないなあ」と思っていた。

  その一方で、もし私たちのネット上の足跡が大量の情報を形作るのであれば、その情報一つ一つがどこか一箇所にまとめられ、私たちが思いもよらなかったやり方で使われることには、懸念を持った。

  そこで、今年3月、英エコノミスト誌のデーターエディター、ケネス・クキエさんが、英オックスフォード大学オックスフォード・インターネット研究所のビクター・マイヤー・ショーンベルガー教授との共著で「ビッグデータ」という本を書いたことを知り、早速、一体ビッグデータをどう思うのかをクキエさんに直接聞いてみようと思った。

―読んでいるときに思ったこと

  読みはじめたときの私は、疑心暗鬼でいっぱいだった。ビッグデータの本を書くぐらいだから、著者たちはビッグデータの収集や活用に肯定的な意見を持っている人に違いない。

 逆に、私はビッグデータについて心配なことばかり。プライバシーはどうなるのか?勝手に(?)データを使われたら、たまらない。それに、ビッグデータの効用を信じるあまりに、「データがこう言うから」ということで、人間が判断をする余地がなくなってしまうのではないかー?

 第一、データをそれほど信じきるのなら、最終的には、データの分析で何でも済ませてしまい、最後は、人間をロボットに置き換えようなんてことにならないのだろうか?効率性を重視するなら、ロボットが良いという結論にならざるを得ないではないか?

 しかし、最後まで読むと、ビッグデータとは何で、何ができて、どんな危険性があるのかをリストアップした、非常に分かりやすい本であることが分かった。

 ページをめくると、まず、ビッグデータで何ができるかが何十ページにもわたり、列挙される。これがなかなか、「すごい」あるいは、「恐ろしい」。 生活がさらに便利になっている具体例が出てくる。

―何故ではなく「何が」

  ビッグデータの特質が語られる中で、驚くのは、データは「何故」を示さないという指摘だった。人間が物事を考えるときに「何故か」を普通に考えてしまうのとは対照的だ。つまり、人間はついつい、因果関係を考えてしまう。それが癖になっているのだ。

  ところが、データは因果関係を考えない。データが扱うのは、「何が」という部分のみだ、と本は説明する。

 例えば、ある道路を「毎時間、xxx台の車が走る」ということのみをデータは示す。「何故、xxx台の車が通るのか」を示さない。因果関係を見つけるのは、データを扱う人間なのだ。

 恐ろしいなと思ったのは、データによって、未来図が描けてしまうこと。例えば、犯罪の発生を予測することができる。便利?防犯に役立つ?確かに、そうだ。しかし、行過ぎることはないのだろうか?いまだ起きていない犯罪のために、誰かを拘束してしまうことはないのだろうか?(映画好きの方は、米映画「マイノリティー・リポート」を思い出していただきたい。)
 
 この本の醍醐味は、ビッグデータの危険性とマイナスの影響を防ぐための対処法を記してある点だ。この部分は本の最後のほうに出てくる。しかも、それほど長くはない。でも、とても大事な部分だし、ここを読むと読まないでは、ビッグデータとの付き合い方、考え方がずいぶんと変わってくるだろうと思う。

 著者が、「ビッグデータはこんなこともできる!」とほめあげたくて書いたのか、それともビッグデータの危険性の警告をしたくて書いたのか、気になった。

 そこで、クキエさんに会った時に、聞いてみた。すると、「僕はビッグデータの活用を人に勧めているわけではないよ」、「あばたもえくぼでほめるつもりはない」という答えが返ってきた。

 「自分はメッセンジャーだと思っている」、「世の中で何が起きているのかを読者に伝えるのが僕のジャーナリストとしての役目だ」―。

 ビッグデータを利用するときに気をつけること、そして何がなされるべきなのかーそれは本の最後のほうに書いてあるので、じっくり見ていただけたら幸いである。

 人間はデータに操られる必要はない。データを使うのはあくまでも人間ー私はこの本を読んで、そんなメッセージを受け取った。

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 クキエさんのインタビュー記事も良かったら、ご参考に:

(5)データエディターとはどんな仕事?(上)

(6)データエディターとはどんな仕事?(下)
by polimediauk | 2013-06-16 01:37 | ネット業界
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(内部告発者スノードン氏の記事をトップにした、英ガーディアン紙の6月10日号)

 29歳の米国人エドワード・スノーデン氏が米政府による個人情報の収集の恐ろしさについて内部告発した事件を、英ガーディアンと米ワシントン・ポスト紙が先週から報じている。

 ここ数日で、日本語でも多数報じられるようになったが、「自分には関係のない話」、「どうせ米国(=他国)のこと」、「全体像がつかみにくい」と思われる方は、結構多いのではないだろうか。

 私自身は結構危機感を感じている。各国政府や企業がネット上で私たちの情報を監視・収集していることは知識として知ってはいたが、具体的な監視プロジェクトの名前や実情が暴露されてみると、いささかショックだった。

 この問題は、この文章を今読んでいるあなたや書いている私に直接関係のある話に思える。

 例えば、米国企業のネットサービスを使っていない日本人のネット利用者はかなり少ないだろう(実在しない?)と思う。また、米政府が外国の情報を監視・収集するとき、「日本は関係ない」とはいえないだろうと思う。現に、英国の通信傍受機関GCHQが、米政府が監視プログラムで取得した情報を使っているという疑念も出て、英政府の関与が問題となった。

 情報が錯綜しているので、現時点(11日)で、基本的な流れを整理してみるとー。

―ガーディアンがスクープ報道

 6月5日、ガーディアンは、米国家安全保障局(NSA)が大手通信会社ベライゾンなどの利用者数百万人から通話記録を収集していた、と報じた。

 手順としては、外国情報監視法(FISA)に基づいて設置された秘密裁判所が、通信企業に対し、電話記録などの提出を命じていた。

 米政府は後に、ベライゾンに対し数百万人分の電話の通信記録(通話時間、位置、電話番号)を申請していたと認めた。

 6日にはガーディアンと米ワシントン・ポスト紙が、NSAがグーグルやフェイスブック、そのほかのネット企業のシステムに直接アクセスし、検索履歴、電子メールの内容、チャット情報などを入手しており、このような情報取得手法は「プリズム計画」と名づけられていた、と報じた。いずれの企業も、「直接のアクセスはさせていない」、「プリズムは聞いたことがない」と表明した。

 8日、米国家情報長官がウェブサイトでこのプリズムについての情報を掲載した。これによると、プリズムはコンピューター内のプログラムで、先のFISA法に基づいて、裁判所から認可を受けた場合に、外国の情報を電子通信サービス提供者から収集する仕組みだという。米国の電子通信サービス提供者から無差別に情報を収集はしないという。

 しかし、米国外に住む人からすれば、こうした形の情報収集はその国のデータ保護法などに違反する可能性がある。また、何らかの拍子で米国人が対象になってしまう可能性もあるだろう。

 米政府の説明によれば、プリズムの「ターゲット」は米国外であり、テロを防ぐなどの目的がある。

 この「ターゲット」の詳細や米政府と電子通信サービス提供者間の取り決めは詳しく分かっていない。

 プリズムの仕組みはブッシュ大統領時代の2008年に設定され、オバマ政権になっても変更されないままとなっている。

 オバマ大統領は「米国民同士の会話に耳を傾けてはいない」として、米国民に安心感を与えようとした。「100%の安全が保障され、かつ、100%プライバシーが守られて、まったく不都合なことが起きないーということは、ありえない」。

 ウィリアム・ヘイグ英外務大臣は「法を遵守する市民は、心配することない」と述べている。

―データはどこに保存されているか?

 BBCのテクノロジー記者ゾー・クラインマン氏の記事によれば、ネットを利用したときに生み出されるデータ(電子メールやソーシャルメディアの足跡)は、利用者が住む国に保管されているわけではない。例えば、フェースブックの場合、利用者のデータが米国に送られ、保管されることに同意する設定になっているという。

 クラウド・コンピューティングを利用した場合、こうしたサービスの提供者の多くが米国企業であることから、情報の保管が米国になることが多いとアムステルダム大のリサーチャー、アクセル・アーンバック氏は述べる。

―誰が情報を管理したら、私たちは安心できるのか?

 ガーディアンやワシントン・ポストの報道を見ていると、「敵=米政府」と思えるかもしれない。

 しかし、データの監視・収集・保存は常に発生していることだ。ある国の政府が、こうした情報を、例えばテロを防ぐなどの理由で収集することには、一定の正当性があろうかと思う。

 ただ、「国民の多くが承知しない方法で」やった点について、今後、オバマ政権は十分に説明責任を果たす必要があるだろうし、外国の政府(例えば欧州連合)が米政権に説明を求めているというのも、理解できる。

 しかし、今回の事件で思い出さなければならない重要な点は、私たちがすでに知っていることだけれども、大きな企業が私たちのネットの足跡を追跡し、収集し、保管しているという事実だ。

 例えば、グーグルをどう考えるか?

 英エコノミスト誌が、グーグルは一国の政府よりもずっとたくさんの情報を知っている、という記事を掲載している。

 政府が市民の情報を把握することの是非を議論するのであれば、一体グーグルはどうなるのか、と問いかける。

 例えばグーグルは、私たちの電子メールの内容を知っている。ユーチューブで何を見たかも知っている。ウェブサイトで自分のネット上の行動や特徴に呼応する広告が出ていることを、みなさんはご経験があるだろうと思う。

 ある人がテロ行為に結びつくような行動をネット上で見せたとき、グーグルが政府に通報するのは悪いことなのだろうか、良いことなのだろうか?

 グーグルには見られても良いが、第3者に情報が渡っては困ると考えた場合、プライバシー設定などで「第3者に情報を渡さない」という選択肢を選ぶという(例えばだが)こともできるかもしれないが、グーグルに限らず、私たちは、新しいサービスを使った後で、「第3者に情報を渡してもいいですか」という質問に、思わず「はい」と答えてはいないだろうか?そうでないと、今後もそのサービスが使えなくなるかもしれないと考えて、あるいは、「面倒くさいから」。

 エコノミストは「スパイ活動を行っているのは、政府ではなくて、グーグルではないか」と書く。

 まったくそうなのだ。グーグルメールや検索などが無料で使えるから、「いいや」で済ませていいのだろうかー?

 といって、今これを読んでいる方を怖がらせるつもりはないし、自分で対処法があるわけでもない。

 インターネットを一切使わない、仮名を使い続ける、複数のコンピューターを使う、暗号機能をかけるーなどなどが対処法になるのかどうか、分からない。もっと違う方法があるのかもしれないし、またはもっと抜本的なことを変えるべきなのかもしれない。

 BBCの先の記事には、マイクロソフトなどのネット企業がどのような情報を収集しているかのリストが掲載されている。

 そういえば、先日、バンコクにいたときに、いつもどおりグーグルメールにアクセスしようとしたら、「いつもと違う場所にいる」ということで、新たにログインしなければならなくなり、いろいろとてこずった(パスワードを打ち間違え、混乱)。

 これは不正侵入を防ぐための手段であり、その点からはありがたいが、とにかく「あなたのことを良く知っていますよ」という声が聞こえた気がした。

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アップデート情報が入るサイトのご参考
Through a PRISM darkly: Tracking the ongoing NSA surveillance story
by polimediauk | 2013-06-11 23:23 | ネット業界