小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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カテゴリ:ネット業界( 148 )

 いただいたコメントの全文紹介の後半である。4月上旬時点での情報を基にしたものとご了解願いたい。

***

(3)

茨城大学教授古賀純一郎さん

―堀江貴文コメント(登場人物の敬称略)

 IT(情報技術)関連の事業家で21世紀に入り注目されていた人物を3人挙げるとすれば、村上ファンドを立ち上げた経済産業省出身の村上世彰(1959年8月生まれ)、楽天の三木谷浩史(1965年3月生まれ)、そして今回仮釈放となった堀江貴文(1972年10月生まれ)あたりだろうか。うち堀江ら2人は、司直の訴追を受け有罪判決を受けた。

 何が分水嶺となったのか。それは、企業の中で揉まれ、経済システムの中で、企業人、経済人が持つべき最低限の掟を知る環境に身を置く機会があったかどうかに尽きるような気がする。

 三木谷は、大卒後、保守本流企業の筆頭、旧日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行、そこでビジネスの王道を学んだ。これに対し村上は、高級官僚として上からの目線で監督官庁傘下の企業を見ていたのだろう。堀江は、それこそ在学中にビジネスを立ち上げ、それが本業となったのだから、下から這い上がり、試行錯誤を続ける中で走りながらルールを体得することになったのだろう。それが倫理を軽視した経営に繋がったと推察できる。要は、人に上に立つ一流の経営者の在り方を皮膚感覚で学習する機会に恵まれたどうかではなかろうか。

 コンプライアンス(法律順守)がとやかく言われだしたのは、1990年代のことである。CSR(企業の社会的責任)が叫ばれたのは2000年に入ってからだ。利益だけを追求する、古典的な利益優先の企業は社会の中で存在を許されないような立場に今や追い込まれている。有罪判決を受けた2人は、こうした社会の変化を読み違えたということができようか。

 もっとも、有罪判決を受けて服役した堀江貴文。そのブログなどを読むと獄中で、社会そして人間、企業の在り方について熟考する機会をもったようだ。これからは、社会的責任を背に捲土重来をめざす新タイプの経営者として時代の先頭に立っての活動を期待したい。

 寄らば大樹の陰とは一線を画し、堀江は、自らの知恵と力で世の中の荒波に揉まれ、裸一貫で、ライブドアの設立までこぎつけた。有罪判決の基礎となった企業ではあるものの、立ち上げた堀江の企業家精神は大いに評価されるべきであろう。日本人が弱いとされる、こうしたチャレンジ精神の旺盛な企業家をこのまま見捨てるのは多いなる損失と思えて仕方がない。優れた手腕にこれまで欠けていた社会的責任の自覚が備われれば、今後の経営力は、大いに期待できよう。今回の蹉跌を糧に、役割がますます拡大しているIT業界の中で存分にその力を発揮してもらいたいと考えるのは私だけだろうか。

 “七転び八起き”は、再チャレンジが難しいとされる日本経済の活性化にとって不可欠の要素である。増税なき財政再建を目指した第二次臨調などでリーダーシップを発揮した名経営者、故土光敏夫も、当時の法相の指揮権発動でとん挫した昭和29年の造船疑獄で逮捕され、その時の経験がその後の経営で大きな教訓になったと語っている。

 仮釈放後の会見で堀江は、新しいニュース批評に挑戦したいとの決意を語ったようだ。グローバル化、IT化の進展で、メディア界では、ウェブサイトを通じた情報発信がますます重視されるようになっている。新しい感覚を引っ下げた堀江が新境地を開拓すれば、メディア界のみならず、新聞などの既存メディアに対しても新しい刺激となるのは間違いない。堀江が熱心な“放送とネットの融合”にも期待したい。ネット社会に国境はない。国内のみならず、海外に対しても積極的に事業を展開し、日本の情報の対外発信を積極的に取り組んでもらえれば、情報の勝負で強いとは言えない日本にとって大きな朗報となる。再起を切に願いたい。

***

(4)

ワイズプロジェクト 代表取締役殿岡良美さん

―堀江さんをどうご評価なさいますか(ビジネスマン、メディア運営者、起業家、政治的動きなど)

 希代の風雲児だと思っていることはもちろんですが、ご本人も出所当初のコメントで述べられているように、あまりにも社会に対して挑戦的かつ配慮が足りませんでした。そのために、いっときの金権主義の権化のように語られ、落としめられすぎたきらいはあると思っています。(実際にいくつものブログで私は批判し尽くしすぎるくらい批判しました)。

 ですが、彼の持っていた感覚=ネット時代における新しいジャーナリズムの形態に関する予感のようなものは、一定の度合いで確かだったように思います。それは旧メディアに対して強烈なアンチテーゼであり、批判の要素を持っていたのですが、残念ながら当時はIT技術も我々の意識も追いついておらず、旧利権と新興勢力の対峙の問題として飲み語られました。その課題は彼の出所した今日、あらためて継続して考えるべきテーマとなって生きていると思います。

―堀江さんの受刑をどのように受け止められましたか

 これについて当時感じた気持ちは先に引用した「心の中のライブドアショック----私たちは暴力装置の中で生きている」という記事に書きましたが、法的未整備の穴をついて過剰な量刑が彼にスケープゴートとして課されたと思っています。その後に起きた数々の経済事件の主犯が、彼よりも遥かに軽いかあるいは逮捕に至っていないことからもわかります。

―仮出所中ですが、現時点での経営者としての責任他、何かお感じになることがおありでしたら、教えてください。今後に期待されることなど(メディア、事業家、若者へのインスピレーションなど)

 彼に対して責任を求める声よりも、明らかに過剰な量刑を課されて「地に落とされた風雲児」という評価の方が、特に若い世代で主流だと思います。堀江待望論はまだ消えていません。特に、堀江さんが受刑した当時はITバブルの最盛期でした。彼の逮捕によって六本木ヒルズに集ったIT長者の時代は終わり、その後日本は長い不況と低迷の時代に入っていきます。

 アベノミックスのかけ声のもとに日本に対してまたミニバブルの時代を再来させようと政権側が企て始めた時代の中で彼が出所したことは誠に象徴的であり、またぞや彼を利用して、表層的な金権思想が勃興することは警戒します。

 一方で彼自身の才と先見性、時代をとらえる視点については私は深く認めるところであり、前述のネットにおけるニュースのありかたについて彼が発言して行くこと、ビジョンを提示して行くことは歓迎します。また、経営者としての責任は、この間の過剰とも思える量刑に服したことで十分に果たしたと思っています。

 彼にとって不幸に点は無駄に挑戦的に既存勢力に対して刺激的で乱暴な言葉を投げつけるその攻撃的な姿勢でした。出所後の会見ではそれが相当に薄れ配慮ある姿勢に徹していましたから、なお彼の今後には期待をしています。

***

 殿岡さんは堀江氏についての多数の論考をブログを中心に発表してきた。以下はそのブログ記事。

【最新】
帰ってきたホリエモン---ネットニュースに関する物語の続編とライブドアニュースの数奇な運命

ライブドア事件や堀江氏についての過去記事
BigBang カテゴリー「ライブドア」

【買収騒ぎ当時】
堀江貴文の病理------カネが全てではない理由の考察

【逮捕当時】
心の中のライブドアショック----私たちは暴力装置の中で生きている

(以上、コメント、終)
by polimediauk | 2013-05-10 07:37 | ネット業界
 3月27日、元ライブドア社長堀江貴文氏が刑務所から仮出所した。今後、新しいメディアを作るとさまざまなところで話しており、米ハフィントン・ポストの日本上陸ともあわせ、ネット界の今後がさらに面白くなってきた感じがする。

 仮出所直後の熱狂振りと堀江氏に期待するものについて、非営利組織「欧州ジャーナリズム・センター」に原稿を書いた(4月26日掲載)。

 記事内では一部しか紹介できなかったので、コメントをいただいた複数の方から了解をとって、以下にその内容を掲載してみる。コメントをいただいたのは4月上旬であった。それ以降、追加情報が出てきたわけだが(堀江氏がグノシーと協力するなど)、あくまで当時の情報を基にしたものとご了解願いたい。

***

(1)

*メディアストラテジスト集団「Qbranch」代表、新田哲史さん

―堀江さんをどう評価しますか?(ビジネスマン、メディア運営者、起業家、政治的動きなど)

 美辞麗句ではなく、「天才」「革命家」的な気質だけはある人だとは思います。

 時代の先行きを読む感覚は人並み外れているのは確か。日本でSNSが普及する前から、ミクシィをいち早く使っていた辺りは典型的ですね。

 著書名「稼ぐが勝ち」など、その言動が物議を醸したことは、「偽悪者」という評価もありましたが、「天才」であるが故に、凡人の違和感や警戒心を読み取れず、出る杭は打たれる日本社会の暗部を甘く見ていたのではないでしょうか。織田信長が、他人の空気を読めないアスペルガー症候群だったとする説がありますが、そういうことを彷彿とさせますね。ただし、「革命家」は、既成概念や常識にとらわれていてはイノベーションを起こせないので、ある種の代償で得た才能でしょう。

 しかし、元部下(塩野誠氏)の本を見ていると、経営者(リーダー)としてガバナンスが優れていたかは疑問ですね。当時のライブドアは、部下が取引先ともめて訴えられてもすべてが「自己責任」。訴訟対応も自分でやるというものだったそうで、社員を守る普通の企業であれば考えられない感覚です。あの頃の堀江礼賛的な視点で言えば、資本主義、市場原理にかなった対応で「社員は会社で食わせてもらうのではなく、稼ぐものだ」となるんでしょうが、「その他大勢」に与え続けた違和感を拭いきれませんでした。

ー堀江さんの受刑をどのように受け止められましたか。

 事件の事実認定に関する法的な解説が出来ないので、なんとも言えないのですが、仮に本人が粉飾決算の事実を知っていたとしても50数億。日本では、ライブドアより遥かにケタが2つも違う粉飾事件があった中で、実刑が出たケースは少ない。国家権力による恣意的な判断があったと勘ぐりたくもなりますね。これは知人の受け売りですが、「革命家」としては実刑は留学みたいなもので、宿命なのかもしれません。獄中からもツイッターやメルマガで発信し続けたあたり、タダでも転ばないと感じました。

―仮出所中ですが、現時点での経営者としての責任他、何かお感じになることがおありでしたら、教えてください。

 判決の事実認定についての評価は、私もなんとも言えないです。

 ただし、事件当時、当時の幹部が不可解な死を遂げましたし、ご遺族は、相変わらずメディアに出てきている堀江氏をどう思っているんだろうかと考えます。出所後の記者会見で、再犯防止の支援といった社会事業にも意欲を見せていますが、その言葉が本気なのかどうか、まだ見極めるべき段階かなと思います。


―今後に期待されることなど(メディア、事業家、若者へのインスピレーションなど)

 「革命家」として、獄中体験をどう生かすのか。特に新しいメディア事業への意欲を示しているので、どんなものか注目したいです。ただ、かつての彼は「インターネットで誰かが情報を拾って発信すればプロの記者なんかいらなくなる」的な極論を振りかざしていたので、どこまで変わったのか。

 ただし、もし自身の“えん罪”体験を踏まえ、調査報道主体の新しいメディアを立ち上げるような動きを見せると速報重視の既存メディアに良い刺激になってほしいと思います。

***

(2)

メディア・プロデューサー、石山城さん

 先ず、ボクが堀江さんに抱いている感想なのですが(彼はボクより7つ下)、彼はバブルが崩壊してから社会人になった人で、その後失われた20年といわれる超氷河期の日本に現れた超新星だったんだと思うわけです。

 出口の見えない闇雲の中を日本中の人が彷徨っている最中、「こうすれば明るく生きられるんだよ」「こうすればお金は儲かるんだ」というアクションとメッセージは、IT時代・金融時代という時代背景とマッチして華々しく輝かせたのだと思います。

 しかしながら、彼は、いわば「大人語」を使うことができなかったことで、目上の人たちから総スカンをくらった結果が、叩きつぶされた…という結果を招いたのだとボクは思っています。

 一方、同じように注目された人物として、まるで反対の表現をして成功したのが楽天の三木谷さんだったんだとボクは思っています。

 これは、例え二人が似たような才能を持ち合わせていても、大人たちの協力が得られたか、得られなかったか…という、人生の成功するステップには欠かせない要素を得られたか、得られなかったか…という大きな違いだったような気がします。ボクは二人のことはよくわかりませんが、端から見ている限りは、経営手腕はそんなに違わなかったのではなかったかと思います。

 さて、しかしながら、その話も今や昔。今、仮出所で出てきたこの時代は、当時とはかなり状況は変わっていて、今は、いかに新しいことにチャレンジするか? 世代や国籍などいっさい無関係に、いかに賛同者・共感者を集められるか?という「評価経済社会」になっているので、今となっては、堀江さんの今後のアクションは、せまい日本のなかでの、更にはオトナの世界だけに賛同者を得られている三木谷さんよりも、より大きな影響力を持っていて、実は、堀江貴文の人生はこれからが本番なのかも知れません。

 というのも、今、時代を動かしているムーブメントを牽引している人たちは、堀江さんの後ろ姿を追いかけてきた後輩たちであり、それらはGMOの熊谷社長をはじめ、mixiの笠原社長、元ペパボの家入一真くんなどなど、数え上げたらキリが無いぐらいにその影響力は高い状態となっています。

 余談までに、仮出所で出てきてからの彼の言動についての、ボクの感想をつらつらと書きます。

 彼の出所後のインタビューは、ネットのあちこちで全文が掲載されるほどの人気ぶりとなっていますが、それを見る限り、表現はとてもマイルドになったという印象を受けました。
 
 以前は、ケンカ上等のような子どものような印象を受けましたが、彼も、この逮捕経験により、自分がしたいことだけに特化する(それ以外は金持ちケンカせず)ことを学んだように思えます。

 更に、以前の彼と今の彼の違いは、時代の変化に敏感に感じ取っていることもあってか、 より本質的にーーーこれは言わば、ビジネスでも、ダイレクトに個別の商売よりも、サービス(システム)全体を売るという方向にシフトしているのかな、(見え方としてはよりビジネスビジネスに見えづらいけど、でも今の時代はそれが一番儲かる)ーーー変化してるという印象を受けました。それは今のIT成功者たちに共通する思想だともボクは感じています。(その2に続く)
by polimediauk | 2013-05-09 21:47 | ネット業界
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4月末から、読売新聞オンラインのITサイトで連載「欧州メディアウオッチ」を書かせてもらっている。欧州のメディアのニュースはなかなか発信する機会がなかったので、少しずつ拾っていきたいと思っている(欧州に住んでいらっしゃる方で、これは面白いというものがあれば、ご教示ください)。

 第1回から3回までは、イタリア・ペルージャで開催された国際ジャーナリズムフェスティバル(4月24日―28日)での模様を紹介した。

(1)「データ・ジャーナリズム」で未来を予言?

(2)メディア・アウトソーシングの新たな波

(3)既存メディアへの五つの提言

 7日に掲載された(3)の中に出てくる、イタリアのジャーナリズム集団「Next New Media(ネクスト・ニュー・メディア」について、原稿に入りきれなかった分を補足してみる。

 「Next New Media」は、紙媒体、放送媒体、ウェブサイトで経験を積んだプロのジャーナリストや写真家、ウェブ・デザイナーたちの集団だ。新聞社や放送局などが提供するウェブ上のコンテンツを代わりに制作する、メディアコンテンツのアウトソーシング組織。

 この組織を立ち上げた二人のジャーナリスト、ティツィアナ・グエリージ氏(上の写真、右)と、アンドレア・バティストゥツィ氏(左)にフェスティバル会場の一角で話を聞いた。 

―いつどのように始まったのか?

アンドレア・バティストゥツィ氏:2-3年前に起業した。その前にニューヨークで働いていて、イタリアに戻ってきてから、何人かと一緒に、プロのジャーナリストのネットワークを作ろうと呼びかけた。

 全員がウェブ、紙媒体などいろいろなメディアで働いてきた。私は英国のフィナンシャル・タイムズに匹敵する経済紙「Il Sole 24 Ore」で働いていた。ジャーナリスト、写真家、映像作家、ウェブデザイナーたちの集団だ。

 あらゆる種類のコンテンツをニュースウェブサイトに提供しようと思った。ビデオ、写真、記事、ソーシャルメディアの編集-何でもだ。とても面白い。

 新聞界は不景気のために苦しんでいるので、最も必要としているウェブ上のコンテンツを自分たちでは充分には作れない状況にいる。誰もがネット上で情報を利用したいこの時に、だ。

 そこで、完全なニュースルームをアウトソーシングのサービスとして提供しようと思った。

 例えば、「占拠」運動をライブブロギング(ネット上の現場中継)で欲しいといわれたら、ジャーナリストを調達できる。ニューヨーク、ローマ、ミラノ、どこでもニュースがあるところならコンテンツを作って、提供できる。

 イタリア国内でも、シシリーからミラノまで、各地にジャーナリストがいる。欧州ではブリュッセルやモスクワにも。

―ウェブ上でドキュメンタリーを作り、人気を博したと聞いたが、イタリアではこういう手法はよくあるのだろうか?

 バティストゥツィ氏:ドキュメンタリーをウェブで提供していくこと自体は珍しくないかもしれないが、イタリアではなかった。米国、英国、それにフランスでもあったかもしれない。

―どうやって起業したのか?

 自分たちで資金を出してあって立ち上げた。そのあと、二ヶ月ほどイタリアを回って、お互いに自由な時間を使いながら、取材した。お金も投資したが、全員が時間もたくさん投資した。

―どんな作品を作ったのか。

 話題になったのは、刑務所のドキュメンタリーだ。5-6人を1つのチームとして、国内の22の刑務所を訪ねた。

 普通は中に入れないが、刑務所の現状をそのまま出すために、人権団体「Antigone(アンティゴネ)」と協力した。アンティゴネが中を視察する中で、撮影隊がドキュメンタリーを作ってゆき、ウェブドキュメンタリー「Inside Carceri(刑務所の中)」を制作した。

―なぜ、刑務所か?

バティストゥツィ氏:イタリアでは最も熱く語られているトピックの1つだ。

 過去10年間、刑務所改革をしようとしてきたが、うまくいっていない。過密化している。公式には、最大限度は4万4000人。現在、6万6000人が収容されている。生活環境は醜悪で、非人間的とも言える。欧州連合が視察に何度も訪れ、非人間的だと報告している。

 政府はもっと刑務所を建てたがっているが、お金がない状態だ。

ティツィアナ・グエリージ氏:本当に、大きな問題だ。解決が困難だ。

―いつごろから、過密化したのか?

バティストゥツィ氏:急に増えたのは1990年代。移民法に変更があり、アフリカ大陸からやっていくる移民申請者が急増した。1980年代末、収容人口は2万2000人ぐらいだったが、今はその3倍だ。刑務所のスペースは変わらない。ナポリなど、各地で問題になっている。

ー具体的には、どんな感じか?

バティストゥツィ氏:私たちが見たのは、4人が普通の1つの部屋に11人、時には18人がいた。全員がベッドに一度に横になることができない。誰かが横になると、ほかの誰かが立っている。健康も悪化する。伝染病も広がる。

 例えばミラノ中心部には、ある歴史的建造物があるが、これが刑務所となっている。制約があって、簡単には改築できないようになっている。

 ある部屋の中では、あまりにもベッド数が多いので、窓を開けることができないようになっていた。空気が換えられない。そこで、6月に、窓のガラスをとった。窓ガラスが新しくついたのは9月だ。ガラスが入っていない3ヶ月ぐらい、刑務所内はまるで外にいるのと同じだった。雨が降れば、ベッドの上に雨が降った。

―どうやってこの作品を公開したのか?

 このプロジェクト専用のサイトを作り、公開した。多数のテレビ局やほかの大手ウェブサイトがその一部を放送した。

 様々な制限をはずしたかったので、今回のビデオは無料で見れるようにした。昨年11月にサイトで公開してから最初の5日間で、4万回ダウンロードされた。

 私たちの組織そのものは営利が目的だ。コンテンツを販売して生計を立てている。

 今準備しているほかのプロジェクトでは、放送権を売りたいと思っている。そして、人権にかかわる調査報道に関心がある市民団体から資金を出してもらって作りたい。

―刑務所運営者側の反応は?中に入るのを拒否されなかったか?

 先ほどの団体が公式な人権監視組織なので、政府の許可を得て中で撮影できた。ある刑務所の運営者は環境が劣悪でも「自分たちの責任ではない」「改築しない中央政府が悪い」と言っていた。

 刑務所の環境問題は、受刑者のみの問題ではない。その家族、弁護士、支援者、医師、看護関係者などを含めると、100万人ほどが影響を受ける。

 次のプロジェクトは都市開発と環境だ。

**「刑務所の中」の予告編は以下のウェブサイトで視聴できます。

http://vimeo.com/53736965
by polimediauk | 2013-05-07 23:30 | ネット業界
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(ドイツ語版ハフィントン・ポスト開始のニュースを伝える独ウェルト紙のウェブサイト)

 日本では7日から米ハフィントン・ポストの日本語版が開始されるが、今年秋には、ドイツ語版が立ち上がる予定だ。本家米国、英国、カナダ、フランス、イタリア、スペイン、そして日本版に続き、8番目のバージョンとなる。

 私は昨秋、ドイツの新聞発行者協会を訪ねる機会があり、広報担当者から「ドイツ版はない」と聞いていたので、このニュースにやや驚いた。ドイツの新聞界は、他国からやってきた企業が自国の新聞市場を支配する向きを見せると、一致団結して抵抗する傾向がある。かつて、ノルウェーのメディア企業が無料新聞の発行をドイツの都市で開始したとき、対抗する無料紙数紙を発行し、この企業を最終的に撤退させた経緯があった。

 ハフィントン・ポストがドイツ語版開始に手を組んだのは、独出版社ヒューバート・ブルダ・・メディアの子会社で電子出版のトゥモロー・フォーカス社だ。

 ブルダ社の発表によると、ハフィントン・ポスト独語版の本社はミュンヘンに置き、約15人前後と見られる編集スタッフをドイツで調達する。

 ドイツ語は欧州内の数カ国で主要言語となっている。今回のドイツ語版はオーストリアやスイスのドイツ語を理解する読者(約1億人)も対象としている。

 ドイツ語版は2年以内に収益を出すことを目標としているという。ハフィントンポスト社の最高経営責任者ジミー・メイマン氏が3月、オンラインの「ホライゾン・ネット」に語ったところによれば、今後3年から5年以内に、ドイツでトップ5のニュースサイトになることを目指す。

 英フィナンシャル・タイムズなどの報道によれば、ハフィントン・ポストは各市場に200万ドル前後を投資し、費用や収益を合弁会社と折半するという。フランスではルモンド紙、スペインではエルパイス紙、ィアリアではグルップ・エスプレッソ社と提携している。北米以外で最初に開始されたハフィントン・ポストは英国版だった(2011年7月)。

 ドイツのメディア学者Joe Groebel氏がAPに語ったところによれば、ハフィントンポスト独語版はドイツのニュース・メディアに大きな影響を与える可能性があるという。

 Groebel氏によれば、ドイツの新聞メディアは政治報道を中心に据え、事実と論考を分ける形をとる。一方のハフィントン・ポストは「感情に語りかけ、個人の顔を出し、短い記事が多い」。

 また、ハフィントン・ポストの記事は無料で閲読できるので、これもドイツの新聞サイトにとっては脅威となる可能性がある。

 ドイツ最大の大衆紙ビルトや高級紙ウェルトを発行する大手出版社アクセル・スプリンガー社はサイト閲読に有料制を導入しつつある。ほかのドイツ紙も米ニューヨークタイムズのようなメーター制による課金化を計画しているが、商業的に成功したところはまだないといわれている。

 ドイツの新聞発行部数は、日本同様下落傾向にある。ドイツ新聞発行者協会がまとめた情報によれば、2000年から2011年の間に、総発行部数は約2400万部から約1800万部に減少。これは約22%の下落にあたる。

 ハフィントン・ポストがギリシャ系米国人アリアーナ・ハフィントン氏によって創刊されたのは2005年だ。2011年には3億1500万ドルで米AOLに買収された。

参考:

Huffington Post picks Burda publishers for German edition

Huffington Post to launch German edition

Huffington Post rolls out in Germany
by polimediauk | 2013-05-01 22:02 | ネット業界
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 米国のフリーランス・ジャーナリストが、老舗月刊誌「アトランティック」から、別サイトに掲載された自分の記事の要約を持ちかけられたが、原稿料が無料と聞いて憤慨し、仕事を引き受けなかった。25年間もジャーナリストとして働いてきた自分の原稿が無料で使われることを不服に思い、自分のブログで、「アトランティック」の担当者とのやり取りを公開した。

 これをきっかけに、「不服に思うのも当然だ」、「無料掲載を要求したアトランティックの言い分はおかしい」、「いや、一理ある」など、米英でミニ論争が発生している。

 ネイト・セイヤーの記事「25年間のスラムダンクの外交」は、3月4日、ニュースサイト「NK News」に掲載された。バスケットボール選手デニス・ロッドマンの北朝鮮訪問をつづった長文記事だ。

 セイヤーのブログ記事によると、これを「アトランティック」のグローバル・エディター、オルガ・カーザン(勤務してまだ2週間ばかりという)が読み、問い合わせをしてきた。「元の記事を短く編集したものを掲載したい」という。追って、セイヤーが締め切りや長さなどをメールで聞いた。

 すると、カーザンは「今週末までに1200語でお願いしたい。残念ながら原稿料は支払えないが、うちのサイトは月間1300万人の読者がいる」と説明した。

 驚いたセイヤーは「25年間、書くことで生活費を稼いできた。無料で仕事をする習慣はない」と宣言。

 カーザンは「立場は完全に理解するが、当方はオリジナルの記事でも原稿料が100ドル(約9400円)ほど。フリーランス用の予算がない」、「追加の手数をかけずにより広い読者のために元記事を要約することが可能かと思い(連絡した)」と答えたという。

 セイヤーは「個人攻撃でないが」、「幸運を祈る」と告げて、書き直しを断り、メールの交換を終えている。

 後、アトランティックの編集長ジェームズ・ベネットが声明を発表し、今回のケースは例外だったと述べている。「アトランティックの記者がほとんどの記事を書いている」こと、「フリーランスの記者にオリジナルの原稿を書いてもらうときは、原稿料を支払っている」ことを説明した。

 ジャーナリストではない人が解説記事などを提供するとき、「書き手の了解の上で、原稿料を払わずに出すこともある」、(無料の原稿を書くようにと)「強制することはない」。

 セイヤーの件は「特別だった」。「オリジナルの記事を書くように依頼したわけではなく、既に掲載済みの記事の縮小版を出すようにお願いしたもので、元の媒体をしっかりと明記する予定だった」。

 最後には、セイヤーの「気分を害したことを謝罪する」としている。

 英ガーディアン紙のコラムニスト、ロイ・グリンスレードはこの件に触れて、英国でも「フリーランスのジャーナリストへの支払額がどんどん減少している」ことを指摘する(3月6日付)。

 その理由の1つは、出版社側がジャーナリスト志望の人が書いた原稿を無料同然で使っていることにあるという。

 グリーンスレード自身、セイヤーと同様の体験をしているジャーナリストたちを知っているという。しかし、「(彼らは)事情を表には出さない。もし出せば、仕事がなくなるかもしれないからだ」。

 一方、デジタルメディアの動きを追うサイト「ペイドコンテンツ」のマシュー・イングラム(6日付)は、「無料コンテンツはあふれるほどある」、「これが現実だ」、という。

 イングラムの観察によれば、アトランティックがセイヤーに対し、縮小版を作ってもらうよう頼んだこと自体が「変わっている」。というのも、あるサイトが、ほかのサイトに出た記事の内容を書き直し、元の記事を書いた本人の許可を得ずに掲載することは、実際に、よく起きているからだ。「これが正しいことかどうかは別として、実際に発生している」。

 無料でも書きたいという人は無数にいるし、ブログサイト「ミーディアム」にしろ、ニュースサイト「ハフィントンポスト」にしろ、原稿料を払わないコンテンツをビジネスの土台にしているサイトもあるのだ。

 イングラムは無料で書く人が常にいる状態は、「必ずしも悪いことではない」という。競争が生まれるからだ。

 そして、メディア市場で「本当の競争相手は、あなたが作るものよりも良いものではなくて、相手のニーズを満たすのにちょうど良いもの」だ。

 無料で提供される記事、検索エンジンが集める記事で読者が十分に満足しているなら、フリーランスの書き手は打つ手がないのだという。

 しかし、イングラムは、伝統的な媒体に原稿を出してお金を稼ぐよりも、電子書籍や長めの文章(3000語から5000語)をパッケージ化して販売する「バイライナー」などを利用するという選択肢は、思ったよりも簡単だと指摘する。

 「書くことでお金を稼ぐための仕組みが変わっている。それは悪いことかというと、そうではない」。

***

 無料ニュース、情報がネット上で氾濫している。この中で生き抜いていくためには、その流れに逆らうよりも、じっくり時間をかけて書いたものを電子コンテンツとして販売するーこれはフリーランスにとって、1つの道ではないかと私も思っている。あくまでも「1つの」、ということだが。

 ただ、その「道」がまだ十分にはできていない感じがしているー少なくとも日本語空間では。(KindleやiBooks用の電子書籍の作り方はいろいろ紹介されてはいるけれど、具体的な話になると、あと3つか4つ、山を越えないと景色が見えてこないように思う。現時点では搾取される比率が大きいようだし、手間がまだまだかかりすぎるー。もちろん、良いアイデアがあったら、共有してゆきたいが。)
by polimediauk | 2013-03-08 07:00 | ネット業界
 20年前に、英イングランド地方北西部リバプールで、2歳の幼児ジェームズ・バルジャー(James Bulger)ちゃんが、10歳の少年二人に惨殺されるという痛ましい事件があった。

 ロバート・トンプソンとジョン・ベナブルズは幼児の誘拐・殺人罪で有罪となり、少年院に収監された。釈放されたのは2001年。新しい名前、身分が与えられての再出発だった。

 このとき、両者の新しい身元についていかなる情報の出版も禁ずる命令が裁判所から出された。今でもこれは有効である。

 現在までに、両者についての報道は現住所や容姿、現在の名前などが分かるような形ではほとんど出ていない。2010年にベナブルズが児童ポルノ規正法違反で逮捕されたときも、司法省はその詳細を公表しなかった。

 しかし、バルジャーちゃんが殺害された1993年2月12日から20年を過ぎた今月14日ごろから25日ごろまでの間に、ツイッター上に現在30歳になるベナブルズあるいはトンプソンのものとされる写真が出た(ベナブルズの写真のみという報道もある)。

 25日、ドミニック・グリーブ法務長官は、ベナブルズあるいはトンプソンのものであると称して写真を出したツイッター利用者に対し、法廷侮辱罪を適用する手続きを開始すると述べた

 法務長官の事務所のウェブサイトに掲載された、法廷侮辱罪の手続き開始の声明文によると、その写真が「ベナブルズあるいはトンプソンのものであった場合、また、もし実際には当人の写真でない場合でも、禁止令に違反と見なす」という。

 法務長官は写真をただちに削除するよう、要請しており、26日現在、英国のネット上で関係者の名前を検索エンジンに入れても出ない状態となっている。

 ベナブルズやトンプソンに似ている人物が当人と間違われ、危害が及ぶ危険性もあるため、報道禁止令が順守されることで、「ベナブルズやトンプソンばかりではなく、両者だと間違われた市民を守ることになる」。

 報道禁止令の違反とみなされた場合、罰金の支払いあるいは禁固刑、あるいは両方の刑罰が下る場合がある。複数のツイッター利用者が対象となる可能性がありそうだ。

 法務長官の声明文の最後のほうには、「暴力行為を奨励する、あるいはオンライン上で悪意ある情報を出版することは犯罪行為となる」という表記もあった。

 果たして、これがネット上に写真が出回ることを抑制できるのかどうかは不明だが、少なくとも、警告はされたことになる。

 26日午後、下院の内務問題委員会は、ソーシャルメディアと電子犯罪について公聴会を開いた。委員会に召喚された一人が、ツイッターの欧州・中東・アフリカ部門のパブリック・ポリシー担当者であった。

 内務問題委員長キース・バーズ議員が、ベナブルズなどの写真掲載問題について尋ねると、ツイッターの担当者は、「個々のアカウントに関してはコメントできない」としながらも、「司法当局には協力している。違法なコンテンツがあった場合、こちらに連絡が来て、適切な処理をしている」と答えた。

 ツイッターとしては、「世界中でネット上に出るつぶやきに対し、問題が起きる前に監視するわけにはいかない」とし、「オンラインでもオフラインでも、違法なものは違法だということに利用者が気づくことが重要だ」と述べた。

 ツイッターのつぶやきが法律とぶつかったケースとしては、BBCの番組内で性的虐待の実行者として暗示された政治家(マカルパイン卿)が、ツイッター利用者相手に訴訟を起こしたケースが思い浮かぶ。

 BBCの番組自体は政治家の名前を出さなかったので、ツイッター上で憶測を基にした情報が出回り、最終的に名前が特定されてしまった。しかし、BBCが人違いをしていたことが、後で判明した。BBCはマカルパイン卿に謝罪した。

 マカルパイン卿はBBCから名誉毀損で巨額の賠償金を得た。当初はツイッター上で名前を特定した人全員を対象に訴訟を起こすつもりだったが、500人以下のフォロワーを持つ人は除外することにしたという。

 ベナブルズの写真をツイッターに出したケースと、マカルパイン卿の名前をツイッターでつぶやき、損害賠償を求められたケース。

 この2つのケースから私が感じるのは、「ネット上での情報の流布を止めるのは難しい・不可能だ」ということよりも、ツイッターがいかにメインの通信手段の1つになったか、社会的影響力が大きくなったかを示すエピソードだな、ということだ。

 ネットは情報発信がとてもしやすい。しかし、オフラインで違法なことはオンラインでも違法・・・先のツイッター担当者の言葉が強く響くのである。
by polimediauk | 2013-02-27 08:48 | ネット業界
 欧州14カ国の出版社が参加する「欧州出版社委員会」(EPC)は、13日声明文を発表し、フランスの出版社とグーグルが今月上旬合意した、6000万ユーロ(約75億6000万円)に上る「デジタル出版イノベーション基金」の設置を通してフランスの出版社を支援するという案は、「不十分」とする判断を示した。

 「継続する、コンテンツの非認可の再利用と収益化の問題」の解決には満足ではない、という。

 委員会のトップ、アンゲラ・ミルス・ウェイド氏は、声明文の中で、先の支援基金はオンラインの新聞に対して、「確固とした財政基盤を提供しない」、「ビジネスモデルを維持し、質の高いコンテンツに継続して投資するための、法的救済の仕組みを提供しない」と述べた。

 委員会の参加国はオーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国の14カ国で、フランスは入っていない。

 ドイツでは現在、著作権法を改正し、国内の新聞社によるネット記事がグーグルニュースで使われる際に、何らかの金銭上の支払いが行われるよう、審議が進んでいる。

 EPCは、この改正案がドイツで成立後、グーグルばかりではなく、ほかのニュース・アグリゲーションサイトにも適用されることを願っている。

 テッククランチの報道によれば、欧州各国の出版社の間で、使用料金を支払わずにニュースを再利用するグーグルへの不満が高まっている。EPCの会長ピント・バルセマオ氏は、出身国ポルトガルの出版社インプレサの代表という立場から、すべての欧州の出版社にグーグルが利用料を払うべきだと発言しているという。

 ドイツ新聞協会は既に、フランスのような基金設置案には同意しないと述べている。

 グーグルによると、「デジタル出版イノベーション基金」は「フランスの読者のために、デジタル出版の開始を支援する」もので、「グーグルの広告テクノロジーを使って、フランスの出版社がオンライン収入を増やす」ように、協力関係を深めるという。 

 昨年12月には、グーグルによる記事利用をめぐり、ベルギー新聞界とグーグルが合意に達した。グーグルは記事を利用した際にベルギーの発行元や著者にお金の支払いはしないが、ベルギー側がそれまでの交渉に要した法律上の費用(500万ユーロ=約6億3000万円=といわれている)を負担し、発行元の媒体にグーグルが広告を出すことになった。
by polimediauk | 2013-02-15 23:59 | ネット業界
 今日から、「Yahoo! Japan! ニュース Business」というサイトに原稿を送っています。

 http://newsbiz.yahoo.co.jp/

 28歳で英高級紙の副編集長 ―昇進の秘訣、ジャーナリストと階級とは
 http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20120919-00010001-gkoba-nb

 もう少し、入力を自分で工夫したほうが・・・と思った部分もありますが、ひとまず、出して見ました。

 Yahoo! Business の題字の左下に「提供社」という部分があり、これをクリックすると、いろいろな人や組織の名前が出ています。私は「英国メディア・ウオッチ」で登録しています。

 http://newsbiz.yahoo.co.jp/media/

 何を出すか、まだ??の部分があるのですが、「ビジネスパースンが読むべきと思われるもの」という最小限の線があるようです。

 英国でキャッチした、テクノロジー、ネット、新規企業・起業、メディア、人、本や映画の紹介などをしていこうかなと思っていますーー趣味と実益をかねて。

 どうぞよろしくお願いします。
by polimediauk | 2012-09-19 20:50 | ネット業界
―暴動をツイッターで中継 実名記者ルイス氏の場合

 英新聞界のツイッター利用で著名な記者の1人がポール・ルイス(@PaulLewis)だ。昨年夏、ロンドンを中心に暴動が発生したが、このとき、ルイスはスマート・フォンを片手に現場で見たことを次々とツイッターで細切れ報道した。暴動発生から最初の数日間は紙のノートにメモは一切取らなかったという。

 細切れのツイッターが1つのまとまりのある原稿に仕上がってゆく。ルイスにとって、ツイッターとは、事件の現場から報道をする際の最初の一歩である。「長い解説用の記事などは、後でじっくり書けばいい」(今年3月、ロンドンのメディア会議での談)。

 暴動発生から1年となる今夏、ガーディアンは昨年を振り返る特集記事を掲載した。BBCの記者がツイッターで「そろそろ、新しいネタを探すときじゃないのか?」と書くと、ルイスは「これほどの大きな事件は、11ヶ月経っても議論に値する。他の人が同意しなくても構わない」とつぶやき返した。ツイッターは所属媒体を乗り越えた、記者間の情報交換や議論の場になっている。

 ツイッターには他人のつぶやきを「リツイート(RT)」という形で自分のフォロワーに流す再発信機能があるが、RTやほかの有益な情報を選別して流すことで、発信者は情報のキュレーターになる。

 これを率先して人気を集めたのが、スカイ・ニュースの番組制作スタッフの一人、ニール・マン(@fieldproducer)だった。多様なニュース素材を自分なりに選別して、ニュースの時系列を作るマンのツイートは、同業者の間にもファンを多く持った。

 例えば、中東の「アラブの春」の報道では、スカイ・ニュースが発信した情報にこだわらず、より情報が早い通信社や中東のテレビ局の特派員、現場にいる市民のツイートなどを拾って、ツイートした。情報源の広さや即時性において群を抜いていたため、英記者・編集者の間で人気沸騰のアカウントとなったが、他局のスクープ流布に参画したことにもなったマンは、スカイ・ニュースにいづらくなったのか、後に転職(本人は転職理由を明らかにしていない)。現在は、米ウオール・ストリート・ジャーナル紙のソーシャル・メディア・エディターとして、最新のニュースを発信している。

―裁判傍聴席からもツイッター発信OKに

 2010年末、裁判所の認可があれば傍聴中の記者が法廷からツイッターでつぶやいてよいという暫定指針が出た。ツイッターはジャーナリズムの1手段としてお墨付きがついた。11年12月には、裁判を傍聴取材する記者が事前の許可なしにツイッターや電子メールで法廷から外部につぶやくことが原則、認められた。

 先に、日本のメディア関係者の懸念事項として、「炎上」が話題に上ったと書いたが、英国の例を見る限り、それほど問題視されていないようだ。政治家や著名人の失言が大問題となることはあるのだがー。といっても、読者からの無礼なあるいは中傷めいたコメントが記者ブログに付くことは日常的に発生している。編集部の承認後に画面に出るようにする、読者に違法なコメントについて通報してもらうなど、様々な手段が講じられている。

 ツイッターが誤った情報の流布につながって大恥をかいたのが、民放チャンネル4の「チャンネル4ニュース」の司会者ジョン・スノーだ。昨年7月、約10万人のフォロワーを持つスノーは、ある大衆紙での電話盗聴事件にからみ、別の大衆紙の元編集長で現在はCNNで番組を持つピアス・モーガンが番組を辞したとツイートした。後にこれが真実ではないと分かり、スノーは謝罪した。情報発信が簡易なツールには、こうした落とし穴が常にある。

 チャンネル4ニュースは、番組の司会者と記者全員がツイッター・アカウントを持ち、ブログを書く。ウェブサイト担当者によると、記者のツイートを発信前に確認はしない。指針は「放送中に言えないことは、ネット上でも言わない」ことだ。

 記者が所属組織の一員としてツイッターし、多くのフォロワーを作った後で転職した場合、フォロワーは誰のものになるのだろうか?これが問題として浮上したのが、元BBCの政治記者ローラ・クエンスバーグの場合である。

 2010年9月までBBCに所属していた同記者は@BBCLauraKというツイッター・アカウントで、5万8000人を超えるフォロワーを持っていた。その後、民放大手ITVに転職した。経済記者となっての新たなアカウント名は@ITVLauraKである。フォロワーは現在、8万人を超えるが、BBC時代のフォロワーの大部分がITV移籍後に、新アカウントに移動したと推測されている。

 このとき、BBC時代のフォロワーをITVに「持って行った」クエンスバーグに対し、「フェアではない」という批判が出た。ツイッターは何に、あるいは誰に所属するのだろう?個人の顔が見えるメディア(ツイッターなど)を組織が使うという現象によって、判断がつきにくい状況が生まれている。

―ガーディアンとBBCのソーシャルメディア方針

 ガーディアン紙は、同紙の編集規則及び新聞業界の自主団体・英報道苦情委員会の倫理規則、ネット上の言論空間における編集方針によってソーシャルメディアの使い方を規定している。

 自社サイト内のブログやネット上に読者から寄せられた意見について、記者あるいは編集者が「建設的な意見交換に従事する」、「事実の根拠をリンクで示す」、「事実と意見の違いを明確にする」などが基本姿勢となる。

 同紙のアラン・ラスブリジャー編集長は率先してツイッターを利用している。09年には国際石油取引会社による汚染物廃棄をツイッターで暴露した。

 BBCは、記者がサイトのコンテンツに参加する場合と、BBCの記者であることを表明しながらも個人としてソーシャルメディアを利用する場合に分けて、それぞれのガイドラインを作成している。(BBCという名前を一切使わない、純粋に個人的なネット活動についてはガイドラインの対象外とする。)

 いずれの場合も、基本姿勢は「メッセージを利用者に『放送する』(注:「一方的に流す」という意味であろう)のではなく、会話を通し、参加する」、「BBCの評判を落とさない」、「議論の管理は最小限にするー利用者を信頼する」、「オープンで透明性を持って対処する」だ。

 日本で、ツイッター指針の策定に役立ちそうなのが、BBCの「公式ツイッター利用者へのアドバイス」である。

 業務の一環としてツイッターを始める場合、以下の6つの点を考慮に入れる必要があるという。

 ①まず、上司と相談して許可を得た後、ソーシャル・メディア・エディターや視聴者から寄せられる素材を処理する係りの担当者など関係部署に連絡を取る

 ②BBCの公式ツイッター・アカウントはBBCニュースの一環となるので、この点を踏まえた上で、BBCの記者として関連する分野の事柄についてつぶやく

 ③打ち解けたトーンを維持し、情報の受け手と双方向性を保つ

 ④ツイート内容は自分が担当する領域についてのニュース、分析だが、関連情報や仕事の舞台裏、いま何を取材しているかについてつぶやいたり、出演する番組のお知らせや、フォロワーから情報を求めることも可

 ⑤フォロワーの反応に常に返答する必要はないが、フィードバックを得たり、自分が追っているネタのヒントが見つかるかもしれない

 ⑥リツイートには注意する、これは内容に賛同していると思われるからだ。

―「実情にあわない」 試行錯誤続くルール作り

 BBCニュースのライバルとなるスカイ・ニュースの内部向けガイドラインによると、同ニュースの記者としてのアカウント使用時、「自分が関与していないニュースについてはツイートしない」、「他局のニュースを再発信しない」、「スクープ情報は最初に編集デスクに連絡し、その後にツイートする」などの規定がある。

 先述したが、スカイ・ニュースには、ツイッターで多くのスクープ情報を出してきたニール・マンというスタッフがいた。自局以外の情報源からも情報を取得し、これを再発信して人気を集めたが、他局のニュースを再発信することを抑止する規定があったことを、ガーディアン紙が、今年2月7日、報道した。「記者の口を封じる動きだ」、「自由な情報の拡散を阻害する」などの批判がネット上に流れた。

 報道の翌日となる8日、BBCはスクープ報道に関わる新規定を発表した。ツイッター・アカウントを持つ記者がスクープ情報を入手した場合、BBCのニュース編集室に書面の形でまずその情報を提出するようにと書かれてあった。ツイッターによって不特定多数の人にスクープが届く前に、まずはBBC内で共有しよう、という考え方だ。

 しかし、これは24時間の報道体制で動く実情に適応しないとBBC内外で批判が起き、当初の発表から24時間も経たない9日昼に、追加情報が出された。「先の文書は、ツイッターでスクープを出すなということではない」、「この方針も変わる運命にある」などと、トーンダウンしたメッセージを出した。

ー時計の針は元に戻せない! RCジョーンズ記者の豪胆

 BBCのテクノロジー記者ローリー・ケスラン=ジョーンズ(@BBCRoryCJ)は、8日付ブログの中で、スクープとツイートについて触れ、「時計の針は元に戻せない」と書いた。昔は、「ニュース・デスクが絶対的な権力を持ち、スター的存在の選ばれた記者だけが署名記事を書き、新聞が印刷を開始する前に、あるいは定時のニュース番組の放送前に、記者が外部とニュース情報を共有したら、首も覚悟の重罪だった」。しかし、「そんな時代はもうほとんど、過ぎ去ってしまった」。

 BBC内部にスクープ情報を出すことを優先するべきと上司から通知されても、「もう遅い」と書くケスラン=ジョーンズのブログはBBCのニュースサイトの中にある。ブログのエントリーから5ヶ月経つ現在も削除されていない。コメント欄を見ると、エントリーに同意するコメントがあるかと思うと、「誰があなたの給料を払っているんだ?ツイッター利用者か、それともBBCか?」という厳しいコメントもある。これもそのままである。このブログ・エントリーやコメントの残し方に、私は英メディアによるソーシャル・メディア活用の1つの特徴を見る思いがする。

 ケスラン=ジョーンズのような、組織のやり方への堂々とした批判は、言論の自由がここまで徹底されていることを示す。「時計の針は戻せない」というのは真実であり、この記者がこの点を指摘せずにお茶を濁す表現に終始したらば、ネット上のやり取りに長けた感覚を持った読み手は、この記者の矜持や報道の質を疑うかもしれない。ひいては、言論機関としてのBBCにも疑いの眼を向けるかもしれない。

 しかし、「言論の自由」というややお堅い言葉を持ち出すまでもなく、様々な言論が飛び交うネット上で持論を展開にするには、思わぬ事態の展開に超然として対処することが必要ではないかと思う。面の皮を厚くして、太っ腹でいることだ。この記者のブログのエントリーを見ていると、この太っ腹さを感じる。

 組織に所属する記者がソーシャル・メディアを試みる場合、太っ腹さの度合い、つまりは何をどこまで言うべきかが経験則で分かってくるのではないだろうか。多少の批判が寄せられても、こちらの方針や言論を撤回するほどのものなのか、スルーしても良いレベルのことなのかが見分けられるようになるのではないか。

 英国の記者によるソーシャルメディア利用の手法は、今後も試行錯誤で変わるだろうが、視聴者・読者が生息するソーシャル・メディアの世界に入ってきて、果敢に情報を発信する様子を見ていると、利用者の方を向いて、一緒にこの時代を走っている思いがし、心強い。(「Journalism」8月号掲載分より)

***

参考資料:

「ソーシャルメディア活用進む -英大手メディア、ガイドライン作り発信」(新聞協会報、2012年3月27日号、小林恭子著)
ガーディアン紙の規定:
http://www.guardian.co.uk/sustainability/media-responsibility-social-media-csr
BBCのガイドライン
http://downloads.bbc.co.uk/guidelines/editorialguidelines/pdfs/social-networking-bbc-use.pdf
http://downloads.bbc.co.uk/guidelines/editorialguidelines/pdfs/social-networking-personal-use.pdf
BBCのツイッター規定 http://news.bbc.co.uk/1/shared/bsp/hi/pdfs/14_07_11_news_official_tweeter_guidance.pdf
公式アカウントを持つBBC記者の一覧
http://www.bbc.co.uk/news/help-12438390
by polimediauk | 2012-09-11 15:12 | ネット業界
 近年、あっという間に利用者を伸ばしているソーシャルメディア。既存メディアとの関係はいかにー?日本のみならず、各国で議論が続いている。

 朝日新聞の月刊メディア誌「Journalism」(8月号)  「http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=14106 の中の「ソーシャルメディアが記者を変える」という特集向けに、英メディアの状況について書いた。以下はそれに若干付け足したものである。長いので2つに分ける。

 尚、このテーマに関心のある方は8月号を実際に手に取られることをお勧めしたい。米国の例や、朝日新聞のソーシャルメディアエディターの話が出てくるからだ。

***

スクープはツイッターから生まれる
 ー英記者たちの太っ腹SNS活用法



 英国の大手メディアに勤める記者の間で、ソーシャル・メディアを使っての情報発信が活発化している。

 「ソーシャル・メディア」には数多の種類があるが、英語圏では、実名を基本とする友達同士の交流サイト、フェイスブック、140字で情報を伝えるツイッターが特に人気が高い。双方向性を持つ情報発信ツールとして、日記型ウェブサイト、ブログも相変わらず盛んだ。

 この中で、記者たちの日々の業務の中で欠かせない存在になっているのが、ツイッターやブログだ。本稿ではその活用の背景や具体例を紹介したい。

 記者のソーシャル・メディア活用について、日本の複数のメディア関係者と話す機会が何度かあったが、懸念を表明する声が多かった。不用意な発言によって「炎上しては困る」、「何故わざわざお金と時間を投資する必要があるのか」という2つの視点を指摘された。英国の事例が解明への糸口となればと思う。

―今やすべてのメディアがデジタルコンテンツ提供者

 英国の記者にとってツイッターやブログが必須となっている背景には、デジタル化、ネット化の進展がある。全国紙の毎月の発行部数は前年同月比で数パーセントから二ケタ台の減少が常態化している。その一方で新聞社のウェブサイトのアクセス数は上昇の一途をたどっている。

 放送業界では、公共放送BBC、民放ともに、過去1週間の間に見逃したテレビ番組をテレビ受信機、PC、携帯機器(スマートフォン、タブレット端末など)などで無料で再視聴できるオンデマンド・サービスが普及している。

 複数の調査によると、英国は欧州の中でも、スマートフォンの普及率が最も早い国だ。

 放送通信庁オフコムの「国際通信市場リポート2011」によると、スマートフォンの所有率は成人の半分(2010年時点)だ。調査会社エンダース・アナリシス社は、2015年までにこれが75%に上昇すると予測している。ソーシャルメディアのサイトを訪問したことがある人は79%で、18歳から24歳に限ると92%に上昇する。

 広告もネットに移動しつつある。2011年の媒体別広告費(英広告協会発表)を見ると、その30%がインターネットで、これにテレビ(26%)、新聞(24%)が続いた。

―24時間報道体制の確立で、記者はいま、競争真っ只中に

 英国のテレビ局とはもはやテレビ受信機に番組を送信するだけの存在ではなく、新聞も紙媒体を印刷・配布するだけの存在ではない。全てのメディアが、デジタル・コンテンツの提供者となり、利用者と広告主がいる場所に向けて、サービスを展開している。「何故ソーシャル・メディアに参入するのか?」のシンプルな答えは、「利用者がそこにいるから」だ。

 デジタル化、ネット化で、記者が置かれている環境も様変わりしている。その具現化が24時間の報道体制だ。

 現在、デジタルテレビを設置している家庭では24時間のニュース専門チャンネルとしてBBCニュース、衛星放送のスカイ・ニュース、米CNNと少なくとも3つあり、デジタル契約によっては、これに中東の衛星放送アルジャジーラ英語、英仏他数ヶ国語で放送するフランス24、欧州を拠点とするユーロ・ニュースなどが加わる。こうしたチャンネルの大部分がネットでも同時放送を行っている。

 BBCのニュースサイトが動画を豊富に使って常時ニュースを発信し、新聞社サイトも速さの戦いに参加する。元祖24時間メディアとも言えるラジオにソーシャル・メディアを加えると、24時間、ニュースが、複数のプラットフォームを横断しながら飛び交い、増幅している。

 記者は「誰よりも早く」、「質の高い情報を発信する」競争の真っ只中に置かれている。複雑な編集プロセスを経ることなく、あっという間に短文情報が出せるツイッターが、非常に便利なツールとしてもてはやされるようになった。

 ツイッターあるいはブログを使って、英国の記者が「xx(媒体名)社のxx(個人名)」という形で情報発信をするとき、その中身は、自分が担当する分野のニュースについての自分なりの見立て(解説、分析、感想)、実況(事実を時系列に発信)、キュレーション(他媒体からの情報も含めて選別・集積して、流す)、情報交換(他媒体の記者あるいは情報の受け取り手との間で)、取材(取材対象を募るなど)、後で本格報道をするための予告、スクープ報道などになる。記者として情報発信をする以上、ツイッターやブログはあくまでもジャーナリズムのツールだ。

―大手銀行の資金難を暴いたBBCペストン記者の場合

 ソーシャル・メディアの巧みな使い手として真っ先に名前が上がるのがBBCのロバート・ペストン記者(@Peston)である。近年、経済ニュースで次々とスクープを出している。2007年9月、住宅金融が主力の中堅銀行ノーザン・ロックの資金難を報道して注目を浴びた。同行が英中央銀行から緊急融資を受け入れることになったと報じ、これがきっかけとなって英国で過去150数年で初の取り付け騒ぎが発生した。

 08年9月には、住宅金融に力を入れてきたHBOS銀行が大手銀ロイズTSBと合併を進めていることスクープしたが、午前の9時の第一報を同時に伝えたのは、BBCのニュースサイト内に設けられた自分のブログとニュース専門局での報道であった。

 1日の中で最も重みがある、BBCの午後10時のニュースでスクープを報道すれば、この情報に触れる人は格段と増える。しかし、報道の速さを最優先する場合、ライバルに先を越される前に情報をしかもブログで出せば、「BBCが」そして「BBCのペストン記者が」このニュースを真っ先に出したという事実を確実に残せる。ほかの媒体は「BBCが」という形で報道を行うことになり、BBCのそして記者の価値は上がる。

 英メディア界の編集幹部がメンバーとなる「編集者協会」の08年の年次大会に出席したペストン記者は、ブログでも、番組放送時同様に「事実関係の確認をし、きちんとしたものを出す」、「ブログだからといってジャーナリズムの基準を変えていない」と語っている。

 ペストン記者は現在も、週末をのぞくほぼ毎日、担当する経済ニュースに関わるブログを書く。ブログの内容はBBCのニュースサイトの第一報記事などに、補足・解説として紹介される。14万人余のフォロワーを持つ同記者のツイッターはメディア界で最も信頼されているアカウントの1つである。

―ブログを書き、同時につぶやく 合間にニュース番組に出演

 具体的な報道の例を見てみよう。

 6月末、英大手銀行バークレイズが、ロンドン銀行間貸し出し金利(Libor)の設定で不正操作を行ったなどの件で、英米の金融監督当局から合計2億9000万ポンド(約360億円)の罰金の支払いを命じられた。これを受けて、まずエイジアス会長が辞任を発表し、今度は最高経営責任者ボブ・ダイヤモンドの去就に耳目が集まった。

 ダイヤモンドの辞任報道が出回ったのは、7月3日の午前8時頃。ペストンは8時22分に「ダイヤモンドは議員たちに追われた。(この事件についての)調査委員会が立ち上がれば、自分に世間の注目が集まり、銀行を改善する時間がないと思ったのだ」とツイートした。8時50分ごろには、BBCのニュースサイトに、「ダイヤモンド辞任」のコーナーが立ち上げられる。2人の記者が短いテキストを交互に投稿する形で、辞任に関わるニュースが時系列につづられてゆく。10時8分、ペストンは「議員らと株主に押され、ダイヤモンドは辞任に追い込まれた」とする見出しのブログ記事をアップし、その約30分後に、自分のブログへ誘導するアドレスを載せたツイートを発信している。

 同日、エイジアス会長にインタビューしたペストンは、ツイッターで「いま、エイジアス会長にインタビュー。ボブ・ダイヤモンドに対し、中銀総裁マービン・キングが辞めるよう言ったのかどうかについては言明せず。ダイヤモンドの『個人的決断だった』とだけ言った」とつぶやいた。これが午後5時過ぎである。ウェブサイトにインタビューの模様がアップされたのは午後6時頃。ツイッターやブログへの投稿、ウェブ上への動画アップロード、合間に出演するニュース番組内での報道を組み合わせながらの働きぶりとなった。(続く・ほかのメディア組織の具体例や方針とは?)
by polimediauk | 2012-09-11 02:01 | ネット業界