小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk
プロフィールを見る
画像一覧

カテゴリ:ウィキリークス( 33 )

c0016826_23574448.jpg


3月13日時点で、まだこれを手にしておりません(!!)来週中には日本から届くと思うのですが。コメントがうまく返せないのですが、すごくよいレビューをみどりさんが書いてくれています。ご参考のこと。

http://newsfromsw19.seesaa.net/article/188131636.html?1298832015 


先週ぐらいから書店に出た、「機密告発サイト ウィキリークスの真実! 」(別冊宝島) の中に、ガーディアンととアサンジの関係を書いています〔パート2の中の1つ)。

 目次はこんな感じです。

 まえがき 世界を震撼させる機密告発サイトの全容!

Part.1 “元天才ハッカー”の素顔
 ジュリアン・アサンジ 単独ロングインタビュー 国家機密をなぜ暴き続けるのか?   NHK取材班
 謎のハッキングを受けながら……ジュリアン・アサンジ取材後記
 【天才ハッカー物語】ジュリアン・アサンジの秘められた過去

Part.2 ウィキリークスとは何か?
 英紙『ガーディアン』副編集長が明かす「メガリーク」の舞台裏、アサンジの素顔
 ウィキリークス物語【謎に包まれたシステム、メガリークの歴史】
 資金不足&アサンジ逮捕で、噂の新しい「メガリーク」はどうなる?

Column ウィキリークスは「善」か「悪」か?
 猪子寿之
 堀江貴文
 上杉 隆
 …ほか

Part.3 米国外交公電「流出」事件の真相
 25万点を一挙に入手! アメリカ外交公電「流出」の衝撃
 機密文書の提供者は、弱冠22歳のアメリカ陸軍上等兵
 謝罪外交に追い込まれた、クリントン国務長官の苦悩
 …ほか

Part.4 保存版カタログ「流出情報BEST 100」
 公開されたアメリカ外交公電、2900点の内容を精査する!
 日本編
 アメリカ編
 ロシア・欧州編
 …ほか

Part.5 情報漏えい社会の近未来図
 小飼 弾インタビュー ウィキリークスは、情報ダダ漏れ社会のプロローグだ
 特別対談 小谷 賢×黒井文太郎 情報のプロが読み解く! ウィキリークス事件の正しい見方

 ***

 アサンジの長文インタビューや、流出情報ベスト100を大いに楽しみしていますーー何せまだ手元に入っていないので、どんな感じなのか、???なのですがー。

 
by polimediauk | 2011-02-26 23:58 | ウィキリークス
 ウィキリークスに関して、「国益と公益とのバランス」がよく問題になった。この点に注目した原稿を「新聞協会報」(2月15日付)に出している。以下はこれに若干補足した分である。

***

ウィキリークスと英・米メディア
―大手紙がメガリーク参画、 「公益」理由に機密情報公開
 

 内部告発サイト「ウィキリークス」が、昨年来注目を集めている。数十万点に上る米軍の機密情報や外交公電を、世界の複数の報道機関と協力し、あらかじめ決められた日に一斉に、かつ大々的に暴露したいわゆる「メガリーク」報道で、一躍その名を世界中にとどろかせた。こうした共同作業が一段落した今、「共闘」の中心となった英国と米国でのジャーナリズム議論を紹介したい。

―ジャーナリズムか?

 ウィキリークスは、情報漏えい者から届いた機密情報(一次情報)を、10人程度の専従スタッフと800人ほどのボランティアたち(ジャーナリスト、弁護士、IT技術者など)が協力して信憑性などを検証し、サイトに掲載する。サイトの自己定義は「メディア組織」で、創設者のジュリアン・アサンジ氏は自分を「ジャーナリスト」と呼ぶ。サイトの目的は「真実を提供すること」で、伝統的報道機関の目的と合致する。

 しかし、サイト上で一次情報を出すのみでは報道組織とはいえないとする考えが、当初から根強くあった。アサンジ氏が元ハッカーであることから、現在の同氏を「国家転覆を試みる」意図を持つハッカーとみなし、「ジャーナリストではない」、そして「ウィキリークスはジャーナリズム組織ではない」と述べたのは米「MITテクノロジー・レビュー」誌の編集長ジェイソン・ポインティン氏であった。

 一方、いち早くウィキリークスを新たなメディア組織として定義づけたのはニューヨーク大のジェイ・ローゼン教授だ。ネット上に存在し、特定の本拠地や国を持たないウィキリークスを「世界で最初の無国籍のニュース組織」と呼んだ。

 ウィキリークスと共同作業を行った英ガーディアン紙のイアン・カッツ編集長は、1月末、「ウィキリークスはジャーナリズムだ」と筆者に語った。これまで、ジャーナリズム機関は「情報を取得し、検証し、分析し、文脈を与えて記事の形にして読み手に公開する」という一連の作業の全過程に従事した。ウィキリークスは全過程には参画しない。ガーディアン自体ももはや全過程には参画しない。リーク情報のみに限らず、ネット上で大量の一次情報やさまざまな論評が出るようになった現在、「全過程に参画しないからといって、ジャーナリズムではないとはいえない。それぞれが『ジャーナリズム』と呼ばれる時代になった」という。

―国益との兼ね合いは

 国家機密を暴いたメガリークをめぐるジャーナリズム議論の中で、頻繁に話題に上ったのが国益。例えば国家の安全保障と、国民に広く情報を公開することの意義、つまり公益との兼ね合いをどう取るかであった。

 米政府がウィキリークスを批判したのも、まさにこの点であった。「(リークは)米国の安全保障に危害を及ぼす危険性がある」(ギブス米大統領補佐官、アフガン戦闘記録の公開後、2010年7月26日)、「情報を漏えいさせた者や流出情報をネットに公表したものは無責任極まりない」(ゲーツ米国防長官、同27日)、「米国や同盟国の兵士、民間人の命を危険にさらす」(クリントン米国務長官、同年10月22日、イラク戦争文書公開後)、「米国の外交政策や国際社会への攻撃だ」(同長官、11月29日、外交公電報道後)など。

 これに対し、ウィキリークス側は「戦争の全体像を示す」(7月26日)、「戦争犯罪を示す説得力のある証拠を提供している」(10月23日)、「(情報公開は)世界をよりよくする」(12月3日)、「ウィキリークスにより人命や安全保障が脅かされている主張はでたらめだ」(12月8日)と反論している。

 2月上旬時点で、一連のメガリークによって大きな安全保障上の危害がもたらされた形跡はないが、既に危害が出ていても表面化していない場合がありえる。メガリークの影響の全貌が判明するのは何十年も先という声もある。

 メガリーク報道に参画した米ニューヨーク・タイムズ紙は、アフガン戦闘記録公開の前に、「国益と公益をはかりにかけ」今回は情報公開が公益にかなうと判断して情報を出したと説明した(7月25日付)。11月末の外交公電公開前には、大統領官邸にどの公電を報道するかを知らせ、「国家の利害に損害を与える箇所があれば指摘してほしい」と協力を呼びかけた。官邸の異議申し立てを「時には受け入れて」報道した(11月28日「読者へのお知らせ」)。

 一方のガーディアン紙は同様の説明の中で「国益」という言葉は使っておらず(米国の機密情報であったことが一義的理由と推測される)、「公益」を公開の理由として挙げている。

 先のガーディアンのカッツ副編集長は「情報を隠すよりも、掲載して間違いを犯す」方を選ぶという。原則として「編集部が知っていることは読者も知るべきだ」というのが同紙の基本方針である、と。

 ウィキリークスからメガリークの生情報を提供された組織の一つ、ロンドンの調査報道センター(CIJ)のギャビン・マクフェイデン所長は、「政府が『国益』を理由に情報を公開しないと主張するとき、何かを隠そうとしている場合が多い」と述べる。「民主主義社会では、国民は全ての公的事柄に関して知る権利がある」「政治家は国民が選んだ人たちだ。もし情報の公開で政治家が困惑する思いをしたら、それまでだ」と話す。「例外は情報の公開によって人命が失われるなど、ごくまれな場合のみだ」。

 また、報道機関の主要な役目が国民のために真実を明らかにすることだとすれば、「国益を考慮するのは政府の役目であって報道機関の役目ではない」と続ける。

―ネットの落とし子

 為政者や大企業が外に出したがらない情報を明るみに出す「無国籍ニュース組織」ウィキリークスは、どの国の法律にも縛られない、ネットの落とし子として存在する。その評価の決定にはまだ時間がかかるであろうが、ともすれば国内の法規やしがらみに縛られて権力に対する監視を十分に行使できなくなっている既存の大手報道機関への一種のカンフル剤ともいえるかもしれない。(終)

***

補足:公益について若干付け加えると、英国の論壇の中では、メディア側がこの「公益」という言葉を過度に使いすぎている、または自分たちの行動を正当化しすぎているのではないか、という批判がある。例えば、犯罪の容疑者として捕まった人物(容疑者)の過去の経歴を報道したり、犯人視した報道をすれば、法廷侮辱罪に抵触することになる。陪審員裁判に影響を与える(と思われる)ので、司法審理に介入した=侮辱罪、と。それでも、新聞は部数を売りたいので、例えば容疑者の家族や恋人の話などを大きく出したりする。これに限らず、何でも、「公益のため」という理由で、様々な報道をする。

 こうした傾向は大いに批判されるべきだろうけれど、また一方では、政治家や政府が自分たちにとって都合の悪い事実を明るみに出したくないために、報道差止め令を裁判所に申請したり、金持ちの個人であれば名誉毀損として裁判所に訴えることがある。

 どこまで何を報道するかは、2つの勢力のせめぎあいで決まる。つまり、「機密情報だ」など、いろいろな理由を挙げて情報を出させまいとする政府や大企業側と、ニュース価値があると思ったものを何でも出そうとするメディア側との戦いの結果である。

 こうして、どこまでを「公益」として正当化できるかは人(=どこに自分を置くか)によって変わって来るが、公益を理由として報道するとき、そのココロは、「国民が主権を持つ民主主義社会の中で、この社会が機能するために、社会の構成員である国民が知っておくべきと思われる事柄」を報道するべき、と考えるからであろう。

 ・・・とした場合、「公的事象に関わる(ほぼ)すべての事柄」=「公益として報道の価値がある」ーという解釈(マクフェイデンさんのような)が成り立つ。

 公的情報はいったい誰のものかー?答えは国民であるに違いない。もし国民にある情報を出さないのであれば、十分な理由付けが必要となろう。

 ―というようなことを、今の私は考えている。
by polimediauk | 2011-02-15 19:56 | ウィキリークス
 英ガーディアンがウィキリークス本の連載を続けている。今回は昨年6月、ベルギーのカフェで、ガーディアンの記者がジュリアン・アサンジに会い、メガリークを一緒にやろうと持ちかけるところから始まる。

 http://www.guardian.co.uk/world/2011/jan/31/wikileaks-embassy-cables-publication


 カフェのナプキンに書かれた文字を使って、メガ情報を読み解くキーワードを作るアサンジ。このナプキンを、ガーディアンの記者は「汚いシャツと一緒に」ロンドンに持ち帰ったー。なんともリアルで、面白い、まるでスパイ小説のようである。

 その後、アサンジが米外交公電公開(昨年11月末)の直前、「もうニューヨーク・タイムズ、ガーディアンと一緒に仕事をしたくない」というほど、頭をかっとさせるような事態が出現する。一つには、ニューヨーク・タイムズが、アサンジを批判するプロフィール記事を掲載し、これをアサンジは心底嫌ったのだという。
 
 そのほかにもいろいろなごたごたが起きて、ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、ドイツ・シュピーゲルという3大報道機関とウィキリークスの協力は風前の灯になる・・・。しかし、これを「まあまあ」と最後に丸くおさめたのは、たくさんのワインと穏やかなガーディアン編集長であったー。

 和訳本もすぐ出るようなので(アマゾンに出ている)、楽しみな本である(注:私はガーディアンから宣伝用のお金はもらっていないが!!!)
 
 ところで、前回、「勝手に出版しろ」(Publish and be damned)という表現を紹介した。これは、後に首相にもなったウェリントン公が使ったらしいのだが、手紙にこの文章を書きつらねたーというのは神話らしい。家にあった本を見ると、(Wellington: A Personal History by Christopher Hibbert)―。19世紀の話である。英国王ジョージ4世が「摂政王太子」(父のジョージ3世が病を患い、一時摂政として国を統治〕だった時の愛人の一人に、ハリエッテ・ウィルソンという女性がいた。http://en.wikipedia.org/wiki/Harriette_Wilson 4人の首相となる人物もお相手にしたウィルソン。この中の一人がウェリントンだった。

 後、ウィルソンは回顧録を書き、この回顧録の出版前に、出版者がウェリントン公に手紙を出した。回顧録にはウェリントン公が公表したくない部分が入っていると手紙は告げていた。「印刷機を止めたが、来週には出版予定です」と。

 ウェリントンはこの手紙に「Publish and be damned」と書き、送り主(出版者)に返したといわれている。しかし、先の本の著者によれば、この手紙が今でも残っていて、実際には何の文字も書かれていないという。ただし、この本にはないが、ウェリントン公がこの表現を口頭で言った可能性が消えたわけではないのだが。著者は、おそらく、ウェリントンが出版者に対し、裁判に訴えると脅したのではないか、と書く。

 この回顧録は最終的に出版され、逸話を暴露されたほかの人が裁判に訴えたので、出版者は破滅の道をたどったという。ウェリントン公自身は先の女性の「退屈な賛美者の一人」として描かれ、その名誉はほとんど傷つかなかったという。

 いずれにしろ、メディア界では、リスクがあってもそれにひるまず出版する、訴えられたらこれに打って出るーという意味合いがあるようだ。ただし、実際、訴えられたら裁判費用が莫大なので、こんなことを理想論としてでもいえるのは、ある程度の大きな報道機関になるだろう。(*「Publish and be damned」のより良い訳や、もっと知っている方はご教示ください。)
 

 
by polimediauk | 2011-02-01 06:55 | ウィキリークス
 ウィキリークス関連本が、2月中旬ぐらいまでに、各国で続々と出るようだ。

 英語圏の本を拾ってみれば、ウイキリークスのジュリアン・アサンジと共同作業を行った大手報道機関の1つ、米ニューヨーク・タイムズは「オープンシークレッツ」という内幕モノをすでに出している。ただし、これは今のところ、電子ブックのみでの購読だ。それでも、コンパクトにまとめた抜粋版がサイトに掲載されており、とりあえず、大体のところは分かるようになっている。

http://www.nytimes.com/opensecrets/

 元ウィキリークスにいたダニエル・ドムシャイト・ベルグが 「ウィキリークスの中:世界で最も危険なウェブサイトでのジュリアン・アサンジと私の時間」を出す。
Inside WikiLeaks: My Time with Julian Assange at the World's Most Dangerous

https://www.amazon.co.uk/Inside-WikiLeaks-Assange-Dangerous-Website/dp/0224094017/ref=sr_1_6?ie=UTF8&qid=1296429673&sr=8-6

 さらにグレッグ・ミッチェルという人が「ウィキリークスの時代」という本を出した。
http://www.blurb.com/bookstore/detail/1949679

 オーストラリアでも、誰かが書いているはずだ。

 米政府に関する機密情報暴露の共同作業を提唱した、「本家」とも言える英ガーディアン紙の「ウィキリークス:ジュリアン・アサンジの秘密の戦争の内幕」(Wikileaks: Inside Julian Assange’s War on Secrecy)は、2月10日頃の発売予定だったが、一挙に早まったようだ(日本語版もすでにアマゾンに出ていた)。現在、サイトで一部が読める。数回に渡り、新刊本の中味を連載する予定だ。

http://www.guardian.co.uk/media/2011/jan/30/julian-assange-wikileaks-profile

 ガーディアンの記事を読み始めたが、波乱万丈なアサンジの人生が迫力あるタッチで書かれていた。アサンジは自分でも自伝を書いているそうだが、ガーディアンと協力しているはずで、やはり、本人が関わったとすれば、ドキュメンタリーとしても面白いに違いない。

 日本語でもウィキリークス本はいろいろと出てくるようだが、今日、目に留まったのは、ガーディアンのアラン・ラスブリジャー編集長のアサンジとの協力体制に関する文章である(1月28日サイト上で公開、これは新刊の一部であるという)。

http://www.guardian.co.uk/media/2011/jan/28/wikileaks-julian-assange-alan-rusbridger?intcmp=239

 すこし長いが、いくつか気になったことをメモってみる。

―ペンタゴン文書の弁護士からもらったメール

 編集長は、数ヶ月に渡る機密情報の公開後、「空が落ちてきたわけではなかった」と指摘する。「ウィキリークスの敵は、こうした情報が公開されればいかに危険かと何度も繰り返した」、と。そして、「ここら辺で、アカデミックな機関などが公開の損害と恩恵とのバランスに関して、調査をしたらどうか」、と提唱する。また、米国がさまざまな外交公電を簡単に読まれ、ウィキリークスに渡されるような管理体制をしていたことを検証する必要があるのではないか、と問う(最後の点は他の論者もたびたび指摘している)。

 ウィキリークスと共同作業をした報道機関の編集長たちが悩んだのがどこまでどのように機密情報を公開するかー。ラスブリジャー編集長は、40年前のペンタゴン文書事件(軍事分析家のダニエル・エルスバーグが、国家機密であった「ペンタゴン文書」をニューヨークタイムズにリーク。タイムズが報道を開始して数日後、政府がこれを止めるために、裁判所に差止め令を出させた事件)で、ニューヨーク・タイムズ側の弁護士だったマックス・フランケルから、電子メールを受け取ったという。昨年11月末の米外交公電報道から、まもなくのことであった。

 フランケルは現在、80歳。ニューヨーク・タイムズに向けて書いたメモを、ガーディアンのラスブリジャー編集長にも送ってきた。

 フランケルは、こう書いてきたそうである。機密情報の公開に際し、フランケルは

①出たがっている情報は出てしまうものだと私は思っている。私たちの役割は、情報を責任を持って受け取り、私たち自身の普遍のニュース基準によって掲載する、または掲載しないことだ。
②情報提供者が自分の職務上の誓約や法律を破ることになる場合、私たちは、当局がこの誓約や法律を実行するようにさせるだけだー私たちはこれに協力せずに(注:この意味は、職務上の機密を守らせるようにするのは当局の仕事であって、メディアの仕事ではないということ、と私は解釈した)。私たちは、当局との協力や情報源の公開を、はるかに大きな理由のために拒絶する、つまり、『すべての』(注:強調)情報提供者は私たちが彼らを守ることを知っているべきだからだ。しかし、情報を漏えいをする、あるいは情報を出す人のバイアスや明確な目的を明らかにするのも、私たちの義務である。
③もしある情報がペンタゴン文書事件で最高裁が設定した基準を超えるようであれば、つまり、掲載によって直接的な、修復できない損害をもたらす場合は、私たちには掲載を適宜限定する義務がある。もし懸念があるならば、当局に対し、こうした直接の危険が起きると私たちを説得する機会を与えるべきだ。
④それ以外のすべての情報に関しては、掲載の結果起きることを誰も予測はできないと私は常に考えてきた。エルスバーグの望みとは裏腹に、ペンタゴン文書はベトナム戦争の終結を早めなかったし、特に大きな反戦抗議を引き起こしたわけでもなかった。掲載は政府を当惑させるかもしれないが、政策を向上させるかもしれない。あるいは、政府によるリークであった場合は、政策に損害を与えるかもしれない。ジャーナリスト、スコッティー・ジェームズは「勝手に公表しろ」(Publish and be damned、もともとは英首相にもなったウェリントン公が使った表現)とよく言っていた。ひどい表現に聞こえるが、ジャーナリズムのモットーとしては、これまでの歴史を見ても社会に恩恵を与えたと思う。(注:若干意訳、言葉の補足などあり。もっといい訳がある方からのご指摘を歓迎します。)

―米英のウィキリークスに対する見方の違いについて

 メガリークを巡り、米国のメディアや政治家が報道の自由や情報の透明性よりも、「愛国精神」のほうに傾いた反応をしているのではないかーこれは私自身がそう感じてきた。「米国の」機密情報が暴露されてきた以上、これは自然な流れだったかもしれないが、海を隔てた英国からすれば、やや「いかがなものか」的感想を持ったのは確かだった。

 ラスブリジャー編集長もこの点を感じていたようだ。記事の後半部分で、編集長は英国では「ほとんどのジャーナリストたちは、公開情報に明確な公的価値を見ることができた」。

 しかし、「米国では別だった」「様々な度合いの愛国主義に曇らされ、もっと苦々しく、パルチザン的な議論があった」。「ロンドンにいて、ほぼ主流と見なされる米国の論者たちがアサンジの暗殺を唱える姿を見て」、驚いた、という。また、「米国人ジャーナリストたちの間に、ウィキリークスの一般的な理想やその仕事を支持することへのいやいや感があることを知って、驚いた」とも。「一部の米国人ジャーナリストたちは、アサンジがジャーナリストであることも認めたがらなかった」。〔「愛国主義」で単純に判断できない件は、コメント欄をご覧ください。) 

 こうした態度が「アサンジが起訴された場合に変わるのかどうか」が見ものだ、という。

 ラスブリジャー編集長は、「頭の冷静な米司法関係者は、戦闘日記や外交公電を出版したことで、アサンジを起訴するのは事実上不可能であること」を理解するようになった、と指摘する。それは、もしそうすれば、メガリーク報道をした世界の5大報道機関も責任を問われることになるからだ。

 しかし、情報漏えい者とされるブラッドリー・マニング米軍上等兵の実話が出ない限り、世界を揺るがせたリークの完全な物語は完成しない、と編集長は言う。そして、新刊本は物語の第1章となるのだ、と。

 ガーディアンは、米バニティー・フェア(今年2月号)が書いたように、「うぬぼれさ」がある新聞(とライバル紙はいう)。自分がやっていることが世界中で一番重要なことだと宣伝する傾向もある。アサンジの話を中心にした本を出すことで、ガーディアンの名を世界中に広めたいと願っているだろうし、ブランド作りや新たな収入源の1つとして、ウィキリークスとはしばらくの間、仲良くしていくことだろう。

 また、米国の報道機関への弁護としては、米国の報道を「愛国主義寄り」と批判するのは、「対岸の火事」を見る格好となるガーディアンにとっては(私にとっても)簡単だ、という点を表記しておきたい。

 ・・・などなどを差し引いても、新刊本はかなり面白そうだし、編集長が紹介したフランケルのメールも、なかなか示唆に富むものだと思う。

 



 

 
by polimediauk | 2011-01-31 10:02 | ウィキリークス
 ウィキリークス報道が、ひとまず落ち着いた今日この頃(ガーディアンとの共闘作業は年末で一通り終わったようである)。

 米英、あるいは世界各国で物議をかもしたウィキリークスによる一連の「メガリーク」だが、どことなく、びくともしなかったような感のある日本である。

 そんな日本をあっと驚かせる大ニュースはメガリークの中にはなかったのだろうか?そしてまた、実際に、読売や朝日などの大手新聞がウィキリークスから生情報をもらう可能性はあるのか、ないのか。ウィキリークス側からの答えが今ないとしても、少なくとも、大手新聞側は一体どう考えているのだろう?

 そんな疑問に答える形で、ジャパンタイムズ(25日付)に出たのが、ジャーナリストのデービッド・マックニール氏による「ウィキリークのダムが決壊するのを待って」(Waiting for the WikiLeak dam to break)である。

http://search.japantimes.co.jp/print/fl20110125zg.html

 その中の情報の抜粋なのだが、まず読売新聞によると、2006年から2010年、東京の米国大使館と米国務省との間の外交公電は5,697あったそうである。米―アンカラ(トルコ)、米―バグダット(イラク)に次いで多い数だ。中身は、沖縄、北朝鮮や中国に関する機密書類などが含まれる。この内容が公開されたら、「重大な結果となる」と、防衛省の高官が読売に語ったそうである。

 大量の外交公電情報を得た報道機関の1つがガーディアン。その副編集長によれば、読者の国際問題に関する関心は思ったより高くなく、報道したのは公電情報の「ほんの一部」であった。また、情報源の保護やその他の理由から、公電全部をそっくりそのままサイト上に出す、ということをどの報道機関もしていないとのことであった。

 マックニール氏によると、ウィキリークスの弁護士(複数)が、日本にいる「著名な外国人のジャーナリスト」に、直接ウィキリークスから生情報をもらう件に関してコンタクトをとったそうである(このジャーナリストが誰なのかは、ぼやけた表現になっている)。また、同氏によると、朝日新聞とジャパンタイムズは少なくとも表向きにはコンタクトがなかったと言っている。

 「噂によれば」、読売にアプローチがあったそうだ。そこで「ライバル紙」〔朝日?〕のジャーナリストが、読売は自民党に近かったので、もし掲載することになれば、苦しい立場に追い込まれる、と推測をのべている。ーーここら辺は、推測や噂の話である。

 日本のメディアがウィキリークスと直接関与してこなかったのは、「無関心」が理由ではないか、と東海大学で教える山口勉氏がいう。山口氏は元読売記者(実は、筆者の昔の上司の一人―短い期間ではあったが)。「残念だが、日本のプレスは怠惰なのです」。

 また別の読売の退職者〔筆者注:おそらく記者であった人〕は、匿名とすることを条件に、別の見方を教えてくれたという。「大手新聞社の上級編集者たちは、ウィキリークスに近づかないよう言われていた」「(ウィキリークス創始者の)アサンジがやったことを認めていないからだ」。マックニール氏は、それでは、公電情報へのアクセスを提供された「ワシントンポストやウオールストリートジャーナル、そのほかの米国の報道機関の態度と変わらないではないか」と書く。

 一方、ウィキリークスから生情報をもらおうと奔走するジャーナリストも日本には複数いるようだ。「もし沖縄など、でかいトピックに関する公電が報道されたら、1面扱いの記事になる」とそのうちの一人が、マックニール氏に話す。

 一体どんな、日本関連の情報があるのか?マックニール氏は「世界」2月号の「メディア批評」の記事(神保太郎氏が書いたもの=この名前自体はペンネーム)に注目する。紹介されているエピソードを「世界」から抜粋するとー。

 「日本だってWLのおかげを蒙っていることを、忘れてはならない。09年9月17日付でミサイル防衛関係各国の米大使館に発信された米国務省公電は、海上配備型迎撃ミサイル「SM3」の将来におけるNATO,東欧・ロシアへの配備に関する計画が主題だったが、それは対象ミサイルの開発・製造に日本が全面的に協力しており、その力をフルに生かすには日本に戦略的な決断をしてもらう必要がある、とする記述部分も含んでいた」。
 
 「これが12月1日、WLで暴露されたおかげで、同年10月の北沢防衛相・ゲーツ米国防長官会談の中身はその件であることが分かり、そのころから防衛省で武器輸出三原則の見直し論が活発化したわけも、はっきりした。日本が製造に関わったミサイルを第3国に売るには、3原則を変えなければならない。米国はその決断を日本に迫ったのだ。しかし、早くそうした事情が判明したために、新防衛大綱に3原則の見直しを書き込むことに対する世論の反対が生じ、管内閣はこれを見送ることにした。際どいところだった」。


  さらにマックニール氏は神保氏の分析の紹介を続けるのだが、最後の部分(神保氏の)を紹介すると:

 「WLの衝撃が教えることは、現在の不正を暴くことが未来の責任をはたすことになるというジャーナリズムの基本だ」――「隠す側に立つのか、暴く側に立つのか、これは遠い国の話ではないし、国の内側の話でもない。」

 マックニール氏の最後の締めは、「さて、ダムが決壊するまで、後どれくらいかかるだろう?」である。
by polimediauk | 2011-01-26 20:53 | ウィキリークス
 BBCのQI問題で、問題視された動画クリップが削除となったことを知った。いささか衝撃を受けている。

BBC、批判受けネット映像削除 二重被爆者の放送問題
http://www.47news.jp/CN/201101/CN2011012401000820.html

引用:【ロンドン共同】英BBCテレビのお笑いクイズ番組「QI」が広島と長崎で二重に被爆した故・山口彊さん(長崎市出身)を「世界一運が悪い男」などとジョーク交じりに紹介した問題で、BBCは23日夜、動画投稿サイト「ユーチューブ」にBBC自体が掲載していた当該の番組映像を削除した。

 BBC広報担当は24日、共同通信に対し「われわれは既に番組は不適切だったとする声明を出しており、削除を指示した」と述べた。BBCは22日には「週末のため、月曜(24日)朝にインターネット担当者が出勤してから対応を検討する」としていたが、日本国内での批判が収まらないことを受け、前倒しで対処したとみられる。

 BBCと番組制作会社は21日、連名で「(日本の皆さまに)不快な思いをさせ、申し訳ない」と謝罪する声明を発表したが、その後もユーチューブを通じて全世界で視聴できる状態を維持したため、被爆者らの間で不信感が募っていた。

 BBCがユーチューブに掲載していたのは、昨年12月17日に放送した「QI」の一部で、約3分間。この映像は約9万7千回再生されたが、そのほとんどが日本時間21日に今回の問題が報道された後だった。〔引用終わり)
 

 ここまで、あっという間に事態が進んだように思った。BBCが動画削除にまで行く、というのは、よっぽどのことである。抗議から削除・・・。このスピードの速さー大きな衝撃を感じたー。

 ****

 ウィキリークスのことを、また一度、まとめたものを、「英国ニュースダイジェスト」に書いた。今までの経緯を知っている方にはめずらしいことはないが、とりあえずのアップデート版として。

機密情報を世界中に発信する
内部告発サイト「ウィキリークス」とは?
http://www.news-digest.co.uk/news/content/view/7388/263/

 ***

 また、2月5日、数人で書いた、ウィキリークスの本が出ることになった。

 タイトルは新書で「日本人が知らないウィキリークス」 (洋泉社)


 目次はこんな感じ:
 
│第1章│ ウィキリークスとは何か──加速するリーク社会化〈塚越健司〉
1 リークサイト「ウィキリークス」とは
2 ウィキリークスの情報公開──賞賛と批判
3 2010年──変化するリーク方法
4 公電公開後の動き
5 加速するリーク社会化

│第2章│ ウィキリークス時代のジャーナリズム 〈小林恭子〉
  1 ジャーナリズムとリーク
2 国家機密のリーク報道
3 リーク報道をめぐる様々な評価
4 ウィキリークス時代のジャーナリズム

│第3章│ 「ウィキリークス以後」のメディアの10年に向けて 〈津田大介〉
 
│第4章│ウィキリークスを支えた技術と思想 〈八田真行〉
 
│第5章│米公電暴露の衝撃と外交 〈孫崎 享〉
 
│第6章│「正義はなされよ、世界は滅びよ」──ウィキリークスにとって「公益」とは何か 〈浜野喬士〉
 
│第7章│ 主権の溶解の時代に──ウィキリークスは革命か? 〈白井 聡〉
  1 「歴史は繰り返す」。だが、いかなる歴史が?
2 カリフォルニアン・イデオロギーの政治的帰結
3 主権の溶解


 私は自分のところしか読んでいないが、他の執筆者の方の分を読めるのをとても楽しみしている。

 もし良かったら、書店に並んだら、お手にとって見てくださると幸いです!!



 
 
by polimediauk | 2011-01-25 08:12 | ウィキリークス
 英国のニュースを詳しくウオッチングする「メモ魔」さんが、前回のこのブログのエントリー「フロントライン・クラブで議論」について、解説と分析を書かれている。

 このトピックに関心のある方(と記者クラブ制度にも関心のある方)は、ぜひご覧になっていただきたい。
 
ウィキリークスと今のジャーナリズム(フロントライン・クラブでのディスカッション)
http://nofrills.seesaa.net/article/180415003.html

 若干、解説への補足のようなことをしてみたい。

 *メモ魔さんによるフロントライン・クラブの解説は、以下のような感じだ。そう、たしかに「社交クラブ」なのである。この点を書くのをすっかり忘れていた。頭に上らなかったのであるが、たしかに、いわゆる日本流の(大手マスコミが加入する)「記者クラブ」ではない。

(引用)「フ ロントライン・クラブ」は、現在ジュリアン・アサンジに住居を提供しているヴォーン・スミス氏が運営する、ジャーナリストのためのクラブ(この「クラブ」 は、英国の伝統的な、「会員制の社交場」という意味。かっちりした「組織」ではない)。ロンドンのパディントン駅の近くにあるこのクラブは、ウィキリーク スが何か大きなこと(アフガン戦争ログ公開など)をするたびに、ジュリアン・アサンジの記者会見の場として利用されてきた。普段は、会員のための講演会・ 討論会やドキュメンタリーの上映などを行なっている。また季刊でBroadsheetという機関紙も出している(今出ている号の表紙が長崎原爆だ)。http://frontlineclub.com/(引用終わり)

*タイムズのコラムニスト、アーロノヴィッチについて

 メモ魔さんの解説:

 (引用)――私はこの人の「自身の考えの言語化の結果のテクスト」(≒書いてることとその中身)が好きではないのだが、このディスカッションでは「ヒール」の役 (WLとアサンジを「ヨイショ」しない役)でかなり効果的な仕事をしていたようだ。(@federicacoccoとかは "troll" って言ってたけどw)実際、テクストより喋りのほうがしっくりくるロジックを持った人かも(元々テレビの人)。(引用終わり)

 私自身、彼の書いたものを読んだときは、あまり好きではなかったのだけれど、実際、喋りがうまいー。いろいろ見聞きして、「知っている人」の感じがした。何が起きているかの真実らしきものへの嗅覚がすごい。まさにジャーナリスト。話し言葉でものごとを要約するのがうまい。放送ジャーナリズム育ちの人だなという感じがする。

*「海底ケーブル」の話―ここも、興味のある方は探求してみていただきたい。

*本の話とガーディアンのモスクワ支局のルーク・ハーディングの話--私もハーディング氏には注目している。本は、講談社が日本語翻訳権を買ったとのこと(ガーディアンブックスとランダムハウスに電話して聞きました)。いつ翻訳が出るのかは分からない。このガーディアンのウィキリークス本について、私はガーディアンのデービッド・リー記者に問い合わせをしていて、返事がないなあと思ったら、10日の週明けにリリースが出て、驚いた。

*アナリストとキューレーションのこと

 私のメモにアー ロノビッチ(コラムニスト)が、「分析屋(アナリスト)の位置が大きく変わった。例えば、経済の問題なら、特定のシンクタンクに意見を聞く。今は情報が大量に 出ている。これを分析する人が必要になった。何が重要で何が重要でないのか。アナリストに聞かないと分からないのだ」という部分があったのだけれど、それに関して、メモ魔さんは、こう書く。

 (引用)「これは本当にそうだと思う。ウィキリークス云々より長いスパンの話で、「IT革命」で一般人が触れる情報の量が激増して、で結局何が何なのかわからない状態が生じていて、その中で個人は結局、「自分にわかる話」にしか接さないというか、幅が狭くなってると思う」
 「卑近なところでは、必要なニュースはネットで読むので、新聞を取らなくなった=別に積極的に知ろうとしていなくても何となく目に入ってくる情報、というもの に接さなくなった(例えば、私はラグビーには興味がないのだが、新聞をめくっていれば何か大きな大会があれば、「東芝の誰某」とかいった感じで語られるス ター選手の名前くらいは自然と目に入るので、「知ってる名前」にはなる。ネットで興味のあることしか見ていないと、そういう形で知る情報というのがなくな る)。その結果、これは個人の体感だが、情報に対する嗅覚がすごく鈍くなったように思う」
「そういう状態で、「自分の興味」云々とは関係な く、絶対的に何が重要で何が重要でないのか、ということについて、旧来の「新聞」の役割――知っておくべき情報を、重み付けして整理して並べてくれるとい う役割――を果たす存在はやっぱり必要だよなあ、とすごく思っている。最近よく言われるけど「優れたキュレーター」の存在。「編集者」じゃなくて「キュ レーター」。(引用終わり)


 この「キューレーター」「キューレーション」っていうのは、近く出る、佐々木俊尚さんの新刊のタイトルの一部にもなっているようだ。

 ウィキリークスの話で、事態の流れがあまりにも速いので、なんかもう、本が出る前に、すでにキューレーションが現実化しつつある。

 それと、今回のウィキリークスで私たちが体験しているのは、もしかしたら、新しい現象(だと思うのだけど)、つまり、「ツイッターを主な媒体として、どんどんと情報が加速・倍速で出されていって、お互いに情報を補足したり、新しい情報を教えあったり、反論しあったり、同意したり・・・ものすごいスピードで、国境を越えて情報が集積され、共有されてゆく」-。

 そういうことを、私たちは、今、刻々とやっている。

 ネタはもちろん、ウィキリークスでなくてもいいのだけれどーすでに日本では、小沢さんや検察の話など、ほかにもいろいろ、どんどん進んでいるのだろうしーー私にとっては、今回初めて、本格的にこういう情報集積の流れを実体験している。

 これは「ジャーナリズム」だろうか?こういった情報の集積がー?私は、これはジャーナリズム以外の何ものでもない感じがする。


***補足①
ご関心のある方は、吉田秀さんのブログもご覧ください。
「気まぐれ翻訳帖・メディアと政府の癒着」
http://cocologshu.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-b975.html

***補足②
アーロノビッチの話で思い出したのですが、多分、動画で見れると思いますけど、質問のコーナーで、若い人が、「ウィキリークスの外交公電などは、もうみんな知っていることばかりで、新しいことはほとんどないとあなたは言いますが、私は知りませんでしたよ」と、議論をふっかけるようなことを聞いたのです。それに対して、アーロノビッチは、「情報があふれている」「僕が書いても、君が読んでないだけじゃないか」ーのようなことを言っておりました。これまた、一つのヒントがありました。「ものすごく、情報量が多いので、全部見切れないー全部見れる人はない」-まさにネット時代だなあと思った次第です。

by polimediauk | 2011-01-14 07:46 | ウィキリークス
 昨晩(1月11日)、ロンドンの記者クラブ「フロントライン・クラブ」で、「ウィキリークスはジャーナリズムに鏡をかかげているのか」という題で、メディア関係者が議論を行った。

 その模様は以下の動画で見れる。

 http://frontlineclub.com/events/2011/01/on-the-media-wikileaks---a-mirror-for-journalism.html
 http://frontlineclub.com/

 フロントラインクラブはジャーナリストであれば会員になれるが、放送・映像ジャーナリズムに主眼を置いているようだ。

 昨晩、このイベントでとったメモを頼りに、話の流れを追ってみたい(上の動画を再視聴すれば間違っているところが出てくるとは思うのだが、ひとまず、メモのみの再現であることをご了解願いたい。随時、修正が入る可能性あり)。

 出席者は:司会が、アルジャジーラ英語放送のプリゼンターの一人、リチャード・ギズバードRichard Gizbert。これに、タイムズのコラムニスト、デービッド・アーロノビッチDavid Aaronovitch、ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジの弁護士(メディア専門)マーク・スティーブンスMark Stephens、ガーディアンの副編集長イアン・カッツIan Katz、ロンドン市立大学の中にある調査報道の研究所「センター・フォー・インベスゲティブ・ジャーナリズム」のディレクターのギャビン・マクフェイデンGavin MacFaydenである。(以下、すべて敬称略。)

 長いので2回に分けようと思ったが、結構さあっと最後まで行ける・・・はずである。

***

 フロントラインクラブを発足させ、今、アサンジに居住地を提供しているボーン(読み方訂正)・スミスが、クラブのメンバー全員がウィキリークスやアサンジを支持しているわけではないと述べた。そこで、19日に会員を集め、アサンジ支持の方針について、議論を行うという。

                     ***

―「文化の衝突」

司会:米誌「バニティー・フェア」の記事によれば、アサンジとガーディアン側との間に「対立」ができた、という。これはジャーナリズムの編集上の対立か、それとも個人のパーソナリティーが衝突したのか?

イアン・カッツ(ガーディアン):雑誌が書いたほどの対立はなかったと思う。もっと複雑な話だ。昨年3月、アサンジの弁護士マーク・スティーブンスと一緒に席に着き、6時間ぐらい、話し合ったのは確かだ。
 この時、独シュピーゲルの記者もいたかな?そこで、どうやってこれから巨大な情報を公開してゆくかを相談した。同時に情報を一斉公開することで合意した。
 アサンジは欧州の媒体を入れたがっていたので、ルモンドなども入れることにした。
 この共同作業は本当にすばらしいもので、数ヶ月続いた。緊張関係はあったかもしれないが、同時に、学ぶことが多かった。
 ウィキリークスはネット媒体で、国境を越えて情報を出すという力がある。当局が容易には抑制できない。データジャーナリズムでもある。私たちは古い新聞ジャーナリズム。
 扱うデータが非常に多くて、多くの記者が関わった。巨大な量の情報を見て、これでどうやって、情報源を守ったらいいのだろう、と考えた。
 最後は、文化の違いが出たと思う(ガーディアンとウィキリークスの間で)。
 昨年の夏に出たアフガン戦争ログだが、ウィキリークスが持っていたのは生データ。このデータが引き起こすリスクへの考慮がなかった。そこで、いわばガーディアンに情報の精査などをアウトソースした。

―「ジャーナリズムのやり方を変えた」

マーク・スティーブンス(アサンジの弁護士):まあ、大体そういうことだった。
 ウィキリークスは、これまでのジャーナリズムのやり方を変えたと思う。大きな変化だ。
 (対立や衝突が起きたのは)家族だったらストレートに本音を言えるが、他人同士だとなかなかそうはいかないから。
 これまでに、メガリークで誰一人、危害にあった例はないと思う。
 私は、一連の情報が、過度に機密情報として分類されていたのではないかと思う。ほとんどが公開されてしかるべきものだった。社会のためになるのだから。

―「ガーディアンがアサンジを飼育」

デービッド・アーロノビッチ(タイムズのコラムニスト):一言で言えば、野獣のアサンジを、ガーディアンが飼育したのだと思う。
 一人の米兵(マニング)がクーデターを起こし、巨大なデータを外に出した。これは一回こっきりの話かもしれない。その影響が何なのか、まだ結論を出すのは早すぎる。もっとこういう種類のデータが外に出るのかどうかは分からない。
 話は、(アサンジがガーディアンに来たのではなく)、ガーディアンがアサンジにアプローチしたのだろうと思う。ガーディアンはゲイトキーパー(門番)の役目を果たしたのだろうと思う。
 それと、バニティー・フェアの記事は、ガーディアン側の取材でできたものだった。(弁護士のスティーブンス、「そうだ。こちらには全く取材がなかった」と声を出す。)
 アサンジは、自分は生情報を出す側にいて、ガーディアンがゲイトキーパーの役を果たすと言っていた。
 ジャーナリズムの面からとても面白い現象だ。ある女性ジャーナリストが言っていたが、すべてのジャーナリストはその手段を正当化できない、と。つまり、記事を作るためには、いろいろな手段を使うのだ。
 ガーディアンはアサンジを使ってそうした。アサンジでなければ、情報はガーディアンに来なかった。
次の新たなウィキリークスの類似サイトがガーディアンと協力するかどうかは分からない。一回のみの現象かもしれないのだ。

―「津波のような情報量」

ギャビン・マクフェイデン(「センター・フォー・インベスゲティブ・ジャーナリズム」―CIJ―ディレクター):巨大なデータの堆積はまるで津波のようだった。
 ウィキリークスは2007年から活動を開始したが、ケニア、南アフリカ、世界中から情報が集まる。集まりすぎて、人材が足りないぐらい。巨大な量の情報がたくさん入ってくる。毎日だ。
 情報が集まるのは、リーク者が安全な場所だと思うからだろう。内部告発サイトとしては、ウィキリークスは最高に成功したサイトだと思う。
 最も効果的に、世界の腐敗に説明責任を持たせることができるサイトだ。

スティーブンス(弁護士):ウィキリークスが情報を出しても、それが自分の国に関係ない限り、報道機関は見逃してきた。ペルーの政権が崩壊したのも、ウィキリークスが出した情報が一因だった。でも、他の場所では誰も気づかなかった。
 優れたジャーナリズムはウィキリークスから出てくる。
 外交公電の公開でも、真実が出た。外交は嘘が多い。公開されたものが真実を表す。これが本当の話だ。
 (リーク情報を元にしたなど)ジャーナリズムがきれいごとではないことは、この部屋にいるみんなが知っている。

マクフェイデン(CIJディレクター):ニューヨーク・タイムズはガーディアンとは異なる報道を行った。タイムズが出したのは、ほんの一部のみだ。ガーディアンに比べて10分の1だ。
 米国の報道機関はあまり報道していなくて、ニューヨークでは出ていても、私がシカゴに行ったとき、全く見かけなかった。
 イラク戦争の戦闘記録の情報を出したときも、英国のテレビでこれを取り上げて放映したのは民放チャンネル4の「ディスパッチ」だけだった。
 ニューヨークタイムズは最小限の情報しか出していないし、米国のメディアはウィキリークスやアサンジに批判的だ。

アーロノビッチ(コラムニスト):先ほど、情報の公開で「死んだ人はいない」という発言があったが、実際は分からないと思う。
 公電の公開でもいろいろなことが起きているのだし。
 ガーディアンの社説にも、一定の情報は公開して欲しくないと思っている、と書かれていた。つまり、敵に渡ったら好ましくない情報や、テロを起こすような情報だ。
 しかし、何が公開するべきで何を公開しないかを、一体誰が決めるのだろう?どうやって決めるのだろう?政府の全員が大うそつきだ、いやそうじゃないというのは、不毛の議論だと思う。
 そこで、実際にはガーディアンが、自分たちの判断で、やりたいように情報を選択して出している。
 しかし、その選択が正しかったかどうかを一体どうやって検証するのか?司法の場か?報道の自由に司法が介入といえば、みんなが大騒ぎをしてしまう。

スティーブンス(弁護士):アサンジは、公開前に、米政府や英国の国防通知担当者にコンタクトをとっている。人の命を危険にさらす情報や、軍隊の実際の動きに関する情報に関しては、考慮する、と言っている。

マクフェイデン(CIJディレクター):私の経験では、センターの私のところに、ある女性から電話がかかってきた。数人のアフガン人の子供たちの名前を消して欲しい、と(注:CIJは生データの精査に協力している)。すぐに消した。2秒もかからなかったろう。しかし、彼女がどうやって私のコンタクト先を知ったのかが疑問だった。聞いてみると、米国務省に聞いたというのだ。驚きだった。

カッツ(ガーディアン):ガーディアンがアサンジを「使った」ということはないと思う。緊張感が漂う会議があったことは認めるけれども。
 アサンジのコントロールがきかないところで、(注:ウィキリークス内の誰かが)ある人に生情報を渡してしまったのだ(注:これは、在英ジャーナリスト、ヘザー・ブルック)。そこで、こうなった以上は、情報公開の時期を早めるかどうかで議論になった。

司会:誰かが生情報を渡したというのは、ウィキリークス内部の誰かがということか?

カッツ(ガーディアン):言いたくない。アサンジのガーディアンに対する「裏切り」とは思っていない。ただ、アサンジは目立つ性格で、これを使っていると思う。

スティーブンス(弁護士):ウィキリークスがジャーナリズムの姿を映し出しているのかどうかというと、そうだと思う。これから、どうやって情報を出すのかが変わった。メディアは、アサンジが情報を取得した方法が嫌いだから、アサンジを否定的に見るのだと思う。倫理的に判断している。

マクフェイデン(CIJディレクター):他のメディアがメガリークを大々的に出していないのは米政府から圧力があるからだ。例えばニューヨー・タイムズのように。例えば、「拷問」という言葉を使っていなし、犠牲者の数も少なく報道している。
 例えば、検問所での死者が、その周り2マイル四方での死者よりもひどく多い。イラクのアブグレーブ刑務所での米軍によるひどい取り扱いも、ニューヨーカーのサイモン・ハーシュが報道したけれども、報道から1年半ぐらい、何もおきなかった。
今、ニューヨーク・タイムズはアサンジを攻撃している。

 アーロノビッチ(コラムニスト):公開された情報のほとんどはすでに報道されたことや、私たちがわかっていたことだったけれど、あれほどまとまった事実の積み重ねはない。

マクフェイデン(CIJディレクター):アフガン政府の汚職は広く知られていたが、例えば、アフガン政府の高官がスーツケースに現金を納めたというエピソードが出て、リアルになる。すばらしいのは生情報が出ていること。これがあるので、事実を否定できないーたとえ新しい内容がなくても。

カッツ(ガーディアン):今、内部告発者はウィキリークスに行く。もしガーディアンに持っていったら、ガーディアンが独自の「色」をつけるから。

―「異なるスキルが必要とされる」

スティーブンス(弁護士):ジャーナリズムの意味が大きく変化している。巨大なデータがディスクに入っている。これを分析しないといけない。異なるスキルがジャーナリストに必要になった。
 それと、アサンジは「ブランド」ではないと思う。もともと、匿名だったが、米メディアに名前を出されてしまったので、そうしているだけだ。私の印象では、特にメディア戦術に長けているとは思えない。

質問:今回のメガリークで、各国の政府が情報管理を厳しくするようになったと思うか?

スティーブンス(弁護士):情報管理がゆるかったのは、ある意味では米政府のみ。今回の情報も300万人が見れるようになっていたのだから。

質問:巨大なデータを報道機関は処理できるほどの人材とお金があるのか?

カッツ(ガーディアン):準備万端とはいえない。

アーロノビッチ(コラムニスト):分析屋(アナリスト)の位置が大きく変わった。例えば、経済の問題なら、特定のシンクタンクに意見を聞く。今は情報が大量に出ている。これを分析する人が必要になった。何が重要で何が重要でないのか。アナリストに聞かないと分からないのだ。
 メディアはこうしたことをやっていけるかどうか?お金がかかる。調査報道の1つにもなる。
 これからもウィキリークスに類似したサイトはドンドン出てくる。情報の公開へ求が高まる。
 民主主義の問題でもある。一体誰が、どの情報を公開するかどうかを決めるべきなのか?どうやって?大きな問題だ。
 元F1のモズレー会長(性的嗜好を大衆紙に暴露された)が、プライバシー保護の運動を続けている。しかし、そんなことは、もう関係なくなってくる。例えば、ガールフレンドの一人が、ウェブ上に体験話を載せてしまえば終わりだ。医療記録だって、誰かがサイトに載せるかもしれない。そういう時代に生きている。

質問:アサンジはジャーナリストか?

スティーブンス(弁護士):どちらでもいいのではないか?

マクフェイデン(CIJディレクター):問題になるのは、もしアサンジがジャーナリストだと、米国では、憲法上、報道の自由の観点から保護の対象になるという点だ。

スティーブンス(弁護士):広い意味で、アサンジはジャーナリストだと思う。アサンジは米メディアでは攻撃されている。テロリストという人もいるくらい。

司会:もしアサンジがテロリストなら、記事を載せたニューヨークタイムズはテロリストにはならないのだろうか?(機密を暴露したのだから、同じはずだ。)

―なぜ、アサンジに批判的な記事をガーディアンは出したのか?

質問:スウェーデンの検察庁のリーク情報(アサンジの性犯罪容疑に関する詳細)がガーディアンに来て、ガーディアンはアサンジ攻撃とも見られる記事を出した。アサンジからすれば、裏切られたと思ったのではないか。

カッツ(ガーディアン):情報がガーディアンに来たので、出さざるを得なかった。もし出さなければ、たくさんのメガリーク報道をしていて、ガーディアンのジャーナリズムに公正さがない(偏っている)と思われる可能性があったからだ。アサンジに関する批判的な報道を出さなければならなかった。

スティーブンス(弁護士):今は、情報源の信憑性を計れない時代。ネットの新時代。マスメディアから人は離れ、もっとばらばらになっている。ブログや他の情報発信手段がある。

カッツ(ガーディアン):ウィキリークスは、ジャーナリズムの創造的な構成要素だと思う。

アーロノビッチ(コラムニスト):アサンジに対する、本当の意味での身の危険はないと思う。身の危険があるのは、現在、中国で投獄されている人々だ。

マクフェイデン(CIJディレクター):ウィキリークスには中国で投獄されている人から預かった書類もたくさんある。

質問:ウィキリークスがもっと前から活動を行っていれば、2003年のイラク戦争は止められたか?

マクフェイデン(CIJディレクター):可能性はあった。しかし、新聞は報道しなかっただろうと思う。

アーロノビッチ(コラムニスト):答えは、ノーだ。イラクの大量破壊兵器に関する脅威を記した、英諜報部の報告書を政府は出した。当時のブレア首相は、後で、報告書ではなく「生データを出せばよかった」と言っているくらいだ。情報が出ても、戦争は回避できなかった。

                      ****

 以上、メモをもとにした情報である。時間のある方は動画をご覧いただきたい。(細かい点を動画を視聴してチェックしていないことを、再度記しておきます。)

 私自身の見方は、タイムズのコラムニストと結構重なる。ウィキリークスがあっても「イラク戦争は回避できなかった」(かなりたくさんの情報が少なくとも英国ではたくさん出ていた)「もっと時間が経たないと、何が起きたのかを理解できない」「私たちはウィキリークスの時代に生きている」。(1・12記)
by polimediauk | 2011-01-13 00:09 | ウィキリークス
(nofrills さんのコメントもご覧ください。特にラモ+ワイヤードの件)
 (これらの経緯、下記で当事者(アイスランドの議員、米国の技術者アペルバウムら)と、法務周りの人々、およびニュース系の人々のtweetをまとめてあるので、データベース的に共有・ご参照ください。
http://togetter.com/li/87263

エイドリアン・ラモのチャットのログをWiredが公開しない件についても、Togetterでまとめてあります。
http://togetter.com/li/82372
http://togetter.com/li/83478)
 

 話がどんどん進んでいるので、もし速報を追う場合、「ウィキリークス」か「wikileaks」のキーワードで探し出したツイッターアカウントを追うのが一番早いと思う。私自身が見つけた情報も、日本語・英語ツイッターで出している。@ginkokobayashi(日本語)@ginkotweet(英語)ー私自身が情報を取るのが早いというよりも、「早い人をフォローしている」ので、これを読まれた方も、どんどん早い人を探してみてください。

                   ***

 なかなかある程度まとまった日本語情報が出ないので、情報はまだまだ不正確も知れないが、ひとまず概要をまとめてみた。

 BBCとガーディアンの記事によれば、米政府はツイッターに対し、ウィキリークス関係者のつぶやきや個人的な情報を提出するよう命令したという(以下はその中から抜粋した情報である)。

http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-12141530
http://www.guardian.co.uk/media/2011/jan/08/us-twitter-hand-icelandic-wikileaks-messages

 昨年12月14日、米政府は、バージニア州の地方裁判所を通じて、ツイッターが持つ、ウィキリークス関係者に関する個人情報の引渡しを命じた。この情報要求は「現在継続中の犯罪行為の捜査に関連」しているそうだ。

 ツイッターは情報を渡すまでに3日間の猶予期間を置かれ、情報を要求された件や捜査の存在を口外しないように言われた。

 しかし、同じ裁判所が、この規制を1月5日解除。ツイッターが利用者側に対し、情報の提出要求の件を通知できることになった。

 「ウィキリークス関係者」とは、ウィキリークスの代表ジュリアン・アサンジ、メガリークの情報源といわれているブラッドリー・マニング兵、アイスランドの国会議員ブリギッタ・ヨンスドティル(女性)、オランダのハッカーRop Gonggrijp 、米国のプログラマー、ジェイコブ・アップルバウムである。最後の二人は、以前、ウィキリークスの中で働いていた。

 要求している情報は、ユーザー名、住所、接続記録、電話番号、支払い情報の詳細だ。

 7日、議員がツイッターで事の次第をつぶやいたことから、この件が広く知れわたった。

 ヨンスドティル議員は、7日、米司法省がツイッターに対し、自分の個人情報と2009年11月以降のすべてのつぶやき情報を渡すことを要求した、とつぶやいたのだ。この要求に対し、これを控訴するための時間が、10日間あると書いた。

 「米政府が、私の2009年11月以降のすべてのつぶやきを知りたがっている。私がアイスランドの議員だって言うことを知っているのかしら」-これがその時のつぶやきの1つだ。

 「これは私の情報だけの問題ではない。ウィキリークスに関係しているすべての人に対する警告だ。こんなふうに米司法省が力を持って威嚇するのは到底受け入れられない」「私は幸運だ。議会の代表者だから。でも、他の人たちはどうするのか?この(力の)乱用を止めるのが私の義務だ」

 ツイッター側はこの件に関してコメントを出すことを拒否したが、こう言っている。「司法当局や政府が個人情報の開示を求めた場合、ユーザーの権利擁護を支援するため、ツイッターはユーザー側に開示の件を通知する。(ただし)法律上、ユーザーへの通知を阻まれた時は別である」

 アサンジは8日、「嫌がらせ行為だ」とする声明文を出した。「もしイラン政府が」同様のことをしたら、人権団体や世界中が声を上げるだろう、と。

 ワシントンにある、ネットの監視団体「電子プライバシー情報センター(EPIC)」の代表マーク・ローテンバーグは、米司法省がウィキリークスとアサンジを訴追する準備を始めているという。

 EPICは、これより前に、司法当局に対し、マスターカードやビザ、ペイパルなどを通じてウィキリークスに募金を行った人に関する当局の調査内容をEPICに引き渡すよう要求してきた。

 ローテンバーグは、「政府には情報を取得する権利があるが、法の範囲内でやらないと。ウィキリークスに対する、合法な起訴はありうるだろうか?私には、ありそうにないように思える。しかし、この点が、今米国で大きな問いになっている」と述べる。

 今回のメガリークでリーク者となったとされるマニング上等兵だが、彼に関する情報を当局に渡したのが、ハッカーのエイドリアン・ラモである。

 ラモは、マニングが最初にウィキリークスと接触を持ったのが、2009年11月末としている。この「09年11月」というのが、まさに、米司法省が要求する、アイスランド議員のツイートの時期と重なる。(ラモの件は、様々な情報が飛び交っているようだー下にある、宮前さんのコメントもご覧ください。)
 ラモの話を暴露した米雑誌ワイヤードが、ラモとマニングのチャット内容を一部しか報道しておらず、「何かを隠しているのでは?」という声も、米ネット界であがっている。(この件は、英語圏のネット上でかなり盛り上がっているようだ。ご関心のある方は、キーワードで探してみればと思う。)

 昨年7月、アサンジの同僚の一人で、先に名前も挙がったアップルバウムが、米当局に3時間尋問されている。

 アイスランド議員のウィキリークスとのかかわりだが、彼女は、アイスランドの「モダン・メディア・イニシアチブ」法施行の動きに中心的な役割を果した。この法律は、アイスランドを調査報道と言論の自由の安息地にすることを狙ったもの。

 また、昨年4月、ウィキリークスが暴露した、2007年のイラク戦争で米軍のアパッチ戦闘機が民間人を殺害した様子を撮影した動画の制作にも議員は協力した。

 一説には、議員はウィキリークスの支援活動からは今は身を引いていたとも言われる。彼女は、アサンジがもっと目立たない動きをしたほうがよいといったそうだ。

 TUP通信の宮前ゆかりさんによる以下の文章の中にも、アイスランド議員とウィキリークスのつながりの話がある。

速報864号 ウィキリークスとジャーナリズム
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=892

以下は一部抜粋

■アイスランドの画期的メディア政策(2010年12月13日)
今年六月、アイスランド議会は「アイスランド現代メディア構想」法案を満場一致で通過させた。スコットランド、英国、フランス、ベルギー、ノルウェー、スウェーデン、アメリカなど世界各国の「言論の自由」擁護の法律の中から特に優れた内容を取り入れ、内部告発者や調査報道を保護し、表現の自由や開かれたコミュニケーションを保障する画期的な法案だ。アサンジもこの法案作成に参加していた。さらに、この法案には表現の自由擁護分野における「ノーベル賞」級の新しい世界的規範設立が含まれている。

法案の作成と立法化に取り組んできたブリギッタ・ヨンスドティル議員は、イラクでの殺戮ビデオを編集しウィキリークスで公開したプロデューサーの一人だ。調査報道機関のサーバーをアイスランド管轄圏に保護したり、ジャーナリズムのハブとなる教育機構を構築したり、世界各国の内部告発者を擁護するための法律的なシステムを確立するなど、アイスランドが世界の「言論の自由」のメッカとなるための本格的な取り組みがすでに始まっており、国境を越えた民主主義の新しい展望が生まれようとしている。

****

 「ツイッターよ、お前もか?」になるのかどうかー?今のところ、「ツイッター・がんばれ、踏ん張ってくれ」の気持ちだがー。

 考えてみると、ネット関係の大手はすべて米企業ーグーグル、アップル、フェイスブック、イーベイ、ツイッター・・・。なんと切ないことだろう、これほどまでに頼り切ってしまっていたとは。

****

裁判所の命令の翻訳は、Tassaさんの翻訳をご参考に。
http://tassaleaks.blogspot.com/
http://t.co/p8iqP00


コメント欄にもありますが、個人認証システムをやっていらっしゃる方がいます。

http://timeowner.aa0.netvolante.jp/

by polimediauk | 2011-01-09 00:03 | ウィキリークス
 皆様、あけましておめでとうございます。

 クリスマスの「12日」は1月5日に終わるそうで、クリスマスカードやら、クリスマスツリーがまだ部屋の片隅に残っている状態です。ここ数年、クリスマス・イブに親戚数人と、1月は1日か2日に家族のみで、山にウオーキング(ハイキング)に出かけています。山歩きを昨日終え、とりあえず、年末年始にやることは一通り終えたところです。

 今年も健康に気をつけて、面白い現象をウオッチングしていきたいと思っております。

 今年もどうぞよろしくお願いいたします。

****
 
 年末年始、おもしろい動きがたくさんあったのだが、とりあえず、少し古い情報を元にしたものだが、「メディア展望」(新聞通信調査会発行)1月号に出したウィキリークスに関する原稿を以下に出したい。

 12月初旬のジュリアン・アサンジ逮捕までの流れをまとめたものなので、これまでウィキリークスの話を追ってきた方にとっては、目新しいものがない原稿となる。

 ウィキリークスの件は、何を問題とするかで、いろいろなことが書ける。原稿を書いた12月中旬時点では、「機密情報の管理」「公益とは何か?」という部分に最も重きを自分では置いていたので、その件を結論部に置いた。現時点では、「それほど簡単なものでないだろう」という思いがある。

 また、ツイートでも紹介したが、アサンジとフェースブックを比較した記事(と動画)が非常に面白かった。ここにアドレスを入れておきたい。

アサンジVSザッカーバーグ(「ブログ暫定龍吟録」)
http://dragoncry.blog34.fc2.com/blog-entry-190.html

 それと、保坂展人(のぶと)さん(当初、うち間違いでのびととしてしまい、失礼いたしました!!)のメディア評もご参考に。メディアの現在、未来について、非常に示唆に富む内容を書かれている。保坂さんは政治家だが(今は元衆院議員となったが)、ずっとジャーナリストでもあった。しばらくはジャーナリスト活動にもっと力が入りそうで、期待大である。

既存メディアとネットメディアの拮抗の時代へ
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/090cf85e17435b9d1f6a5e289b8cb0cd

****

  「報道の自由」の戦士かテロリストかー?「ウィキリークス」をどう考えるか 
 
 告発サイト「ウィキリークス」(WikiLeaks)――。このところ、新聞、テレビ、ネットの言論空間でウィキリークスの話が出ない日はない。

―大量の秘密情報暴露で衝撃
 
 その存在が大きな注目を浴びるようになったのは昨年春頃から。米軍上等兵によるリーク情報を元に、米軍に関わる機密情報や外交公電を複数の世界の大手メディアを使って大々的に暴露した。サイトの創始者ジュリアン・アサンジ氏を「報道の自由の戦士」として賞賛する声が出る一方で、一部の米政治家はイスラム系テロ集団アルカイダのメンバーと同一の「国際テロリスト」と呼んだ。

 公的情報の漏えい問題は、11月に発生したいわゆる「尖閣ビデオ流出事件」を通じて、日本に住む多くの人にとっても大きな関心事となった。

 本稿では、12月上旬、英国に潜伏中だったアサンジ氏がスウェーデンでの性犯罪容疑(本人は否定)で逮捕されるまでを一つの終点として、ウィキリークスに関わるこれまでの経緯をまとめた。

 ウィキリークスは匿名で政府や企業などの機密情報を公開するウェブサイトだ。組織内の人間が所属組織の不正や違法行為を監督機関や報道機関に通報する、いわゆる「内部告発」のサイトの一つとして知られている。

 オーストラリア生まれの元ハッカー、アサンジ氏(性犯罪事件では同氏は「容疑者」だが、本稿では告発サイト、ウィキリークスの話をまとめるという点から、便宜上「アサンジ氏」と表記)が、2006年からサイトの開設準備を始め、本格的な運営開始は07年である。情報提供者の素性を秘蔵しながら、生の情報をサイト上に掲載し、「サイトの読み手や歴史学者に真実を提供する」ことを狙う(ウェブサイトより)。活動の原則は「言論の自由」、「歴史文書の向上」、「新しい歴史を作る人々すべての権利を守る」ことである(同サイト)。

 ウィキリークスはボランティア(ジャーナリストも含む)によって運営されている。情報を受け取り次第、スタッフはその検証作業に入る。信ぴょう性、サイトの公開目的にかなうかどうか、情報公開により特定の個人が不必要に危険にさらされることはないかをチェックした後、「出版」(=パブリッシュ、サイト上での公開)の運びとなる。

 アサンジ氏はオーストラリアのクイーンズランド州生まれ。幼少時に両親が離婚し、母親は再婚したものの、国内を点々とする生活が続いた。頭脳明晰な子供で、16歳の時には既に「メンダックス」という別名を持つコンピューター・ハッカーになった。1992年、カナダの電話会社などへのハッキングの罪で有罪となり、その後はプログラマー、フリーウェア開発者としてデータ暗号化、検索エンジンの開発に関わった。

―欧米報道機関と連携
 
 ウィキリークスはこれまでにさまざまな機密情報をサイトを通じて公開してきた。近年の例としては、ケニアの元大統領による巨大汚職を暴露した「クロール・リポート」(これで国際人権団体アムネスティー・インターナショナルから09年、人権報道賞を受賞)、キューバにある米軍グアンタナモ基地収容所における収容者の取り扱い書、アイスランドの金融危機の報告書などの公開がある。

 世界中でウィキリークスの名が著名になる「兆候」が見えたのは昨年4月だ。07年7月、ロイター通信のカメラマンら二人が、イラクで米軍のヘリコプターに襲撃されて死亡する事件があった。この襲撃の様子を収めた映像をウィキリークスが公開したのである。映像はヘリの乗組員がカメラマンの撮影器材などを武器と誤認し、攻撃した様子を映し出した。遺体を見て歓声を上げている様子も映像は伝え、罪のない報道機関のスタッフが射殺された無残な情景を示した。

 公開から間もなくして、米当局は、米陸軍情報分析官で20代前半のブラッドリー・マニング上等兵を機密漏えいに関与したとして逮捕している(クリントン米国務大臣は12月上旬、大量の機密文書や外交公電の情報を漏洩したのが同兵であることをBBCのインタビューの中で認めた)。

 ヘリ攻撃事件を大きく上回るリーク報道が起きたのは7月末である。米紙『ニューヨーク・タイムズ」』NYT)、英紙『ガーディアン』、ドイツ誌『シュピーゲル』が、一斉に、アフガニスタン駐留米軍に関わる機密文書9万点以上を元にした報道を開始したのである。ウィキリークスは、公表日の数週間前に、これらの有力紙誌に生情報を渡し、これを受けて報道機関は、事前に情報の信憑性やその意味合いを検証・分析し、それぞれ独自の原稿を作って、あらかじめ決められていた日に一斉に報道を始めた。同日、ウィキリークスも一連の文書をサイト上で公開した。

 10月、今度はイラク戦争に関する約40万点の米軍の機密文書がウィキリークスと先の報道機関によって公開された。

―米公電公開を厳しく非難

 11月末、ウィキリークスは、今度は25万点に上る米国の外交公電を自らのサイトと同時に仏紙『ルモンド』、スペイン紙『エル・パイス』)を含む世界の五つの報道機関を通じて段階的に公開した。

 米外交官らによる各国首脳陣のゴシップ話的論評とともに、サウジアラビアの国王によるイラン攻撃要請などの安全保障上の機密情報、米政府が国連代表部の外交官にスパイ活動を指示したとされる内容も含まれていた。ギブス米大統領報道官は、公電の公表は「米国および諸外国の外交利益に大きな影響を及ぼす」「米国の外交官らを危険にさらす」と、ウィキリークスによる情報公開を厳しく非難した(11月29日付声明文)。

 外交公電の漏えい情報報道は現在も続行中で、今後も物議をかもす情報が公表される見込みだ。

―アサンジ代表の逮捕劇

 米政府側は、これまでに、マニング上等兵を公電15万点以上を不正入手した罪で訴追し、機密情報の保全を確実にするために、端末からUBSメモリーやCDにダウンロードできないようにした。逮捕前、上等兵は元ハッカーに対し、音楽アルバムに見せかけたCDを職場に持ちこみ、公電等の情報をダウンロードしたと漏らしていた。米国では、01年の9・11米中枢大規模テロ以降、機密情報の一元化を進めてきた。これが今回の情報漏えいにはからずもつながってしまったことへの反省から、情報管理体制の見直しを進めている。
 
 米当局にとって、ウィキリークス及びその創設者アサンジ氏は厄介な存在となった。法的措置でその活動を制限あるいは処罰を与えようとしても、ネット上にのみ存在するウィキリークスや米国外にいるオーストラリア人のアサンジ氏(住所不定)を懲らしめる手立てがないまま、時間が過ぎた。

―サイバー戦争に発展

 12月に入り、米ネット大手アマゾンが、ウィキリークスのウェブサイトへのサーバー提供を停止した。ウィキリークスは早速、サイト管理の経由地を一部フランスやスウェーデンなどに移動したが、今度はサイトが数時間アクセスできない状態に陥った。これは、ウィキリークスのドメイン名を管理する米国の会社が、大量のサイバー攻撃を理由にウィキリークスへのサービスの提供を停止したためであった(ウィキリークスはその後、新ドメイン名を取得し、閲読は可能になった)。

 同月内には米ネット決済システム「ペイパル」がウィキリークスへの寄付金の送金業務を停止し、クレジットカード会社米ビザと米マスター・カードがウィキリークスへのすべての資金の払い込みを停止すると発表した。スイス郵政公社も、アサンジ氏名義の銀行口座を申請事情に不正があったとして閉鎖している。米政府は「圧力をかけていない」としているが、ペイパルの経営陣の一人が「米政府から違法行為を行うサイトであると通知があった」と述べた映像が、BBCなどを通じて公開された。

 アサンジ氏自身の身柄を拘束する具体的な動きも始まった。昨年8月、スウェーデン当局はアサンジ氏に対し、一年前に同国内で発生したとされる強姦などの容疑で逮捕状を出していた。この逮捕状は一旦は取り下げられたが、11月18日、再び出され、国際刑事警察機構がアサンジ氏を国際手配するまでになった。12月に入り英当局にスウェーデンから逮捕状が届き、アサンジ氏は7日、自ら英警察に出頭して性犯罪容疑で逮捕となった。

 スウェーデン側はアサンジ氏の同国への身柄引き渡しを要求しており、移送をめぐる裁判が今年早々、ロンドンで開始される予定だ。同氏の弁護士は性犯罪容疑はウィキリークスの信用失墜を狙う政治的な動きとしたが、スウェーデン当局側はウィキリークスの活動とは「一切無関係」とする。

 逮捕の翌日(8日)以降、ウィキリークスの支援者と見られる(しかしウィキリークスの指示があったわけではない)ネット利用者たちの一部が、スウェーデン検察庁、マスターカード、ビザ、ペイパル、アマゾンのウェブサイトにサイバー攻撃を仕掛け、一時、各ウェブサイトにアクセスできなくなった。英メディアの報道によれば、こうした攻撃をする人々は「アナニマス(匿名、という意味)」と呼ばれ、ウィキリークスに対する米企業などの「攻撃」への反撃活動を独自に行っている。

―ウィキリークスと公的情報公開

 最後に、ウィキリークスの活動の評価について考えてみたい。自国の機密情報が暴露された米国、報道の自由の旗印の下で機密情報を大々的に報道した英国、尖閣ビデオ流出問題以降、情報漏えい問題がより身近になった日本―この3か国でのウィキリークスに対する反応は微妙に異なった。

 米当局は、情報漏えいを問題視し(これは当然であろう)、政治家の中にはアサンジ氏をスパイ容疑で拘束しようとする声も出た。英国ではウィキリークスを報道の自由の守り手として好意的に描写する報道が目立った。日本では、「報道の自由」の観点からウィキリークスを支持する声と、「公的な機密情報の暴露は良くない」、「何でも暴露すればよいというものではない」、「アサンジ氏を自由の戦士としてあがめるべきではない」などの慎重論とが拮抗したと筆者は見たが、どうであろうか。

 ウィキリークスの功績の一つは、私たちがデジタル時代に生きていることを改めて認識させてくれたことだと筆者は思う。すべてが電子的に加工され、瞬時に世界中に配信される時代である。どのような誰の情報であっても、公開され、共有される可能性がある世界に私たちは生きているー好むと好まざるに関わらず。

 政府も含む公的機関からすれば、自分たち自身の情報も組織内外の人物の手によって配信され、共有される状態が現実となった。国民の側は最大限の情報公開を求めるようになっており、もし公開しない情報があれば、その理由を十分に説明する必要がある。機密の鍵をかけても、この鍵を開ける技術を持つ人は巷には少なくない。「公益のため」に機密を告発サイトに流す組織内の人物も出るかもしれない。

 ただし、機密とされる情報が外に出て、国民が納得するのは「公益(国益)があったかどうか」によるであろう。

 では、その「公益・国益」をどう判断するべきか?筆者が日本語のツイッターやブログを追っていると、「機密情報の公開=違法行為」という部分にこだわっている人が多いように見受けられた。「何でも暴露すればいいというのはどうか」などがその典型例だ。もちろん、ウィキリークスの目的は「何でも暴露」にはない。目的(=公益)があっての情報公開である。「機密情報の公開=「違法行為」という部分にこだわるのは、ひょっとすると、「当局=公の機関=しかるべき存在=しかるべき秩序」と考え、その崩壊あるいは崩壊の恐れを危惧しているのだろうか?その場合、その「しかるべき秩序」つまりは、守ろうとしている機密とは一体何か、という問いが発せられるべきであろう。また、最終的には誰が公益・国益を定義する権限を持つのか、という問いも。

 ビデオ・ジャーナリスト神保哲生氏は、自身のブログ(12月10日付、「ウィキリークス問題への一考察」)の中で、国益の定義の管理を私たちは普段は為政者に任せているが、「それは不断のチェックを受けなければならない」し、「最終的な決定権者が主権者たる国民でなければならない」と書く。

 筆者はこれに同意する。ウィキリークスの情報流出の評価は、「お上が所有する、外出不可の情報を勝手に外に出した=違法行為」と結論付けるか、「すべての公的情報は国民が知るべきもの=国民主権」という原則から「情報流出には公的価値があった」と見るかで変わってくるのかもしれない。(「メディア展望」1月号掲載分。情報は12月上旬時点のもの。)
by polimediauk | 2011-01-03 22:49 | ウィキリークス