小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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カテゴリ:ウィキリークス( 33 )

 スウェーデンでの性犯罪の容疑者として、ロンドンの刑務所に留置されたままのウィキリークスの代表者ジュリアン・アサンジ氏。14日、治安裁判所は条件付で保釈申請を認めたものの、スウェーデン検察側が抗告し、同日の釈放は実現しなかった。この後、高裁が48時間以内に(16日までに)双方から意見聴取する見込みで、この間、アサンジ氏は拘束されたままになる。

 スウェーデン検察側はスウェーデンへのアサンジ氏の移送を要求しているが、どうなるだろう。共同通信の報道によれば、「弁護側は移送を阻むためにあらゆる法的手段を取る構えで、移送をめぐる最終的な決着には1年かかるとの見方も出ている」。
 
 昨日14日は、アサンジ氏の身柄がどうなるのかでこちらのニュースは持ちきりで、今朝15日も、アサンジ氏の顔が大きく載った1面を高級紙インディぺンデント、タイムズなどが作った。

 あと2,3日は特に、アサンジ氏がニュースの中心になるだろうが、「今後、中期的にどうなるのか?」に関心が行く。
 
 というのも、最終的には何らかの「落としどころ」が必要であろうと考えるからだ。アサンジ氏のみに注目が集まるのはウィキリークス本来の目的から離れるであろうし。
 
 米国の外交及び軍事機密情報の暴露はそれなりに意味があるが、ほかにも世界中にはたくさん憂うべきことが起きているー不正なこと、違法なこと、人権侵害がたくさん起きている(もちろん、「米国の外交公電や軍隊の行動=違法、不正」と言っているのでは全くない)。
 
 一連の外交公電や軍事機密の暴露で、情報の漏洩者はマニング米兵であったことがほぼ事実化しているが、一兵士がさまざまな軍事機密にアクセスでき、これを簡単に取得して漏洩できる状態であった米国の情報体制は、これまでにも批判の対象になってきた。

 9・11の米国同時テロの後、機密情報の一元化が進み、「200万人から300万人規模の米軍や政府関係者がアクセスできるようにしたことが問題」(元駐米大使のクリストファー・マイヤーズ氏、BBCの番組で)、「米国の情報管理体制こそ、大問題だ」(オーストラリアのラッド外相、BBCの取材に対し)など。

 こうした情報体制はすでに見直しが進み、変化しているとは思うけれども、米政府としても、いつまでもいつまでもアサンジ氏をターゲットにしているわけにもいかないのではないかー?さまざまな圧力をかけてアサンジ氏を追うと、逆に、「アサンジ氏=報道の自由を推進するヒーロー」というファンが広がってしまう。
 
 米ウオール・ストリート・ジャーナルによると、「米タイム誌のパーソン・オブ・ザ・イヤー読者投票でアサンジ氏がトップ」という記事が出ていた。(アドレスを入れようとしたらものすごく長くなってしまったので、できればグーグルしていただきたい。)

 
最初の段落の引用「米ニュース雑誌タイム誌の年末恒例「パーソン・オブ・ザ・イヤー」の読者投票で、ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジ氏がトップになった。約125万票のうちの38万票を獲得。毀誉褒貶(きよほうへん)は激しいが、彼が世界の度胆を抜いたのは確か。読者投票が行われた時期が、あの大騒ぎの直後だったことからしても彼の1位に違和感はない。日本絡みでも、米国が日本と共同開発したミサイル・システムを海外で売却するため、日本の武器輸出三原則の緩和を求めた在日米大使館の公電など日米や日韓関係に影響の懸念される資料が多数明らかになっている。ちなみにタイムの編集者が選ぶ本当のパーソン・オブ・ザ・イヤーは15日に発表されるそうだ。」
 

 ・・・とこういう展開になってしまう。

 何とか、折衷案というか、歩み寄り案はでないものだろうか?ツイッターでも紹介したが、フィナンシャル・タイムズ(日本語)は、米政府に対し、アサンジ氏に勲章を授けるべきだとさえ言っているのだ。アサンジ氏(ウィキリークス)と米政府、歩み寄ったほうが「報道の自由」は広がると思う。

米国はアサンジ氏に勲章を授けるべきだ

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5066


(*注:ジュリアン・アサンジ氏は性犯罪をめぐっては「容疑者」ですが、ここではウィキリークスの情報公開の話として、「アサンジ氏」と表記してあります。)
by polimediauk | 2010-12-16 02:10 | ウィキリークス

アサンジ氏、保釈されず

 ロンドンの裁判所は、14日、告白サイト「ウィキリークス」の代表者ジュリアン・アサンジ氏に対し保釈の決定を出したが、スウェーデン当局が決定の取り消しを求め、留置場に戻った。

 アサンジ氏は、高等法院が保釈を認める決定を下し、保釈金が治安裁判所に納められるまでは保釈されない模様だ。

 BBCテレビの「ニューズナイト」に出演した米映画監督マイケル・ムーア氏は、「今回のアサンジ氏の拘束(性犯罪容疑)とウィキリークスによる一連のリーク行為は関係ないって?冗談でしょう?」とBBCの司会者に向かって述べた。「コンドームが破れて性行為を行ったというのは、英国では犯罪にもならないぐらいでしょう。それなのに、アサンジが今、留置場にいるわけですよ」と述べ、拘束されていること自体が、英国の恥をさらしているようなものだと示唆した。
by polimediauk | 2010-12-15 08:08 | ウィキリークス
 (後、検察側が保釈決定に対し不服申し入れをし、14日には保釈されず。以下はその前の話です)

 ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジ氏は、ここ1週間ほど、ロンドンの刑務所に拘束されてきたが、本日14日、裁判官が保釈を認めたようである。この後、検察側が高裁に不服を申し入れ、これが認められたら、保釈されない可能性もある。

 今回は、裁判所内からのツイートが認められ、裁判の過程の一部始終をガーディアンやBBCなどが報じた。

 今、動きが激しいため、ツイッターを中心に情報発信しております。

 もしよろしかったら、(アットマーク)ginkokobayashiをフォローください(日本語)。英語はアットマークginkotweetです。ツイッターを利用すると、私のツイートを見るだけでなく、他のたくさんの人(もっと情報を持っていたり、さまざまな視点を持つ人)の声が同時に読めるので便利です。

 それと、少々気になったことを書いておきます。

 *公的機密情報がどんどん暴露されることへの不安感・懸念=これを時々、つぶやかれる方がいらっしゃいます。ブログで意見を書かれる方も。しかし、決して、「なんでもドンドン、暴露」というのではなく、目的(公益)があって、機密情報を出しているという、いわゆる「公益のための告発行為」として、私はウィキリークスを受け止めています。
*公的機密情報を暴露することは、違法です。しかし、「公益のためにあえて」という部分に、大きな意味があると思います。
*この点を了解するかしないかで、ウィキリークス(や他の同様の告発行為)の善悪の判断が変わってくると思います。「公益のための告発」=社会にとって善である=という点を、了解するかしないかー。もしこの点自体を懐疑の対象とするのであれば、議論がある意味成り立たないというか、話の前提が変わってきます。この部分で悩んでいる議論が、日本語では多いような気がするのですが、いかがでしょうか。(だから悪いとか、遅れているという意味ではありませんがー。)
*それと、公的情報を「原則、すべて国民が知るべきものである」と考えるか、「何を公開して、何を公開しないかは、役人や政治家が決めるものだ」「私たち国民は役人や政治家に、その判断をゆだねているから」と考えるか、考えないかー。私は、公的情報は原則、すべて国民が知るべきものだと思っています。役人や政治家が何を公開するかしないかを決めているのは、あくまで便宜的に、国民のためにしているだけであって、国民の方で「その情報は出すべきだから、出して欲しい」といわれたら、さっさと出すべきであるし、そんなリクエストが来る前に、さっさと出しているべきだと思っています。もしどうしても、どうしても公にはできない情報があるなら、その理由をしっかりと国民に伝えるべきだし、その理由は誰もが納得できるほど、十分にしっかりした理由がなければならないと思っています。

・・・なんだか、長くなりました!!!かつ、とても息巻いて書いてしまいましたが、要するに、「空気みたいに普通のこと」だと思うのですが、なんだかそうでもないようなので、あえて、書きました。
by polimediauk | 2010-12-15 02:02 | ウィキリークス
 日刊ベリタで、村上良太さん(映像ジャーナリスト)が書かれた記事が目に留まった。

ウィキリークスとイランのミサイル技術 (無料記事)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201012041809496

 ウィキリークスが出した外交公電情報をもとにした、11月30日付(サイトでは29日)のニューヨークタイムズ記事が(なぜNYTと私が書くのかは、後で紹介する記事を参照のこと)、イランが北朝鮮からのミサイルを入手し、その射程は欧州に届く・・・・といった内容であったらしいのだが、この記事のもとになった外交公電そのものがミス(故意のリーク)であったようだ。NYTはだまされて(?)しまったようである。しかし、その後、「いや、そうではないのではないか」ということで、12月3日以降、これを直した記事を出している。

 村上さんの記事には「インターナショナルヘラルドトリビューンの記事が」とあるが、IHIはNTYの日曜版であるし、NYTサイトに行ってみると、同様の記事が出ているので、とりあえず、NYTがとして、話を進めてみる。

 村上さんの記事を読む前に、若干、関連記事をあげておくと、

Iran Fortifies Its Arsenal With the Aid of North
(11月29日付、NYTサイト)
Koreahttp://www.nytimes.com/2010/11/29/world/middleeast/29missiles.html

NYT: Iran fortifies its arsenal with the aid of North Korea
http://www.focus-fen.net/?id=n236204

NYT Takes US Side in Iran Missile Flap
http://www.consortiumnews.com/2010/113010b.html

Wider Window Into Iran’s Missile Capabilities Offers a Murkier View
(12月3日付、NYTサイト)
http://www.nytimes.com/2010/12/03/world/middleeast/03wikileaks-missile.html

 私は上記の英語記事をさっと読んだが、まだ詳しく見ていない。

 詳細は少しわきにおいておくとしても、村上さんの記事の最後の部分が気になる。

  「イラク戦争前にも大量破壊兵器の有無を巡って議論が戦わされた。そして、新聞を使ったリークが行われた。サダム・フセインとアルカイダとの関係性を匂わす記事である。その手法は情報部員や政府要人からのリークだった。」(小林注:ここは主に米メディアを指していらっしゃるのだろうと思うがー。)

  「リーク情報には注意が必要である。今後はリークされることを計算に入れて公電が打たれることもあるだろう。」
by polimediauk | 2010-12-04 19:31 | ウィキリークス
 皆さんご存知とは思うが、ガーディアンのサイト上で、ウィキリークスのジュリアン・アサンジ氏が読者からの質問に答えた。

 http://www.guardian.co.uk/world/blog/2010/dec/03/julian-assange-wikileaks

 残念ながら、訳すと時間がかかるので+長い訳がほかで出るかもしれないので、とりあえず、時事通信の紹介記事をあげておきたい。 

 リーク情報の掲載継続を表明=英紙サイトに「生出演」-アサンジ氏
 http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2010120400079

 時事の中でも紹介されているが、記事の最後のほうで、ウィキリークスに何かがあった場合、「未公表情報の主要部分が自動的に明らかにされる手はずになっている」という部分に、どきりとした。

 アサンジ氏が今、英国にいるのは確実のようだ。ガーディアンのもう1つの記事を見ると、弁護士の話が出ている。
http://www.guardian.co.uk/media/2010/dec/03/julian-assange-live-online-answers

 これによると、ロンドン警視庁はアサンジ氏の弁護士のコンタクト情報を持っており、アサンジ氏に連絡したければ、いつでも連絡できる状態だという。ただ、今のところ(3日の時点)、警視庁は逮捕他の理由でアサンジ氏側やガーディアンに連絡を取っていない。

 一方、ラジオ(BBCラジオ4、午後10時のニュース解説)では、アサンジ氏の逮捕は「週末にあり得るかも」としている。

 今週のBBCの「ニューズナイト」(テレビ)をBBCアイプレイヤー(見逃し番組視聴サービス)でざっと見たが、今回のリーク報道の影響は「あまりたいしたことがない」という意見と、「国によっては影響がある」という声があった。「いずれにしても、外交関係は変わらない」「ただし、対イラン政策は変わるかも」など。

 BBCラジオ4では、エコノミストのジャーナリストが出ていて、ドイツの外交官が辞任したらしく、「多大な影響が出てきた」と解説。ニューヨークタイムズの編集長も出てきて、アサンジ評を求められていた。アサンジ氏を「反米だ」と述べていた。それで、ある人が、反米ではない告発サイトを始める、という話も(これはどっかの新聞ですでに読んだが)。

 実際に、アサンジ氏を逮捕する・処罰するかどうかに関しては、編集長は「米国内で意見が分かれている」と言っていた。何らかの処罰をするべきというグループと、もう一つのグループはこれに徹底的に反対するグループと。後者はおそらく、報道や言論の自由の観点から反対しているのだろうと想像した。

 さて、英国で逮捕はあり得るだろうか?

 

 
by polimediauk | 2010-12-04 08:11 | ウィキリークス
(NYTに関する、私の「疑惑の目」に関しては、前のエントリーにコメントを残してくださった、nofrillsさんの情報インプットをご覧ください。これで原則、一度に謎が解けるはずです。そして答えは、「やっぱり、NYT、君はおかしくなってるぞ」なのです。あまりにも謎がすっと解けてしまうので、私が今日書いた「古い」エントリーの前につけておきます。)

Commented by nofrills at 2010-12-01 23:23 x
「ガーディアンを通じてNYTに情報が渡った・・・という話」:
http://bit.ly/gbMK9y (11月28日付、米Yahoo NewsのThe Cutlineというコーナーが、ガーディアンのデイヴィッド・リー記者に取材)

「ウィキリークス(WL)とニューヨークタイムズの関係が、何らかの意味でこじれている」:
http://www.thedailybeast.com/beltway-beast/julian-assange-vs-the-new-york-times/
http://www.salon.com/news/opinion/glenn_greenwald/2010/10/27/burns/index.html
……などなど、うんざりするほどたくさんのゴシップのような記事があると思います。

 あと、ガーディアンは編集長が直接読者の質問を受け付けています。質問の数が多く、一度に回答できる量ではないので、少しずつ回答して今3日目かな。URLが長いので短縮しましたが、下記です。
http://url.ie/8c4x

Commented by nofrills at 2010-12-01 23:24 x

 NYTは、自力で入手することができなかったファイルをガーディアンから受け取って、その内容を事前に米国政府側に伝えていました。そのことだけでも、報道機関が保つべきスタンスを逸脱しているとして非難され、例えば消費者からはボイコットされても当然だと思います。

[quote]
NYT briefed the Whitehouse on Monday over Embassy Files: Now we see every tinpot dictator in the world briefed prior to release.
http://twitter.com/wikileaks/status/7945714118172672
2010-11-26 08:56:20
[/quote]
(nofrillsさんのインプット、終わり。)

****

 米ニューヨーク・タイムズ(NYT)は11月末から公開されている米外交公電の元データを、告発サイト「ウィキリークス」から直接受け取っていないのではないかー?「公表前には受け取っていなかった」「直接は受け取っていなかった」-そんなコメントが、どうも気になった。だとしたら、リークを行ったとされる米兵に、どことなく厳しいようであることの説明がつくからだった。

 今朝2日の時点までに、すでに日本語でも同様の点(NYTが直接受け取っていない)を指摘した報道がいくつか出ていた。

ウィキリークス情報で“暗闘”する米メディア
http://sankei.jp.msn.com/world/america/101202/amr1012021833012-n1.htm

 「ニューヨーク・タイムズ紙側は、以前からウィキリークスの機密文書公開に際し協力関係にあった英紙ガーディアンから、公電を入手し掲載に踏み切った。」

 また米ワシントン・ポスト紙にも、11月29日で同様の主旨の記事が出ていた。
WikiLeaks spurned New York Times, but Guardian leaked State Department cables
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/11/29/AR2010112905421.html

 なぜ、ウィキリークスは、NYTに直接データを渡さなかったのだろう?

 産経が聞いたところによれば、

 「ワシントン・ポスト紙によると、ウィキリークスが今回、ニューヨーク・タイムズに情報を事前に提供しなかったのは、同紙が10月、ウィキリークスの創始者で編集長のジュリアン・アサーンジ氏に批判的な記事を掲載したためとみられ、ウィキリークス側の“報復”との観測もある。」(小林注:この中で、「事前に提供しなかった」とあるが、その意味は「ウィキリークスが」であって、ガーディアンが公表時のはるか前にNYTに情報をあげていたことになる。)

 ワシントン・ポストの記事のほうには、NYTのビル・ケラー編集長の話が出ている。編集長は、なぜ今回(イラクやアフガニスタンに関わるリークのときは協力した)ウィキリークスが、NYTに情報を直接渡さなかったかを聞くと、「はっきりしない」と答えている。
 
 しかし、ケラー編集長が推測では、産経が書いたように、NYTが10月に出した、ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジ氏のプロフィール記事がアサンジ氏にとって厳しい内容であったためでないか、と述べている。

 NYTはまた、8月、マニング兵(リークの本人とされる)に関しても、厳しい記事を出したという。マニング氏を「自称ドラッグ・クイーン」と関係を持っていたことや、10代の頃、同級生がマニング氏のことを「おタクで・・・同性愛者」として馬鹿にした、と書いたという。

 やっぱりなあ、と私は思った。ここでまた、ジグソー・パズルの新しい一片が見つかったような気がした。
 
 別に、ドラッグ・クイーンと関係を持ったこと、おタクで、かつ同性愛者であるとして馬鹿にされたことが嘘・フィクションだと言っているのではない。また、こうした言葉遣いそのものが「ひどすぎる」と思っているわけではない。また、アサンジのプロフィール記事は良いことばかりを書けばいい、と思っているわけでもない。

 しかし、言葉や表現の選択で、書き手の思いはにじみ出てくるものだ。

 今回に限り、直接記事を渡さなかった理由が、NYT編集長やワシントン・ポストが言うように、「厳しい記事が出たから」なのかどうかは、分からない。

 ただ、「新たなジグソー・パズルの一片」が見つかったと思った、というのは、ウィキリークスとNYTとの間にしこりが「あるらしい」ことが推測できたためだ。前回、前々回と私が書いてきた、NYTのウィキリークスへの厳しい目・表現説が確認できた感じがしたのである。

 私が現在見たところでは、NYTには、ウィキリークスや関係者(アサンジ氏、マニング氏)に対する見方・表現の仕方に、「より体制寄り」の姿勢があって・あるいは出てきており(つまり、ウィキリークスや関係者を当局の視点から見る、つまり、違法な行為をした人たち、という意識で見る)感じがする。

 ワシントン・ポストと産経の記事によれば、ウオールストリート・ジャーナル、CNNに対し、ウィキリークスは一部の情報を事前提供する代わりに、報道解禁の期日を守ることを条件とした。もしこの条件が守られないと10万ドルの罰金を払うことを要求したとう。ウオール・ストリートジャーナルもCNNも、申し出を却下した。

 ワシントン・ポストはガーディアンにコンタクトを取り、事前に情報を共有させて欲しいといったが、拒否されたという。2つの記事を見る限りでは、紹介されたどの米メディアもウィキリークスの振る舞いに怒りあるいは割り切れないものを感じているようだ。

 今日、事の次第を確かめるため、ガーディアンの調査報道記者デービッド・リー記者に聞いてみた。NYTが「匿名の人物から外交公電情報を得た」とサイト上でことの経緯を説明したとき、「極秘人物」とはガーディアンなのかどうか、その他、ワシントン・ポストの11月29日付記事の真偽は?

 リー記者によれば、「残念だが、ワシントン・ポストのこの記事に関しては、全くコメントできない」。

 「全くコメントできない」といわれたら、その記事の内容がほぼ当たっている可能性が高いと私は解釈した。不正確なものであったら否定しているはずである。(あるいはまた、多くの人にワシントン・ポストが書いた記事の内容を信じ込ませたい、あるいはほかに真実があるが、それを明るみに出したくないと思っている、という解釈もあるだろう。)

 ワシントンポストなどの報道で事情がばれていても、NYTは「ガーディアンからもらった」とはサイト上に書かず、ガーディアンは「5つの媒体が事前に(ウィキリークスから)情報を得た」と説明してきた。これまでとは違って、ウィキリークスから直接NYTは情報を提供されなかったことを、ガーディアンの側からは公表したくないのだろう。

 リー記者を含めガーディアンは調査報道に非常に慣れているので、真実を明るみに出すにはさまざまな手を使う。他の事件(大衆紙の電話盗聴事件が最近の例)でもNYTとガーディアンは協力体制にあるし、ある意味ではNYTに恩を売って、さらに何かを暴こうとしているのかもしれない。調査報道はガーディアンの最大のブランド・バリューの1つなのである。

 ウィキリークスによる米国関連の秘密書類暴露で、米国メディアが過度に右傾的・愛国的報道に陥らないかどうかー?しばらくウォッチングを続けたいと思っている。

 
by polimediauk | 2010-12-03 07:54 | ウィキリークス
 告発サイト「ウィキリークス」の米外交公電の暴露(11月28日以降)を巡り、暴露の前に情報を渡されていた米ニューヨーク・タイムズ(NYT)、英ガーディアン、仏ルモンド、スペイン・エルパイス、独シュピーゲルの5つの媒体による報道の中で、私が比較できたNYTとガーディアンの報道を見て、あれ?と思ったことを前回、書いた。

 やや情報を整理すると、外交公電のどれをどのように報道するかは、各媒体の編集部が決め、ウィキリークスとの約束は報道日の取り決めのみであったという(ガーディアン編集長記事29日付紙版、「Editor’s note(編集長のノート)」)。

 これによると、ガーディアンを含めた5媒体は、外交文書のリークを報道することを事前に米政府に伝えていたため、どんなトピックがでるかのおおよそを米政府は予期できていた。米政府はまた、5媒体側に対し、特定の公電あるいはトピックに関して懸念を表明したという。

 報道直前までの細かな編集判断や米政府との行き来に関して、ガーディアンよりは明確に書いているのがNYTである。(前回紹介した「読者へのお知らせ」。)

 ガーディアンの先の「編集長のノート」から読み取れるのは(繰り返しになるが)、米政府には「外交公電のリーク報道が出ること」が通知され、「米政府側は特定の項目に関して懸念を表明した」こと。ガーディアン側あるいは他の媒体が、米政府の特定の懸念を考慮に入れて、当初の編集判断を変えたのかどうかは、明確になっていない(その一方で、NYTは政府のアドバイスを受け入れて、変えたものがある、とはっきりと書いている)。

 ガーディアンは「名誉毀損で訴えられないように」、あるいは特定の項目の影響を考慮して、独自の判断で出さなかった、あるいはぼかした情報があったことを説明している。

 さて、「ニュース・スパイラル」さんに、日刊ベリタ掲載分から転載していただき、いくつかコメントをいただいた。

http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2010/12/post_705.html

 そのひとつは
「WLは公表前にNYTには情報を流していません」。
 ガーディアンを通じてNYTに情報が渡った・・・という話は私もどっかで(ガーディアンで?)読んだ記憶があるのだが、今、どの記事だったか見つからないので(!)、とりあえず、見つかってからまた考えようと思う。ただ、ガーディアンから渡ったにせよ、公表(28日)のだいぶ前に情報を得ていたということは、NYTやガーディアンの記事に書かれているのだがー?もし、ウィキリークス(WL)とニューヨークタイムズの関係が、何らかの意味でこじれている・こじれていたとすれば、これはこれで興味深い話である。

 もう1つのコメントは、情報リークの人物とされる、マニング兵の表記の英訳である。
「low-levelと云うのは「階級が低い」という意味で「無能」という意味ではない。 それにa security loophole云々は、彼が海外(敵?)の万全のセキュリティ・システムで防御されたコンピュータに侵入する技術を持っている情報分析の専門家だということです。 つまり現状に失望した若い有能なコンピュータ技術者だと云っているのでNYTが彼を「賤しめている」とは思えません。易しい英文なので英語の読解力の問題ではないでしょう。NYTの記事は必ずしも公平とは言い難いですが、小林さんの解説もNYTへの偏見をもって書かれているのでは? 」
 
「low-levelと云うのは『階級が低い』という意味」――ああ、そうか!と思った。そういう意味もあったな、と。軍隊の話である。

 ところが、たとえ「階級が低い」と訳・解釈したとしても、実のところ、私のNYTに関するマニング兵の紹介(この「読者へのお知らせ」の記事の中、という意味)が不当である印象は消えないのである。

「失望した(がっかりした)、階級が低い、セキュリティーの抜け穴に(不当に)侵入した」アナリストー。
 a disenchanted, low-level Army intelligence analyst who exploited a security loophole

 一つ一つが、一定の(ネガティブな)価値判断をもって発せられている。個々の情報は事実といえば事実。中立とさえ、いえなくもない。しかし、問題は、「文脈に必然性がない」ことや、「当局側にたった視点」であること。これが気になるのです。この気になる感じ+胸がドキンとする感じは、もしこの兵士が自分の弟だったらどうか?と考えると、身近になるかもしれない。

 そこで、ガーディアンを見てみる。デービッド・リー記者の「いかに25万点の文書がリークされたか」という記事である。

http://www.guardian.co.uk/world/2010/nov/28/how-us-embassy-cables-leaked

 ここでは、いかにマニング兵がたやすく外交情報を取得できたかが書かれている(7段落目から10段落目)。「例えばレディー・ガガと書かれたCD(書き込み可能)を手にし、音楽を消して、機密情報をこれに書き込んでいく」ーといったことが簡単にできたとするマニング兵のコメントが紹介されている。

 この情報自体はすでにほかで報道済みの話ではあるが、記者の立ち位置は「セキュリティーが甘い米政府の情報体制」への批判のまなざしである。

 マニング兵は、「情報は自由であるべきだ。公的空間に所属するべきだ」と述べ、「自由な情報の活動家たち」であるウィキリークスに情報を送ったという。

 同兵のコメントはこれまでにも何度も他の媒体が報道している。しかし、ここであえて入れたのは、リー記者はあるいはガーディアンは、マニング兵を情報公開の推進者として、つまりは一種のヒーローとして(勇気ある行為をした人物)、ポジティブに見ていることを示す。
 
 ・・・ということを読んで、私はNYTとガーディアンの立ち位置の違いを感じた。本当は、ここまで詳しく書くほどのことでもないのだろうが、あえて書いてみた。つまるところ、「ぴんときた」という話なのだが。

 また、前にも書いたが、この立ち位置の違い(と私が受け止めたもの)は、米国のメディアと英国のメディアの違いから来るかもしれない。つまり、米国メディアにとっては、米国の外交公電が及ぼすリスクを英国メディアよりは真剣に考えざるを得ない部分がある「かも」しれない。
 
 「NYTへの偏見をもって書かれているのでは?」という点だが、これはコメントを書かれた方だけではなく、私の前回のエントリーを読まれた方で、「ガーディアンに好意的過ぎないか?」と思われた方は結構一杯いらっしゃるかもしれない。
 
 私の結論は:確かに、今のところ、ウィキリークスとガーディアンの報道に関して、「ガーディアンはすごい!」と思っている。好意的過ぎるかもしれない。中立であろうとは思っていない。ただ、ウィキリークス及びウィキリークス的動き(告発サイト、流出)には問題もたくさんあると思う。公務員機密法はどうなるのか、情報の信憑性をどうやって確認するのか、そのほかにもあるだろう。 今は、「すごいなあ」と思うばかりだが、他の問題も考えるときだと思っている。「問題がある」と書くと、それ自体でネガティブな意味に取られそうだが(?)、そうではなく、「面白い課題がたくさん出てきたぞ」、という意味である。

 それと、NYTへの偏見だが、少なくとも「大いなる疑問」はある。大いなる疑いの眼(まなこ)がある。ただ、それは、いわばジグソー・パズルの一片である。あれ?と思ったら、これをメモり、自分の心に留めておく。そしてそのメモを自分なりに証拠をあげてブログなどに書いている。
 
 パズルの一片が「黒」であったとしても、全体が黒とは限らない。それでも、私が今持っている一片は「黒」なのである。テロの警告でいえば(!?)、黄色―注意、である。とりあえずはこの一片を宙に浮かせている状態である。



 
by polimediauk | 2010-12-01 22:34 | ウィキリークス
 28日から、内部告発サイト「ウィキリークス」が機密文書も含む米外交公電を公開している。サイトが入手したのは、米国の在外公館と国務省との間の公電約25万点。この一部を米ニューヨーク・タイムズなどが独自に編集し、同じ日にいっせいに報じた。

 その内容は続々と日本語でも報道されているので、ここでは省くが、どのようにして今回の一連の記事が出たのかという点に、まずは注目したい。

 まず、報道されるまでの経緯だが、ウィキリークスは情報公開前にいくつかの世界の大手メディアにコンタクトを取り、情報を渡して、公開日に関する取り決めをしている。これを各メディアが独自に分析し、編集して、あらかじめ決めた日に一斉に出した。生情報をどのように料理するかは、そのメディアの編集者が決める。そのメディアが本拠地とする国にもっとも身近な情報を中心に「料理」・編集するのは自然の流れであろう。これは今までのウィキリークスの大量データ公開時と同じパターンである。

 ガーディアンによれば、ウィキリークスと大手メディアとの間でこのように情報をシェアし、一定の日に同時に各メディアが報道を開始するーというパターンを作ったのは、同紙の調査報道記者ニック・デービス氏であるという。デービス氏がウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジ氏にコンタクトをとり、これを持ちかけた、と。

 今回、事前に情報を渡されていたのは、スペインのエルパイス、フランスのルモンド、ドイツのシュピーゲル、英国のガーディアン、米国のニューヨーク・タイムズ。

 ガーディアンでは20人ほどのチームを作って、情報の分析と編集にあたったという(BBCニュース)。
 
 昨晩、ツイッターを見ていたら、ガーディアンのメディアジャーナリスト、ダン・サバー氏が、「ニューヨークタイムズは、出版前に、米政府に対してどの公電を使うかを相談していた」とつぶやいた。私は非常に驚いた。どんな報道にしろ、コメントを取るため、あるいは事実確認のために、書いている記事の中に出てくる人や事実に関係のある人に、メディア側が連絡を取ることは良くあるだろう。通常の業務の一環である。

 しかし、リークされた政府情報を元にした記事を載せるとき、政府側と「相談」する必要があるのだろうか?これはおかしいのではないか?

 そう思って、実際にニューヨークタイムズのサイトに飛んでみた。以下がそのアドレスである。

A Note to Readers: The Decision to Publish Diplomatic Documents(読者のお知らせ:外交文書を報道する決定について)
http://www.nytimes.com/2010/11/29/world/29editornote.html

 これによると、ウィキリークスからの情報に対し、ニューヨーク・タイムズは独自の判断で秘密を持っている人物や国家の安全保障を脅かすような項目を「編集」したという。実際には、いくつかの項目をあえて出さないようにした、ということであろう。どの項目を「編集」したかは他の新聞やウィキリークスに伝えたという。「他のメディアやウィキリークスも同様な編集作業をする」ことを期待している、とサイトには書かれている。

 私は、この段階での「編集」は各メディアの編集部の判断であるから、これはこれでよいと思う(ウィキリークスが各メディアの判断に従って、サイト上の項目を「編集」するかどうかは、ウィキリークスが決める)。ガーディアンも、特定の個人が危険な目に合うことを避けるため、あるいは名誉毀損罪で訴えられることを防ぐためなど、さまざまな理由から一定の項目をあえて出さない、消すなどの編集作業を行っている。

 その後、ニューヨーク・タイムズは、同紙が出版予定の外交公電をオバマ米政権側に送った。該当の公電が「国家の利益に損害を与えると政府側が判断する情報であれば、異議申し立てをしてほしい」と頼んだのである。政府側は「追加の編集作業」(つまりは、消して欲しいあるいは隠して欲しい項目の追加)を伝えてきた。ニューヨーク・タイムズは「すべてではないが、(追加の編集作業の)いくつかに同意した」。そして、米政権の「懸念」を、他の新聞とウィキリークス側に伝えたのである。

 私は、「すべてではないが、(追加の編集作業の)いくつかに同意した」点に大きな疑問を持った。これはつまり、米政府との共同作業、ということになりはしないだろうか?また、米政府の懸念事項を他の新聞に伝えているあたり、なんだか米国の使い走り的な役目を担っているようにも見えるー何を出して、何を出さないか、どのようにどれぐらいのスペースで出すかは、各紙の編集長が決めるはずなのだ。例えばだが、「xxxの項目に関しては、米政府が『かなりまずい』と言ってました。なので、私たちは出さないことにしました」・・という言い方をしたのかどうかは、もちろん分からない(憶測のみ!)だが、なんだかそんな感じに見える。

 ニューヨーク・タイムズは米政府に近すぎるのではないだろうか?愛国心が強いともいえるのかもしれないが。(私の記憶が間違っていなければ、「愛国心が強い」米新聞各紙は、イラク戦争開戦前夜、大量破壊兵器がイラクにはないことを見抜けなかった、あるいは政府の参戦理由を十分に分析し得なかったはずである。確か、後で謝罪したような記憶があるのだがー。)

 ・・・と思って(当初、私はニューヨーク・タイムズが「原稿」を事前に見せていたと勘違いしてつぶやいていたので、内容が少々ずれてはいたのだが)、「けしからん!」というようなことをツイッターでつぶやいていたら、「何を最優先するかの価値判断が違うのではないか?」ということをつぶやかれた方がいらした。

 なるほどなあと私は思った。確かに、イラクにもアフガニスタンにもたくさん兵を送る米国の外交文書の暴露の衝撃が、最も大きいのは米国。英国やフランスのように高みの見物ではない。リアルな危機があって、リアルな懸念もある。そこで米国の新聞ニューヨーク・タイムズは、政府の意見を事前に聞いて、アドバイスを受けたのだろうー想像だが。

 ところがまた別のつぶやきを出した方がいた。ちょっと紹介すると

nofrills nofrills メモ魔ですhttp://twitter.com/#!/nofrills
ウィキリークスに関してNYTの行動がまるでスパイのようだったのは前回のイラク戦争ログのときから顕著(アフガン戦争ログでも変な挙動を示していた)。今回もNYTなど見ないで、ガーディアンを見ましょう。ウィキリークスに関しては、ガーディアンはガチ。

nofrills nofrills メモ魔です
英メディアは、取材源の秘匿と国家安全保障を天秤にかけて後者を選ぶということを原則的に しない。北アイルランドで英軍を襲撃したリパブリカン武装組織と直接インタビューしたジャーナリストに対し、当局が情報源開示を求め法廷に訴えたとき、法 廷は情報源は秘匿すべきとの判断を示した。


 そうなのかーと改めて思い、「さて、ガーディアンは英あるいは米政府にお伺いを立てたのかな?」と疑問になった。お伺いは立ててはいないとは思うけれど、ひょっとしてと思い、ラスブリジャー編集長にツイッターで聞くと、「ない」という返事(念のためだが、私は個人的にラスブリジャー氏と親しいわけではない。タイミングがよければ、英メディア関係者は結構ツイッター上で返事をくれるのである。これは日本でもそうだろう)。

 やっぱりなあとひとまず思って、今朝起きてから、じっくりと上のニューヨーク・タイムスの記事を最後まで読んでみて、また驚いた。

 それは、この一連のリーク情報の告発者と推測され、今米軍に逮捕されている、若き兵士マニング氏の表記である。この人が告発者であることはほぼ確定しているというか、少なくとも「告発者そのものである」という前提で、今のところ、話が進んでいる。(何かの陰謀説で全くの別人という可能性もあるが。)

 ガーディアンとニューヨーク・タイムズのマニング氏の描写を見ると、その書き方の違いに唖然とする。日本の英作文の授業にでも使えそうなぐらい、同じ人物を全く違う角度から書いている。

 つまり、ガーディアンでは、マニング氏は公益のために情報をリークした、一種の英雄である。ところが、先のニューヨークタイムズの記事では、そのまま書き抜くと、
「a disenchanted, low-level Army intelligence analyst who exploited a security loophole.」になる(訳せば、「・・・セキュリティーの抜け穴を(不当に)活用した、幻滅を覚えた、低いレベルのインテリジェンスの分析家」である。

 日本語だとうまい具合にニュアンスが出ていないが、文章の前後を見ると、low-levelであることを指摘する必要性がない。セキュリティーの抜け穴をexploitした、というのも、まったくその通りではあるけれど(事実としては)、文章全体として、この人物をやや暗いイメージで描き、少々貶めることに成功している。これをまともに受け取れば、「そんな人物から受け取った情報を、天下のニューヨーク・タイムズが大々的に報じていいのか?」とも思えてしまうー。まあ、こちらの深読みの部分もあるかもしれないが、ガーディアンとニューヨーク・タイムズの人物像に大きな開きがあって、驚いてしまう。

 結局のところ、「ニューヨークタイムズ、大丈夫?」と聞いてしまいたくなるような雰囲気である。そんなに政府に近くて、大丈夫か?と。

 さて、ガーディアンの外交公電報道に関し、編集長、記者、元外交官、歴史学者、情報公開で本を書いたジャーナリスト(テレグラフが暴いた下院議員の灰色経費疑惑のもともとはこの人の仕事がきっかけ)などの短いインタビューが入った動画は、以下のアドレスから見れる。
 
 「外交情報の伝達の仕方を変えないといけなくなった(電子ではもれる)」という意見から、「何が秘密で何が秘密でないかを再度検証するべき。今回の情報もほとんどが秘密のレベルではないと思った」(ジャーナリスト)、「外交の秘密はこれからも必要で、続くとは思うが、国民にはもっと情報が出たほうが良い」(元外交官)など。

http://www.guardian.co.uk/world/video/2010/nov/28/us-embassy-leaks-data





 


by polimediauk | 2010-11-30 06:40 | ウィキリークス

 (若干バタバタしているので、ほんのメモ書き。)

 例の「尖閣ビデオ流出問題」の件。数日前に、たまたま、グーグルで国際ニュースを見ていて、このトピックにぶち当たった。ライブドアのBLOGOSで意見をいろいろ、読んだ。

 その時点では、「流出、けしからん」論が非常に強かった。驚いて、何か書こうと思ったが、一筋縄では行かない気がして、2-3日が過ぎた。今朝ぐらいまでに、すっかりいろいろな意見が出て、「流出でもいいじゃないか」「出たほうが良かった」という意見もぞくぞくと出るようになっていて、ほっとした。

 私が尖閣ビデオ流出問題を知ったとき、いわゆるウィキリークス的な話で、あまりにも似ている状況だ、と直感として思った。しかし、その反応は、少なくとも当初、日英の間で、あまりにも大きく違っていたように思う。(英国では、ウィキリークスの場合、「すごい!」「よくやった!」という好意的な反応があり、焦点はその後、リークの中味の議論に移る。リーク慣れしているのだろう。)

 ウィキリークスの話は、ジャーナリズムの面、軍事機密の面、ネットの常態化の面から、非常に大きなトピックであろう。アメリカ(だけ)の話でなく、日本も関係している(ネットでみんながつながっている)、ネット上の情報をどうするかの話でもある。尖閣ビデオ流出問題での日本のいろいろな人のあわて方(?)をみると、やっぱりというか、そういう状況を想定してなかったのだろうか。

  ・・・という過去の話は良いとしても、今、本当に、ドンドン、ネットで情報が「勝手に」出る状況になっている。

 その「勝手に」出る状況は、1つの、新たな「リークを元にしたジャーナリズム」になっているのではないかと思う。前からもリークを元にしたジャーナリズムはあったのだろうけど、ネットの出現で、誰でもが、「そのまま」出せるようになったわけだから、そういう意味で、新しい感じがする。

 「勝手に出る」ことが常態になった時、いろいろ、不都合なことや恥をかくことはたくさんあるだろうと思う。例えば、「国の沽券」とかは、吹っ飛ぶのかもしれない。

 「あえて、勝手に(許可を得ずに)出す」ジャーナリズムが、国民の了解・支持を得られるのは、公益がある場合だろうと思う。(その公益があるかないかは、情報を出す人が決める、そして情報を得た人が、判断する。)

 ・・・っていうのは、私の持論というわけではなく、ウィキリークスに代表される、権力に挑戦するジャーナリズム・あるいは行動の理由付けに使われている。

 それと、尖閣ビデオ流出問題やウィキリークスをちょっと脇において、「当局」というか、政府というか、いわゆる「お上」と、どういう関係を持つか、という点も気になる。

 「当局」が気に入らないこと、憤慨すること、恥ずかしく思うことをあえてする=ジャーナリズムの使命・・というのが、きれいごとかもしれないが、英国のジャーナリズムの基本的態度だと思う。(きれいごとばかり言っているようで、恐縮ですが。)

 (軍事機密をどうするのか?という問いもあるだろう。軍事に限らず、「機密」は今、常に破られる・暴露される時代になっているのだと思うー英国にいると、そう思う。もちろん、今回のビデオが本当に「機密」に足りえたのかという議論もあるだろうと思う。)

 
by polimediauk | 2010-11-09 08:40 | ウィキリークス
 内部告発サイト「ウィキリークス」が、イラク戦争に関する新たな極秘文書を、22日、公開した。

 約40万点に上る米軍が管理していた極秘文書は、英ガーディアンやBBCをはじめとする世界のメディア媒体に提供された。

http://www.guardian.co.uk/world/2010/oct/22/iraq-war-logs-military-leaks

http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-11611319

 この膨大な電子文書は、前に、アフガン戦争に関わる米軍の秘密文書をリークした人物と同じ米軍の諜報分析家がウィキリークスに流した模様だ。

 今回のリーク情報で分かったことのいくつかは:

―イラクの警察隊や兵士が行った暴行、レイプ、殺人などが組織的に行われていた場合でも、これを米軍は調査しない方針をとった。
―これまで知られていなかった、1万5000人以上のイラク人市民が亡くなっていた。米英当局は、イラク民間人の犠牲者数は公式な記録をとってないとこれまで主張してきたが、実際には記録が残っていて、10万9000人のイラク人の死者がいて、この中の約6万6000人はイラクの民間人(非戦闘員)だった。
―拘束されたイラク人は、暴行を受けたり(医療記録が残っている)、足かせをつけられたり、目隠しをされたり、手首や足首から吊るされたり、蹴られたり、電気ショックをかけられたりしていた。拘束者が亡くなった場合もあった。

 BBCの取材に、米国防広報官は、「公表された事態はすでにニュースや、書籍、映画などで記録されている」「これでイラクの過去が良く分かるようになったということはない」と述べている。「しかし、リークには極秘情報があり、米軍に危険をもらたらす可能性がある」。

 ガーディアンの取材に、米国防省筋も、敵がこの情報を分析し、米軍の動きからヒントを得ようとするだろうし、情報源を捕まえ、戦闘状況でこの分析に沿った行動をし、戦闘機材の機能を利用するかもしれない、などと話している。

 英国の人権問題を専門とする弁護士フィル・シャイナー氏は、この情報を元に、英政府は、イラクの民間人を違法に殺害したかどうかに関して調査会を設置するべきだと主張する。イラク軍による拘束者の暴行や拷問を英政府がとめることができなかったので、政府を訴えたい、とも。

 このウィキリークスの情報の意味は深い。生の情報がリークされることに、米政府は「けしからん!」という態度で、「米軍が危険にさらされる」という、ある意味ではお決まりの反応である。

 しかし、これほど情報がたくさん氾濫するのが当たり前になった世の中で、数年前の軍事情報がいまだに秘密、というのはどうだろうか。つまり、人は知りたがるのである。「軍事機密だから、だめ」ということだけでは、国民は納得しない。

 国民の税金を使って、戦争をやっているわけだから、「絶対にこれは出せない」というもの以外は(その判断が難しいだろうが)、すべて出すようにしないと。

 特に、「イラク民間人の死者数は数えていない」といいながら、「実は、記録をとっていた」というのでは、あまりにもまずい。「自分の面子を守るために」「単に都合の悪いことを隠す」ことを、「軍事機密だから、公表できない」というまっとうな理由よりも最優先しているように見えてしまう。

 軍事情報のどこまでを外に出すべきか?大きな問題だが、すでに米英には、一定の報道・公開規則があるはずである。この規則を、今、限りなくゆるめざるを得ない(つまり、どんどん出す)状況になってきたのだと思う。
 
 ところで、日本では、この話は少なくとも英国のようには「ガーン」!!!という衝撃をもって受け止められていないように思うのだが、どうだろう?英国の場合は、イラク戦争を主導した、また、アフガン戦争にはまだ人が派遣されている、という理由で、非常に身近な問題であることが、まずその違いの理由かもしれないが。

 それと、いわゆる「リークをする人」にあまり太陽があたっていないような気がするのだが、どうだろうか?

 インターネット時代、どこまで情報を出すべきなのか?特に軍事情報といった、人の命が関わる案件の場合、リークはどこまでゆるされるべきなのかー?

 これは、今、まさに非常に大きな問題であると思うのだけれどもー。ジャーナリズムの観点からもそうだし、国民の知る権利という意味でもそうである。税金を使って行われる戦争、しかも、自分の家族の一員が血を流して参加している戦争に関する正確な情報を国民には知る権利があるはずだ。

 

 
by polimediauk | 2010-10-23 07:37 | ウィキリークス